二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ヴァイスシュヴァルツ・NEXT/STAGE ( No.28 )
日時: 2014/12/14 08:29
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: S5DpgI4u)


ヴァイスシュヴァルツ世界:マギアワールド。



その世界は、なのはとシュテル、ナツの故郷が属する世界の総称である。
遥か昔からファンタジーをベースにした世界と、人間界をベースにした世界の2つが存在する。前者は魔法を生業とするものが多く、後者は魔法の存在と科学は別物として扱っている。
そんな世界に、一つの光が入ってきた。

「王、人間界よりシュテル・ザ・デストラクター、只今戻ってまいりました」

「ん?一体誰だ——なんだ、シュテルではないか」

ある建物の玄関口に下りたそれは、李里香と別れを告げたシュテルであり、彼女に応じたのは王のマテリアル、ディアーチェだった。彼女は契約で暫く会えないと思っていたシュテルに僅かばかり驚く。彼女に家に上がるよう促すが、その時奥から2人飛び込んでくる。

「おぉ!シュテルんが帰ってきた!」

「シュテル、お久しぶりです!」

「ユーリにレヴィか。リビングに戻っておれ」

ディアーチェの言葉に2人の少女、ユーリとレヴィは元気良く頷いて準備に入る。
2人を見送った後、シュテルはディアーチェに言う。

「王、少々お話が……」

「ん?」





「なるほど。己の弱さに嫌気が刺し、そして我らの世界に帰って行ったというわけか」

その後、リビングで紅茶を貰う紫天一家の4人。シュテルは李里香と共にした日々だけでなく、この頃まで思っていた事も3人に話した。
レヴィとユーリは興味津々に聞き入れるが、ディアーチェはどこか重い空気を漂わせている。

「その程度でこっちに帰ってくるとは、我が臣下としては失格だな」

「そんな!王様言いすぎだよ!」

「止めてくださいレヴィ。確かに王の言うとおりです。このままではいけないと思っています」

ディアーチェの言葉にレヴィがシュテルを擁護するように言うが、シュテルはそれを斬り捨てる。
だが、ディアーチェは紅茶を一口飲むと、話を続ける。

「最も、我もカードとしての能力は嫌いだ。臣下を犠牲にしてまで強くはなりたくない」

「確かに我々の中で、良く使われるのはユーリだけですね。私の場合、李里香の好意でって意味でですからね」

溜息を吐いて自分の不備な点に悪態を吐く。
だが、ここで悪態の吐き合いをしていても解決にはなりはしない。首を振って別の話題を挙げる。

「そんな事より、昨日(さくじつ)変なものを見つけてな。ついて来い」

ディアーチェがそれに「正直、うぬのためになるかは解らぬがな」と付け加え、シュテルをある場所に案内した。
近くの小高い丘で、時空の裂け目を見つける。もやの様に不安定に動き、中を覗くとどこかの場所に繋がっているように見える。

「昨日現れてな。色々調べていたら、フロニャルドとやらの世界に繋がっていたのが解った」

「でも、こんなの正規ゲートじゃないですよね?」

「恐らく昨日以前になにか起きたのだろうな。そんなのがあるという事は……」

「フロニャルドに異変が訪れた。と言う事ですね」

「そういう事だ」

ディアーチェとユーリの言葉に、おおよその事態を呑んだシュテル。ディアーチェにもその意図を読んだように尋ねる。

「なら、今から行くか?」

「……宜しいのですか?」

「うぬの力の糧になればこそだ。我らも用事が済めば貴様の元に向かおう」

窓からベランダに出たディアーチェが、空の向こうにあると思われるモンスターエンパイア方面へと向け、瞳を鋭くする。

「この住みよい世界を土足で踏み荒らそうものならするがよい。そいつらに恐怖と絶望を脳裏に刻み込んでくれるわ!」

「王……」

「だから行け。強くなっておぬしのパートナーの、我らの矛としての大役を果して来い」

「……はい!」

ディアーチェの言葉に、シュテルはそれ以上言わずベランダから飛行魔法を使って飛び出し、フロニャルドへと向かっていった。

Re: ヴァイスシュヴァルツ・NEXT/STAGE ( No.29 )
日時: 2014/12/14 08:37
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: S5DpgI4u)




明影学園。放課後。


「ずーん……」

「あ、あの李里香……大丈夫?」

周りさえ巻き込みそうな鬱オーラを撒き散らして机に突っ伏す李里香に、彼女の教室に来た皐月が多少引きながら尋ねる。
昨日の件が相当ショックだったらしく、クラスメイトからも「近付きたくない」と答えるほどのオーラを撒き散らしていたらしい。

『なのはちゃんはどうしたの?今朝から見かけてないけど……』

そこにれいが原型状態で現れ、なのはがいない事を尋ねる。
言葉に反応した李里香がうつぶせたまま当麻の方に振り向く。

「なのはちゃんなら、朝から無限書庫へ行ってたわ。調べものがあるって」

「調べ物ねぇ……あ、今日はみんなのデッキ強化だから部室に集合ね。ミチと竜崎は部費でカードを買ってあるから」

なるほど、と事情を知った皐月は踵を返すとそう言って一足先に部室に向かっていった。



〜少女移動中〜



そして、部室にて。

「どうもー「わぁー!かわいい!」どしたの?」

気だるく部室に訪れた李里香が見たのは、先行していた皐月が白猫に対して黄色い声を上げていた光景だった。
部員の男子2人も、物珍しそうに見ている。

「珍しいね。ここって猫を飼ってないよね?誰かの飼い猫?」

「あー……あたしのです」

がやがや集まる前に李里香が申し訳程度に挙手する。

「え?でもこの前(前作『ヴァイスシュヴァルツ!ステージオン!!』参照)来た時はいなかったよね?」

「話せば長いけど……」

がっくりとうなだれた李里香が昨日の出来事を話す。

「じゃあ、その時にシュテルが?」

「うん……」

「それで落ち込んでたのか。まあ、いきなり出て行ったら納得だけど」

事情を聞いた武が頷いた。だが、まだなのはが無限書庫にいった理由と猫の招待に納得がいかない。

『李里香ちゃん、お待たせ!色々調べてきたよ!』

「なのはちゃん!」

その時、タイミングよくなのはが戻ってきた。
部室に入ると同時に待機状態のレイジングハートに指示を出し、壁に撮影した映像を見せる。

『色々調べてみたけど、昨日シュテルが言ってた通り、その子、何かあるみたい』

撮影した資料を見せると、あの白猫が下げていた指輪が写っていた。

『この指輪は、「魔戦斧グランヴェール」って武器みたいなの。フロニャルドって世界のガレット獅子団領の宝剣なんだって』

「つまり、この子はその何とか団領の関係者なの?」

『あ、でもこの宝剣は代々その領主に受け継がれているから、多分その子は領主なんじゃないかな?』

「ふーん。でもこの子が領主かどうか解る方法ってないの?」

『手っ取り早い方法を挙げるなら……バトルかな?そうすれば本来の姿になれると思うよ』

『なら久しぶりに俺達とするか?』

バトルを提案したなのはに当麻が挙手する。それに伴い武もやる気のある声を出す。

「面白そうだな!久しぶりにバトルするか?」

「そうね。デッキも持ってきてあるし、久しぶりにお願い!」

早速バトルの準備を開始する。武は自分のデッキを、李里香は昨日白猫の仮契約で得たデッキを手に準備を整える。

「これよりバトルを開始する!ルールはネオスタンダード。ハンデは無し。双方いいな?」

冬雅のジャッジに2人は頷く。そしてデッキを専用MFSに置く。

「その夢幻の幻想を、俺の右手が消してやる!セットアップ、“幻想殺し(イマジンブレイカー)”!」

「いや、今の何!?」

「あぁ、前に白田学園長がやってたのをちょっと真似したんだ」

突然武が光となっている手札をそろえると同時に挙げた口上に李里香が驚いて尋ねる。
どうやら前回白田学園長が試合を開始する時に口上を使っていたので、それを真似たらしい。それを聞いた李里香も興味を示したのか、「セットアップ、ガレット獅子団」と口上を言ってバトルに入る。

「「ステージオン!」」

『STEGE,ON!』

Re: ヴァイスシュヴァルツ・NEXT/STAGE ( No.30 )
日時: 2014/12/14 08:48
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: S5DpgI4u)



バトル開始と同時に当麻が武の右後ろに立ち、李里香の右後ろにいる白猫も光を纏い、姿を変える。
白い毛並みは長い白髪へ、身長も李里香の頭一つ分高く、首に下げていた指輪も右手中指に収まり、服は蒼い軍服のような衣装を纏っていた。光が収まると気が付いたかのように目を開き、あたりを見渡す。

「あー、名前良いかな?貴方の名前は?」

『ワシか?名はレオンミシェリ・ガレット・デ・ロワ。ガレット獅子団領の領主じゃ。長いのであれば、レオで構わぬ』

名を名乗った獣人、レオに、なのはが「やっぱり……」と確信を持った声で呟く。
そんな時に空気も読まず武がバトルを進める。

「俺の先攻!ドロー!クロック&2ドロー。“無能力者”当麻を前列中央にコール。そしてチェンジ発動!全ての異能を泡沫に帰す!“幻想殺し”当麻、スペリオルステージアップ!」

『よし来た!』

早速十八番のチェンジを使い、切り札である当麻を場に繰り出す。

『ちょ、ちょっと待て!見るからにそいつのレベルは1。コールするにはあとクロックが5必要だぞ!』

『いいや、彼だからこそ可能だ』

レオが驚いて講義の声を上げるが、どこからかそれを否定する声が出る。
そこに顔を向けると、翼とナツが帰っていた。

『それはクロック1枚を置き、自身を思い出に置く事でコールできる。武は予め手札交換で切り札を控え室に置いていたんだ』

『お!バトルしてんのか!?俺も混ぜろよ!』

『その声……ナナミにガウル……か……?』

声に反応したレオが声のほうに振り返る。だがいたのは買い物から帰ってきた冬雅&ナツとミチ&翼&ハルヒのみ。
数秒の沈黙の後……。










『誰だお前ら!!??』

『『それはこっちの台詞だー!!』』

「また説明かよ……」

突っ込みを入れる翼とナツを余所に、武が溜息を吐いた。





十数ターン後。


李里香 レベル3 クロック0 ストック2 手札4



“ジェノワーズ”ベール “お側役”ビオレ

ガウル・ガレット・デ・ロワ ※“獅子王”レオ “近衛メイド”ルージュ




※“修道女”インデックス ※“インデックスの保護者”当麻 ※“幻想殺し”当麻


月読小萌 “メイド候補生”舞夏



武 レベル2 クロック4 ストック4 手札3 思い出1



※1“戦無双”は現パワー1万3千。

※2“修道女”はパワー3千、“インデックスの保護者”はパワー8千5百、“幻想殺し”はパワー5千。


「……なんか、今の李里香、ミスが目立ってない?」

『多分、昨日のショックが原因なんじゃ……』

これまでのプレイから竜崎が疑問に思い、なのはも李里香を心配するように肯定する。
今までの李里香のプレイを見てみると、レベル1相手にノワールの効果を使ったりなど、ミスを連発している。

「ガウル、ルージュ、レオの連続攻撃!」

メインフェイズを終えた李里香が、まずガウルがインデックスを爪で切り裂いて倒し、2ダメージを与える。
だが、それを待っていたと言わんばかりに猛の口角が上がる。

「倒してくれてサンキュー!アビリティアクションでインデックスを思い出に!更に2人の当麻の“記憶”スキル発動!レベルを0にしてパワーアップ!」


インデックスの保護者パワー 8千5百>>1万1千5百

幻想殺しパワー 5千>>6千5百


永続アクション“記憶”。李里香の切り札もそれを持ち、思い出置き場(他のカードゲームではいわゆる除外エリア)にカードが特定数——カードの種類も特定される場合もあり——おかれた時点から効果が発動される。
パワーアップを許してしまったものの、もうアタックは止まれない。続けてルージュが当麻にナイフで襲い掛かる。トリガーアクションはダブルソウルトリガーを引き当てるも、最初の1枚でキャンセルされる。

「建宮斎字のカウンターアクション!パワー+2千!」

負けじとカウンターを発動する武。バトルもナイフの突きを避けた当麻がルージュの右頬に右ストレートを当てる。

「でも、最後の攻撃は何が何でも通す!」

確かに今のレオはパワー1万3千と高い。差は1千5百もある。だが、武も

「甘い!幻想殺しをコストにカウンターアクション!竜王の顎(ドラゴンストライク)!レベル+2&パワー+2千!」


インデックスの保護者パワー 1万1千5百>>1万3千5百


当麻の拳とレオの斧がぶつかり合う。
最初は宝剣を持っていたレオが優勢に進んでいたが、幻想殺し(イマジンブレイカー)を持つ右手に竜の頭のようなオーラが噴き出すと、次第に押し返されていく。

『貰ったぁ!』

『あぐっ?!うぐああああああーー!!!』

一瞬の隙を突き、レオの腹に藤間が渾身の一撃をお見舞いした。
カウンターのストレートを直撃したレオはそのまま吹っ飛び、舞台の袖の壁に激突した。
「ぐっ……!アンコールでルージュを舞台に継続。ターンエンド……」


李里香 レベル3 クロック0 ストック3 手札4

武 レベル2 クロック4 ストック3 手札1 思い出1


「ドロー。クロック&2ドローし、レベルアップ。そんでもって、“ビリビリ中学生”美琴をコール!」


手札2>>1

ストック2>>1



BGM:PSI missing



『呼んだ?武』

「絆アクションで当麻を呼んでくれ!」

『OK!あいつを呼ぶのは癪だけど……!』

アビリティ『絆』。それはコストを払う事で控え室からテキストに記されているキャラを手札に戻す能力。
中学生くらいの少女が体から電気を迸らせると同時、前のターンでコストに消えた相棒を手札に戻し、再びコールする。


ストック1>>0


「あとは前列を操作して、と。クライマックスに“幻想殺し(イマジンブレイカー)”を発動!そして中央の当麻でダイレクトアタック!効果で他のキャラにパワー+3千!そしてトリガーアクション!」


幻想殺しパワー 6千5百>>7千5百>>1万5百


ビリビリ中学生パワー 5千>>6千>>9千



最初のダイレクトアタックでソウル4から更に幻想殺しを引き当てる。それと同時に李里香の顔も青くなる。

「ウィンドトリガー!ソウル1追加し、ルージュ!」

『は、はい!?』

「トリガーの効果でお前を手札に戻すぜ!」

ソウル5の攻撃が直撃すると同時に突風が吹き荒れる。ガウルは何とか堪えたが、ルージュに集中的に吹き荒れ、耐え切れなくなったルージュが飛ばされて李里香の手札に戻る。

「続けて美琴、頼むぜ!」

続けざまに美琴が電流を起こし、その力で砂鉄を剣の様に集めてガウルを斬り裂いた。

『これで、トドメぇぇぇ!!』

「うあああっ!!」

飛び越えての斬撃で2ダメージ。最後の望みとダメージアクションを行ったが、結果はどちらもトリガーは存在しなかった。


『GAME,END. WINNER, SHIDOU TAKERU.』


「よっしゃ、勝ちィ!」

『なんだ、結局俺の出番は無しかよ』

「そう言うなって。お疲れさん」

自分の攻撃前にゲームが終わった事で溜息を吐く当麻に気にするなと武が慰む。
ゲームが終わると同時に当麻とレオ以外のキャラが空気に溶け込むように消失する。

『いきなりで悪かったな。じゃあ改めて。レオさん、アンタは何でここに来た?』

『ああ。それは……』

突然、ぐらりとレオの身体がよろけて彼女はそのままばたりと倒れてしまう。

「ちょ、ちょっと!?」

倒れた事に驚いて李里香が駆け寄る。身体を揺さぶってみると、脇腹から赤い液体が……

「怪我!?だ、誰か早く救急箱!」

「それならカード棚の奥よ!」

パニックになる中、皐月の言われた所から医療箱を取り出した李里香は大急ぎでレオの治療を行うのだった。

Re: ヴァイスシュヴァルツ・NEXT/STAGE ( No.31 )
日時: 2014/12/14 08:54
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: S5DpgI4u)


李里香Side.


いきなり血を流して倒れたのには驚いたけど、治療を終えて一息吐いたあたし達。

『何か、悪い事しちゃったな』

「そうだな……」

当麻と武が申し訳なさそうにうなだれる。あたしだって怪我してたのを知ってたら、バトルなんて承諾しなかったのに……

『ぅ…』

『ほらほら、しんみりしない。起きたみたいよ』

れいが宥めると同時にレオが気が付いて起き上がる。

『大丈夫?いきなり倒れたから驚いたわよ』

『ワシは……そうか、皆に迷惑を掛けたな』

思い出したみたく、レオがあたし達に謝罪する。

「いいって。気付かなかったあたしも悪いし。でも、その傷って?」

『すまんが聞かんでくれ』

あたしの質問にレオは一言で一蹴。最低限のプライドからだと思うけど。
そんな中、なのはちゃんがレオに歩み寄る。

『もし良かったら、暫く私達の所にいますか?』

『良いのか?』

「……そうね。行く当てが無いんなら、最初に拾ったあたしに責任があるし」

正直、この人をここで見捨てたら後味が悪い気がするってのも半分ある。それに……

「ここで貴方を見捨てたら、今修行しているシュテルになんて言われるか」

部室に沈黙が走る。レオは考えているのか、返事が返ってこない。
そして考えが決まったのか、レオがあたしに振り返った。

『解った。このレオンミシェリ・ガレット・デ・ロワ。この力を一時(いっとき)主に預けよう』

その承諾を聞くと同時にレオの身体が光に包まれ、小さなデフォルメ姿——と言うか、なのはちゃん達とは違って原寸サイズを縮めた姿——となる。

『この姿なら力の消費も大分抑えられるな』

「喋った!?」

普通、デフォルメ姿は喋れないはず。これも仮契約のメリットかな?

『さて、次は誰が相手だ?』

『おっしゃあ!早速俺とバトルすっぞ!』

『やめなさい、傷口が開いたら話にならないわよ!』

早速ナツがバトルを初めようとした途端にれいが止める。これでまた傷口が開いたらどうするのさ。
けど、キリトがそれに笑い出すと他の皆も笑い出した。

『それで、竜崎さん。買出しはどうでしたか?』

「あ、そうだった。ゴホン……まず、ソードアート・オンラインⅡのボックスを1つ入手した」

「じゃーこれは鶴来君に。他は?」

「寧ろここからがメインです」

ミチちゃんが待ってましたと言わんばかりにそれぞれ3つのボックスを用意した。そして右からミチちゃんが説明する。

「最初は『エンデュミオンの奇蹟』。武の持ってるとあるシリーズの強化が出来るわ」

「おぉーッ!!さっすがミチ!俺のために買って来てくれたんだな……!」

「そんなんじゃないわよ。デッキ強化やバリエーションの増加は望みたいでしょ?」

確かにバリエーションが増えればそれだけ戦略の幅も広がるわ。納得するあたしを余所にミチちゃんは次のデッキの説明を。

「次は冬雅さんのFAIRYTALE強化ブースター、『エピソードE&T』。エドラス編と天狼島編の2つのエピソードのカードが入ってるし、竜の強化も可能だわ」

「私達の知らないカードもあるのね……」

ちょっと失礼、とボックスの中のパック1つを開け、中のカードを見て感想を述べる皐月部長。これには心当たりがある。伊村のモンスターエンパイアやこの前のリバースオブシャドウも記憶に新しい。そしてミチが最後のボックスを指して説明する。

「『イノセント・オブ・ディスティニー』。勿論これは李里香のリリカルなのはシリーズの強化カードよ」

「ホントに!?」

「ええ。お店のシングルカードを見たけどマテリアルも多く……って、ちょっと何勝手に開けてるの!?」

我慢できなかったあたしは説明を無視して勝手にパックに手を伸ばした。正直、お預けを喰らった犬か何かみたいだとちょっと思った。
一つ一つ効果を確認していく。うん、確かにあたしの知らないカードばかりだ。そして最後の5枚目に、ホロ加工のカードに目が留まる。

「『“炎の砲撃魔導師”シュテル』……」

「レア度最高クラスのカードじゃない!いきなりそれを当てるなんて……」

ミチちゃんが驚くけど、あたしはこれを見てると空しさを覚える。シュテル、今どうしてるのかな?
全てのボックスの説明が終わり、早速デッキ改造をしようとした時、部長があたしを呼ぶ。

「ねぇ、レオのデッキちょっと貸してくれる?今のままじゃそれで勝つのは難しいからね。ちょっと改築するのよ」

『確かにそうだな。頼む』

レオからの承諾も貰い、早速デッキを受け取る部長。カードも皐月部長が部長になるまえの面子の中に使っていたらしい。
早速そのカードを取り出して早速改造を行う。

「まずはレオの強化よ。れい、レオのデッキに対するジナシーとメタカードを調べて」

『了解!』

「鶴来君、レオに相性のいいカードやそれに対する対大活躍カード」

「クロック送りを無視するなら赤の『ケモノダマ』、後列を狙いたいなら『“領主見習い”クーベル』と『ガーネットスパーク』のコンボが最適だよ」

手早くカードを整理し、分解したデッキに新たなカードを交換していく。
れいのサポートも手早く、的確なカードを挙げていき、デッキを改造中の鶴来も返答だけで的確なアドバイスを送る所を見ると、ほんとに凄い。
おっと。あたしのほうもデッキを強化しなくちゃ。





Side out.


「できたーッ!」

一斉に部員が声を上げる。全員の手には改造したデッキがあった。

『どれ、これの試しをしてみるか?』

レオの誘いに皐月は「そのつもりよ」と答える。

「ただし、レオ様はその傷を治してからよ?」

『うぐっ……』

見事に釘を刺され、言葉を詰まらせるレオ。また傷が開いたら本当に冗談にならない。

「まずはなのはデッキと当麻デッキのチェックよ。当麻、2連戦になるけどいい?」

『ああ。構わないぜ』

早速呼ばれた李里香となのはペア、武と当麻ペアがバトルステージの両端に立つ。
傍から「次からはワシも混ぜてくれ」とレオから催促が聞こえた。

「今度は負けないからね?」

「へっ、また返り討ちにしてやるよ!」

『連戦だからって、お前に負けるかよ!』

『こっちだって魔法を消されるからって負けません!』

2人とも完全に闘志を漲らせており、パートナーも戦意は十分だ。

「集え、赤き星の元に!セットアップ、“ルージュエトワール”!」

「その夢幻の幻想を、俺の右手がぶち殺す!セットアップ、“幻想殺し(イマジンブレイカー)”!」

再びキャラ達がぶつかり合う。大会まであと少し。





『今回のフェイバリットカード』




武「今回は2種類のカードを紹介だ!」

李里香「まずは武の切り札、“幻想殺し”当麻!第1ターンからいきなりチェンジでコールできる上、“すべてを打ち消す力”で相手の起動能力を全て無効化する!」

当麻『まさしく俺の右手と同じ力だ。お次は!』

武「李里香の新たな仲間、“獅子王”レオ!相手のアタックを一手に担う“大活躍”だけじゃなく、コールされると控え室の『魔戦斧グランヴェール』を手札に戻す!」

レオ「だが、いくら大活躍の効果でもスキルで取り除かれたらそれまでだ。スキル耐性を与える『ヒーロータイム』で防ぎつつ、一気に叩け!」

李里香「次回はどんな切り札が現れるかお楽しみに!」


感想をお願いします。正直欲しいでs(強制終了)。