二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ヴァイスシュヴァルツ・NEXT/STAGE ( No.78 )
日時: 2016/06/12 22:28
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: zSZyy9Vi)

※今回は紆余曲折あってgdgdになってしまい、2話分をまとめて投稿します。





屋上テラスにて始まった、フロニャルドを賭けたヴァイスシュヴァルツ。リラックスしている翠樹に対し、李里香の手は震えていた。

(このファイトに負ければフロニャルドはあいつらに食い潰される……!この戦い、何が何でも負けられない……!)

今彼女の手札にレベル0は無い。仕方なく今使う事のできないカードは控え室に置き、新たに引きなおす。
そして、李里香の先攻第1ターン。

「“突然の襲撃”なのはを前列右、“ジェノワーズ”ベールを後列左にコール!そのままダイレクトアタックよ!」

トリガーアクションで『空海での決闘』を引き当てる。ダイレクトアタックと合わせて合計4ダメージを与え、ターンを終了。
続く翠樹のターンに移る。

「ドロー。クロック&2ドロー。ウルフマン・ランサーを前列左、サーバント・サーベントを前列中央にコール!」

翠樹の場に、騎士槍を振り回す狼のプレダティオル兵と、蛇の身体にそのまま爬虫類のような腕を取り付け、ローブを着た蛇が召喚される。

「サーペントの効果。相手の控え室のクライマックス以外のカード1枚の下に戻し、自分のデッキの上1枚をストックへ。対象はそれだ」

対象カード:『“好戦的”ガウル』

「クライマックス、『勇者降臨』を発動!全てのキャラにパワー+1千とソウル+1。サーペント、ウルフマン・ランサー!アタックだ!」

「……っ!きゃあああああああ!!」

「赤星!」

それぞれが長い胴体を生かした体当たりと、騎士槍をまっすぐ構えてからの突進が炸裂。その衝撃の余り、耐え切れなくなった李里香が吹っ飛ばされる。
その衝撃でテラスから落ちそうになった時、カードから出たレオが李里香の手首を握り、テラスの外——空中に放り出される事を免れた。

「あ、ありがとレオ様……」

「気をつけろ。ここはヴァイスシュヴァルツ世界。人間界でのファイトとは違い、ワシらは本来の力でバトルしている。下手に強烈な攻撃を受ければただでは済まぬぞ!」

レオからの声に李里香は今ヴァイスシュヴァルツ世界にいることを思い出した。そして人間界とは違い文字通り命懸けとも取れるバトルをしている事を思い知らされる。
ともかく今のアタックはサーペントのトリガーアクションでソウルトリガーを引き当て、ダメージ7。クライマックスを引けずレベル1となってしまった。

「もうレベル1……!?」

「展開が速すぎる……!」

「どうしたんだ?もう少し本気を出さなければ負けてしまうぞ?」

序盤からお互い攻撃重視の展開となったファイト。翠樹はこの展開に余裕が見えており、李里香も言葉を詰まらせた。


Re: ヴァイスシュヴァルツ・NEXT/STAGE ( No.79 )
日時: 2016/06/12 21:22
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: zSZyy9Vi)


数ターン後。フィールド状況。




李里香 レベル2(緑及び赤) クロック2 ストック4 手札3 思い出2

翠樹 レベル1(赤)クロック6 ストック4 手札4



“突貫”ザフィーラ 仲良し四人組

“鉄槌の騎士”ヴィータ ※“好戦的”ガウル ※“エクセリオンバスター”なのは





なし ※サーベルエッジ・タイガー ※ ハンター・レオパルド

なし ユニ・プリースト



※1“好戦的”ガウルの現パワー 8千5百&手札アンコール持ち。

※2“エクセリオンバスター”なのはの現パワー1万5百&手札アンコール持ち。


※1サーベルエッジ・タイガーの現パワー6千5百。

※2ハンター・レオパルドの現パワー7千


序盤から翠樹が押していく展開になったファイト。2つの作品と言う不利な状況で戦っているにも拘らず負けてたまるかと言わんばかりの意地と引きの強さでなんとか必死に喰らいついてきた。

「分が悪いな……」

レオが表情を曇らせながら呟く。今彼女の手札は、手札事故寸前と言っても良い状況だ。彼女の後ろで待機しているシュテルも、見ただけでは解らないが、表情が晴れている、とは言え無かった。

(無理もありません。私達リリカルなのはシリーズのメインの特徴は《魔法》。対してレオ様達DOGDAYSシリーズの特徴は《動物》と《勇者》。全く効果がかみ合わいません。いわば、両足に足枷を繋いだ状態で二人三脚をさせている状態……!)

つまり、お互いの特徴がお互いの足を引っ張り合っていると言う事。それだけでなく、李里香は経験の無い三色デッキで挑んでいるのだ。バランスがガタガタであり、戦術を一歩間違えると滅多打ちにされると言う大きなリスクを抱えているのだ。それに対し、翠樹は特徴を《動物》のみに抑えた赤単色デッキ。シナジーは十分であり、李里香が急ごしらえで用意したデッキとの相性は最悪である。

「全く、依然打ち負かした相手だからって舐めていたのかい?」

「ぅぐっ……」

「そんなシナジーの無い紙束で、僕をレベル1にまでさせた事が逆に驚きだよ。これフロニャルドを賭けた戦いだってのを忘れてるのかい?」

「ぅ……うっさいわね!そっちのターンでしょ!とっとと始めなさいよ!」

言い返せない事実に半分逆ギレする。いや、言い返せないのも事実だが。

「まあ折角だ。この僕のコンボを見せてから消えるが良い!ドロー!クロック&2ドロー!これにより、僕はレベル2へ。更に空いた後列にレッドムーン・ビーストテイマーをコール!」

「出陣か。覚悟するが良い獣共!」

マーカーを一つ蓄え、鞭を手にしたレッドムーンが空いた後列エリアに現れる。

「とうとう親玉が来たね……!」

「私は登場した時、デッキからイベントカードを1枚手札に加えられる。無論選ぶのは……」

「『狂気満る紅き月(バーサーク・レッドムーン)』!だがこれはレベル3。使うにはあとレベル1足りない」

「なんだ。次レベルアップするためにそれを手札に加えただけ……」

「そんな訳無いだろう!イベントアクション、『紅き血の代償』!レベルアップするまで山札のカードをクロックに置き、パワーをその数×1千上昇させる!」

「自分から無理矢理レベル3に!?」


手札(翠樹)4>5>6>5>6>5


翠樹 レベル3にアップ。


サーベルエッジ 6千5百>1万3千5百

レオパルド・ハンター 7千>1万4千


「ミルヒオーレ・F・ビスコッティを前列左にコール!更にレッドムーンはイベントのコストを払う際、マーカー1つを代用する事が出来る。マーカー1枚をコストにイベントアクション、『次元両断剣フェンリル』!」


手札(翠樹)5>3

ストック 4>2


イベントアクションを発動した途端、ミルヒの目の前に禍々しくも雄々しい雰囲気を纏った宝剣が現れる。そしてそれが、突然動き出しミルヒを貫いた。

「ミルヒ!——貴様ああああああ!!!」

「おいおい勘違いしないでくれたまえ。何も殺す必要なんてない。これはちょっとした能力だ。特徴に《動物》を含むカードを控え室に置く事で、デッキ、手札、控え室から『時空断つ剣士フェンリル』か『魔剣士ミルヒ』を呼ぶカードなのさ!折角だ。こちらでトドメを刺してやろう!」

そう説明している間にも、場に登場したミルヒの異変は治まるどころか、宝剣から出た瘴気がミルヒを包み込み、そして消滅する。次の瞬間、ミルヒのいたフィールドに時空が引き裂かれ、そこからギラリと光る獣のような目がこちらを睨む。

「未来を断つ魔剣の力!希望喰らう獣の力!今ひとつとなり、災厄呼ぶ力よ覚醒せよ!!魔剣士ミルヒ、降臨!」

その裂け目から、瘴気を纏った何かがフィールドに降り立つ。瘴気を纏ったそれは、双眸を光らせた瞬間に纏っていた正気を振り払う。そこにいたのは、赤と黒で彩られた戦装束を纏ったミルヒだった。

「ミルヒ……!」

「最高のシチュエーションじゃないか!助けようとしていたミルヒによって、君らが討ち倒されるなんてさ!」

「コイツ、マジで最低……!」

「まだ終わらんさ!レッドムーンの応援効果でパワー+1千5百。そして、残ったストックを全て使いイベントアクション!『狂気満つる紅き月』!」

発動をした途端、フロニャルド上空に血のような紅い月が浮かび上がる。大空に現れたそれから紅い光が降り注ぐ。


Re: ヴァイスシュヴァルツ・NEXT/STAGE ( No.81 )
日時: 2016/06/12 22:06
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: zSZyy9Vi)



パスティヤージュ。

「何あれ?紅い月?」

シンクのいる所でも、その紅い月が照らし出していた。しかし、その時だった。

「うぅ……がぁ……!」

「クー様?」

「あ、頭が……!痛い……のじゃ……!」

突然光を浴びた途端頭を抱えて苦しみだすクーベル。いや、彼女だけではない。周りを見ると、パスティヤージュの住人もクーベル同様に苦しんでいた。
それを見たシンクは咄嗟に上空の紅い月を見て、そしてクーベル達を見る。

「まさか……!あの光を浴びちゃダメだ!みんな、建物でも何でもいいから光を遮る物の下に隠れるんだ!早く!」

張り裂けんばかりの大声に、自分はクーベルや乗せられるだけの人数をトルネイダーに乗せて城の中に避難させる。それと同時に、パスティヤージュ人も次々と建物の中や木の陰に避難していく。自分は粗方避難をし終えると、残った人達の避難を急ぐ。

『シンク、そちらは大丈夫ですか!?』

「アデル様!?それが、紅い月が出た途端クー様達が苦しみだして……とにかく建物でも何でもいいから光の遮る所に避難させて!」

『解りました!』

すぐにアデルたちにも避難させるよう連絡を入れたシンクは、紅い光が一層強いプレダティオル城を見つめた。

「李里香達、大丈夫なのか……?」





ビスコッティ城下町。


「皆……!早く建物の中へ…急げ!」

紅き月の光は大陸中央部の三国連盟の領土全ての住民に影響していた。バナードとエクレの部隊、ビスコッティ住人さえも紅き光に苦しまれ、動ける内に建物の中に避難する。
バナードの指示で何とか被害は軽く抑えられた物の、異変は住民達だけではなかった。

「ガルルルルルル……!」

「なんだ?」

紅き光を浴びたプレダティオル軍のウルフマン・ランサーが急に唸り声を上げ、目に紅い光を宿す。そして、手にしていた剣を納屋の壁に向けて振り回す。するとその納屋の壁がまるでハンマーか何かで破壊されたように大きな風穴を開ける。

「!?」

「あいつ等、あんな力を持ってたのか!?」

「いや、あの紅い光があいつらの力を引き出しているんだ!」

このままでは強化されたプレダティオル兵に建物を残らず破壊されてしまう。しかし、下手に出るとあの紅い月の影響で自分達もああなる危険がある……!
その時、二閃の光が一人のプレダティオル兵の肩に直撃。ばたりと倒れると同時にその前方に2人分の影が現れた。それは笠を頭に被ったユキカゼだった。

「ユキ、来てくれたのか!」

「どうやらあの光、奴らの力を引き出しているようでござる!」

「ああ。今解った所だ。奴ら、このままじゃ街を破壊しつくす……!総員、光を浴びないように気をつけながら奴らを城の方におびき寄せろ!城内に入れば多少は戦いやすくなるはずだ!」

バナードの指示ですぐさまプレダティオル兵をビスコッティ城へとおびき寄せる兵士達。
あの紅い月が出てる以上、大陸中央の混乱は去らない。一刻も早く決着を付けてくれと、エクレは心中でそう願った。





プレダティオル城:屋外テラス。


「紅い、月…?」

「何か、見てるだけで気分が悪くなってくる……」

「この紅い月が出ている間、僕のターン中特徴に《動物》を持つキャラ全てのパワー+2千する。最も、ここではカードの力が現実の物となっているから外にも影響しているがね」

「外?——まさか!」

思わず外を見やる。良く見えないが、外にいるのはプレダティオル人しかいない。

「おやおや、フロニャルド人はお気に召さなかったようだね」

「やっぱり外にも影響していたのね!早く倒さないと……!」

「倒す?バカを言わないで欲しい!さあ連続アタックだ!」

その次の瞬間、ハンター・レオパルドは身の丈を誇る大弓を引き絞り、巨大な矢を放つ。

「手札のキャラをコストに、エクセリオンモードをアンコール!」

李里香が掲げ立て札が光の塵となって消える。そのカードが場にいるなのはの目の前に現れ、それが壁代わりに矢を防ぐ。
続け様にサーベルエッジが手にした2本のサーベルを手にガウルに襲い掛かるも、なのはと同じ様に手札のキャラカードをコストに攻撃を防ぐ。しかし、残った手札はイベントカード。ミルヒの斬撃を喰らった黒子トークンは真っ二つに切り裂かれ、消滅した。
幸いにもダメージが成立したのはミルヒの攻撃のみ。しかも、相手は自らレベル3となった。ひょっとしたら逆転のチャンスもありえるかもしれない……!


李里香クロック 2>5 手札 3>1

翠樹ストック 0>3


逆転の望みが出たと思った瞬間、2体のプレダティオル兵が頭を抱えて苦しみだし、断末魔のような雄叫びを上げると同時に消滅した。

「なんだ?消滅した?」

「紅き月は狂気を持つ。ターン終了時に相手側にリバース状態のキャラが存在する時、同じ数だけ自分のキャラをリバース状態にしなければならない。だが、ミルヒはストック3を払ってアンコールだ。そうそう、言い忘れていたがレッドムーンは効果の対象に選ばれない。効果による退場は考えないほうが良い」

「そっか。もし前列全部リバース状態になっても、ルールによるアンコールで1人は場に残せる事になるんだ」

「感心してないでよ!ドロー、クロック&2ドロー!……くっ!」


李里香手札 1>2>4


感心するなのはにツッコミを入れる李里香が手札を引く。しかし、その手札に逆転のカードは無い。
しかし、相手はあと7ダメージを与えれば勝てる。今は無理に場を増やすより、クロック差を生かすしかない。

「後から使うカードの為に、ストックを増やしておかないと……空いた前列にをコール。効果は発動しない。ザフィーラの能力発動。前列の2人にアンコールを追加。アタックフェイズ!なのはちゃん、ガウ様、お願い!」

「任せとけオラァ!」

「このターンで倒せないのは残念だけど……!」

すかさず2連続のダイレクトアタックが放たれる。最初のガウルの爪撃でトリガーアクションと合計でダメージ4を与えるが、なのはの砲撃魔法は最初の1枚でキャンセルされてしまった。

「ナナミごめん。こんな時に使っちゃって……」

「気にしないで!けど、絶対に勝ってよ!」

紅き月のせいでプレダティオル兵が強化されてる中呼ぶのは申し訳ないが、今はアタックさせるしかない。パワーで到底勝ち目がない上、フロントアタックをしても無駄な犠牲が増えるだけ。ここはサイドアタックでストックを増やしてターンエンド。


李里香ストック 3>6



李里香 レベル2(緑及び赤) クロック5 ストック6 手札3 思い出2

翠樹 レベル3(赤)クロック4 ストック0 手札3


Re: ヴァイスシュヴァルツ・NEXT/STAGE ( No.82 )
日時: 2016/06/12 22:07
名前: 八雲(元BFD) ◆FvibAYZ8Tw (ID: zSZyy9Vi)


「それでおしまいか?なら、とっととトドメを刺してやろう!」

すかさずトドメを刺そうと手札を引き、中央にミルヒを移動させ、左右前列にサーバント・サーペントをコールし、効果でストックを増やす。

「更に、クライマックスに『次元裁断!ブレイディング・ディボールト!』!1枚引き、全てのキャラにパワー+1千&ソウル+1!」


右サーバント・サーペント 3千>4千 ソウル1>2

左サーバント・サーペント 2千5百>3千5百 ソウル1>2

魔剣士ミルヒ 1万4千>1万5千 ソウル 2>3


「ストック2を払い、能力発動!」

「……」

「おい」

「……!」

能力を発動したが、ミルヒは聞いていなかったように動かない。レッドムーンが右手を何かを握る様に動かすと、胸を押さえながら我に返り、攻撃に移る。
数歩走った所でミルヒが突如姿を消す。突然消えたミルヒに彼女を探すなのはだったが、次の瞬間李里香が何かに斬られたようなアタックを受けた。

「李里香!?」

「な、何が起きた!?」

突然の事態に斬られた李里香だけでなく、レオやなのは、シュテルやガウルやナナミまでもが驚いた。
それを滑稽と言わんばかりに、翠樹が語る。

「彼女はクライマックスを発動すると、2つの能力のどちらかを得られる。今発動したのは正面のキャラを無視してダイレクトアタックを決められる効果だ」

「正面のキャラを無視してダイレクトアタック!?それじゃ防ぎようが無いでしょ!?」

思わぬ効果に仰天の声を上げるナナミ。幸いトリガーはなかったが、ダメージ4を受ける。


李里香、レベル3にアップ。 レベル置き場に置いたカード:“サポート役”シャマル
現在クロック2。


「サーペント共も続け!」

続けて2体のサーペントが李里香に鋭利な牙を突き立てる。その直後になのはとナナミに倒されるも、ダメージの成立が残っている。

「ダメージチェック、まずは左側……トリガーなし、ダメージ成立……」

「まずい、このままじゃ……!」

続けて右側。1枚目2枚目共にクライマックスは無い。そして、最後の1枚。これで外したら、フロニャルドは翠樹らの物になってしまう。

(お願い、来て……!ここで負けたらフロニャルドが……!)

李里香だけでなく、なのは、ガウル、レオ、シュテル、ナナミも必死にクライマックスが着てくれと願う。そして運命の1枚は……!













「!!クライマックス『空海の決闘』!」

「何ッ!?」

この土壇場で何とかキャンセルして生き残れた。翠樹もこれには予想していなかったらしく、思わず声を上げる。

「だ、だが!もう君に逆転の手口は無い!この陣形を突破する手段なんて無い!ターンエンドだ!」


「だ、だが!もう君に逆転の手口は無い!この陣形を突破する手段なんて無い!ターンエンドだ!」

完全に手を尽くした翠樹が苦し紛れにターンエンドする。何とか首の皮1枚繋がった李里香が山札からドローしようとした時、隣にいたミルヒ達の異変に気付く。

「ねぇ、姫様。正直に答えてくれる?本当にこのままでいいと思ってるの?」

「…?」

「何かさ、貴方を見てると必死に自分を押し殺してる気がしてるの」

どうにも納得してないように李里香が尋ねる。そこにナナミも口元に手を当てて同意する。

「確かに。もうプレダティオルがフロニャルドを守ってやるなんて嘘だって解ったから、もうこいつらの言いなりになる必要は無いよね?」

「……だが」

「え?」

少しの沈黙の後、ミルヒが重々しく口を開く。

「だが、もし人間がここに攻め入ったらどうする?人間に何もかもを奪われ、フロニャルドは衰退する……勇者や他の皆が消えてしまう……そんな悪夢、私は数え切れないほど見てきた……」

噛み締めるように零れたミルヒの本音を聞き、レオもここでようやく理解した。

「なるほど。それがお前がこいつらに縋る理由か」

「レオ様?」

「『本当に起こるかもしれない』。あの映像を見た後、ミルヒは恐怖心に駆られて戻るに戻れなっている。ビスコッティの勇者やタレミミ、チビ学士が自分の前から消えるのを畏れているのだ」

「そんな……!」

レオから下された言葉に李里香が悲痛な声を上げる。そんな中レオは『だが…』と言葉を続ける。

「だが李里香、お前ならミルヒを救えるかもしれない。いや頼む、ミルヒを救ってくれ……!」

「ぅぐっ!あああぁぁぁーーー!!!」

レオからの返答をより早く、絹を裂くようなミルヒの悲鳴。驚いてその方向を見ると、ミルヒが胸を抑えて苦しんでいた。

「ミルヒ!?」

「この役立たずが!勝手にべらべら喋りおって!貴様はもう我らの道具でしかないのを忘れたのか!」

「がっ…!あぁ……!」

どうやら心臓の魔物を操作して締め付けているらしい。レッドムーンも怒りを露に拳を握りしめ、今にも心臓を握りつぶせと命令を下しそうな形相だ。
しかし、それでもミルヒは激痛に耐えて李里香に問うように尋ねる。










「…お願い……もし、本当に……救えるのなら……助けて……!」

「……助けるよ。もうこの城に来てから、絶対助けるって決めたから!」





後編へ…。