二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 料理対決・再び その一 ( No.1 )
- 日時: 2014/08/30 20:46
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
夏休みのある日。
本日、つぎドカ!組、ペルソナ組、司組の学生メンバーは学園寮のリビングスペースに集まり夏休みの課題を片付けつつ、氷海が持ち込んだ唐揚げをみんなでつまんでいた。
「…うん、美味いな。氷海も料理上手くなったじゃねぇか。」
「れ、烈やセシルの援助のお陰よ。それに、私一人じゃまだ材料をうまく切れないし…。」
完二に誉められて照れる氷海の手には、多くの絆創膏があった。どうやら切ったらしい。
「うーん、でも、絆創膏は減ってきてるから、上達してると思うよ?」
「氷海はただ不器用を直しゃあ別に上手いんだがな…。」
「うぅぅ…もっと精進するわ。」
鈴花と完二の言葉にそう、申し訳なさそうに言う氷海だが、意欲に燃えていたりする。
「…今なら、料理対決をしたら、そこそこ結果を残せそうね。」
「ちょっと待て氷海、今ここでそれ言うと」
「じゃあ、またやる!?」
ポツリとこぼしただけの氷海の言葉。だがそれをしっかりと聞き取ったりせが乗り気で訪ねた。
「あの時理乃センパイ達いなかったし、みんなでもっかい料理対決を」
「パステルくんのお仕置き。」
「ヒィッ!?」
が、負けじと烈がりせの横でポソッ、と呟くと、りせはアイドルとしてはあげてはいけない声で竦み上がった。
隣で雪子も同様に怯えている。
「…りせ、パステルくんの逆鱗に触れたくなけりゃ料理対決しようだなんて」
このまま危険な料理対決は回避できる。そう、思ったが。
「あら、面白そうではありませんか、料理対決。皆さんでやったらとても楽しそうですよ?」
「」
…理乃が何故か乗り気だった。
「おい理乃、何ワクワクしてんだよ。どう考えたってこのメンツじゃ痛い目見るの確定だろうが。お前林間学校の記憶どこやった。」
「…あ。」
由梨に言われて思い出したのか、理乃は短く呟いた。
「いいじゃんいいじゃん! やろうよ面白そうだし!」
「お前が一番問題なんだよこの馬鹿七海!」
完全に乗り気な七海に、由梨は盛大なツッコミを入れた。
「今度は一撃で仕留める。」
「私だって負けないよー!」
「雪子、アンタパステルくんのオシオキ覚えてないの?」
「久慈川さん、貴方もですよ。」
意欲を見せる雪子とりせにも、千枝と直斗の容赦ないツッコミが入った。
「…そうと決まれば早速!」
「聞けよりせ!」
が、りせはそのツッコミを無視し、携帯電話を取り出し、誰かにかけた。おい、前回もあったぞこんな事。
「もしもし昴さ」
『由梨に代われ。』
昴に繋がると同時にそう言われたりせは、由梨に携帯を渡した。
「由梨センパイ、昴さんが代わってって。」
「(おいまさか…。)代わったけど…?」
『なぁ、アイツから嫌な予感がする文面が来てんだけど。今、鏡の携帯で写メ撮って理乃の携帯に送ったから見ろ。』
由梨はそう言われて、携帯を見て顔を真っ青にしている理乃の後ろから携帯電話を覗き込んだ。
その写メには…。
—…またあの悪夢、ううん、それ以上のものが再来しそうだけど、どうする?
と書かれた文面が。どうやらりせから連絡が行く前に創造者から伝わっており、真っ先に信頼出来、かつ事情を知る由梨に代わるよう言ったようだ。
『…なぁ、誰がフラグ立てた? マジでボコボコにしてやりたいんだけど。』
「(…前回、相当酷い目に遭ったのか…。)うん、まずは落ち着け昴さん。取り合えず、察してる通りの出来事が起ころうとしてるんだが。しかも多分回避不可能。」
『嫌だぞまた死にかけるの! …はぁ…。』
「アタシから全員説得したいけど、多分無理。」
半場諦めムードの由梨に、昴も腹を括ったようだ。盛大な溜息を吐いてから、
『烈と陽介、それから完二を今から神殿に寄越せ。ジョーカーと俺と五人で料理を決める。』
「…まともな男子集めて決めるってか。わかった。三人には伝える。」
『頼む。』
それを最後に、昴との通話が切れた。
- 料理対決・再び その二 ( No.2 )
- 日時: 2014/08/30 20:47
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
「…烈、完二、陽介。今から神殿寄れって。」
「完全にやる気かよあの人。」
「なぁ、烈。お前こんな状況で回避する事出来ると思うか?」
「…。」
烈は由梨の言葉で辺りを見回す。周りの女子達は—七海とりせと雪子のみだが—やる気十分であり、何か言ったらスキル使われて殺される、そんな気さえした。
「ごめん、俺も今無理だと思った。」
「だろ? 昴さんも早い段階で無理って悟ってた。」
死んだ目を浮かべる男子一同と由梨。もう諦めお通夜ムードだ。
諦めた瞬間、疑問が風雅に生まれる。
「だけど、今度は誰を審査員にするの? 理乃先輩達が加わるとなると、審査員足りないよ?」
そう、審査員の問題だ。前回は丁度一人一つは食べられ、昴とパステルくん、にゃぐわが全員分食べられる程余っていた。が、今回理乃達が加わるとなると、誰も全員分食べられないのだ。
「それ考えてなかった。うーん…。」
りせは頭を捻って考える。そして、
「あ、そだ。リリィちゃん達は?」
「おい待て! リリィまで巻き込むのかよ!」
「面白そう。審査員、やりたい。」
「ほら、リリィもやりたいって…って、はぁっ!?」
烈は妹のように思っているリリィにあの物体Xを食べさせたくなく、りせに向かって反論するが、後ろから聞こえた声に驚いて思わずそちらを見た。
そこには、擬人化したリリィが、袋を手に持ちながら立っていた。配達の途中だろうか。
「おいリリィ、いつの間に…。つか、何でここにいるんだよ!」
「由梨さんに頼まれていたみりん、持ってきた。」
「配達だったのか…。」
「あぁ、サンキューな、リリィ。代金なら烈に渡しといたから後で受け取ってくれ。…あと、正気か? リリィ。審査員やりたいだなんて…。」
「理乃さんと由梨さんのご飯、食べてみたかった。だから、やりたい。美味しいご飯、食べられるから。」
どうやら本当に興味を持ったが故の行動らしい。好奇心・食欲旺盛なリリィらしいが、彼女は知らない。前回の、あの地獄を。
「…やっちゃ、だめ? 烈君…。」
「(ゲッ、ウルウル目攻撃…!)わかったわかった。他の奴等にはお前から言っていけ。それから、これ、先輩のみりん代。」
「うん、わかった。」
リリィはみりん代を受けとると、そのままパタパタと走り去っていった。
「…烈、リリィに任せるなんて卑怯じゃない?」
「あの目には誰も勝てないわ…。」
「ローズ、大丈夫かな…?」
それぞれの居候の身を案じる風雅達だが、自分も烈の立場だったらあのリリィの目に見つめられてしまっては頷いてしまうだろうと思っていた。
「とにかく、俺達は今から神殿行ってくるよ。」
「昴さんに言っといて。『誰でも作れる料理でお願い。』って。」
「それ多分本人が一番分かってる。じゃあ、またな。」
鈴花とのやり取りの後、烈、陽介、完二の、まともな部類で料理がそこそこ出来る三人は神殿へと向かっていった。
「…なぁ、ふと疑問に思ったんだが…。」
「どしたの? 鳴上君。」
「何で俺の名前が上がらなかったんだ?」
悠も一応料理上手の部類に入る人間だが、名前が上がらなかった事を少々不満げに訊ねた。
「まともじゃないからだろ。」
「まともじゃないからでしょ。」
「まともではないからかと。」
「ツッコミ持ち三人で同じ言葉を返さないでくれ!」
が、その理由は由梨、千枝、直斗の言った通りだったりする。
哀れ悠はがっくりと膝をついてしまった。
「アタシ達は勉強してようぜ。理乃、この式教えてくれ。」
「これは…。」
その後、再び宿題を片付ける作業に取り掛かったとか。
- 料理対決・再び その三 ( No.3 )
- 日時: 2014/08/30 20:52
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
神殿へとやって来た烈達は、早速昴にリビングへと招かれた。
ジョーカーが出してくれたお茶を飲みつつ、本題に入る。そう、回避できなかったあの料理対決のお題だ。
「鈴花から頼まれた。誰でも作れる料理でお願いってな。」
「大丈夫だ。さっきから俺とジョーカーでずっと話し込んでいた。何が誰でも作れる料理だろうかってな。」
鈴花からの伝言を伝えるまでもなく、昴もそれを踏まえて考えていたのだ。
もうあんな悲劇(主にりせと牡丹のせい)を生み出したくないが故に、だ。
「下手な料理にすれば、改悪される恐れがあるからな。」
「マロンポタージュも無難に見えたけど、アイツらが絡むと無難じゃなかったからな。…さて、どうするか。」
全員、リビングの机に腕を乗せ、頭を捻る。
端から見ると重役会議にしか見えないのは気のせいではないだろうが、話し合っている内容が『料理対決のお題』と、正直聞けばどうでも良い議題だったりするので何だかな…と言った気分になる。
「三人は案とかあるか?」
「簡単ねぇ…。」
「改めて言われると、難しいッスね…。あっ、米を炊くのはどうッスか? 炊飯器使えば楽に」
「中身得体の知れないもの入れられそうだな…。」
完二の言葉を遮るように呟かれた陽介の台詞に、完二は顔を青ざめさせてから「…そうッスね…。」と納得する。
「一番簡単そうなのは、レトルトカレーを温めるとか? ただ茹でるだけだし。」
「りせとか絶対納得しないだろ。」
「だよなー。」
「そんなの料理じゃないっ!」とか反論されるのが目に見えたのか、烈は自身が出したその案を却下した。
「…けど、そうだな、烈の着眼点は良いかも知れん。」
「どう言う事だ? ジョーカー。」
が、その着眼点はジョーカーにとってはいいヒントになったようだ。
「アレンジレシピだ。既製品、もしくはインスタント食品を使えばいいだろう。既に出来たもの、あるいはお湯を入れるだけで簡単に出来るものを使っているから、変なアレンジをしない限りは美味しいものが食べられるはずだ。アレンジの選択肢が狭い物を題材にすれば…。」
「成程。それ、いいかも知れないな。」
「…変なアレンジをした奴等は余程の奴等ってこったな。いや、何名かいるだろうけど。」
とにもかくにも、既製品をアレンジした形にする事に落ち着いたようだ。
「…となると、誰でも簡単に作れるもんとなると…。」
考えを巡らせている最中にガタンッ、と、キッチンから音が聞こえる。
程なくして、温かいラーメンを持った鏡と凪がリビングにやって来た。
「お昼のラーメンできたー♪ インスタントラーメンって茹でるだけでいいって簡単だよねー。」
「だよねー。料理が苦手なオレでもレシピ見なくても美味しいのが作れ…あれ? 烈達来てたんだ。」
客人に驚く鏡だが、その客人達はプルプルと震えながら、彼の目の前にあるラーメンを指差した。
「そうだ、いいなこれ! インスタントラーメン! 俺でも作れるし!」
「中に入ってる麺とスープを必ず使うと言う事にすれば、アレンジの選択肢がグッと減りそうだ!」
「スープは決まってるから下手な味付けは出来ねぇだろうし、アレンジ加えるとしたら具材辺りか? 失敗作なら具材を避けて麺だけ食えば…!」
「普通に作っても美味いしな。うってつけじゃないッスか!?」
「鏡、凪。いい所に来てくれた。しかもいいもの持ってきてくれたな。」
「えっ? えっ?」
何がなんだかよくわかっていない鏡と凪は、狼狽える。
「よくわかんないけどー、昴さんの役に立ったみたいだねー。」
「わーい♪」
本人達はよくわかってないようだが、昴やみんなが喜んでいるので嬉しそうだ。
「…と言ったところで残念なお知らせだ。…またあの料理対決をやる事になった。」
「」
しかし喜びから一転。明らさまに嫌そうな表情で固まる鏡達。
…余程、嫌だったのだろうな。
- 料理対決・再び その四 ( No.4 )
- 日時: 2014/08/30 20:54
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
そして翌日…。
「協議の結果、インスタントラーメンに決まりました。」
神殿に集まった全員に向け、そう宣言をする昴。
「インスタントラーメンって体に悪いよ?」
「体に悪くても命があるならいい。」
りせの発言に対し、きっぱりと男性陣+昴の声がハモった。
「絶対条件として、この袋麺の中身を絶対に使う事。自由にアレンジしていいのは具材だけだ。いいか、ぐ・ざ・い・だ・け・だ。」
「…成程な。確かにその条件なら具材だけになるか。」
「牡丹達対策にはいいけど、私達まで少し難しくなるね…。アレンジの幅が狭まるから…うーん…。」
女子全員頭を捻って考える。アレンジが具材だけとなると、少し難しいのだ。
「大丈夫だ。更に、期間を一週間空ける。その間にどんなものを作るか決めてくれ。質問があれば受け付ける。」
「ねぇ、昴さん。ラーメン以外も使っていい? 冷やし中華とか。」
真っ先に反応したのは鈴花だった。手を挙げ、昴に訊ねる。
「ああ、そっちの方が作りやすいならそれでいい。但し、煮るだけで出来る袋麺にする事。更にさっき言った条件を守る事。それが約束出来るなら、他の麺類でも許可する。」
「よかったー! 冷やし中華で研究中のレシピがあるんだ! 私、それにしよーっと!」
「おっ、そりゃ楽しみだ! 他にはあるか?」
女子達は誰も手を挙げない。どうやらこれ以上はないようだ。
「よし、じゃあ次に審査員だが…。一人一品制度は前回と同じで行くとして…。」
「昴さん、今度もボク、全部食べる!」
「にゃぐー!」
『にゃぐわも全部食べるそうだ。神一人で逝かせはせんと言っている。(…にゃぐわ、死ぬの確定なのか…。)』
再び自分も食べる宣言をした二匹に、昴は思わず心が震え、「ありがとな。」と照れ臭そうに言った。
が、
「私も…全部、食べたい。」
「!?」
リリィのこの宣言に、烈とジョーカーの表情が青ざめた。
「だっ、駄目だリリィ! 早まるな!」
「ジョーカー様、何で止めるの…? 私、全部、食べたい。」
(ウルウル目攻撃…! だが、ここで負けたらリリィが死ぬっ! 牡丹の毒にかかって絶対に死ぬっ! それだけは避けなければならないっ!)
ジョーカーは以前、牡丹の作った毒(本人曰くシチュー)を食らって死にかけた覚えがある。リリィにあの毒を食べさせたくない一心で心を鬼にさせ、ジョーカーはリリィの視線に耐えた。
「駄目だ! あんな毒をお前が食うくらいなら、我が全部食らおう!」
そして、その宣言をした。
「ジョーカー、お前漢だぜ…。」
「リリィの視線に耐えるなんて…! 俺、マジで尊敬するよ…!」
「ジョーカー様…。なんたる家族愛をお持ちで…!」
ジョーカーの男らしい宣言に、完二と烈は尊敬し、フランシスは泣いている。
「と、言う訳だ。我も全て食おう。ああ、あの毒でも何でも全部食ってやる!」
「ジョーカー、嬉しいが自棄起こすな…。軽いキャラ崩壊起きてるぞ…。」
「…はっ! む、むぅ…すまない…。」
男らしい通り越して自棄になっているジョーカーは、昴に宥められて大人しくなった。
「リリィも俺達と同じように一品な。」
「…全部、食べたかった…。」
烈に言われ、リリィは納得のいかない表情をしつつも、承諾する。
「じゃあ、前回同様、俺とパステルくん、にゃぐわとジョーカーが全て食べて、後は一人一品。評価の付け方も前回と同じで…。」
昴はとある事柄が書かれた紙を、机に置いた。
そこには、
五、
メニューに拘らず、遊び(アレンジ)を加えており、なおかつ美味しい。
四、
メニューに依りすぎな所はあるが、程よく遊びを加えており、美味しい。
三、
メニュー通りの品。遊びなどはないが、メニュー通りなので普通に美味しい。
二、
メニューに沿ったのだろうが、ミスが目立ちすぎて美味しくない。が、まだ改善の余地がある不味さ。
一、
救いのない不味さ。キッチンに立たせたら死ぬ。
前回同様、そう書かれていた。
「採点基準も前回と一緒か。」
「ああ。ちなみに、籤で順番を決めて同じ順番の女子の料理を食うのも一緒だ。籤は当日な。」
「大体前回と一緒なんだな。」
「だねー。と言うわけでー。」
突然、男子は昴に向き直る。突然向き直られた昴は思わず驚いた。
「りせと牡丹の料理に当たりませんようにっ!!」
「何で全部食う俺に向かって神頼みするんだよっ!」
「あと男子、プラス七海の料理に当たらないよう祈っとけ。こいつのも死ぬから。」
「酷くないこの破壊魔!」
「どっちがだ!」
そこからは仲の悪い由梨と七海の言い合いが始まる。
こっそりとだが、男子は昴に願う。七海の料理にも当たりませんように。と。
あと、雪子もまともではない料理を作るのだが名前が上がらなかった理由は、彼女の場合は味がないだけだから別にいいのだそうな。
- 料理対決・再び その五 ( No.5 )
- 日時: 2014/08/30 20:55
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
一週間後、神殿のリビング…。
「お前ら、持ってきたか?」
「…。」
全員、黙って健康保険証と胃薬を出す。
「もう用意周到だね…。」
「氷海の親父さん、すみません。非番なのに…。」
「いいんだよ。氷海から聞いた時には『あ、これ行かなきゃまずいな。』って悟っていたからね。なぁ、みんな?」
『ウッス!』
氷海の父親と食あたり専門チームにも協力を取り付け、その時を待つ昴達。
そこに、ドアチャイムが鳴った。
「ん? 誰だ? はーい。」
昴が玄関まで行き、扉を開けるとそこには、風花とアイギスがいた。
「こんにちは、昴さん。」
「遊びに来たであります。」
「おー、風花にアイギス。船以来だな。元気してたか? 立て込んでるけど、まぁ、入ってくれ。」
「お邪魔します。」
客人を家に上げ、陽介を呼び出してアイギスを先にリビングへと向かわせる。その際、今起ころうとしている事を説明する事をお願いした。
アイギスを先に行かせたその理由は…風花が何かを話したそうにしていたからだ。
「風花…その、遊びに来たっつーのは名目だろ…?」
「はい…。スバルさんから、その、このメッセージを受け取って…。」
風花は創世手帳を取りだし、昴に渡した。
—風花ちゃん、昴が死にそうだから救援に行ったげて。
パラパラと開いていくと、そのメッセージを見つける。きっと風花が言っていたのはこれだろう。
「…事情も、伺いました。私に出来る事はあまりないと思うけど…。」
「…じゃあ、食べた奴等に何かあったら救援頼む。あと、順番わからないように別室にいてもらって…連絡係としていてもらっていいか? ほら、どう食べてほしいかとかあるだろうし。アイギスには審査部屋にいてもらって救援頼むか。」
「わかりました。…私が言えた義理じゃないけど…その、死なないといいですね…。」
「死ぬのはほぼ確定だがな。」
目を死なせた昴に、風花は何も言えなかった。
- 料理対決・再び その六 ( No.6 )
- 日時: 2014/08/30 20:57
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
風花をリビングに送り届け、審査員達に籤を引かせている間、昴は女子のいる調理場にやって来た。
「悪い、言い忘れた。まだ鍋に麺が入っていない状態でよかった。一人分を五つに分ける事と、直前調理をお願いしたいんだけど…。」
「あぁ、麺が伸びる事の危惧ですか?」
昴が何を言いたいのか分かったのか、理乃はすかさず訊ね返した。
「ああ。流石に後の方が伸びるからそれじゃ公平な審査にならないだろ。」
「ふふっ、それならご心配要りません。私も同じ事を考え付いていましたから。」
「何か案があるのか? 理乃。」
「はい。出来上がった後に…。」
理乃はポーチを漁り、中から懐中時計を取り出した。数は丁度十二個。
「この私特製“アワーグラスβ(ベータ)”で出来上がった物の時間を止めて、いつでも出来立てを味わえるようにすれば問題ありません。ちなみにこれなら、一度時間を止めると、頭の…時間を調節する所を押さない限り止まり続けます。」
「お前、テイルズシリーズでお馴染みのアワーグラスを魔改造するなし。ほぼ永続って何てチートアイテム作ってんだよ。」
「これなら軽くコンボカンストできますよ? 消耗品なのがたまに傷ですが、頑張って永続的に使用出来るように改良しているところです。」
「いらねーよそんなヌルゲーアイテム!!」
ちなみに本来のアワーグラスは、一定時間敵の動きを止めるアイテムであるが、理乃はそれを永続仕様にした。おいんなもん作んな。しかも消耗品じゃなくしようとするな。
「…とにかく、ここではそれを使わせてもらうか。後は作っておいた食品用エレベーターにランプがついたら入れてもらうのは変わらない。審査員の奴等に何か注文あったら風花のいる部屋にポスト作っといたから、紙に注文メモして伝えてもらえ。じゃあ、ほら、籤。」
昴は箱を置くと、そのまま去っていった。
「…また、文句なしで一斉に引かない?」
千枝の提案に、全員頷く。そして箱の中に手を入れ、中にあった紙を掴んだ。
「せーのっ!」
全員、手を引っこ抜いた。その手に、運命の紙を握って。
■
一方、審査員組は風花から貰ったお饅頭(既製品)を食べていた。そこに、昴が帰ってくる。
「ただいまー。順番決めたか?」
「ああ。こうなった。」
烈が順番をメモした昴に紙を渡し、昴はそれを見た。
それによると、
01:ローズ
02:鏡
03:完二
04:リリィ
05:悠
06:風雅
07:凪
08:セシル
09:陽介
10:クマ
11:フランシス
12:烈
となったようだ。
「お前がトリか、烈。」
「ああ。…前回トリの風雅がアレだったから、俺若干不安なんだけど…。」
「…き、きっと大丈夫だ。そう信じよう。うん。」
昴も嫌な予感はしていたが、そう信じ込む事にした。
「そ、そうだよみんな。私も料理苦手だけど、私以上に苦手な人はきっといな」
風花が一同を励まそうとした時、とてつもない爆発音が聞こえた。
「またやっちゃった…。」
「壁に穴が開いてしまったわ…。凄い…。」
「んー、どれにしようかなー。面倒だし全部入れちゃえー!」
「ちょっとそこの馬鹿いい加減にしてっ…あーあ、鍋に入っちゃった…。」
「ちょっ、牡丹、それはっ…!」
「止めないで下さいませ、雪花! 雪子さん、これ入れたらきっとみなさん元気になりますよね?」
「うん、きっとなるよ。昴さん、誰かと夜の営」
「雪子ー、自重してねー。」
「牡丹も自重してよ。そんなの入れたらみんな死にかけるよ。」
「…。」
「直斗、ナイスだ。よく理乃の耳を塞いでくれた。」
「直斗君、反応早くなったよね…。」
壁に穴。その不吉な単語と誰かの全部入れちゃえ発言。そして牡丹の入れようとしているもの。
一同は顔を真っ青にして、同じタイミングで顔を見合わせた。
「みんな。前にも言ったかもしれないけど…。」
昴が、どこか悟りを得たような表情で、一同を見た。
「…一緒に、逝こうぜ…。」
また、審査員達の絆が強くなった…そんな気がした。
続いてしまいます。
- 料理対決・再び あとがき ( No.7 )
- 日時: 2014/08/30 21:02
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
後書き de 雑談
私
—はい、死亡フラグを立たせてしまいました。
昴
「ざけんなゴルァ!(# ゜Д゜)」
鏡
「うぅぅ…。変な料理に当たりませんよーにっ!」
風花
「ち、調理場の音声が流れたけど、私よりも嫌な音立ててたよ…?」
私
—風花ちゃんも結構苦手だもんね…。
昴
「ううぅ…。おい、俺。順番はもう把握してんだろ?」
私
—まぁ、うん。前回もそうだけど、理音の協力で12面ダイスを使って順番決めたよ。うん、ダイス神分かってらっしゃる。
昴
「何が起こった!?」
私
—一部私の望む結果になって嬉しかった。ただそれだけ。
風花
「(…誰の事だろう。)ま、まぁ、始まってしまったものは仕方ありませんよ。」
昴
「腹痛くなってきた…。」
鏡
「オレも…。」
私
—がーんば。
昴
「他人事なのがマジでムカつく。じゃあ、また次まで生きられたらなー…。」
風花
「また、お会いしましょうね。」