二次創作小説(映像)※倉庫ログ

実食 裏回 前書き ( No.326 )
日時: 2014/12/29 22:49
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

採点方法
五段階評価を下す。内訳は以下の通り。

五、メニューに拘らず、遊び(アレンジ)を加えており、なおかつ美味しい。

四、メニューに依りすぎな所はあるが、程よく遊びを加えており、美味しい。

三、メニュー通りの品。遊びなどはないが、メニュー通りなので普通に美味しい。

二、メニューに沿ったのだろうが、ミスが目立ちすぎて美味しくない。が、まだ改善の余地がある不味さ。

一、救いのない不味さ。キッチンに立たせたら死ぬ。

零、食材を与えないで下さい。食材に贖罪して下さい。食材を馬鹿にしないで下さい。

新ルール:±要素
今回新制度として評価に加え、更に±要素を入れる。

・+…あともう一歩で上位のレベルに上がれるくらいにおしい品。五+は五段階評価じゃ足りませんレベル。

・無印…妥当なレベル。惜しい部分もなければ、マイナス要素も特になし。

・−…ミスが多いのでお情けでこの評価に。零−は自覚しましょう。


お題:『お弁当』
両端に留め具の付いたお弁当箱に以下のルールを遵守し、提供すること。

1.昴が出したお弁当箱を使用する事

2.昴が出したスープジャーか水筒に温かい飲み物を入れて使用する事(両方でも可。また、既製品やお湯を入れるだけで完成する物でも可)

3.お弁当の中身は固定審査員の望む卵料理、魚料理、野菜料理、おにぎりを絶対条件として入れ、残る一品自分の好きな物を作って入れる事

4.同じお弁当を六つ作る事。内一つは自分で必ず食べる事

5.BEMANI学園の調理室で作り、神殿まで運ぶ事



「んじゃ、裏回行くぞー。今回は全員分やるからな。」


—長くなりますが、お付き合いくださいな。


「つかおい、零の項目。」


—こういう事じゃない? ゲテモノ組のしてる事。

実食 裏回 どうして彼らが食べる事になったか。 ( No.327 )
日時: 2014/12/29 22:57
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

時は、料理対決の始まり前に戻る。
MZDの用意した玉を引いた瞬間、全員の姿が消える。審査員組はバラバラに飛ばされたようだが、その間に挑戦者側の人間は…。

「あだっ! ぐげぇっ!!」
「ぷげぇっ!!」
「ふみゅっ!」
「きゃあっ!」
「うおっ! って、鈴花あぶねぇ!」

ドサドサドサッ! と盛大な音を立てながら、テーブルとエレベーターが置いてある部屋に何人かが折り重なって落ちてきた。

「いたた…。って、うわぁ! 陽兄ごめん!!」
「きゃあっ! は、花村さん! ごめんなさい!!」

折り重なって降りて来た鏡と理乃は、押し潰していた陽介に謝罪をした。

「いてて…へ、へーきへーき…。里中の投げ技より痛くないから…。」
「あー…あのヒップドロップッスか…。あれ、何だかんだで痛かったッス…。」
「巽君、思い出させないで下さい…。ですが、あれで鳴上先輩は喜んでいたんですよね…。」
「…変態だよね、完全に…。あと直斗、完二、早くどいて…。」
「へ? あ、ご、ごめんなさい! 風雅君!」

同じように完二と直斗に潰されていた風雅が、そう懇願した。重量級の完二に乗られていたので、こちらは若干苦しそうだ。

「うおっ、わりぃ、風雅…。って、鈴花も大丈夫か?」
「う、うん、平気…。(お、お姫様抱っこ…完二に…完二にお姫様抱っこ…!!)」

落ちてきた時に咄嗟に受け取られた為、完二にお姫様抱っこをされている形になっていた鈴花は、顔を真っ赤にしつつも、完二の問いに答えた。

「鈴花、大丈夫?」
「顔、真っ赤…あ、らーぶらー」
「ちっ、ちちち違うからリリィちゃん! 私と完二はラ・イ・バ・ル!! ローズ、大丈夫だよ。ちょっと顔が熱いだけ…。」
「完鈴キタコ」

純粋に心配するローズと、何かに気が付いたリリィがおちょくろうとする中、牡丹が何かを騒ぎ始めたので、すぐに赤い顔を通常に戻し、牡丹に踵落としを食らわせた。

「牡丹、うっさい。」
「」

その場にいた陽介、完二、風雅、直斗は何も言えなかった。ただ、純粋組のローズ、リリィ、理乃、鏡の耳を塞ぐので精一杯だった。

「ボタチャン、程々にしといた方がいいクマ…。またスーチャンの胃薬増えるクマよ…。」
「鈴花、完二の前なんだから大人しくしておいた方がいいわ…。女の子が回し蹴りはちょっと…。」

そんな中、その光景を黙って見ていたクマと氷海も、流石にその光景にはこう言わざるを得なかった。ちなみにこの二人は上手く受身を取って着地できており、その際にリリィとローズを庇った事を付け加えておこう。

「オレはどんな鈴花でも好きだけどな。」
「ばっ、完二、何言って…!」

氷海の言葉にさらっと答える完二。なんの悪びれもなく、当たり前だというように。恐らく無自覚だろうな。だが、これを好機と見る人が何人かいた。

「らーぶらーぶ。」
「らーぶらーぶ。」
「らーぶらーぶ。」
「ちょっ、ちがっ、何で直斗君まで加わってるのー!!」

リリィとクマがおちょくり始め、加えて直斗までもがおちょくり始めた。直斗のは、恐らく今までの仕返しだろう…。











とにかく、その場を陽介が何とか宥めてから、改めてその場に落ちてきた人物達を見た。

「多分、この面子って…。」
『そうだぞ、陽介。お前等は挑戦者側だ!』

急に、机の上にあったスピーカーからMZDの声が聞こえた。

『順番はお前等が持っている玉に書かれてるから、その順番でオレがエレベーター前にあるランプに合図するから、自分の持ってる弁当を入れてくれ。近くにトレイあっから。』
「玉って、これか? あ、一って書いてあるな。オレが一番か。」
「…って、この面子だと審査員側が一回誰か死ぬぞ!?」

陽介の放った一言に、全員牡丹を見た。そう、ここに牡丹がいるという事は、昴達が一回死ぬのが確定したという事である。

「しっ、失礼ですわね! 今回は大して薬草の効果を高めたりしていませんわ!」
「嘘つかないでよ! いつもいつも効果を高めすぎた毒草や怪しげな薬を入れようとしているじゃん!」
「今回はそれを行っていませんわ! …まぁ、今回は、ですが…。」
「今回はやってないけどまたやるつもりかよ。」

どうやら牡丹の今回の料理は大して改悪していないようだが、一体どうしてだろうか。

「ボタチャンは今回頑張ってたクマよ。ユリチャンにも聞いて勉強してたクマ。」
「そういえば、由梨が言っていました。いきなり料理を教えてほしいと懇願してきたと。どういった心境の変化なのか、由梨も気になっていましたよ?」
「…。」

牡丹はそのまま口を閉ざしてしまった。話す気はないのだろう。

「…クマ、お前その理由知ってんのか?」
「知ってるけど、話すつもりはないクマよー。いくらヨースケとクマの深い仲でもー。」
「その言い方やめろ!」
『あのー、話し続けていいかー?』

MZDが話の続きをしていいか聞いてきたので、全員でいいぞ、と答えておいた。

『ちょっと面白い企画を思いついてさ、お前等にも協力してもらうから。』
「俺達に協力って何だよ。」
『簡単簡単。お前等、弁当全員作ったよな?』
「ああ、作ったけど…。(嫌な予感…。)」
(嫌な予感がしてきました…。)

勘の鋭い陽介と直斗は、何か嫌な予感を感じ取り、MZDの言葉の先が紡がれるのを待った。

『こっちにいる奴等にも、食ってもらうぞ! 食うのは自分の料理を審査した審査員の弁当一個だ! 残さず食えよー? あ、弁当はエレベーターに入れたらオレの方から弁当入れ直してそっちに送り返すから安心しろ。じゃな!』
「」

これには全員絶句。MZDはそんな一同にお構い無しといった状態で通信を切った。

「ねぇ…これってさ、オレ達が危ないよね…?」
「ここにいないメンバーは…私達つぎドカ!組が烈と凪と雪花。不安要素いないからセーフね。雪花のは惜しいだけだし、凪も上達してきたって聞いたし、烈は何の心配もしていないわ。」
「私達ジョーカー一味側はフランシスとセシル…。ここは、大丈夫。ジョーカー様のお陰で、低評価、いない。」
「…。」

氷海、リリィが分析する中、直斗と理乃だけが黙って顔を青くさせる。彼女達は気づいてしまった。直斗は料理がまともに出来る人物達がこちらに集まってしまった事に。理乃は自分以外の司組が誰もこちらに来ていない事に。つまりは…。

「僕達ペルソナ組が…鳴上先輩と天城先輩と久慈川さんの問題児が向こう側です。里中先輩しかまともな料理を作れる人がいません。」
「私達は…由梨も葉月も向こう側ですが、あの二人ならば…あ、葉月はまだ異物が混じる可能性がありますが、大丈夫でしょう。ですが…ごめんなさい、覚悟していて下さい。…七海が、あちら側です。」
「」

そう、ペルソナ組の問題児である悠、雪子、りせが審査員側。そして、最悪な事に、一番の大問題児である理乃の親友、七海が審査員側。

「少なくとも二人は犠牲になるじゃねぇかあぁぁぁぁぁっ!!」
「センセイも絶対あの塩使ってるクマ。リセチャンやユキチャンがまともなの作ってる気がしないクマ。」
「葉月の方からは爆発は聞こえませんでしたが、あんまり期待しない方がいいと思います…。七海は…まともなのを作っている訳はありません。」
「」

少なくとも激辛劇物とクトゥルフで死ぬフラグが立った。ここにいる誰もがそう思ったろう…。
死ななくても、あの塩でトラウマになるフラグも立ち、雪子のは…今回は完全に予想できない。
ここで一番まともなのは、葉月の瓦礫混入料理だろう。

「一番まともなのは葉月ちゃんの料理か…。瓦礫と焦げくらいなら許せる。天城は…恐らく例のあの奇跡馬鹿女神から何か習っていてもおかしくない。クマの話が本当なら、あの馬鹿はまたトラウマクラスの奴を作っていてもおかしくないしな。」
「でも、トラウマを与える程の塩って一体…。」
「センパイは気にしないでいいッスよ。リリィとローズと鏡も気にすんな。忘れろ。」

純粋組のメンバーが気にしだした為、完二はそうやんわりと言っておいた。他のメンバーも四人にそう促す。

「とにかく、決まっちまったのは仕方ないな…。風雅、腹括れ。」
「先輩も腹決めた方がいいよ…。」

運が最悪ランクの二人は、死を覚悟したとかいないとか…。

実食 裏回 完二 ( No.328 )
日時: 2014/12/29 23:02
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

全員、深呼吸して落ち着いた時、準備ができた事を告げるランプが、点る。

「一番目は…巽さんですね。」

理乃が告げると、完二は「ウッス!」と気合いを入れ、トレイに自分が作った力作を入れてから、待つ。
するとすぐに、蓋が付いたお盆が帰ってきた。どうやらこちらも審査員側と同じく、蓋付きお盆で机まで運んで食べるようだ。ちなみにトレイには蓋等は付いていない。審査員側に届く間に、MZDが入れ替えているのだろうか。

「さてと、っと。うぅ、怖ぇ…。」

結構度胸は据わっている方の完二でも、流石にクトゥルフは恐ろしかった。アレで烈やにゃぐわ達が犠牲になったのを今でも鮮明に覚えている。遺言を残してきた時はどうしようかと思ったのを、今でも覚えている。

「…あんなのを作るのがあの理乃センパイの親友だなんて思えねぇよ…。」
「巽さん、それ言わないで…。」
「うおっ、スンマセン…。」

心で思ったつもりだったが、声に出ていた上に理乃に聞かれたようで、完二はすかさず謝った。

「いいんです。自覚してますから。」
「さて、完二。準備は?」
「…。大丈夫ッス。自分で開けるッスよ。」

覚悟を決めた完二が蓋を開けると、そこにはスープジャーとお弁当箱が。アワーグラスβで時間を動かすと、少し焦げ臭かった。
お弁当箱の蓋を開けると、焦げた野菜炒めと上側は綺麗だが下側が焦げた卵焼き、黒い秋刀魚、そして、プラスチック片が混入したおにぎりが出てきた。だが、一つだけ無事なものがあった。それは、美味しそうに焼けたお肉だった。
スープジャーの方はけんちん汁のようだ。どうやらこれは出汁と醤油を加えるだけのタイプだろう。

「あー…。」

中身を見た瞬間に、誰が作ったかわかったのか、理乃は遠い目を浮かべた。
プラスチック片と焦げが満載なお弁当…。恐らく、いや確実に、葉月だろう。だが、お肉だけでも焦がさずに出来たのは成長したのだろうか。

「…巽さん、彼女はまだ修行中なので…。あ、でもこの猪肉は上手くできてるわね。しかも結構上質な肉です。」
「おっ、そうなんッスか? それは期待大ッス!」

葉月は弓を扱う為、狩人としてのスキルは高く、かつ動物の肉で限定すれば、上質なものを見分ける目も持っている。上手に作れている猪肉は理乃の話が本当ならば、確実に…。

「ウメェッス! こんなにウメェ肉初めて食った! ちと獣臭さもあるけど、それを差し引ける美味さがあるッス! けど…。」

完二は猪肉を堪能した後、すぐに他のに取り掛かった。
が、焦げが酷く、食べられたものではない。それにおにぎりには…。

「あだっ! …うぅ、小さな破片あったッス…。」

どうやったのか分からないが、プラスチック片…恐らく、まな板のだろうか。それがあった。大きな欠片はないにしろ、小さいものが紛れ込んでるので、これ以上食べるのは危険だろう。

「まな板を破壊しなければ評価は普通そうね…。」
「充分に二は狙えるのに、勿体ねぇ…。」

氷海の言葉に完二は少し苦々しい表情を浮かべながら答え、評価用紙に向かった。











完二:評価…一+
またやっちまったんッスね…。けど、壁を破壊しないだけ成長したと思うッス。
力加減が下手なだけなんだと思うッス。焦るこたぁねぇから、ゆっくり上達していけば、いつかは評価二に上がれると思う。まな板片がないのは、ちょっと焦げてるが、普通な味だからな。センパイには頑張ってほしいッス!

実食 裏回 風雅 ( No.329 )
日時: 2014/12/29 23:09
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

完二が理乃に口内の怪我を治してもらっている間、ランプが点る。

「次は、風雅君だね。」
「う、うん…。うぅ、僕のお弁当を食べる人、ゴメンね…。」
「また、トラブルクッキングを発生させたのね…。」
「風雅…。」

泣き出す風雅に、氷海と鏡はそっと声をかける。

「大丈夫だよ! 風雅! きっと、当たった人も昴達も分かってくれるよ!」
「そうだよ、風雅君。わざとじゃないんだし…。」
「…そうだといいんだけど…。」

ローズとリリィが声をかけるも、まだ不安そうな表情は解かずに、そのままの表情でお弁当をトレイに乗せて入れた。程なくして、蓋のついたお盆が帰ってくる。風雅はそれを机の上に置き、開けた。
中身はスープジャーと水筒、お弁当箱。風雅は何も言わずにアワーグラスβを使って時間を動かし、お弁当の蓋を開けた。
中身は…桃(というか赤)、橙、紫、緑、黒のカラフルなご飯と卵のお目めが可愛らしい小さなおにぎりが五つ。後は卵焼きと茹で野菜、鯛の切り身にササミのドレッシング和えがあった。盛り付けはいずれも満点をあげたくなる程完璧だ。
これを見た瞬間、風雅はがっくりと項垂れた。作った人物が分かったのだろうか。

「風雅、どうしたの?」
「…ローズ、リリィ、ごめん。僕…セシルにまたトラウマ与える。」

赤パプリカと人参と紫芋とほうれん草と海苔で作られたカラフルなご飯は恐らくジョーカー一味のキャラ弁というものだろう。しかし、自分の同居人であるフランシスはあの一件以来米をあまり食べられなくなった。見るのも嫌なのでパステルくんに頼んで特別措置を取ってもらったとも聞いているので、これは彼のお弁当ではない。
他の人物も考えられるが、ここまで盛り付けが完璧なのは、恐らくジョーカー一味の長女的存在…セシルだけだろう。

「風雅君、大丈夫。セシルも悪気ないって分かってると思う。」
「そうだよ! 事情を話せば分かってくれるよ! それに、第三回で風雅が反省している所、セシルは見てるから大丈夫!」

リリィもローズも、心配ないようにそう言った。

「うぅ…そうだといいけど…。」
「それに、風雅の料理はトラウマを抉り返す事はあっても、トラウマになるものでない事はみんな分かっているわ。」
「氷海、フォローになってないよー!」

風雅は氷海のフォローに泣きながら、お弁当を食べる。
味は、ちょっとしょっぱい味がしたが、とても美味しかったそうな。風雅は評価用紙に向かった。











風雅:評価…四+
見た目も盛り付けも凄いよ。僕もこんな風に作れるようになりたいな。ジョーカー一味のキャラ弁、みんなが写真に撮っておいたから後で渡すね。
確か、肉じゃがに豆板醤を入れちゃったはず…。辛いものがトラウマなのに、ゴメンね…。胃薬なら渡すから…。

実食 裏回 鏡 ( No.330 )
日時: 2014/12/29 23:15
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

「次はオレかぁ…。」

ランプが光り、鏡はお弁当をエレベーターの中にいれ、待った。
恐怖もあるが、ワクワクしていた。誰の料理が来るのか、楽しみだった。
やがて、次なる料理が到着する。ゲテモノでない事を祈りながら、机においた。

「うぅ、開けるの怖いな…。」
「みんな同じだって。開けてやろうか?」

完二がそう訊ねると、鏡は頷いて「お願い。」と言った。
それを聞き届けた完二は、蓋を開けた。

「…なんか大丈夫みてぇだな。」

そこにあったのは、何の変哲もないお弁当箱とスープジャー。
お弁当の中身は、塩むすびに炒り卵、それから茹でた野菜と鳥ササミのサラダと焼き鮭、そして、豚肉のしょうが焼き。
スープジャーはワカメの味噌汁。恐らく即席タイプのものだろう。鏡はアワーグラスβで時間を動かし、食べ始めた。
特別美味しいと言うわけではないが、普通に美味しく食べられる。

「美味しー! でも、これ一体誰のかな?」
「さぁ…検討もつかねぇな…。」
「…あ。」

食べながら鏡が聞くと、全員首を傾げるが、直斗だけ豚のしょうが焼きを見て反応を示した。

「直斗君、わかったの?」
「! か、確証はないですが…。」

直斗の顔が、何故か赤くなっていく。それを見た鈴花は、ぽんっ、と手を打った。

「鏡君、それ、多分凪君じゃない?」
「なあっ!? なっ、ななな何を根拠に言って!」
「直斗、動揺してるって事はお前も凪のだって考えたっつってるぞ。」
「花村先輩は黙って下さい!」

顔を真っ赤にしたままの状態で凄い剣幕で怒られたので、陽介は萎縮してしまった。

「あ、そう言えば凪、しょうが焼きの練習してた! オレ、何個か食べさせてもらったの思い出した! 確かその時、直斗も横にいて二人で一緒にレシピ見ながら作って」
「うわあぁぁぁぁぁっ!」
「ふむぎゅっ!」

鏡がドデカイ爆弾を落とそうとしたので、直斗はすかさずしょうが焼きを鏡の口に突っ込んで封じた。
だが、この慌てようで十分わかった。これは凪のお弁当であり、そして、直斗は一目見ただけで凪のだと確信したのだと。

「らーぶらーぶ。」
「らーぶらーぶ。」
「らーぶらーぶ。」
「おちょくらないで下さいよ! 鈴花さん、リリィさん、クマ君!」
「うふふっ、原稿が進みますわねー♪」
「牡丹さんは描かないで下さーいっ!」

暫くこの状態が続いたので、完二と陽介が何とか宥めている間に、風雅は鏡に評価用紙へと記入するよう言った…。











鏡:評価…三+
お弁当、美味しかったよ! ジョーカーや直斗と一緒に頑張ってたもんね! 凄い上達速度で憧れるなぁ…。
普通に作れてるから、次はアレンジだね! 一緒に頑張ろ!

実食 裏回 クマ ( No.331 )
日時: 2014/12/29 23:20
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

何とか宥め終わった頃に、準備完了の合図であるランプが光った。

「次はクマ吉か?」
「そうクマ! クマ、入れてくるクマー!」

キグルミを脱ぎ、人型になったクマがとたとたとトレイを持って走っていった。
そして中に入れ、暫く待つ。すると、例の如く蓋付きのお盆がやってきた。

「来たクマ来たクマー! んじゃー早速、ほいっと!」

楽しみにしていたのか、クマはすぐに蓋を開けた。
中身はごく普通なお弁当箱にスープジャーとアワーグラスβ。そして…謎のスマホ。

「…スマホ?」

首を傾げる一同。何故ここにスマホがある。

「…桜坂先輩、鏡君、ちょっと来て頂いてもいいですか?」
「ローズ、リリィちゃん、ちょっと来て貰っていい?」

何か嫌な予感を察知したのか、直斗と鈴花がそう促した。

「えっ? 構いませんけど…。」
「うん、でも、何するのー?」
「行く。」
「え、どうしたの、鈴花。」

純粋組が避難したと同時に、クマはアワーグラスβで時間を動かす。
中身は五目御飯のおにぎりに肉じゃが、卵焼きに野菜炒め、鮭の塩焼きがあった。スープジャーは塩味が効いているであろう卵スープのようだ。
そして、一口食べた。

「…しょっぱいクマ…。クソマズイクマ。」
「お、おい、この展開って…。」
「恐らく…そうでしょうね。鈴花と直斗の判断は正しいでしょう…。」

陽介と牡丹が互いに顔を見合わせ、これから起こる事を予測し始めた。
嫌な予感をこの場にいる全員で共有していると、スマホがピリリと鳴った。メールの着信だ。

「…。」

嫌な予感はするが、そのメールを開く陽介。そこにある件名は、『これを食べた人達へ』と書かれており、本文は何もない。

「…クマ、多分それ…。」
「映像は後でスーチャンと一緒に見た方がいいクマ。いっぺんスーチャンにスキル食らうといいクマ。ナオチャン、リンチャン、入って来ていいクマ。こんな映像は後で見るクマ。今はこれだけで十分感想が書けるクマ。」

クマはそう言って直斗達を呼び戻し、一人評価用紙に向かった。

「…うぷ…映像見てないのに何か気持ち悪くなって来たクマ…。」
「クマ吉、今そこに凪いたから、休ませるよう頼んどくぞ…。」

評価を書き終えたところで、クマは気分が悪くなり、陽介から凪に頼んで休ませる事になった。











クマ:評価…零−
センセイ、クマは生まれた姿を曝せる裸族はスキクマ。楽しいし、スキクマ。けど、エーセー的にアウトな塩とクソマズイこの裸族料理はダイキライクマ! エーセー的にアウトじゃないのを考えてるみたいだケド、クソマズイんじゃダイキライクマ!
ヨースケ、チョット、後で一緒にジュネス・ボンバー(P4Gにて追加された陽介とクマの合体技)やってほしいクマ。
これをスーチャン達が食べなくてよかったクマ…。下手するとまた胃痛が…。

実食 裏回 ローズ ( No.332 )
日時: 2014/12/29 23:25
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

「…花村先輩、映像、どんなのだったのですか?」
「どうせロクなのじゃないだろうから、後で見る事になった。所謂公開処刑。あ、凪と雪花ちゃんと葉月ちゃんには後で俺から頼むよ。避難。」
「…クマ君の判断は賢明な判断だと思います。」

映像は後で全員で見るようだ。ちなみにスマホは陽介が預かる事になった。

「おっ、ランプ点いたな。次は誰だ?」
「ボクだよ! じゃ、行ってくるね!」

ローズは四次元バッグからお弁当とスープジャーを取り出し、トレイに並べた。

「ローズ、私が入れるよ。」
「ありがと、鈴花!」

全て並べ終えた後、流石にこれをもってエレベーター前にまで浮くのは可哀想なので、鈴花が持っていく。入れて程なくして、蓋付きのお盆が帰ってきた。鈴花はそれをすぐに持ってわくわくしながら待つローズの前に置いた。

「じゃ、開けるね?」
「うん!」

カパッ、と開けられた蓋から出てきたのは、お弁当箱とスープジャー。鈴花はアワーグラスβで時間を動かし、お弁当箱の蓋を開けた。
中身は、肉巻きおにぎりに鳥そぼろの卵とじに白身魚のフライ、豚肉と野菜の炒め物に、ビフテキ串があった。スープジャーの中身は、豚汁だ。野菜は恐らく専用のキットを使っただろう。

「これ絶対里中だろ。」
「え、陽介もう誰が作ったかわかったの?」

ローズは首を傾げながら、答えた陽介に聞いた。その当の本人は無意識に口から出ていたのだろう、指摘されて気がつき、顔を真っ赤にした。

「流石夫婦ッスねー。」
「奥さんの手料理はすぐに分かっちゃうんだね!」
「やべぇ花千枝キぶぎゃっ!」
「うるせえよ!! あと牡丹は描くな!」

顔を真っ赤にさせながら、牡丹を蹴りつつ完二と鈴花に怒鳴り散らす陽介。

「つか、お前等だっていつか夫婦にな」
「だからっ! 俺と鈴花はライバルッスよ!!」
「だからっ! 私と完二はライバルだって!!」
「」

あまりにも息ぴったりなのに、未だに互いをライバルと言い放つ二人。そろそろ素直になれよ…と、陽介は思った。

「ねーねー、食べていい?」
「構いませんよ、ローズ君。あっちは放っておいて、食べてください。」
「うん! 頂きまーす!!」

そんな後ろの光景を無視するよう直斗が言うと、ローズは手を合わせ、食べ始めた。

「肉巻きおにぎりはお醤油が効いてて美味しい! 野菜炒めも…あ、これ塩で味付けたのかな? 美味しいや! 卵とじもそぼろの甘さが効いてて美味しいし、フライも醤油にちょっと漬けたんだ! サクサクじゃないけど美味しいよ! ビフテキ串も美味しい! そう言えば、千枝はこれが好きなんだっけ?」
「ああ。ビフテキ串も肉丼も好きだぞ。つか、肉が好きだぞ。」
「やっぱ奥さんの事は分かってるねー!」
「だあぁぁっ! お前も言うかローズ!」

顔を真っ赤にさせる陽介を無視し、ローズは評価用紙に向かっていった。










ローズ:評価…四−
お肉、全部美味しかった! だけどこれじゃぷよぷよになるよ…。もう少し野菜入れてもよかったかも…。
陽介が大人になったらもう一回式挙げるんだよね? その時はボクにブーケを作らせてほしいな!

実食 裏回 牡丹 ( No.333 )
日時: 2014/12/29 23:32
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

顔を真っ赤にさせる陽介を直斗と氷海が何とか宥めて、次なるランプを待った。

「ねぇ、牡丹。今回はそんなに薬草を毒草に変える程いじってないんだよね?」
「…ええ、変えていませんわ。今回は由梨さんが用意してくれた薬草で挑みました。」
「そうなの?」
「ええ、由梨も牡丹さんの為にノームと協力して用意したそうです。」

どうやら本当に変わったようだ。だが、何故…?

「…ねぇ、牡丹。何でそんなに変わったの?」
「…勿論、私だって昴さん達が元気になるようもっと効果の高いものを使いたかったのですが…今の昴さんだと、それはもしかしたら強すぎる毒になると思いまして。だから、今回はしないようにしたのですわ。」
「今の昴さんだと? どう言う事?」
「…きっと、語ってほしくないと思います。だから、私からは言いませんわ。」

話は終わりだ、と言うように牡丹は身を翻し、歩き出した。次なるランプはもう点いていたのだ。
牡丹はお弁当箱を入れ、待つ。暫くすると、蓋付きのお盆が戻ってくる。牡丹は席まで行き、蓋を開けて…喜んだ。

「まぁ! ホイル焼ですわ!」
「ホイル焼…? 由梨かな? 何だかいいキノコが手に入ったからそれを使ったって…。」
「私がピーチさんに頼んで分けてもらったんですわ。由梨さんにも、教えていただいたお礼に一緒に。私も同じキノコを使いましたの。ピーチさん曰く、これはホイル焼にすると絶品なのだそうですわ! 勿論、他のものでも美味しいそうですわ。」

お弁当の中身は牡丹の言ったようにホイル焼と、ちらし寿司風の混ぜご飯をおにぎりにしたもの、出汁巻き卵、さばの煮付け、蕪と大根の漬物があった。和風の物が多いから、これは恐らく由梨で間違いないだろう。
牡丹は嬉しそうな顔をしてアワーグラスβで時間を進めた。

「んー、美味しいですわ! やっぱり由梨さんの料理は凄く美味しいです!」
「きっと由梨も喜びますよ。」

喜びも一塩に、牡丹は評価用紙を取り出した。











牡丹:評価…五+
とても美味しかったですわ! 蕪と大根の漬物は前もって漬けていたものを使ったんですのね。ホイル焼も美味しくいただきました!
あの、昴さんはお弁当、喜んでくれました? 今回はちょっと頑張ったんです。喜んでくれるといいのですが…。





牡丹は嬉しそうな顔を解かずに、評価用紙をしまって由梨のお弁当を完食した。

『ローズ、フランシス、セシル、リリィ、烈、氷海、鈴花、完二、葉月、理乃。それから、鏡、凪、雪花。悪いけど、今から審査部屋に来い。』

そんな時だった。この放送が聞こえたのは。

「えっ? どうしたんだろ…。」
「…?」

呼ばれたローズとリリィは首を傾げているも、その横にいる理乃の表情は、硬い。

「(変な放送ね…。でも今の声、少し弱ってた…。え、弱ってた? ちょっと待ってよ!)まさか…!」

嫌な予感がして、理乃は急いで審査部屋に向かった。

「あ、りー姉!!」
「待ってー!」

放送で呼ばれた一同は、すぐに理乃を追いかけるように部屋を出た。

「おい、まさか…! 牡丹ちゃん! 本当はお前…!」
「そ、そんな事していませんわ! 何で…!?」
「理由は分かりませんが、僕達も準備しておいた方がいいでしょう。牡丹さんの件は、後回しです!」
「嫌な予感がする…! 先輩、直斗、行こう!」

直斗と陽介と風雅も、部屋を出て行った。

「そんな…なんで…!?」

牡丹はその場で呆然と佇むだけだった…。

実食 裏回 理乃 ( No.334 )
日時: 2014/12/29 23:37
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

翌日、昴達が何とか回復したと知らされた挑戦者一同は、再び待機部屋に戻ってきた。
だが、そこには牡丹はいない。昨日の内に雪花により氷室に括りつけられたのだ。クマはまだ体調が優れないので、引き続き休んでいる。

「つ、疲れました…。あんなに解毒に時間がかかるとは…。」
「おつかれ、理乃ちゃん…。」

ぐったりしている理乃を、陽介が労う。

「…あの馬鹿みたいな料理人がこれ以上増えないでほしいですよ…。(それにしても、どうしてああなったのかしら。牡丹さんの発言に嘘偽りはなさそうだったけど…。由梨、あの後毒キノコがどうとかとも言っていた。…誤って混入するとは思えないわ。…待って。その毒キノコと由梨が使ったキノコが似ているなら、もしかして、ティトレイがやらかしたアレと同じように…!?)」
「それ、みんな思ってるよ、りー姉。あ、ランプついたよ。」
「あ、みたいですね。(…後でちょっと由梨に確認を取らなきゃ。)」

どうやら昴達側の準備ができたようだ。理乃は考えを中断して、鏡に答えた。

「次って、理乃センパイか?」
「ええ。…巽さん、すみませんが料理を持っていっていただけませんか? あ、あとこれも…。」

仮眠を取ったとは言え、休まず回復魔法を放ち続けていたので体力が限界に来ていたのか、理乃は完二に野菜が入った瓶を手渡し、お弁当等が乗せられたトレイを持っていくよう頼んだ。

「ジャーサラダッスか? これ。」
「はい。仮眠を取った後、急いで寮に取りに行きました。ドレッシングにエリクシールを混ぜ込んだので少しは回復するかと思いまして…。あ、山岸さんには連絡は済んでいます。」
「きっとすーさん達喜ぶよ! ありがと、りー姉!」

昴達の体調を心配していた鏡が、理乃にお礼を言う。彼女は微笑みながら手を振った。
完二は頼まれた通り、お弁当をエレベーターの中に入れた。そして、すぐに蓋付きお盆が帰ってくる。完二はそれを理乃まで届けた。

「さて、仕切り直しは誰からで…は?」
「」

かぱっ、と蓋を開けた時、この場にいる全員から言葉が消えた。

「…。」

理乃は蓋を戻す。そして、また開ける。だが、見える光景は変わらない。

「…あの馬鹿は私を殺す気なのかしら。」

そこにあったのは…いや、いたのは、お弁当箱を突き破って制止する、青や緑や黄色や黒と言った混沌とした生物のような何か。スープジャーからも何かがはみ出している。今にも出てきそうだ。

「り、理乃センパイ、これ…!」
「間違いありません。あの馬鹿です。…チッ。」
(理乃センパイが舌打ちしたあぁぁぁっ!!)

こんなのを作れる人物は一人しかいない。そう、理乃とは親友同士である七海のだ。つか黒理乃光臨してません!? 舌打ちとかする子じゃないでしょ!?
理乃は観念し、アワーグラスβを持って動かした。
と、同時に、

「みゃんみゃんみゃんみゃんみゃんみゃんみ(繰り返し)」
「ギャアァァァァッ!」
「シャベッタアァァァァァッ!」

喋りだしたではないか! これには理乃以外の全員が壁までダッシュ!

「命が宿ったよ! 食材に命が宿ったよおぉぉっ!」
「ふえぇ…!」
「怖いよー!」
「ローズ! リリィちゃん! 鏡君! 見ちゃダメ! 見ないでえぇぇっ!」

あまりの恐怖に、純粋組が泣き出してしまった。いや無理もない。鈴花が必死であやしつつ、壁になる。
この混乱の中、直斗がある事に気付く。

「あ、あの、あの物体…大きくなっていってません!?」
「へ? 嘘でしょ!?」

直斗に言われ、風雅は目をぐしぐしと擦り、また見る。
その一瞬で、机の四分の一サイズくらいだったのが…。

「」

机からはみ出るくらいになってました。当たり前だが、これには全員絶句するしかない。

「…。」

理乃は風の欠片で杖を精製し、そして…。

「…【グランドクロス】。」

無詠唱で上級光属性魔法を放った! この現象は普段はあり得ない(低級呪文ならば詠唱無しでも発動できるが、上級は無理。)のにしっかりとみゃんみゃん五月蝿いクトゥルフ料理の真下に魔方陣が現れ、クトゥルフ料理を粉々に砕いた。怒りのせいでそれが可能になったのだろうか…。
そして彼女は微笑みながら、クトゥルフ料理の残骸を手に取った。

「…七海。————————♪」

理乃は何かを呟き、クトゥルフ料理を食べて…ドサリと倒れた。
…その時にはっきりと、彼女から放たれた言葉が全員、耳について離れない。

「…七海ちゃん、死んだな。」
「うん、あんなにガチで切れた先輩、見た事ない。…聞いた? みんな。今の。」
「うん、聞いた。『アトデブ・チ・コ・ロ・ス♪』って…。」

全員、理乃から距離をおいたまま、暫く誰も動かなかった。
後に、鈴花が正気に戻り、全員で慌てたのは言うまでもなかった…。











理乃:評価…零−
貴方は私を殺す気なの? ねぇ、私だって本気で怒るわよ?
…貴方の事だから絶対に味を感じてなくて適当な評価にしているでしょうね。もし評価用紙に零−とか書かれてたら貴方と相性最悪な魔法をぶっぱなしてあげる。貴方が嫌だと嘆いてもやっていいよね? ねっ?

実食 裏回 氷海 ( No.335 )
日時: 2014/12/29 23:42
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

理乃を医務室に放り込んだ後、全員再び集まった。

「…アレはないわ…。本気でないわ…。」

こちらに戻って来た時、氷海はぶんぶんと首を振った。目の前に広がっていた光景を忘れるかのように。
ちなみに、今鈴花と完二はいない。あの後純粋組が全員目の前の出来事にショックを受けて泣き出したので、二人で別室に避難し、あやしに行っているのだ。
純粋組以外のメンバーもアレには衝撃が大きかったのか、何とか平静は保てているものの、油断したら純粋組のように泣き喚く可能性があった。

「僕も想定外ですよ…。喋り出してしかも巨大化していくなんて…。」
「理乃ちゃん、無事だといいけど…。」
「あの時と同じく鎌鼬の毒で何とかしていると思います。一応、アレで烈君達も助かっていますので…。それに、氷海さんのお父様もいますから大丈夫ですよ。毒物関連の修羅場は何度も潜ってきましたし。」

一応、実績はあるので大丈夫だろう。それに、父親の腕は誰よりも、娘である氷海が知っている。直斗の言葉に、氷海は頷いた。

「そうね…。お父様がいるし、平気よね…。あっ、ランプが点いたわ。」

そうこうしている内に、審査員側の準備が完了したようで、お弁当を投入するよう頼むランプが点った。

「次は…氷海さんですね。」
「ええ。…うぅ、怖いわ…。」

氷海は恐怖心を押さえつつ、弁当をエレベーターの中に入れた。
程なくして、蓋付きお盆が戻ってくる。

「…。」

氷海は一呼吸を置いてから、蓋を開けた。
中にはお弁当と水筒とスープジャーがあった。氷海はアワーグラスβで時間を動かす。
お弁当箱の中身は、ごく普通の塩むすびと唐揚げと炒り卵とウインナーの入った野菜炒めと焼いたホッケがあった。何だかごく普通なお弁当に、氷海は安堵して笑みを浮かべる。

「ふふっ、これを作ったの、わかったわ。」
「えっ? 早いですね、氷海さん。」
「だって、彼女も私と一緒に練習していたもの。唐揚げ。」

氷海はその細い指を、唐揚げに向けて差した。

「私の方は血が入って失敗しちゃったけど、雪花の方は大丈夫かしら…。」
「あ、それ雪花さんのでしたか…。」

どうやらこれは氷海の現身である雪花のらしい。やはり、二人の相性が一番よい二人だからこそ、何かを感じ取ったのだろうか。

「味は…お弁当の方は普通ね。炒り卵もおにぎりもいい塩加減。野菜炒めは醤油で味をつけたのかしら。ホッケも唐揚げも美味しいわ。」

氷海は早々に雪花の作ったお弁当を完食し、水筒の中身に取り掛かろうとしたが…。

「…って、え。」
「」

水筒の中身から出てきたのは、何故か味噌汁。これには流石にその場にいた全員絶句。
スープジャーに入れるべき代物なのに、何故か水筒に入っていた味噌汁。嫌な予感がしてスープジャーを開けると、そこには紅茶があった。
入れるべき代物の逆転って、どんなドジを踏んだんだあの子は。

「…どうやらお湯を入れて出来る味噌汁ですね。紅茶もティーパックのでしょう。…慌てていたのでしょうか。」
「お弁当は美味しかったけど…ちょっと流石にこれはないわ…。」

変なミスに氷海は苦笑しつつも、評価用紙に向かった。










氷海:評価…三
お弁当、上手に作れるようになったのね。これなら昴さんを楽にさせてあげる事は可能ね。後は他の家事も手伝えるように頑張らなきゃね。
だけど、水筒とスープジャーのドジはしないようにね…。私も思わず驚いたわ。そう言うのを抜きにすれば、すぐに昴さんを楽にさせてあげる事が出来るわ。頑張ってね。

実食 裏回 直斗 ( No.336 )
日時: 2014/12/29 23:47
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

満足した氷海は少し下がると、ランプが点く。

「次は、僕ですね。うぅ…今回は絶対評価下がります…。」
「アレだけ盛大に転がり落ちてったしな…。しかもアワーグラス、使い忘れたんだろ?」
「はい…。一応山岸さんには伝言を伝えるよう頼みましたが…。」
「転んだ事も知ってるから、昴さん達なら分かってくれるって。」
「そうだわ、直斗。お父様に診てもらったのよね? 怪我…大丈夫だった?」

心配そうに氷海が聞くと、鈴花も心配そうな表情をした。純粋組メンバーも心配なのだろう、同じように心配そうに直斗を見つめている。表情には出ていないが、陽介も風雅も完二も心配なのだろう。

「軽い捻挫を起こしているみたいです。二、三日で落ち着くそうですが、暫く体育は見学するよう言われました。」
「骨とか逝ってなくてよかったよ。直斗、弁当は俺が入れてくっから、お前は席に着いてろ。」
「すみません、花村先輩。お願いします。」

陽介はそう、直斗に言った。先輩の気遣いをありがたく頂戴した直斗は、お弁当箱等を完二が持ってきてくれたトレイに並べた。それを陽介がエレベーターに持って行って入れる。
すぐに次なる料理が現れた。陽介はそれを直斗の前に持っていく。
お弁当箱の中身は、海苔の巻かれた俵おむすびに僅かに茶色い炒り卵(恐らく醤油で味付けた)、茹で野菜に鮭の西京焼きにえびの天ぷらがあった。スープジャーの中にはほうれん草と卵のスープが。恐らくこれはお湯をかけて出来るものだろうか。

「見た目は普通ですね。では、いただきます。」

直斗はアワーグラスβで時間を動かし、食べ始めた。











直斗:評価…零−
味は?





すぐに評価用紙に記入された文字を見て、陽介から笑顔が消える。

「おい待てよ直斗。これまさか…!」
「恐らく、天城先輩ですニャ。味のない料理なんて彼女しか考えられませんニャ。」
「な、直斗君、語尾変だよ!?」
「へ? ニャ? ニャニャッ!?」

猫のような語尾を発したかと思えば、次の瞬間、体が一気に縮んだ。しかも頭には猫耳を生やして。

「わーっ! 何でいきなり体が縮んだんですかニャ!? 某高校生探偵じゃあるまいしニャ!」
「し、しかも猫耳が生えてるわよ、直斗…。」
「ニャ!? ニャーニャー!!」

…しまいには完全に猫語しか話せなくなったようだ。

「ちょ、猫語!? 理乃ちゃんもいねぇし紅もいねぇから通訳でき」
「『えっ!? 嘘ですよねー!?』だって。」
「出来る奴いたあぁぁぁっ!!」

猫語の直斗の通訳を出来る者がいないので心配していたが、同じ猫のリリィがここにいた。
リリィは本来の姿に戻ると、猫と同じなので、猫の言葉が分かるのだ。同様に、ローズも兎の言葉が分かる。限定的だが、彼等も通訳者になれるのだ。

「ニャッ、ニャーニャー!!」
「…『天城先輩、後でぶっ飛ばす!!』だって。」
「天城、死んだな…。とにかく、氷海の親父さんに何とかしてもらおうぜ。」
「何とかなる…かしら?」

不安そうな氷海だが、ロリ&猫化した直斗をこのまま放っても置けない。幸いにも評価用紙は書いていたので、次にいっても問題ないだろう、多分。

実食 裏回 陽介 ( No.337 )
日時: 2014/12/29 23:53
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

と言うわけで、直斗を鈴花と氷海が医務室にまで連れて行っている間に、ランプが点った。

「次は…花村センパイッスね。」
「だな。うぅ、直斗の二の舞は嫌だ…。」

自分に最悪な料理が来ない事を願いながら、お弁当を中に入れる。程なくして、いつものように蓋付きお盆が帰ってくる。

「なぁ、りせのはまだでてねぇよな。」
「そのはずッス。アイツ、絶対激辛にしたッスから、一発で分かるはずッス。」
「うぅ、ここでくんなよ…くんなよ…!」

陽介は願掛けをするように願いながら、蓋を開けた。
が、その瞬間、彼の思いは杞憂だと知る事になった。

「! いーよっしゃあぁぁぁぁっ!!」

まずぱっと目に付いたのが、お弁当箱の中に入っているサンドイッチ。本来ならばおにぎりだが、その姿は影も形も見えない。そう、これは…!

「これ、絶対フランシスのだ!」

風雅が叫ぶ。同居人のトラウマを間近で見ている彼だからこそ、わかってしまったのだろう。

「よかったね、陽介先輩! 先輩は助かるんだよ!」
「…でも、俺素直に喜べない。この後を思うと。」

ひとしきり喜んだ後、急に陽介が冷静になる。

「何で?」
「だってよ、ここで俺がこれ食うだろ? けどまだりせのきてねぇだろ?」
「うん。…あ。」

ここでフランシスのが出たと言う事は、りせの料理はこの後に残る鈴花とリリィのどっちかが食べる事になる。
鈴花にも来てほしくないが、リリィには絶対来てほしくない。ここでリリィがりせの料理を食べると、恐らくまだ子供なリリィは盛大なトラウマを負ってしまい、かつジョーカーや烈が黙っていないだろう。

「リリィちゃんには出来るだけ美味いのとか、食べさせてやりてぇって思うんだよ…。」
「辛いの、嫌…。りせさんの、トラウマ的な辛さだって、セシルが言ってた…。」
「アレは大分トラウマになったわ…。」
「あ、氷海ちゃんも食べたんだよね…。でも氷海ちゃんが食べたのがりせちゃんの今までの料理の中で一番最悪な料理だと思う。」

こちらだけならば辛いだけで済んだものの、異世界でやったのはチーム戦。激辛生地に激辛カレーのコンボは史上最高で最悪なコンボだったろう…。それを食べた氷海は全身火傷を負い(しかも人体発火)、心にも癒えぬ傷を負っただろう…。

「けど、フランシスよりはマシよ。あれ以来お米が駄目になったのでしょう?」
「うん…。僕の家でもパン食が主流になった程だよ…。」
「お米タルでもプルプル震えて涙目になってた程だもんね…。96さん関連の曲だから謝ってくれたけど、気にしてないって言っといた…。」

どうやら異世界の料理対決は楽しかった者もいれば、心に盛大な傷を負ったのもいたようだ。

「まぁ、とにかく食うぞ。」

陽介はアワーグラスβで時間を動かし、食べ始めた。
お弁当箱の中身は卵サンドにハムサンド、カツサンドにレタスサンドとオーソドックスなサンドイッチ。それに、完熟の目玉焼きにきゅうりの浅漬け、鮭のホイル焼に大根の醤油煮だろうか。備えられた水筒には、お茶があった。恐らく緑茶だろう。

「…サンドイッチは卵にハムに…おっ、カツサンドにレタスサンドだ。うん、正直特別美味いって感じじゃないけど、安心して食えるな。」
「フランシス、基本、遊ばない。」
「うん! 不味いものをボク達に食べさせたくないからって言ってた!」

どうやら普段からも遊ばないのは、フランシスなりの気遣いなのだろう。

「もちっと遊んでもいい気がすっけどな。フランシスなら失敗してもゲテモノにしないだろうし、仮にゲテモノにしても反省すんだろ、アイツなら。」

陽介は全て完食し、評価用紙に記入し始めた。











陽介:評価…三
不味くはなかった。けど特別美味いって感じじゃない。普通にレシピ見て作りましたって感じかな。お前なりの優しさはいいけど、もうちっと遊んでも構わないんじゃね? お前の腕なら多分ゲテモノにしないと思うし。
ゲテモノにしちまっても、お前なら反省するだろ…。ああ、風雅や葉月ちゃんみたく。

実食 裏回 鈴花 ( No.338 )
日時: 2014/12/30 00:08
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

お弁当箱を片付け、次なるランプが点るのを待つ鈴花。そう、次は彼女の番。

「リリィちゃんに酷いのが来ませんようにリリィちゃんに酷いのが来ませんようにリリィちゃんに」
「鈴花、願掛けすんのは結構だけど、端から見ると怖ぇよ…。ほら、鏡とローズが怯えてんぞ。」

リリィのために必死に祈る鈴花だが、完二にそう言われてちょっとばつが悪そうな顔をして大人しく待った。

「鈴花さん、大丈夫だよ? 私、何が来ても、食べる。」
「でもそれでもリリィちゃんには美味しいの食べてもらいたいよ…。それに、あと残っているのは…あ、ランプ点いた。」

運命の刻限だといわんばかりに、ランプが点る。鈴花はスタンバイしていたトレイを素早く入れ、届けられる品物を待った。

「(お願い、ここでりせちゃんのが来て! まだ来ていないのは彼の料理だもん! リリィちゃんには大好きな彼の料理を食べてほしいの!)お願い、りせちゃんの来て!」

ガコン、と音がして、待ち望んだものが到着する。鈴花は緊張した面持ちでそれを運んだ。

「お願い…!」

開けられた蓋の中にあったのは…!

「…! やったあぁぁぁっ!!」

まるで願いが叶ったかのように、そこにあったのは…紅いお弁当箱とスープジャー。

「おい鈴花、それで喜ぶなよ…。」
「だ、だって、嬉しいんだもん! 残っている人の事を思うと、ここでりせちゃんのが来てほしかったの! リリィちゃんには絶対残っている人の料理を食べてほしかったの! そう考えたら…私はここで倒れちゃうけど、嬉しいんだもん…。」
「鈴花…。」

残っている人物の料理をリリィにどうしても食べてほしい。そう願っていた鈴花は、願いが通じてホッとしているようだ。

「じゃあ…動かすよ。」

鈴花は意を決して、アワーグラスβを使って時間を動かした。
辺りに強い刺激臭が漂う。鈴花はここで鼻を押さえたい衝動に駆られるも、耐えた。それに、リリィにこの次に起こる出来事を考え、笑みすらも見せた。
中身は、もう何が入っているか区別がつかないが、紅いおにぎりと紅い炒り卵、紅い野菜炒めに紅い焼き魚(多分鱈)、そして、紅い豆腐があった。スープジャーの中身は、麻婆豆腐だろう。こちらも例の如く、紅い。

「…ごめんね、完二。ローズ。私…逝くね。」

鈴花はにこっと笑って紅い料理を一口含み…倒れた。

「鈴花あぁぁぁぁっ!!」
「鈴花さあぁぁぁんっ!!」
「鈴花ちゃん…散り際が立派だった…。けどここで死んじゃ駄目だあぁぁぁぁっ!!」

あまりにも立派過ぎる鈴花の散りざまに、陽介は一瞬感動しかけるが、すぐに【ディアラマ】をかけつつ、完二がお姫様抱っこで医務室まで運んでいった。











鈴花:評価…零−
ねぇ、そろそろ自覚しよう? 自分がどんなものを作ってるかって。
それからさ、舌の病院、氷海ちゃんのお父さんに紹介してもらって? そしてその馬鹿舌治して?
これ、昴さん達が引いたらどうなると思ってた? 牡丹共々後で零距離恋閃繚乱。

実食 裏回 リリィ ( No.339 )
日時: 2014/12/30 00:03
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

鈴花を医務室に送り届けた後、陽介の提案で全員でこれまで食べた料理を思い返していた。

「(リリィちゃんに酷いのが当たらないといいけどな…。でも鈴花ちゃんの口ぶりからすると、リリィちゃんにとっては嬉しい奴みたいだけど…。)完二のから振り返ってみるか。それで最後が誰か分かるしな。」

最後に残ったリリィに不味いものが当たらないよう、陽介は願っていた。

「オレのは葉月センパイ。…瓦礫混入はしてねぇけど、まな板をやっちまったんッスね…。」
「僕のはセシル。凄い盛り付け綺麗だったし。…後で謝らないと…。」
「オレのは凪! 凪も最近成長しているって聞いたもん! それに、直斗も言ってたし…。」
「クマ吉のは多分あの馬鹿だな。フランシスの二の舞になっちまったな…。クマも言ってたな。アレは好きだし楽しいが、あの塩はパスだと。あいつ、何気に料理はこだわるんだな…。」

四番目まで振り返った時、陽介はクマの事を心配していた。フランシスのように重大なトラウマにならなければいいがと。あと、リリィ達純粋組に配慮して裸族の事を明言するのは避けたようだ。

「ボクのは千枝! お肉ばっかだったけど、美味しかった! 陽介、出てきた瞬間にわかってたみたいだったね! さすが夫婦ー!」
「うるせぇよ、ローズ。六番は由梨ちゃんだって理乃ちゃんや牡丹が言ってたな。同じ食材だって牡丹が言ってたけど、それって多分…。」
「多分、正しいキノコと毒キノコは似てるんじゃないかな? 由梨姉の方が正しいキノコだったんだと思う。七番は…七姉…。」
「後で理乃先輩に切り刻まれて浄化されるでしょうね…。八番は雪花。お弁当は美味しかったけど、あのミスは何故したか気になるわ…。」

八番目まで振り返る。後で七海がボコボコにされるフラグが立った気がしたが、自業自得なので気にしない。

「九番が天城センパイッスね…。俺が様子を見に行った時、小さくなった直斗が医務室でシリンダーに弾込めてて怖かったッス…。」
「十番はフランシス。普通に美味かったし、それに…サンドイッチを使うような奴はあいつしかいねぇだろ…。パステルくんも許可したんだな、きっと…。」
「十一番はりせだよね…。鈴花、大丈夫かな…。何か、人を殺しそうな目をしながら運ばれていったけど…。あれ、最後ってまさか…!」

そして十一番まで振り返り、残りの人物を特定する。
最後の料理は…!

「お兄ちゃんの…!?」
「そうだ、烈のが今の今まで出てねぇじゃん!」
「よかったわね、リリィ。大好きな烈の料理よ! これは鈴花も願う訳ね…!」
「うん!」

リリィの大好きな引き取り手、烈の料理だった。これを知ったリリィは大喜び。そう、鈴花は自分の出番の際にこれに気づき、必死で自分にりせのが来る事を望んだのだ。
そんな中で、ランプが光った。

「昴さん達の方、準備できたみてぇだな。」
「私、入れてくる!」

はやる気持ちを押さえつつ、リリィはパタパタと走っていき、お弁当の入ったトレイを入れる。擬人化してもわずかに苦戦しているようなので、途中で氷海も手伝って。
そして入れ替わるように、蓋付きお盆が来た。リリィは氷海にそれを運んでもらい、席につく。

「んじゃ、オープンっ、と。」

陽介が開けてくれたお盆には、鶏肉が混ぜられたおにぎりに、ほうれん草の卵とじ、白身魚のフライ、肉野菜炒め、そして、カップグラタンがあった。
一緒に来たスープジャーには豚汁、そして水筒には、ミントの利いたハーブティーがあった。恐らくこちらは理乃に頼んで調合してもらったのだろうか。

「お肉、多い…。」
「烈らしいな、何か。アワーグラスで動かしてっ、と…。」
「いただきます。」

リリィはそう言った後、食べ始めた。大好きな人の料理だからか、一口一口、噛み締めながら。

「あ。」

が、急に手を止め、風花が待機する場所まで向かっていってしまった。

「あ、ちょっとリリィ! …どうしたのかしら…。」

氷海は追いかけようとするも、すぐにリリィが帰ってくる。手には、クッキーとタッパーを持って。

「早ぇな、リリィ。何か山岸さんに伝え忘れたのか?」
「ううん。伝える事、特にない。でも、烈君が食べてるなら、伝えてほしい事、できた。」

リリィはタッパーを開け、クッキーを半分にして入れ、完二にエレベーターへ入れるよう頼む。

「伝えてほしい事ってなんなの? リリィ。」
「…烈君、最近苦しんでる。毎日、うなされてる。」
「!」

うなされる原因に気付いたのか、陽介と風雅が肩を振るわせる。

「一人じゃない。側にいる。苦しみだって、はんぶんこにできる。私にも…辛い事、はんぶんこにしてほしい。それを、伝えてほしかった。」
「…優しいね、リリィ。」

鏡はリリィの頭を撫でる。その目には、うっすらと涙があった。泣かない烈の代わりに、泣いているのだろうか。

「…いつかきっと、烈から話されると思う。だから、気長に待ってあげて? ねっ?」
「うん。待つ。私から、聞かない。だって…烈君が思い出したくない事、でしょ?」
「…うん。忘れていたかった記憶。でも、時々思い出しちゃう記憶なんだ。」
「だから、無理に聞かない。無理に聞いて、お兄ちゃんが傷つくの、嫌。」

リリィはそういうと、再びお弁当を食べ始めた。

「…ありがとう、リリィ。」

鏡はぽつりと、礼を述べた。どうやらリリィは聞いていなかったようだ。
やがて完食したリリィは、評価用紙に向かった。











リリィ:評価…四+
お兄ちゃんのご飯、美味しかった。ちょっとお肉多目だね。お店じゃちょっと出せないと思う。でも、お野菜も入ってて美味しい。
私のメッセージ、届いたかな? 届いてほしいな。
また、作って? 私も作る。
それで、二人で出掛けて、はんぶんこ、しよ?

実食 裏回 そして現在。 ( No.340 )
日時: 2014/12/30 00:09
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

「と、言うわけです。」
「…ご、ごくろうさん…。つかおい馬鹿神? どこ行こうとしてんの?」

全ての原因であるMZDがそろりといなくなろうとしているのに気がつき、昴はにこりと笑って創世ノートを構えた。

「あ、えと、その…。」
「表は由梨以外助かった。ああ、表はな。だが、お前の下らない企画のお陰で、何人犠牲にした?」

被害者全員、MZDを睨みつける。あ、手に武器を持ってる…。

「影君、お願いがあります。」
「その馬鹿神、捕まえといて?」

武器を構えた直斗と、能力を発動させた鈴花が、影にそうお願いした。

(おっけー、おっけー)

影は影形態となり、MZDを縛り付ける。

「え、ちょっと待て影、え、うぎゃあぁぁぁぁぁっ!!」

この後、MZDがどうなったかは…何となく想像つくでしょう。











MZDをひとしきりボコボコにした後、昴達は互いに見合った。

「しかし…これまた最高評価系が犠牲になったな…。」

今回、裏表含めて犠牲になったのは、トラウマが抉られた者達を含めると、完二、セシル、クマ、由梨、理乃、直斗、フランシス、鈴花。内六人は(セシルの場合はチーム戦でだが)過去に最高評価である評価五を取った人物。つか、この高評価の犠牲率は何。

「セシルのとフランシスのはさっき謝ったし、完二のは反省するし、由梨のは…なんか今回は心変わりしたそうだから今回だけは反省しそうだけど…他の面子は絶対反省しないな。」
「絶対そうでしょう。」

直斗が冷たくぴしゃりと言う。シリンダーに新たな銃弾を込めながら。

「…まぁ、結果発表が楽しみだな。(理乃と鈴花とクマの血の雨的な意味で。)」
「あ、昴さん。クマ吉の奴の映像…昴さんに預けとくな。」

そう言って陽介は昴にクマが食べたものと一緒についてきたスマホを渡した。

「ああ、みんなの前で公開処刑してやろうか。」
「避難係には俺から頼んどくよ。」

準備も整い、昴達は結果発表を心待ちにしていた…。





実食 裏回 後書き前の注意事項 ( No.341 )
日時: 2014/12/30 00:14
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)


—次からの後書きは、ちょっと注意してほしいんだ。…ここから先で言うのは、私がずっと思ってきたけど、あえてスルーしてきた事。けど、どうしてもこの作品の作者として言いたい事なんです。


「まぁ、いうなればこいつが怒ってる事。本当は大分前から言おうと思ってたけど…誰かが楽しんでくれる習って思って言えなかった事。」


—多分、読んでいて不快になると思いますが、大丈夫ならお付き合い下さい。

実食 裏回 後書き ( No.342 )
日時: 2014/12/30 00:19
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: f2zlL8Mb)

後書き de 雑談



—先程の注意は読みましたね。では、本題。…あのさ、この場で言いたい事あるんだけど。私だって流石にキレる時あるんだけど。不快だと思うから後書きは読み飛ばしても構わないよ。でも今回こそは絶対言いたい。


「流石にお前も苦言を呈するか。この場で。」


—当たり前だよ。七海がりゅーとさんの所でやらかした事をネタにするのはいいよ。だって事実あの子やらかしかねないような設定したし、こっちでも今回の料理対決で五番の子を見て思い出したネタやったし。…けどさ、それをいつまでも感想でアレは切れただのアイツの舌どうなってんだ等と言い続けられるとさ、七海がおかしい子のように感じるのよ。いや現に色々問題ある馬鹿だけどさ、何か…見ているこっちは気分悪いんだよ。私の作品を知ってそれを言ってるの? って何度も思ったよ。七海を生み出した事に間違いを感じそうになったもの。いつもはりゅーとさんの所で他人の感想を見るの楽しみにしてたけど、やらかした日は凄い怖かった。けど、その日は楽しんでくれるならって思って大して何も言わずに引いたけど…。

理乃
「あの子だっていい所は沢山あるんです。それを未だに書ける状態じゃないような展開の持っていき方をしているスバルさんも問題あるとは思いますが、流石に私だって親友がボロクソ言われるのは嫌です。あんなのでも、一応私の事を思ってくれていますからね。」


「牡丹だってそうだ。普段は腐った毒物精製機なアイツだけど、ちゃんとまじめな時もあったんだよ。未完成だけど…亜空間事件の時とか、ワンダークロック事件の終わりとかな。雪子だって今は変なの習得しちまったけど、氷海がテレビに入れられた時はガチで真面目だったからな? りせも、俺達の誕生日の時にやった話や氷海の件では真面目だしな。今言った作品達はカキコにはないけど、pixivで読んでくれた人は知ってるはずだ。」


—特に、理乃、七海、由梨、葉月のオリキャラ四人は高校生の頃からの付き合いだから、結構こっちとしては愛着あるの。他の子達だってそう。それをボロクソ言われてこっちも黙っちゃいられないよ。そう設定した私も悪いけど、流石に作者として気分悪いよ。私の作品を知っててそれを言ったりネタにしたりは構わないよ? でも、作品を知らないでその事を話題にするのは許せない。…それに、七海を生み出したの、私の方だよ? 私はただキャラを貸してるだけで、みんなは私の子達だって事には変わりない。少なくとも私はそのスタンスだけど? 彼女達を生み出した私を無視して七海ぶっ殺すだの牡丹の料理は死ぬだの何だの好き勝手感想書きすぎじゃないですか? もう少しそのキャラを生み出した人達に配慮ないんですか? その作者が愛着を持ったキャラだったらどうするんですか? その点では私が非常識なだけですか? それが常識だというなら、ごめんなさい、私がネット上で作品をあげる資格がないですね。


「もうこいつめんどくさいって思うならフォローを切っても、読まなくなってくれても構わない。だけど、問題児を生み出した作者だが、言わせて貰いたかった。…まぁ、こうは言ったが、キャラを貸すのは構わないぞ。」


—ただし、私がみんなに愛着を持っているという事は忘れないで下さい。それと、配慮を持ってほしいと言う事も。さて、言いたい事も言えたし、この辺で終わりにしようか。

理乃
「次は結果発表ですね。」


—んーん、年末恒例(つってもこれで二年目)年明け話。それをはさんでから結果発表になるかなー。んじゃ、ばいばーい。








—簡単に言うなら、いくら自分がその行為にキレたからとは言えども、相手に配慮した言い方をしてほしいって事。もし自分が愛着持っているキャラにそんな物騒な言い方されたら、嫌でしょ?


「相手に配慮するのは、普段の生活でも大事だからな。あ、感想あればどうぞ。」