二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 実食 三番&四番 前書き ( No.233 )
- 日時: 2014/11/29 20:46
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 2CRfeSIt)
採点方法
五段階評価を下す。内訳は以下の通り。
五、メニューに拘らず、遊び(アレンジ)を加えており、なおかつ美味しい。
四、メニューに依りすぎな所はあるが、程よく遊びを加えており、美味しい。
三、メニュー通りの品。遊びなどはないが、メニュー通りなので普通に美味しい。
二、メニューに沿ったのだろうが、ミスが目立ちすぎて美味しくない。が、まだ改善の余地がある不味さ。
一、救いのない不味さ。キッチンに立たせたら死ぬ。
零、食材を与えないで下さい。
新ルール:±要素
今回新制度として評価に加え、更に±要素を入れる。
・+…あともう一歩で上位のレベルに上がれるくらいにおしい品。五+は五段階評価じゃ足りませんレベル。
・無印…妥当なレベル。惜しい部分もなければ、マイナス要素も特になし。
・−…ミスが多いのでお情けでこの評価に。零−は自覚しましょう。
お題:『お弁当』
両端に留め具の付いたお弁当箱に以下のルールを遵守し、提供すること。
1.昴が出したお弁当箱を使用する事
2.昴が出したスープジャーか水筒に温かい飲み物を入れて使用する事(両方でも可。また、既製品やお湯を入れるだけで完成する物でも可)
3.お弁当の中身は固定審査員の望む卵料理、魚料理、野菜料理、おにぎりを絶対条件として入れ、残る一品自分の好きな物を作って入れる事
4.同じお弁当を六つ作る事。内一つは自分で必ず食べる事
5.BEMANI学園の調理室で作り、神殿まで運ぶ事
私
—前回は天国からの地獄だったね。
昴
「まだまともな地獄だ。次が天国だと願いたい。」
- 実食 三番&四番 本日の救援物資 ( No.234 )
- 日時: 2014/11/29 20:51
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 2CRfeSIt)
「あー、美味い。饅頭美味い。」
全員、先程の料理でダウンしてしまい、風花が買ってきてくれていた饅頭で口直し中の昴達。
セシルにも渡したが、あの辛い肉じゃがのせいでトラウマが蘇り、気分が優れないようなので昴の寝室にて葉月の付き添いで休んでいる。
「セシル、大丈夫だろうか…。」
「まぁ、今回は血圧が上昇するような物じゃないから、大丈夫だろ。」
昴がそう言いながら、最後の一口を放り込む。
そして、理乃に用意させた緑茶を飲んでホッと一息…。
「…ん?」
つこうとした時、呼び鈴が鳴った。誰だろうと思い、一階に降りて扉を開けると、そこには大きな箱を持ったメルがいた。
「」
彼女の姿を見た瞬間、固まる昴。
「うん、いつもの請求書かと思ったのはわかる。けど今回は違うから安心して。」
「悪い、メル。つい…。」
「気にしないでいいよ。悪いのあの自重しない変態だから。今日はね、りゅーとさんの世界から物資が届いたよ。氷海ちゃんから聞いたよー。また料理対決するんだって?」
「もう現在進行形でやってる。」
昴がそう言うと、メルは目を濁らせた。
「うん、ゲテモノ出ないように祈っておくね。じゃあ、私はこれで!」
そう言ってメルは昴に手を振りながらキックボードに乗って出ていった。
「気を付けてなー。さて…って、重っ! よく持てたなアイツ!」
メルを見送った昴は、重たい物資を何とか持ち、二階に上がってパステルくん達と共に届けられた物資を見た。その際に、氷海の父親やMZDを呼んで、一緒に物資を見る。
「えーっと、このレポートは…。氷海の親父さん、わかるか?」
「貸してくれないかな? …ふむ、鎌鼬の毒関連のレポートだね。これは私が預かっていた方が良さそうだ。…ついでに、毒草を使われた際のデータをアップデートさせておこうかな。」
「すみません、何か診察で忙しいのに…。」
「気にしないで、昴さん。毒物料理の苦労なら私も十分わかるから。」
余談だが、氷海の父親は評価四は普通にとれる料理人である。だが、その奥さんが評価一のメシマズ、下手するとゲテモノ組なのだ。しかも悪気はない。まったく。ちなみに、氷海の父親が評価四のレベルまで上がったのは彼女のお陰だとか。
昴はその事を氷海に聞いてるので、何も言えない。
「後は、アクアバブル…回復魔法か。水属性だから…MZD、葉月に渡しとけ。あいつなら効果を高められるだろうし。念の為、お前も使えるようにしとけ。」
「おう。アンセムトランスの格好になっとくよ。」
MZDはすぐに、魔力特化のアンセムトランス時の姿になる。
「他は…回復アイテムかな。あっ! ネクタルだー! この間はあんまり効かなかったけど、美味しかったんだよね、これ!」
「む、エリクシールもあるな。回復役の理乃達にも渡しておいた方がいいだろう。おや、メモ書きが…。大量にあるから口を濯ぐといった使用をしてもいいそうだ。」
「にゃぐー!」
『ハーブを見つけたそうだ。メモ書きによると、これはリフレッシュハーブと言い、状態異常を回復する役目があるらしい。む、種もあるな。後で鈴花とローズに分けてやろうか。』
「それと…うわ、でっけぇ石だな! これか? 重かった理由…。」
昴が取り出したのは、大きな石。氷海の父親は、それを見た瞬間、何かわかったのか、頷いている。
「これ、第二回で貰った医神の石に似ているね。多分、それが原石なんじゃないかな? この間のはきっと、これの欠片だと思う。」
「デンときたなー…。まぁ、ここまでないとあの馬鹿のは多分、無理だろうけど…。あ、MZD、医務室まで運んでくれ。ハーブとエリクシールとネクタルは半分こっちにおいておこう。」
そんなこんなで、物資を分けた昴達は、次なる審査員を待った。
- 実食 三番 ( No.235 )
- 日時: 2014/11/29 20:58
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 2CRfeSIt)
「るんたらったらー。」
楽しみで仕方がないのか、鼻唄を歌いながら廊下を歩くのは…凪だ。
彼は審査室の前に来ると、勢いよく扉を開けた。
「とーちゃーっく! えへへー、来たよー。」
「おっ、凪か。よし、当たり以上確定だな。」
お茶を飲みながら待っている昴達は、凪の姿を見て安堵していた。
凪の運の高さは、ハズレを引き寄せない。昴達はここでは助かると踏んだ。
「当たりの状況はー?」
「最初に大当たり、次が評価一のメシマズ。絶対慌てたぞ、あれ。」
「あははー…。まぁ、でもー、自分の料理はわかってるだろうから、許してあげてー?」
「全員許す気だよ。セシルも責めないって言ってた。取ってくる。」
昴はいつものように、エレベーター前に向かった。
「ふんふふーん♪」
「凪さん、上機嫌ですね。何か良い事ありました?」
「えっとねー、自分でお弁当食べてみたら、美味しかったのー! アレンジしないでも普通に美味しいってわかったから、この調子で頑張ったら、昴さんを楽させられるって思うと、ホントに嬉しいんだー。」
「凪…。」
アイギスの問いに答えていた凪。そんな彼の言葉を聞いたのか、いつの間にか戻ってきていた昴はお盆を置くと、すぐにふいと皆から体ごと背けた。
「あれー? 泣いてるの? 昴さん。」
「ばっ、馬鹿! 泣いてなんか!」
「はいはい、感動の涙流してるんだろうからボクが開けるねー。」
「聞けよパステルくん!」
ぎゃーぎゃー言う昴を無視し、パステルくんは蓋を開けた。
お弁当箱の中には、俵型のおにぎりに海苔が巻かれたものが二つ。それから、豚肉の野菜炒め。焼いた白身魚…恐らく、鱈だろう。それと恐らく塩味の炒り卵。そして…チーズが乗せられた、ハンバーグがあった。一緒にあったスープジャーの中身は…豚汁だった。
「おー、これはまた…。」
昴はそれを見て、喜んだ。彼女の好物がこのお弁当箱の中身に多いのだ。
「でも、凪の時特有の感動はないかな…。」
「あれ? 珍しくハズレ引いたのか? 凪。」
「うーん、食べてみないとなんともー…。」
美味しそうなのは美味しそうなのだが、感動する程美味しそうには見えない。
とにもかくにも食べてみる事に。
「…いただきます。」
昴達はおにぎりを手にとって、食べた。
中身はどうやら、たらこのおにぎりのようだ。
「うーん、やっぱり美味しいけど、普通な感じ…。」
「だよねー…。でも、僕はこれ、普通の当たりだって思うよー。」
「えっ?」
凪の言った意味が分からなくて、パステルくんは首を傾げてしまう。
「…気づいているよね、昴さん。この中身…そして、チーズハンバーグ…。」
「…。」
昴はおにぎりを食べる手を止め、凪の言葉に頷いた。
「…気づいてるよ。これ、大体が…俺の大好物だからな。それに、チーズハンバーグは…。」
「えっ? 二人共、誰が作ったかわかったの?」
「…あぁ、成程な。今、我にも分かった。」
ジョーカーまでもが納得を見せ、パステルくんはますます首を傾げる。
「…これを作ったのは、昴さんの事をよく見てる人物だよー。僕なんかよりも、沢山ねー。」
「…昴殿の事をよく知り、よく見ている人物…。紅殿、これは貴殿も食べるべきだ。彼の相棒たる、貴殿も。」
『そうか…やはりあやつのか…。』
紅は薄々感づいていたのか、ジョーカーから差し出されたチーズハンバーグを食べた。
そう、このチーズハンバーグは…このお弁当を作った人物の、大好物だった。
『…昴さん。三番の子から、伝言です。』
「…なんだ?」
『“今回は昴さんの好きなものを集めてみたよ。チーズインハンバーグはまだ難しいからチーズを乗せるだけで終わっちゃったけど、頑張って作ったから、食べてほしい。いつもありがとう。大好き。”と。』
「っ!」
風花のその通信が聞こえたと同時に、昴は席を立ってどこかに走って行った。
「あっ! 昴さん!! …行っちゃった…。」
『きっと、泣いてる姿は見せたくないのだろう。』
『凪、普通の当たりとは…こういう事だな。彼の成長を見れた事。神の嬉しそうな表情を見れた事。…それは、評価五以上の価値がある。そう言う事だな。』
黒の問いかけに、凪は頷いた。
「うん。…えへへー。本当に幸せー。だってー、昴さんの嬉し涙見れたしー、彼の成長も知れたー。…ますます、昴さんが楽になるー。お母さんが苦労しなくて済むんだー。それが、嬉しくて…ごめん、僕もちょっと出かけてくるっ…!」
「我も、少し外に出てくる…。」
『すまない、黒。暫く、にゃぐわの通訳を頼んだっ…!』
そして凪もジョーカーも、紅も…どこかへと向かっていった。
「…子の成長を見た時の親の反応…そしてその気持ち…何だか、私にもわかった気がします。姉さんも…私が何か成長したら…こんな気持ちに、なるのでしょうか…。」
『きっとそうだよ。…ラビリスだけじゃない。桐条先輩やみんなも…今の昴さん達と同じ気持ちになると思う。勿論、私も。…アイギスがムーンライトブリッジの一件から戻ってきた時に成長していたあの時を思い出したな…。』
「ボクも、何だか嬉しいや…。風花、声震えてるよ…。」
『パステルくんこそ…。声、震えてますよ…。』
どうやらこの一人と一匹は、もらい泣きしてしまったようだ。
「にゃぐ…。」
『にゃぐわ、ハンカチならあるぞ…。』
既に涙でぬれたにゃぐわに、黒はそっとハンカチを差し出した。その紅い目は、どこか潤んでいたとか…。
そして、気の済むまで泣いた一同は、評価用紙に向かった。
☆
総評:三+
昴:個人評価…三+
お前がここまで成長してたのは驚きだよ。俺、凄く嬉しい。しかも俺好みの物ばかり。…ちゃんと見ててくれてるんだな。チーズインじゃなくても、ハンバーグは美味しかった。あれ? 何で視界がぼやけてんだ? 歳かなー?
※所々、水滴で評価用紙が滲んでいる
パステルくん:個人評価…三
あらら、昴さん泣いちゃったね。お母さん的存在を泣かせちゃダメだよー。
味は美味しかったよ! 豚汁も小分けにされてる野菜を活用して、少しでも美味しいものをと考えたんだね。そういうのを禁止していないから、どんどんやって、次はそれを使って遊んでみよう!
親子丼の時の失敗もないから、美味しく食べられた。この調子でどんどんレベルアップして、お母さんを楽させてあげてね!
にゃぐわ:個人評価…三
昴の姐さん宛が強いけど、オイラ達にも美味しかったニャ! 料理はこのまま頑張ってほしいニャ!
鱈はお店で売られてるものじゃなくて、魚市場に行って捌いて貰ったのかニャ? こういう心遣いも大切だニャ!
次は掃除、洗濯と、一歩一歩頑張れば大丈夫ニャ! 早くお母さんを楽させてあげるニャ!
ジョーカー:個人評価…三+
子の成長は喜ばしい事だな。昴殿の涙は心配しなくていい。お前の成長に感極まって泣いてるだけだ。お前が泣かせた事には変わらないがな。
今のお前ならば、我も少しずつ教えてもかまわないだろう。一緒に昴殿を支えてゆこう。野菜炒め、シンプルで美味かった。
凪:個人評価…三+
僕、すっごい幸せー! だって君がここまで出来る事が知れたからー! 評価五の料理を食べた以上の価値があるよー!
たらこのおにぎりも塩加減丁度よかったし、野菜炒めも卵も塩加減がよくて美味しかったー! お魚さんも骨のないよう捌いて貰ったのかな? 豚汁の野菜も煮たものを使ったのかな? とにかくおいしかったー!
次はアレンジだねー。お互い頑張ろー!
- 実食 四番 ( No.236 )
- 日時: 2014/11/29 21:03
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 2CRfeSIt)
「…ぐすっ…。」
先程のお弁当が効いたのか、涙を堪えながら歩き出す凪。だが、心の中は晴れやかだ。
今なら何が来ても許せそう。そう思った。
「ああ、凪か。…どうした?」
「あ、えっとー、さっきのお弁当、すっごく嬉しくて泣いちゃったのー。普通の味だけど、嬉しかったなー。」
「そうか…。凪にとって当たりのお弁当だったのか。凪の運は相変わらず凄いな…。」
「えへへー。ありがと、ゆ」
顔をあげた凪が見たもの…それは…。
クマのカラーにボディペイントし、真ん中に“妹命”と書かれた褌をつけた、悠だった。
「…。」
一瞬の、間。そして、
「悠さん。何やってんのー? 何でそんなペイントなんかしてるのー? しかもあの痛褌の裏地ー、菜々子ちゃんだよねー? 何でカルピスまみれなのー? 沈めていいー?」
「がぼ、がぼがぼ!」
凪は素早く風呂場に移動し、悠を浴槽に沈めた。おい凪、沈めていいか訪ねる前に沈めるな。
ちなみに痛褌は即座に凪の手によって切り刻まれました。
…おい、さっきの泣きそうだった三番の弁当話を返せ。
「ねー、とりあえずそのペイント落としてー。それから服を着て審査会場に向かってよねー。じゃないとー…そのキノコ、切り刻むよー?」
うわぁ、真っ黒凪絶賛降臨中だよ…。
そんな様子を審査会場で聞いてる昴達は…。
(やると思った。)
(さっきの感涙、返してほしいんだけど。)
(後で遼太郎殿に報告だな。)
(あーあ…凪もお冠だニャ…。)
と、冷めた目で思っていたそうな。
やがて冬の私服に着替えさせ、ペイントを全て落とした悠が凪によって投げ込まれた。
「じゃあ、僕は自分の部屋にいるねー。」
「おー。ご苦労さん、凪。あと、風呂の栓ぬいとけー。」
「安心してー。抜かりないよー。じゃーねー。」
そう言って凪は飛ばされた自分の部屋に帰っていった。
「いたた…。あそこまでやらなくてもいいじゃないか、凪。」
「また痛褌作ってたのか。」
「はい、昴さんとジョーカーの預金とにゃぐわの給料とパステルくんの印税で」
「貴様後でぶっ殺す。」
「ごめん、後で凍らせていい?」
「後で倍額請求させてもらう。」
「にゃぐー。」
『にゃぐわも後で殴りたいそうだ。』
見ると、勝手にお金を、しかも下らない事に使われ、全員激怒。当たり前だ。
「酷くないか!?」
「どの口がそれ言う? とにかくお前は後で説教部屋な。取ってくる。」
反論する悠を無視し、昴はすぐに出ていった。
『鳴上君、当たり前だよ。人のお金をあんな下らないものに使』
「あ、風花さんの預金もちょっとお借りしました。」
『この間通販で買った薙刀を君で試し切りしていい? アイギス、私から許可出すよ。オルギアモード使ってこの変態を穴だらけにして。』
「了解しました。オルギア」
「アイギス、ストップ。風花、メインイベントは後でだ。今はこっちの審査をするから穴だらけにするな。」
アイギスはオルギアモードを発動させようとしたが、戻ってきた昴に止められ、素直に「了解しました。」と言って敬礼をした。
おい、悠。お前、風花の金も使ったんか。
「んじゃ、開けるとすっか。」
「だねー。」
「あの、俺は無視ですか?」
何かを言ってきた悠を無視し、昴は蓋を開ける。
中は弁当箱とスープジャーの他に、水筒もあった。両方用意したのだろう。だが、それ以外にも、何故か茶色い液体の入ったボトルと青い何かが入ったボトルと茶色い何かが入ったボトルと白い凝固体の何かが入ったボトルがあった。
昴は弁当箱を開ける前に、アワーグラスβを使って時間を進める。
異臭はしない。どうやらハズレ以上なのは確定だろうか。
「初めてかな、水筒まである奴。でもこのボトル、何だ?」
「うーん、そっちは後にして水筒の中身から見ようよ。中身は…。」
パステルくんは蓋のコップを使い、水筒の中身を飲んだ。仄かに酸味のあるお茶の香りがした。
「んっ、梅昆布茶だー!」
「ほー、梅昆布茶か。後で飲むとして、肝心の弁当は…。」
昴達はそこでようやくお弁当箱の中身を見る。
「」
その瞬間、絶句した。そして暫くしてから、各々見つめ合い、そして、
「何これ。」
口を揃えてこの言葉を放った。
中身は、ぶつ切りにされた海鮮とソース焼きそば。シソに巻かれた梅のおにぎり。ここまではいい。問題は次だ。キャベツと小麦粉を練り固めて焼いた大きな御焼き(でいいのか?)と黄身の潰れた目玉焼き。これが中に入っていた。
前半はわかる。だが後半の二つはなんだ? 昴達は頭を捻った。
「…食べてみるか。」
仮にゲテモノだとしても、食べなければ審査ができない。昴達はそれぞれ望む品物を、悠はスープジャーを開けて飲み始める。
「ん? 松茸のお吸い物…。市販品みたいだな。」
「松茸なんて高いから手に入らないよー。だから市販品を使ったんじゃないかな? あっ、おにぎり美味しー!」
「にゃぐー…。」
『海鮮焼きは味が薄いそうだ。…神、ジョーカー、そっちはどうだ?』
にゃぐわの言葉を訳してから、黒が二人に問う。が、二人の微妙そうな表情で、何となく言いたい事はわかった。
「微妙。正直。味薄い。塩味はするけど…。」
「御焼き(?)も味が薄い…。何故キャベツの炒め物ではなかったのだろう…。」
『えっと、皆さんが食べたところで、伝言です。』
先程まで黙っていた風花が、口を開いた。
「風花、今頃通信かよ。」
『す、すみません、実は、四番の子からお願いされていたんです。皆が一口食べるまで、伝言を伝えるなと。それと、今皆が食べた塩は普通の塩だから安心してほしい、と。』
「はぁっ!? あと、後者ので何となく誰かわかったぞ。いや、焼きそばとぶつ切りにされた海鮮焼で絞れてたけど。」
どうやら風花も口止めされていたようだ。そして、今の言葉で誰が作ったかも何となくわかった。悠と同じ裸になる事が好きな彼だろう。
『熱々の内にやってほしいそうです。冷めると不味くなるので。』
「まぁ、御焼き(?)とかは不味くなるだろ…む?」
「どうした? ジョーカー。」
「切れ込みがある。袋状になっているな…。」
『その生地の中に、おにぎり以外のおかずを全て入れてください。』
全員、御焼き(?)を弁当の蓋に移し、半信半疑の状態で中身を入れていった。
「あちちっ! あっついよー…。」
「…ん? これ、まさか…。」
「これは…。」
熱さに苦しむ中、入れている最中に何かに思い至った昴は、創世ノートを手に取った。
悠も何となくわかってきたのか、ペルソナチェンジをして【アギ】を使えるペルソナを用意する。
『仮に冷めたら、中身を入れた段階で火炎系能力者で温めてほしいそうです。』
「まぁ、だな。悠、手伝え。お前もこれの正体に気づいてるだろ?」
「ええ。だからこいつを降魔したんですよ。ウコバク!」
「上出来だ。スキルコンバート、烈!」
悪魔のカードを砕くと、炎が揺らめくスプーンのような物を持ったペルソナ、ウコバクが現れる。同時に昴も烈のスキルを使えるようにした。
「ちょっと熱いから気を付けろよ、お前ら! 運命浄化!」
「【アギ】! それとついでにあの塩をみんなのに」
悠がなんか変な事をしようとしたので、事前に気がついたパステルくんとジョーカーが素早く立ち上がり、その頭にパステルくんはスパナを、ジョーカーが力を同時に叩きつけた。同時に、ウコバクも消えた。
「余計な事しないで。」
「余計な事はするな。」
「ハイ、スミマセン…。」
そんな様子を、にゃぐわは死んだ目で見ていた。どう突っ込めばいいかわからないのだ。
「よし、これくらいでいいだろ。」
今までそんな光景を無視してきた昴が、そう言いながら焔を消した。
加減した焔で、生地はホカホカだ。
「仕上げに…。」
昴は液体の入ったボトルを生地に塗り、凝固体のボトルを握って中身を出す。さらに青い何かと茶色い何かを振りかけ、それを完成させた。
「どっ…どっひゃーっ! 凄い! この発想は凄いよ!」
「うむ…。我も驚いた…。」
「にゃぐー!」
完成したのは…お好み焼き。どうやら液体はソース、凝固体のはマヨネーズ、青いのは青のりで、茶色いのは粉末にした鰹節だった。
「全てのおかずを集結させて、お好み焼き風に仕上げるとは…考えたな、あいつ。」
「色々なのが薄味だったのも納得! 面白いからこれもありだよね! いっただっきまーす!」
伸びている悠以外の一同は、熱々のお好み焼きモドキを食べ始めた。味は勿論…。
「美味しい!」
「美味い!」
「にゃぐー!」
「皆さん、大満足のようです。」
早々に完食し、悠を蹴り起こしてから評価用紙に向かった。
☆
総評:五
昴:個人評価…五
一番といいお前といい、遊びすぎだろ。確かにこれは冷めたらアウトだな。まぁ、野外じゃなければチンし直すって手があるし、炎属性がいれば温め直しは可能だがな。どっちもできない可能性あるし、その点がちょっとマイナスかな。でも十分五の価値はある。目玉焼きも焼きそばも味が薄かったが、納得。美味かったぞ。
お前も裸になったり変な事をしなけりゃ家事手伝い組に組み込んでやるのに、勿体無い…。
パステルくん:個人評価…五
ちょっと具を入れる時に熱かったけど、これは冷めない内にやった方がいいね! 鉄板使わせたら右に出る人がいない君だからこそのアイデアだと思う! サンドイッチとかハンバーガー系でも応用が利くと思うから、ボクもやってみようかな。
昴さんと同じ、冷めたら不味いって思ったから、ちょっと引かせて貰ったよ。ごめんね。梅じそおにぎりと松茸のお吸い物は美味しかった! お好み焼きがこってりだから、あっさり味のご飯とスープにしたんだね。心遣いもありがとう!
にゃぐわ:個人評価…五
お好み焼きとはこれまたたまげたニャ! 海鮮のぶつ切りはちょっと薄味だったけど、合わせるとなると納得だニャ! 梅昆布茶も美味しいニャ! 由梨ちゃんに習ったのかニャ? オイラも教わりたいニャ。
オイラ、ホントに君が勿体無いニャ…。普段はいい子なのに、同室のあの男のせいで…。
ジョーカー:個人評価…五
あの薄味お焼きに面白い秘密があったとはな。お前は料理は真面目に作るから奴より好感が持てる。
取り敢えず、悠。貴様は何でもかんでも我らのトラウマであるあの塩を振りかけようとするな。
悠:個人評価…四
美味かったが、もうひと味ほしい。俺の作った塩をやろう。これで皆も喜
※ここから先は何も書かれておらず、僅かに焼けた肉の匂いが…。
- 実食 三番&四番 後書き ( No.237 )
- 日時: 2014/11/29 21:10
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 2CRfeSIt)
後書き de 雑談
昴
「ふぅ、いい加減にしろよあの野郎。」
※烈の焔を消す
風花
「本当ですね。でも、試し切りの的になって貰ったから私は満足です。」
※手には双薙刀。理由は中の人ネタで察してください
私
—今回は昴にとっては大当たりと全員に対して大当たりかな。
昴
「だから悠編はっちゃけたのか。ギャグ成分そこしかないから。」
私
—もち。…三番のは、お兄ちゃん系キャラとか子持ちキャラとか泣きそう。風花ちゃんが伝えた文面とか伝えたら泣きそう。
風花
「私も読んでて思わず…うぅ、思い出したらまた涙が…。」
昴
「…。」
※肩を振るわせ泣いている。開かれたノートには点々と水滴が…
私
—あらら、昴まで泣いちゃった。うぅ、もらい泣きする前に終わらすよ! じゃあ、またね!
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感想等あればどうぞ。