二次創作小説(映像)※倉庫ログ

実食 完二 ( No.164 )
日時: 2014/11/13 18:57
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: SrUKMM4y)

そして、運命の刻限がやって来た。

「…。」

二階のとある部屋にて。トップバッターに試食する事になった完二は椅子に座って昴が来るのを待っていた。

「ぼにゅ。」
「にゃぐ。」

そんな完二の緊張をほぐそうとしているのか、声をかける。

「アアッ!? だ、ダイジョブだ! んなビビってる訳じゃ…!」
『声、震えておるぞ…?』
『完二。怖いのはこの二匹も、神も一緒だ。…腹を括って、皆で食べようではないか。』
「ぐっ…! だ、だよな。あんな料理を初めて食うんだ。…昴さん達の方が怖ぇよな…。」

自分達は一度体験しているからわかる、りせ達の料理の恐怖。
だが、昴達はそれを知らない。不安なのは彼女達の方が上だろう。
それを悟った完二は、頬を叩き、気合いを入れ直した。

「いや、そんな気合い入れないでいいと思うけどな。」

その最中、昴が戻ってきたようだ。
手には“一”と書かれた紙がクリップでつけられている鍋を持っている。

「…完二、言っておくが、俺も女子の順番は知らない。全員、準備できていない状態のスタートだ。…心してかかれ。」
「ウッス!」

昴は鍋を適当な場所に置く。
そして…一度完二達を見てから、鍋の蓋を開けた。

「…。」

見た目は、割と普通。だった。
だが、赤い物が浮遊しているのを見た瞬間、普通じゃないと感じる。

「…確か、誰か怪我したよな。」
「そッスね。」
「にゃぐ。」
「ぼにゅ…。」

もう一度、全員見つめ合い、鍋へと視線を戻す。

「…食おうぜ。」
「ウッス。」
「にゃぐ。」
「ぼにゅ。」

昴は鍋から紙のカップへと中身を移し、全員に手渡した。

「んじゃ、いただきます。」
「いただくッス!」
「にゃぐー!」
「ぼにゅー!」

全員、一気に飲む。
口の中には案の定、鉄の味が広がった。
だが、

「うん、不味くはない…かな。」

味は思ったよりも普通のようだ。

「確かに、血の味はするッスけど、吐き戻す程じゃないッスね。…あ、材料もゴツゴツッスね。でも、逆にこれはこれでいいッス!」
「にゃぐー!」
『確かに美味しいとは言えないが、頑張っている感があるらしい。…きっと、特別な誰かに食べてもらいたいから、頑張ったのだろうな。だそうだ。』
「…。」

味の感想を述べる中、パステルくんは俯き、カップに残った液体を見つめていた。

「…パステルくん、今度、教えてやれよ。今は確かに評価低いが、見込みはあると思うけどな。」
「ぼにゅっ!」

パステルくんは大きく頷いた。











総評:二


昴:個人評価…二
怪我しているし、材料もゴツゴツしていて正直、美味しいとは感じなかったが、まだ伸びしろはあると感じた。

パステルくん:個人評価…二
美味しくはなかったけど、頑張ってる姿が出てきた。今度、ボクと一緒に練習しようね!

にゃぐわ:個人評価…二
材料のゴツゴツはなかなかよかったニャ。あとはぶきっちょなのを直せばダイジョブだニャ!

完二:個人評価…二
味はレシピ通りだが、材料の切り方が△。切り方さえマスターできりゃ、三に伸びるだろう。

実食 烈 ( No.165 )
日時: 2014/11/13 19:02
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: SrUKMM4y)

完二と入れ違いで入ってきたのは、烈だった。

「お前が二番目か、烈。」
「ああ。なんかどうやら一品目は大丈夫だったみたいだな。」
「評価、二のやつだったから、まだな。んじゃ、ここで待ってろ。次の奴の料理、取ってくる。」

昴はそう言って席を離れた。

「誰の料理だろうな、次。」
「ぼにゅっ!」
『パステルくんは楽しみのようだな。だが、一番目のように行くだろうか…。』
「こっちとしては行ってほしいけどな。個人的にはやっぱ、鈴花の料理がいいな。ダメでも直斗か…他は…あ、いや、鈴花と直斗以外微妙そうだ。でも、氷海や雪花はまだまともかな。…あの、直斗以外のペルソナ女性陣に比べたら…。」

少し、死んだ目を浮かべる烈。

『…確かに、あれは酷いな…。』

烈の横でゲームを見ていたのか、黒も遠い目を浮かべる。

「おーい、そこのお二人さーん。気持ちはわかるが帰ってこーい。」

そんな中、昴が次なる鍋を持って現れる。

「さて、烈。心の準備と胃薬の用意はいいか?」
「あぁ。どんな料理が来たって食ってみせるさ!」
「じゃあ、行くぞ、みんな。」

烈、パステルくん、にゃぐわは頷く。
昴はそれを確認すると、勢い良く蓋を開けた。

「…。」

見た目は普通のようだ。異臭も…特にない。

「こ、今度も大丈夫そうか…?」
「多分、な。」

烈の言葉に昴はそう返すと、カップによそう。

「んじゃ、いただきます。」
「いっただっきまーす!」
「にゃぐー!」
「ぼにゅー!」

不味そうではないと安心したのか、一同は一気に飲み干す。

「…。」

だが、次に訪れたのは、静寂。
全員、カップを置く動作が見事に揃う。

『か、神? どうかしたのか?』
『お、おい、大丈夫か? 烈…。』
「…。」

二羽の鴉は心配して声をかけるが、黙ったまま動かない。
そして、

「なぁ、烈。」
「なぁ、昴さん。」

昴と烈が同時に静寂を破った。

「…あ、先いいぞ?」
「いや、多分、聞きたい事、一緒だと思うし…。」
「…。」

だが、またしても静寂。
しばらくして、出た言葉が、

「…味、あるか?」

二人揃って同じ言葉だった。

「…にゃぐわ、パステルくん。味、するか?」
「…にゃぐ。」
「ぼにゅ…。」

同じ質問をにゃぐわとパステルくんにするが、その微妙そうな表情で、鴉達の翻訳を待たずして理解できた。

「しないよな、味。」
「ああ。味、どこ行ったんだろうな。」

…微妙な顔をして、首を傾げる一同だった。











総評:一


昴:個人評価…一
味は?

パステルくん:個人評価…一
味は?

にゃぐわ:個人評価…一
味は?

烈:個人評価…一
味は?

実食 鏡 ( No.166 )
日時: 2014/11/13 19:07
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: SrUKMM4y)

烈と入れ違いでやって来たのは、鏡だ。

「次はお前か、鏡。」
「うんっ! でも、烈が何だか微妙な顔して帰ってきたから、不安だな…。」
「そりゃ、味の無い奴に当たったしな。」
「あ、味が無い!? ど、どう言う事!?」

鏡が聞くと、紅が微妙そうな表情をした。

『…我も少しだけ貰って飲んでみたが、確かに味がしなかった。何故だろう…。』
「う、うーん…。でも、味がしないだけなら大丈夫…かな? 今度は美味しいものだといいね!」
「そうだな。取ってくる。」

昴はそう言って、席を離れていった。

「…誰の料理かなー。わくわく。」
『鏡、嬉しそうだな。』

先程から上機嫌の鏡に、黒は声をかけた。

「うん! 誰の料理が来るかわからないから、ちょっと楽しみなんだ! 鈴花の料理、来ないかなぁ…。あ、でもりせのはやだな…。辛いみたいだし…。」
『お前は烈と違って、甘いの大好き辛いの駄目な、典型的なお子様舌だからな。…まぁ、それは神もだったか。この間貰ったカレー、あれ、我には甘すぎて食えた物ではなかったな。』
「今日の夕飯は鶏肉かしら?」
『!?』

その言葉と嫌な気配に黒は背筋を凍らせながら、ギギギ…。と錆び付いたロボットのように首を後ろに向けた。
そこには、鍋を持って戻ってきた昴がいた。ええ、凄い笑顔で。

『か、神!? 今の、聞いてっ…!』
「鳥はカロリー低いから、サラダにしてもいいわね。鏡、夕飯は何がいい?」
『すみませんでしたっ!!』

黒は土下座をする勢いで昴に謝罪する。だが、謝られた等の本人は平然としていたそうな。

「別に本気じゃねぇんだけどな…。なぁ、鏡。」
「すーさん、怖かったよ…?」
『女子化しておったぞ…?』

その場にいた一同を震え上がらせた後、昴は鍋を置いた。

「さて、鏡。心の準備と胃薬の準備は?」
「ばっちりだよ!」
「にゃぐっ!」
「ぼにゅっ!」

鏡も、にゃぐわも、パステルくんも、覚悟はできたようだ。

「んじゃ、開けるぞ。」

昴は鍋の蓋を開ける。
異臭は…しない。見た目にもおかしい様子は見られない。

「…当たり、か?」
「わかんない…。」
『さっきの烈の時みたいな事もあるからな。…とにかく、かき混ぜてみるか…?』
「だな。」

お玉を手に持ち、かき混ぜる昴。少しかき混ぜても、普通に見える。
が、掬い上げた際、巨大な塊がお玉に乗っているのを見て、当たりではない事を悟る。

「…ダマ、か?」
「えと…何でダマ…?」

確かに、そこにあった巨大なダマ。一体何を入れればこうなるのか。

「…大方、片栗粉を直で入れたとかだろうな。第一片栗粉、入れたっけ…?」
「ぼにゅ…。」
『上手くとろみがつかなかったから入れたのではないかと推測されるそうだ。』
「あー…。でもまぁ、それ以外は何か普通っぽそうだな。」

カップに注いだ印象だと、ダマ以外は特に問題は見られない。見た目も香りも、特に悪い印象は抱かなかった。

「んじゃ、いただきます。」
「いただきまーす!」
「にゃぐー!」
「ぼにゅーっ!」

二人と二匹は、一斉にカップに口をつける。
ダマの不快な食感はあったが、吐き戻す程ではない。寧ろダマを濾したら、十分に飲めそうだ。

「…どうだ? お前等。」
「うん、ダマがないって考えたら、凄く美味しい!」
「ぼにゅっ!」
『ダマがなければ、普通にマロンポタージュとして通用すると言っている。』

鏡とパステルくんの言葉を訳した紅の言葉に、昴とにゃぐわは頷いた。どうやら同意見のようだ。

(…こりゃ、ちょっと鍛えてやれば、あるいは…かな。)











総評:二


昴:個人評価…二
レシピ通りだが、ダマで減点。だが、救いがない程不味くはない。ダマがなけりゃ三だな。

パステルくん:個人評価…二
ダマは初心者にはよくある事。次に生かせば、三に伸びるよ!

にゃぐわ:個人評価…二
ダマ以外は美味かったニャ! 次は頑張って欲しいから、残念だけど減点させてもらったニャ。次やったら、きっと伸びるニャ!

鏡:個人評価…三
ダマのグニグニが気になったけど、美味しかった! 君がもっと上達したら、色んなご飯が食べたいな!

実食 悠 ( No.167 )
日時: 2014/11/13 19:14
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: SrUKMM4y)

鏡と入れ違いでやって来たのは、悠だった。
その顔色は、悪い。どうやら何か嫌な予感を感じているようだ。

「…お前が四番目か、悠。」
「はい。…何故でしょう。正直、嫌な予感がします。」
「…悠、俺はな、常に最悪のパターンを考えている。それが当たっていたらあぁ、こんなものかで済むし、逆によかったら嬉しいじゃん?」
「…そう思う事にします。」

まるで死刑の執行を待っているかのように、顔を青くさせながら、席へと座る。

「…んじゃ、取ってくるよ。」

昴はそう言って、気乗りしない様子で鍋を取りに行った。
辺りに、針が時を刻む音だけが響く。

「…。」
『…おい、悠。顔色が悪いが、どうした?』

流石にこの沈黙に耐えられなかった黒が、真っ青な悠を見て聞く。

「…みんな。恨まないで聞いてほしい。」
「にゃぐ?」
「…最悪な事に、今の俺のペルソナ…運の値が陽介以下だ。」
「」

その言葉が発せられた瞬間、全員黙り込んだ。
運の値が自称特別捜査隊でぶっちぎりワーストの陽介よりも、低い。
つまり、悠は今、最も運がない人物となる。

「…しかも、順番的に不吉だし…。」

彼は四番目の人間。確かに不吉だ…。

『…覚悟はしておくべきか…?』
「にゃぐ…。」

そんな事を話している内に、昴が戻ってきた。

「…。」

…表情を、先程の悠並みに真っ青にさせて。

『…神、何故そんな青いのだ…?』
「…。」

黒の問いに、昴は何も言わずに鍋を置く。
同時に、強烈な刺激臭が漂う。まだ蓋をしたままなのに。

「にゃぎゃあぁっ!」
「ぼにゃあぁぁっ!」

その刺激臭に、にゃぐわとパステルくんが悲鳴のようなものをあげながら鼻を押さえた。

「…昴さん、この料理…。」
「…十中八九、アイツだろう。…気は進まねぇが、ルールはルールだ。悠、胃薬準備。紅、黒。撤退と救援の準備。」
『…うむ。(早くも救援要請か…。)』
「開けるぞ…。それっ!」

昴が蓋を開けた瞬間、刺激臭が強くなる。同時に、何故か赤い色が飛び込んできた。マグマのように煮えたぎっていて、さながら地獄の入口に来たかのような錯覚に陥った。

「にゃぐ…。」
「にゃぐわ、辛いのはわかるが、ちょっと我慢してくれ…。」

嫌そうな顔をして、昴は液体をカップに移す。
だが、目の前に置かれたカップに、誰も手をつけようとしない。

「…。」

が、それでは何の解決もしないので、全員、視線を合わせた後、目の前のカップを手に持つ。

「せーのでいくぞ。」

昴がそう言うと、全員頷いた。

「…せーのっ!」

全員、一斉に口をつけ、飲む。
暫くの間、静止。再び、時を刻む音だけが、無情に響く。

『…か、神…? 悠?』
『パステルくん…? にゃぐわ…?』

完全に固まったまま動かない二人と二匹に、二羽の鴉は心配になり、声をかけた。

「…。」

直後、立って飲んでいた昴がぐらりと後ろ向きに倒れ、それ以外の者達も前のめりに倒れた。
…ほぼ同時に、バッターン! と盛大な音を立てながら。

『か、神いぃぃっ! 悠ぅぅぅっ! パステルくんんんんっ! にゃぐわあぁぁっ!』
『あぁ、神が泡吹いて倒れておる! って、全員呼吸が止まっておるうぅぅぅっ!』

…異変に気がついた誰かがクマをこちらに寄越すまで、この鴉達は騒ぎ立てる事しか出来なかった…。











総評:一


昴:個人評価…一
評価つけたくない。辛い。なんだこれ。

パステルくん:個人評価…零
栗を馬鹿にしないでくれる?

にゃぐわ:個人評価…一
辛すぎだニャ。料理と呼びたくないニャ。

悠:個人評価…一
辛い。鈍痛がする。

そして少しの幕間劇 ( No.168 )
日時: 2014/11/13 19:20
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: SrUKMM4y)

「」

想像を絶するりせの料理に、手帳を見ていた三人は黙り込んだ。

—…昴が話さなかった理由、ちょっとは分かったでしょ…?
「これはオレも話したくない。むしろ思い出したくもない。」
「同意見。」
「りせちゃん…鳴上君も死なせてたんだね…。」
—同じ月日に生まれたよしみとして昴も放っておけなかったみたいだけど、この状況を味わってから、ガチで料理の事に関しては無視する事にしたそうだよ。
「無視した結果が…二回目なんですね。」

静寂が、辺りを包む。ショックで誰も何も話せません。

—…次、行く? 更に衝撃映像出るけど。いや、文面だけど。
「想像が容易だよ…。行ってくれ。」
—はーい…。

創造者は再び手帳に当時の出来事を同期させていった。







ここで区切ります。感想等あればどうぞ。