二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 実食 十一番&十二番 前書き ( No.301 )
- 日時: 2014/12/25 22:32
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: IqVXZA8s)
採点方法
五段階評価を下す。内訳は以下の通り。
五、メニューに拘らず、遊び(アレンジ)を加えており、なおかつ美味しい。
四、メニューに依りすぎな所はあるが、程よく遊びを加えており、美味しい。
三、メニュー通りの品。遊びなどはないが、メニュー通りなので普通に美味しい。
二、メニューに沿ったのだろうが、ミスが目立ちすぎて美味しくない。が、まだ改善の余地がある不味さ。
一、救いのない不味さ。キッチンに立たせたら死ぬ。
零、食材を与えないで下さい。
新ルール:±要素
今回新制度として評価に加え、更に±要素を入れる。
・+…あともう一歩で上位のレベルに上がれるくらいにおしい品。五+は五段階評価じゃ足りませんレベル。
・無印…妥当なレベル。惜しい部分もなければ、マイナス要素も特になし。
・−…ミスが多いのでお情けでこの評価に。零−は自覚しましょう。
お題:『お弁当』
両端に留め具の付いたお弁当箱に以下のルールを遵守し、提供すること。
1.昴が出したお弁当箱を使用する事
2.昴が出したスープジャーか水筒に温かい飲み物を入れて使用する事(両方でも可。また、既製品やお湯を入れるだけで完成する物でも可)
3.お弁当の中身は固定審査員の望む卵料理、魚料理、野菜料理、おにぎりを絶対条件として入れ、残る一品自分の好きな物を作って入れる事
4.同じお弁当を六つ作る事。内一つは自分で必ず食べる事
5.BEMANI学園の調理室で作り、神殿まで運ぶ事
昴
「前回は平和な回だったな…。取り敢えず九番の怪我が心配だ。」
私
—相当派手に転げ落ちていったのね…。
- 実食 十一番 ( No.302 )
- 日時: 2014/12/25 22:28
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: IqVXZA8s)
あの後、トラウマが完全に蘇ってしまったのか、フランシスは体調を崩してしまったので、医務室で休む事になった。
「フランシス、大丈夫だろうか…。」
「かなりトラウマみたいだったからね、あれ…。おにぎりは無理だからサンドイッチにしてくれって申し立てがあったくらいだもん…。」
心配そうに医務室の扉を見つめるジョーカーの後ろで、パステルくんが溜息をつく。
「そうなのか?」
「うん。本人、相当米料理が嫌みたいで…。お米を見るのも嫌になっちゃったみたい。だから、特例としてサンドイッチを許可したの。本当は、フランシスの料理が出たら言おうと思ったけど…。」
「いや、多分俺でも許可するわ。」
『少なくともアイギスと黒以外は知っている訳だからな。フランシスのトラウマは。』
そう、この場にいる大半の人物はフランシスのトラウマの正体を知っている。
パステルくんもその一匹である為、本来ならば許されないお題換えを特別に許可したのだ。
仮に彼の料理が出たとしても、望んだ固定審査員に事前に言ってある為、問題はないだろう。
「さて、残りは四人か。」
「って、まだ激辛劇物が出てきてないよ…。」
「げっ、劇物って何よ!」
扉からその言葉が聞こえて、昴達はジロリと睨むような顔つきになり、扉を見た。
そこには、次なる審査員であるりせがいた。
「はぁ? 事実だろ? お前、俺達を何回死なせそうになった? 悠とセシルと氷海にトラウマを植え付けたのは誰だ?」
「そ、それは昴さんが大人の味を」
「辛いだけが大人の味じゃないよ。そうだ、りせ。マイタバスコとか、出して? 出てくる料理の味を変えられちゃ困るもん。また苦情来て昴さんの胃薬が増えるよ?」
つぶらな瞳で、そう要求するパステルくん。
「ハイ。」
そのつぶらな瞳に隠された威圧的な何かを察知し、りせは素直に言う通りにマイタバスコとかを差し出した。
「よろしい。昴さん、次のお弁当、持ってきて!」
「オッケー。」
りせから危険物を預かった後、昴はエレベーター前に向かった。
「…って、ここでりせが来たと言う事は…。」
「どうかしたのか? パステルくん。」
パステルくんは何かに思い至り、考えた。そんな彼をジョーカーは心配し、声をかける。
「…犠牲者が一人増えるんだなって思って…。」
「あ。」
裏の出来事が本当ならば、ここでもまた犠牲者が出る。そう考えたパステルくんは、青ざめた表情をした。
「…。」
そんな折り、昴が戻ってきた。お盆を持って。そして中央に置き、にゃぐわを見た。
「にゃぐわ…。」
「にゃぐ…?」
「…何か、ごめん。」
昴はそう言いながら、お盆の蓋を開けた。
中にはスープジャーと水筒、それからお弁当箱にアワーグラスβ。
お弁当の中身は、にゃぐわ型に握られたおにぎりに鼻に当たるところにに人参、目と口がのりで作られているものが一つと、ほうれん草の卵和えに花型に型抜かれた人参と鶉の卵が黄身とゴマで加えられた目がひょっこりと顔を出しているものが一つ、ごぼうとそうめんで作られた釣竿にかかるようにした魚型の春巻きが一つ、イカやタコ等がぶつ切りにされており、それとキャベツ等と塩炒めにしたものが一つ、そして、白玉団子に色とりどりの野菜がついたものが五つ。
「…イカの少なさで、アイツじゃないと思う。だからこれは多分…。」
「にゃぐ…。」
にゃぐわはがっくりと項垂れてしまった。そう、これは恐らく、にゃぐわの飼い主である彼女のもの。
この後、彼女が犠牲になると思うと、にゃぐわは気が気ではない。
「わっ、おいしそー!」
そんな中、気楽に構えているりせは、お弁当を食べ始めた。
「んー、辛さが足りないなー…。」
「みんな、りせの評価はいつも通り無視な。」
おにぎりに手をつけた所で、りせがそう言ったので、もう無視を決め込んだ固定審査員。
溜息をつきつつ、昴達も食べ始めた。食べる前に、全員で写真を撮ったのは言うまでもない。
『昴さん、スープジャーの中身と白玉はデザートにして下さいと伝言を預かっています。』
「了解。まぁ、白玉はそうだと思った。」
昴はスープジャーの中を見ると、そこには小豆と白玉が。恐らくこれはお汁粉だろう。
「にゃぐー。」
『まぁ、甘いもの、デザート系を禁止していないから大丈夫だろうと言っている。』
「そうだな。温かい飲み物を用意するのは条件だけど、デザート系の飲み物を用意するなとは言っていない。ちゃんとルールは守ってるな。」
そう言って昴はほうれん草の卵和えを見る。
「…なぁ、にゃぐわとパステルくんの望むものと、ジョーカーは違うけど…これ、固定審査員をモチーフにしたキャラ弁なんじゃね?」
「あ、言われて見れば。ボクのはおにぎりだけど、にゃぐわ好きな彼女だし、前面に出したかったんだね。…コレットフィッシング懐かしいなー。伝説の魚を釣る為に頑張ってたな…。あ、これ、よくよく食べると赤パプリカと鯛のほぐし身を和えてる!」
「この白玉はやはり、あの子らか。ふふっ、我もいるな。ローズの耳が人参で、フランシスの耳がキャベツで、セシルのは…紫キャベツだろうか。リリィのがオレンジか? で、我のは…紫芋を整形したのだろうな。…食べるのがもったいないぞ。昴殿の卵はどういった意味だ?」
「…恐らく、創世ノートの歌詞だ。生まれたての大地に花は咲くだろう、ってフレーズ。ほうれん草が大地を示して、花が人参、生まれたてが、このヒヨコ、って所か?」
どうやら、固定審査員に係わり合いのあるものがモチーフとなり、このキャラ弁を作り上げているようだ。
満足した所で、昴達は完食し、スープジャーに取り掛かる。
「ふぅ…。」
癒された所で、お茶を飲む。何だかまるで、お花見に来てるかの気分になる。
「美味しいのは認めるけど…辛くない…。」
「お前な、この料理に辛さを求める方が間違ってっから。」
りせを叱りつけた所で、昴達は評価用紙に向かった。
☆
総評:五+
昴:個人評価…五+
キャラ弁とは、なかなか面白いアイディアだな。鶉のヒヨコ、可哀想すぎて食べたくなかった…。創世ノートの歌詞とはやるな。
デザートのジョーカー一味白玉も美味しく悲しく頂きました。
キャラ弁ってさ、何か、食べる気削がれないか? 可哀想すぎて。
パステルくん:個人評価…五+
にゃぐわ握りは可愛かった! にゃぐわの事が好きな君らしいね!
あらら、昴さんみたいな人にはちょっと向かないみたいだね…。でも、全部凄く美味しかったよ! なんか君ならにゃぐわやジョーカー達だけじゃなく他の子をモチーフにしたキャラ弁作れそうで怖い。
にゃぐわ:個人評価…五+
オイラのおにぎり美味しかったニャ! ちょっと食べるのに抵抗したけど、美味しかったニャ! 流石はオイラのご主人様! 大好きな人ができて、より修行に励んだのかニャ?
白玉もスープジャーのおしるこもお茶も美味しかったニャ! 桜が咲いたらまた二人でお茶菓子持ってお花見に行こうニャ!
ジョーカー:個人評価…五+
スープジャーのおしるこには驚いた。甘さも控え目で美味しかったぞ。食後のデザートや、ほっと一息つきたい時にはいいな。
我らの白玉も可愛らしかった。この写真は永久保存しておく。ローズ達にも見せてやれ。
りせ:個人評価…三
キャラ弁は可愛かったけど…辛味が足りないよぅ…。
もうちょっと色々辛くしてほしかったな…。
- 実食 十二番 その一 ( No.303 )
- 日時: 2014/12/25 22:37
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: IqVXZA8s)
りせを見送った後、昴達は溜息をついた。
『あの…昴さん。多分、予測できているとは思いますが…。』
「出来てるよ。…倒れたんだろ、うちの鈴花が…。」
『はい…。今、治療中です…。』
風花の通信に、固定審査員達と紅は溜息をついた。
『…神、次から料理対決をする時は一向に成長の兆しのないあやつらゲテモノ組を出場停止にした方がよくないか?』
「りせとか納得すると思うか?」
『すまん、無理だ。』
どうあがいても、りせ達ゲテモノ組を黙らせるような手段が思い浮かばず、出場停止は厳しい事が判明。
「まぁ、いい。あ、そういやゲテモノはもう全員出たから俺達が犠牲になる事はもうないな。」
「だね! 後残っているのは…。」
パステルくんの言葉で、全員最初から思い返す。
「一番目が完二の料理! 葉月も嬉しそうだったね! 二番目は風雅…。運の悪さが悪循環を生んで焦っちゃったんだね…。多分、セシルも悪気がないってわかってるはずだから…大丈夫かな。」
『三番目は鏡だな。あの子の成長を垣間見れて我は嬉しい。きっと凪も同じだろう。四番目は…クマか。鉄板系をさらに遊んだのだろうな。…ここで悠が出たんだったな。』
「五番目はローズ。異世界の料理対決で色々学んで成長したんだな。千枝共々将来が楽しみだ。六番が牡丹。…だが、由梨に聞いたら今回はどうやら訳ありみたいだな。」
『七番は理乃か。あの奇跡の料理は彼女しか作れんだろう。だがそれを食べたのがあの親友だとは彼女も運が悪いのかもしれんな。八番は…パステルくんや雪花の勘が正しければ氷海だろう。まだまだ発展途上と言ったところか。』
「九番が直斗。怪我が心配だが、恐らく診て貰っているだろう。雪子が笑わずに引いていたな、そう言えば。十番が陽介だな。フランシスの件は彼の責任ではないが、恐らく謝罪をするだろうな、陽介の事だから。」
「先程の料理は鈴花さんの可能性が高いかと思われます。それをりせさんが食べました。」
パステルくんが、紅が、昴が、黒が、ジョーカーが、アイギスが、次々に順番毎に出していく。
そして、残りの二人を特定できた瞬間、一同の顔に笑顔が浮かんだ。
「残りは…あの二人だ!」
『どちらに転んでも、美味い料理が食えるな。それに、この組み合わせは裏で起こっているのが本当ならば、互いに嬉しいだろう。』
「…だな。」
どちらに転んでも嬉しい出来事を噛み締めながら、昴達は待った。
「…なぁ、ちょっと悪戯を考えたんだが…。」
昴は何かを思い付いたのか、次なる審査員が来る前に全員に耳打ちした。
その頃、廊下…。
「トリ、トリ…またトリかぁ…。」
盛大な溜息をつきながら歩く、ひとつの影。
一歩一歩が重い。どうやら不安なのだろう。
(うぅ…またあのクトゥルフは嫌だ!)
扉の前に辿り着くと、腹を括り、意を決して、開ける。
「来たぞー。」
「あ、あぁ、烈か…。」
影の正体は、二回戦同様トリを勤める事になった、烈だった。
扉を開けて、次の瞬間。不安そうな表情を浮かべる昴達を見つけた。
「え、あれ? もしかしてまたゲテモノ確定?」
「…。」
昴達の表情に、不安を覚える烈。
二度も死ぬのは、嫌なのだ。絶対に嫌なのだ。
「…次の料理は…。」
昴は神妙な面持ちで、語り出す。
「お前の一番知ってる評価五の奴だ。」
その言葉を聞いて、烈はがっくりとずっこけた。そんな烈を見て、一同は笑顔に戻る。
「紛らわしい顔してんじゃねぇよ!」
「すまんすまん。ちょっと悪戯してみたんだよ。」
「んな悪戯すんなよ!」
「ごめんごめん。でもお前も喜ばしいんじゃねぇの? アイツの料理。」
「アイツって?」
自分の知っている評価五の料理人、それが多すぎて、ちょっと絞り込めていないようだ。まぁ、審査員同士が会話をしていないならば、無理もないだろう。
「多分、弁当見ればわかるさ。取ってくる。」
昴はいつものようにエレベーター前に向かった。
「…ふぅ。」
烈はその後姿を見送ってから、席に着いた。と同時に溜息をつく。
「烈、何だか最近疲れてるね。」
「…なんか、最近寝付けなくてさ。」
(…毎夜毎夜、あの日の夢を見てうなされているようだからな…。烈はそれ程、追い込まれてしまったのか…。)
黒は悲しそうな表情を隠しつつ、心の中でそう思った。
「(…あの事で苦しんでるのか…?)睡眠は大事だぞー。」
戻ってきた昴は会話を聞いていたのか、そう思うも、思うだけにした。烈が話をされる事を、望んでいないだろうと思って。
「大事なのはわかってるけど…。」
「まぁ、時には眠れない時もあるって。そん時は無理するんじゃねぇぞ。リリィや氷海が心配するからな。」
「ん、わかってる。あ、胃薬の準備とかいらないよな。」
「ああ。」
昴は蓋を開けた。
そこには、美味しそうなイカの混ぜ込まれたおにぎりや、イカ入り野菜炒め、鮭のほぐし身入りだし巻き玉子、鯛とあさりの酒蒸し、そして、イカと大根の煮物があった。
そして、備え付けのスープジャーにはクラムチャウダー、水筒にはオレンジの香りがする紅茶が入っていた。
「一発でわかっちまったんだけど、これ。」
「アイツの代名詞、海鮮…いや、もうイカだよな。多分お前んちの影響だろうけど。」
「多分な。母さんが出すおやつ、期限間近のおつまみが多いんだよな…。」
彼女のイカ好きは、引き取り手たる烈の家庭の事情のせいだろう。まぁ、作る料理は何でも美味しいので別にイカ好きでも問題はない。
「んじゃ、食おうか。」
即座にアワーグラスβを使い、全員食べ始める。
勿論、これは…。
「うまいっ! 卵も程よい出汁の味と鮭の塩辛さが絶品なんだけど!」
「おにぎりおいしー! イカのいい味出してるー!」
「野菜炒めも塩麹が効いていて美味しいな…。腕を上げたな、あの子も…。」
「にゃぎゃあぁぁ…にゃぐうぅぅ…。」
「ちょ、にゃぐわの涙が凄い事になってんだけど! 取り合えずうめぇのは分かったぞ…。(イカと大根の煮物美味いな…。あ、何か母さんの味付けに似てきたかも。酒蒸しに使った酒はうちの酒かな? ちゃんとアルコール飛んでるな。これなら小さな子供が食べても大丈夫だろうな。)」
料理を全て食べ終えた後、満足そうな表情を浮かべる一同。
- 実食 十二番 その二 ( No.304 )
- 日時: 2014/12/25 22:42
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: IqVXZA8s)
『…皆さん、十二番の子から、追加の食材があるそうです。』
そのタイミングで、風花が通信を入れる。
「追加?」
『はい。出来れば、烈君が食べてほしいと。』
「俺が?」
首を傾げる烈。何だろうと思いつつ、取りに行った昴を待った。
「…。」
帰ってくるなり、昴はそっと烈の前にタッパーをおいた。中には、半分に砕かれたクッキーがあった。
「…半分のクッキー? 何だこれ?(俺の好きなクッキーなのは分かるけど…。)」
『…はんぶんこ。』
「!」
風花の通信が、優しく告げた言葉を聞いて、烈はびくりと体を震わせた。
『このクッキーは、烈君の辛い何か。一人で抱え込んだら、大きなクッキーだけど、その分、とても辛くなる。押し潰されそうなくらいにまで膨れ上がるかもしれない。けど、話して分かち合えば、はんぶんこになる。』
「…分かち合える人が多くいればいる程、半分にできる。苦しみが減る。」
昴は何が言いたいか分かったのか、タッパーにある半分のクッキーを、更に半分にした。
そして片割れを、烈に渡す。
『…側にいる時間が長いからこそ、お前の苦しみがよく分かっているのだろう。』
昴からクッキーを受け取ると、烈の側に黒が来た。
『烈、彼女は…お前の口から、あの時の事を語ってほしいのだと思う。妹同然の存在として、兄であるお前の苦しみを分かち合いたいのだと思う。』
そして、黒は烈の額に、自分の額をくっつけた。そして、その手にあった烈のクッキーをくちばしで器用に半分に折った。
「黒…。」
『烈、我等がしてしまった事は、取り返しのつかない…一生かけて償いをしていくようなものだ。だがそれを一人で抱え込み、苦しまないでほしい。…我も、側にいさせてほしい。あの時の事の最大の原因は、我にあるのだから…。お前が一人で苦しむのは、誰も見たくない…。皆、そう思っているよ…。』
同じ苦しみを背負ってきた黒だからこそ、願う事。
それを感じ取ったのか、烈の目から、涙がこぼれた。
「…お前があの…船の事件の時に話そうとした事、いつか、リリィや氷海にも話してやれ。…勿論、お前が望むなら、俺にも話してほしい。みんな、お前の事が心配なんだよ。お前の事を思うからこそ、苦しみを分かち合わせてほしい。一人で苦しまないでほしい。…そう、思ってるよ。」
「…ああ。いつか話すと思う。…いつになるかわかんないけど…話す、よ…。」
涙ながらに、烈は昴と黒により八分の一になったクッキーを食べた。
「…なんか、しょっぱいな。」
「だな。」
その場にいた全員、優しい笑顔を見せていた。
クッキーを通じた彼女の思いは、きっと烈に届いただろう…。そう願う昴は、涙を拭いながら、評価用紙に向かった。
☆
総評:五+
昴:個人評価…五+
お弁当の評価もそうだが、お前の烈を思う優しさに五+をあげたい。ジョーカーもいい娘を持ったな。
お弁当は…何も言う事はない。自分の好きなものが全面に出ているが、ちゃんと誰が食べてもいいようにしてある。卵焼き、美味かった。
※所々水滴が付いており、滲んでいる。
パステルくん:個人評価…五+
ゴメン、ちょっと、涙が止まらないんだ…。烈、君はいい妹を持ったね。
昴さんと同じ。お弁当は何も言う事ないよ。逆にボクが教えてほしいくらいだよ。
※同上
にゃぐわ:個人評価…五+
お弁当の事を一発で忘れるような優しい言葉だったニャ。きっとクーが聞いたら笑顔を浮かべて褒めてくれると思うニャ。
お弁当…みんなと同じニャ。何もないニャ。…お兄ちゃんと仲良くするニャ。
※同上
ジョーカー:個人評価…五+
すまん、弁当の感想が上手く書けん…。子供というのは、親の手を離れても成長を続けるものだと改めて実感できたよ…。
烈、お前の過去の事は、我にも分からない。だが、一人で悩まないでほしい。お前は一人ではないのだから。
※同上
烈:個人評価…五+
…ありがとな。お前の優しさ、身に染みたよ。
理乃先輩には話したけど…お前にもいつか、知ってほしいな。まぁ、俺の家を手伝う以上、いつか感づいてしまうと思う。だけど、お前なら、知っても何も変わらないって思う。
…お弁当、美味しかった。
※同上
- 実食 十一番&十二番 裏の真実 ( No.305 )
- 日時: 2014/12/25 22:48
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: IqVXZA8s)
審査も終わり、涙を抑える為と、とある事を確認する為に休憩時間を挟んだ昴は、医務室にある人達を集めた。
「…セシルとフランシスは精神的なものだから、多分大丈夫だな。」
「はい…。すみません、心配をかけさせてしまって…。」
「ご、ごめんね、セシル…。トラウマ蘇らせて…。」
「フランシスも悪かったな…。」
「いや、陽介のせいじゃない。…すまないな、お前にまで不快な思いをさせて…。」
トラウマを蘇らせた事による精神的なショックを与えた原因を作った風雅と陽介は二人の前に立ち、謝罪をする。
「由梨、ピーチに確認は?」
「取れた。…今回の事は、まぁ、再確認せずにぶちこんだアイツも悪いが、一番の原因は別にあったみたいだ。」
「しかし、何でアイツは…。まぁ、いいや。それは本人から語ってもらうとしようか。」
「ピーチもこっちに来るって。謝罪したいってさ。」
携帯を弄びながら語る由梨に一つ頷いてから、次に完二を見る。
「…完二、口ん中切っただろう。」
「うぇっ!? 何でわかったんッスか!? 理乃センパイに治して貰ったから傷なんて残っちゃいねぇのに…!」
「いや、多分昴さん感づいてるんじゃねぇか?」
いきなり指摘された事に驚く完二だが、陽介は何かを悟り、そう言った。
「クマと理乃が倒れた時点でまさかとは思った。直斗と鈴花が倒れてそれが少し確信に変わって…リリィの料理で、完全に確信したよ。そういった事をやっていなきゃ、誰が自分の料理を食べたかなんて、わからないはずだからな。リリィがクッキーを用意できたはずがないんだ。」
「じゃあ、やっぱり…。」
パステルくんが訊ねると、昴は頷いた。
「お前らは裏で…“自分の料理を審査した人の料理を食べた”だろう。」
「…。」
「クマの料理を食べたのが悠。理乃の料理を食べたのが七海。直斗の料理を食べたのが雪子。鈴花の料理を食べたのがりせ。ゲテモノ系が審査員で出た後には、必ず誰かが倒れたと報告が上がった。…そして極めつけが、リリィのクッキーだ。それに、陽介も風雅も、真っ先にフランシスとセシルに謝罪したよな?」
「完全に気付いていますね。」
直斗はやれやれと言った風に肩を竦めた。
「その通りです。僕達は、審査員のお弁当を食べました。恐らく、自分達のお弁当を食べた人物のを…。」
「やっぱな。…直斗、理乃。詳しく話してくれないか?」
「はい。」
昴の願いに、直斗は理乃と顔を見合わせてから頷き、ゆっくりと話し始めた…。
- 実食 十一番&十二番 後書き ( No.306 )
- 日時: 2014/12/25 23:03
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: IqVXZA8s)
後書き de 雑談
私
—烈君のシーンは特にやりたかった。あの二人が一緒になったってわかった時点で、どうしてもやりたかった。…まぁ、本来ならばやらずにわちゃわちゃしてもよかったけど、まだ烈君を氷海ちゃんと同じ目に遭わせてないからこうなった。
理乃
「本来でしたら、そちらは九月に起こそうとしたんですよね?」
私
—そう。それが延びに延びちゃった。船の事件も終わってないし。あ、カキコの方々は烈君の過去を知らないよね…。簡潔に説明すると、烈君と黒君は昔、能力者の誘拐に巻き込まれちゃって、その時点で能力は覚醒していなかった烈君を助ける為に、黒君が無理矢理力を与えた。その反動で力が暴走しちゃって、火災事故にまで発展したの。…焼け跡からは、大量の人骨が出てきた。その罪の意識から、自分が幸せになる事に疑問を持っちゃって、氷海ちゃんの気持ちを知りながらも告白していないし、仲間以上の関係になる事を恐れているの。これが、うちの烈君のオリジナル設定かな。
昴
「ちなみに、記憶の共有をしている鏡と紅を除くと、その過去を知っているのは、俺、直斗、陽介、風雅、フランシス、そして、理乃だ。ちなみに、理乃以外は烈の過去を知っている事を知らない。烈は理乃にしか、全てを話していないんだ。」
鏡
「陽兄と直斗以外のペルソナ組も、氷海も、何かあったんじゃないかって悟っている感じなんだ。以前、氷海関連でちょっとあってね…。」
私
—宣伝になっちゃうけど、氷海ちゃんの件も含めて、詳しくはpixivの方まで来て下さるとありがたいです。さて、裏で起こった出来事を予測できた人は何人いたのかな…。
昴
「多分、いないだろ。説明下手なお前の文だし。」
私
—ほっとけ。というわけで、裏での話を挟んでから、結果発表に移りたいと思います。
理乃
「では、今回はこの辺りで失礼いたしますね。」
鏡
「ばいばーい!」
■
私
—PONさんのアルバムのブックレットヤバイ。お気に入りは紅焔水鏡とランページ。
昴
「そろそろいい加減にしろ烈馬鹿。感想あればどうぞ。」