二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 結果発表と例のアレ その一 ( No.35 )
- 日時: 2014/09/05 21:29
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
昴達が集中治療室(ただの空き部屋)に入ってから、数時間が経とうとしていた。
しかし昴達の目は覚める気配がなく、余談を許さない状態が続いていた。
「早くりゅーとさんからのネクタルと石を! YUMAさんからの回復薬も! 理音さんからの物資も口に突っ込んで飲ませて! 理乃ちゃん、回復魔法は」
「もうみんな魔力精神力底をつきそうな勢いでやってます! あぁーっ、もうっ! ほんとどんな危険物作ってんのよあの馬鹿!」
『皆さんの意識レベル、低下と上昇を繰り返しています!』
「効いてるのか効いてねぇのかわかんねぇなおい!」
氷海の父親と理乃が慌ただしく叫ぶ中、風花の通信に由梨がぼやく。
「あ、こら、パステルくん、だめだろー…人の石持ってっちゃー…。」
「あー、せっかくつんだのにー…。」
「こらこら、なかよくいしをピラミッドのかたちにせんかー…。」
「へへーん…はやいものがちだよー…。」
「にゃぐー…。」
何かをぶつぶつ、寝言のように言う昴達。
「あれ、コレもしかして…。」
『さっ、賽の河原まで行ってますうぅぅぅっ!』
「しかも何でいつぞやのBE生みたく積んでんだよ! あと栗箱さんみたいに奪うなパステルくん!」
由梨のツッコミは届いていないだろうが、言わなければ気がすまない。
「あ、そだ。りゅーとさんからもう一個届いてた。」
「何だ、雪子!」
「えっとね、紙によると、鎌鼬の毒だって。何か、注射すると抗体を作るって。毒も分解してくれるみたいだけど…。」
「あの毒に効くのかな…?」
不安そうな理乃だが、使ってみるしか手がない。
「あ、暫く無気力状態になっちゃうらしいけど…。」
「死ぬよりマシだーっ!」
食あたり専門チームは素早く注射器をどこからか取りだし、毒を昴達に入れた。
…毒を以て毒を制す…。あ、うまい事言った気がする。
「なんかね、その抗体を今後の研究に使ってって書いてある。」
「理乃、あとでコレをマッドサイエンティスト共に届けろ。ついでにあの馬鹿が作ったモノも。」
「了解よ。あと、私とルートさんで解析もするわ。」
次々にその後の対応をとる理乃達に、もう誰も何も言わなかった。
■
所変わって、神殿のリビング。ここに全員集まっていた。
「…昴さん達がああだと難しそうですね。審査結果の発表は後日にする事を提案します。」
「ああ、それがいいかも知れねぇな…。」
「今日はオレら帰った方がいいだろうな…。夜も遅くなってきたし…。」
ちらりと、完二が外を見ると、もう日が落ちそうで、寮組は早く帰らないと閉め出されそうだ。
「…まぁ、昴さん達ならきっと大丈夫だよー。僕らも見てるしー。由梨さん達はここに泊めるねー。あ、アイギスさんと風花さんもー。」
「となると、先輩達の外泊届けを書いた方がいいでしょうね。」
「えーっと、外泊届けを書くのは雪子と理乃ちゃんと由梨ちゃんとクマ君か。花村、クマ君の頼んでいい?」
「おう、クマ吉のは書いとくわ。」
さらっと悠がいないものにされているが、誰も気に留めない。
昴達の容態は心配だが、ひとまずこの場は解散となった。
- 結果発表と例のアレ その二 ( No.36 )
- 日時: 2014/09/05 21:34
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
そして翌日…。
「」
昴、ジョーカー、パステルくん、にゃぐわが机に突っ伏してぐったりしていた。
今頃烈も別室でぐったりしているだろう。
「なんとか助かってよかったねー…。」
『十時間にも及ぶ大手術だったようだ。みんなほぼ徹夜で頑張っていた。…一命は取り留めたが、鎌鼬の毒の効果で神は進行するのが難しい。鏡、凪。お前達が進めてくれ。』
「りょーかーい。」
「わかった。じゃあまずは五の人からだね!」
鏡は進行表を取りだし、パラパラとめくった。
「えーっと、三番と六番と七番だね! 紅、完二と風雅呼んできて。」
『分かった。』
紅は羽ばたき、男子が待機する場所に向かう。
「じゃー、三番、六番、七番。上がってきてー。」
凪の声が、スピーカーを通じて響き渡った。
■
上がってきたのは、理乃、鈴花、由梨だった。
「うーん、やっぱりって人達ばっかだねー。完二は理乃さんにー。風雅は鈴花に渡してー。」
「りょーかい。」
「分かった。」
そして言われた通りに完二は理乃に、風雅は鈴花に結果を手渡した。
「センパイ、スゲー美味かったッス!」
「ふふっ、ありがとうございます、巽さん。」
「今度オレにもあのマーボカレーのレシピ、譲ってほしいッス!」
「…レシピを渡すのは簡単ですが、作るのは結構難しいのです。…厳しくなりますよ?」
「覚悟の上ッスよ!」
理乃は怪しげに笑みを浮かべる。完二はそれに一瞬怯むも、やる気を見せた。
「はい、鈴花。美味しかったよ。」
「…。」
鈴花は風雅から黙って用紙を受けとる。どこか不満そうな表情で。
(風雅君より完二に食べてもらいたかったなぁ…。まぁ、完二がゲテモノ食べなくてよかったって思うし、理乃センパイの食べられて羨ましいけど…。)
「…鈴花? 鈴花ー。」
「…完二に食べてもらいたかったな…。私の渾身の力作…。」
(…僕は、こういう意味で運が悪かったのかな…?)
空気の読めない運に、風雅は鈴花に申し訳無くなった。美味しい料理を食べられたはずなのに、何だか自分の凶運を呪いたくなった。
「風雅、結局は運がなかったんだねー。」
「みたいだな…。」
横にいた凪と由梨は思わず風雅に同情してしまった。
「あ、そうだ。はい、由梨さん、美味しかったよー。」
「さんきゅ。本当は出汁を一から取って美味いものを食わせてやりたかったが…。」
「じゅーぶんおいしかったー。今度また作ってよー。」
「お望みとありゃいくらでも。」
横は険悪な感じなのに、こちらはすんなりと会話が終わった。
「鈴花ー、そろそろ機嫌直してー。完二には後で作ってあげなー?」
「…。」
「なーんだ、オレに当たらなかったからって不機嫌になってたのか。鈴花、後で美味いものを期待するから、機嫌直せよ、なっ?」
「…うん。」
完二が鈴花の頭をポンポンと撫でた事で、鈴花の機嫌は少し直ったようだ。
「ありがと、完二…。」
「いいって事よ。」
風雅の礼に、完二は何とでもない風に答えた。
「次はー…四の評価はいないから、三だねー。」
「三の評価は四番だけだね。紅、リリィを呼んできて。後でクーから貰ったお豆あげるから。」
『行ってくる。』
紅は素早く飛んでいく。恋猫の料理に釣られるとは…。
「あははー、紅ったらー。じゃー、四番、もとい直斗ー。上がってきてー。」
「ちょっとこら凪、名前で呼ぶなよ。」
番号ではなく名前を呼び、思わずツッコミをいれたくなった由梨だった。
- 結果発表と例のアレ その三 ( No.37 )
- 日時: 2014/09/05 21:38
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
二階に上がってきたのは、やはりというか案の定というか、直斗だった。
「な、何で僕が四番だって分かったんですか、凪君…。」
「えー? …愛の力ー?」
「あ、愛!?」
直斗の顔が一瞬で真っ赤になった。茹で蛸状態だ。
「…。」
リリィはじっと、直斗を見る。
「あ、す、すみません、リリィさん。結果を…。」
「らーぶらーぶ。」
「…えっ?」
ポツリと呟かれたリリィの言葉に、直斗はちょっとだけ驚いた。
「らーぶらーぶ。らーぶらーぶ。直斗さん、凪君とらーぶらーぶ。」
「あ、あの、リリィさん!?」
「…愛の力。らーぶらーぶの力。…凪君と直斗さん、らーぶらーぶ。」
リリィがらーぶらーぶと言う度に、直斗の顔が赤くなり、後ずさる。リリィも追撃し、らーぶらーぶと言いながら迫る。
「…リリィ、いい標的見つけちまったようだな…。」
「もっ、もう止めて下さいリリィさん!」
「らーぶらーぶ。」
「らーぶらーぶ。」
「何で鈴花さんまで加わっているんですか! アレですか!? 僕の周りは敵だらけですかぁっ!?」
追撃に鈴花も加わり、暫くらーぶらーぶ合戦が続いた…。
■
数分後、埒が明かないので由梨が止め、結果を渡す事に。
「はい、直斗さん。美味しかった。」
「ありがとうございます。…また、三ですか…。」
前回と同じ結果に、溜息をつく直斗。成長していないとでも思ったのだろうか。
「あんまり気を落とすなよ、直斗。オメーはまだ自信が持ててないだけだろ?」
「巽君…。」
「そうだよ直斗君! 私が見た感じだけど、前回よりもアレンジを加えようとしているの、分かったよ!」
「でも、僕が出来たのは野菜炒めを盛るくらいでした…。」
「…それでも、立派な前進だ。誇っていいと思うけどな、直斗…。」
のっそりと起きながら、昴がそう言う。
「そうだよ…。あと…直斗はもっと、失敗していいと思う…。」
パステルくんも、のっそりと起き上がってそう笑顔で言った。
「失敗を…? リリィさんの個人評価にも書かれていますが…。」
「そうだな。失敗から生まれる料理もあるし。」
「失敗は成功の元とも言いますからね。誰しも、最初から成功する訳ありません。失敗を生かし、工夫をする事で、成功が生まれますから。料理も、何もかも。」
由梨や理乃の言葉に説得力を感じたのか、直斗は頷いた。
「…僕、沢山失敗します。失敗して失敗して…いつか成功させて、凪君に美味しいって言って貰うんだ!」
力説する直斗。その目は決意に満ち溢れていた。愛する人に美味しい自分の手料理を食べてほしい。そう思っていた。
「…。」
だが…それは、
「らーぶらーぶ。」
「らーぶらーぶ。」
「うわあぁんっ!」
先程の繰り返しを生む言葉だった…。
- 結果発表と例のアレ その四 ( No.38 )
- 日時: 2014/09/05 21:45
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
とにもかくにも、由梨と理乃でその場を宥めてから、評価二の人々を呼ぶ事に。
「やっと何かぼーっとするのが消えてきたから、俺がやるよ。」
「大丈夫なの? すーさん…。」
進行をこのまま自分達に任せてもいいのに、と思う鏡だが、昴は首を縦に振った。
「体は本調子じゃないけど、本来ならこれ、俺の仕事だしな。鏡と凪はサポート頼む。」
「…うん。」
鏡は昴に撫でられ、満足したのか笑顔で答えた。
「さて…二の評価は、五番、九番、十一番か。紅、悪いが悠と陽介とフランシスを呼んでくれ。」
『ああ、構わない。』
紅は三度、翼を羽ばたかせて飛んでいった。
「何か惜しいってだけだし、こいつらには特別説教とかしなくていいかな。五番、九番、十一番。上がってこい。」
昴はマイクに向け、そう言った。
■
「まぁ、ここも割と当然な奴等の集まりか。」
目の前には、雪花、千枝、氷海。
その三人の前には、悠、陽介、フランシスが並んでいた。
「…花村。また、あたしの食べたの?」
「あー、うん、まぁ…。ほら、紙。」
陽介は少し恥ずかしそうに用紙を渡した。
「…二…。」
「け、けどさ、その…い、今までお前が作ったどんな料理よりも…美味かった。麺、伸びてなきゃ…美味い評価、出てたんじゃねぇの?」
「は、花村…!」
「…あ、あのさ、今度…弁当、作ってくれないかな? 期待、してっから、さ。」
「! う、うん!」
千枝は顔を真っ赤にしながら、だけど笑顔で頷いた。
「フッ…。青春だな。」
「…私もいつか、烈とあんな風になりたい…。」
そんな二人を見た氷海は、ポツリと呟いた。
フランシスは少し笑顔を浮かべ、氷海に評価が書かれた用紙を渡した。
「氷海、お前もいつかきっとなれるさ。だが、まずは料理の腕を磨け。」
「うっ…。」
「烈に養ってもらうつもりではないだろう? だからまずは家事を一通りこなせるようになれ。」
「…が、頑張るわ…。うぅぅ…。くすん…。」
氷海は用紙を持ったまま、しょんぼりと項垂れてしまった。
フランシスは黙って、氷海の肩ににポンッ、と手を置いた。
「…二…。はぁ…。」
「気を落とすな、雪花。」
悠から用紙を受け取り、溜息をついた雪花に彼は励ますように言った。
「でも…こんな腕じゃ、まだまだ昴さんの役に立てないわ…。」
「そんな事ないさ。雪花はもう少し頑張れば上手くなる。良かったら俺が手取り足取り」
悠が何かを言おうとした時、横にいた陽介と千枝が急にどこからか取り出したハンディカラオケを持った。
流れ出した曲は、TAG×PONのPUNISHERだ。何かいきなりサビだし。
「醒めること無い夢ならば ボクの良い様にやらせてよ」
急に何だ? と思う一同だが、次の瞬間、理解できた。
「女誑しの変態に 怒り湛えた制裁をぶちかませ!」
「ヘブゥッ!」
一部、替え歌をし、そしてゴスゥッ! と盛大な音が聞こえた後、悠が沈み、陽介と千枝はマイクを切った。
「相棒、自重しろ。」
「鳴上君、自重して。」
陽介の拳と、千枝の踵落としが悠の頭に直撃したようだ。
「…。」
雪花は黙ってそれを見た。見るしかできなかった。
「さて、三人はこれからに期待できるから、これ以上俺から言う事はない。大切な奴の為にその腕を磨け。」
「うん!」
「はい!」
昴が言うと、三人はいい返事をして頷いた。
氷海は烈の為に、千枝は陽介の為に、雪花は昴達の為に腕を磨けば、きっと美味しくなるだろう。
「…さて、と。次は…ん?」
次に行く前に、ブン、ブンと何かが空を切るような音が聞こえ、昴はそっと音の出所である背後を向き、すぐに視線を戻した。
「…ね、ねぇ、昴さん。今後ろでパステルくんが…。」
「鈴花、言うな。気にするな。何も見なかった事にしろ。」
同じように後ろを見た鈴花が昴に何かを言うも、昴がそう言うので気にしない事にした。勿論、他に見た人も。
「…。」
今、その後ろでは、パステルくんが愛用のスパナをブン、ブンと素振りしていたのだ…。
この時、前回出ていた人と、林間学校の翌日にパステルくんのオシオキを見守った由梨は直感した。
パステルくんは今、“くんさん様モード”である事。そして、“あの、恐怖のオシオキが来る。”と…。
「と、とにかく次呼ぶぞ。残り五人、上がってこい。紅、これでお使いは最後だ。地獄を見た奴等を呼んでこい。烈は…自力で歩く事が無理そうなら、車椅子が男子の待機部屋にあるから、セシルに乗せてもらってクマに引っ張ってきてもらえ。」
『う、うむ。』
紅は頷いてから、羽ばたいて飛んでいった。
「…。」
次は、キュッ、キュッ、と、何かを磨く音が聞こえる。
そろー…っと全員が見ると、パステルくんが、あのモノクマスイッチを磨いていた…。
「…。」
全員、そっと、パステルくんから視線を外した…。
- 結果発表と例のアレ その五 ( No.39 )
- 日時: 2014/09/05 21:50
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
上がってきたのは、一番の葉月、二番の牡丹、八番のりせ、十番の雪子、そして、トリの七海だった。
「…。」
彼女らの料理を食わされたローズ、鏡、セシル、クマ、そして車椅子に乗ったままの烈が、笑顔を浮かべていた。…え? 目? 笑ってないよ? 特に鏡とセシルと烈。
「うん、まずはそれぞれ食った奴に渡して貰おうか。」
「ああ。」
全員、女子に紙を渡す。
「…やっぱり…。」
「えっ、また一ですの?」
「頑張ったのになー…。」
「私も今回は自信あったのに…。」
「ぶー。」
が、結果の散々さを容易に受け入れてくれなかったようだ。葉月以外は。
「葉月。」
「うん、分かってる…。瓦礫、痛かったでしょ…?」
「作り直すって手もあっただろー? 野菜も焦げてたし。」
「…作り直してもよかったけど、時間がなかったの…。だから、せめて瓦礫を取り除こうとしたんだけど…。」
「…まぁ、自覚がある分まだいい方だよなー。他は…。」
反省している葉月から、ローズは視線を逸らす。見つめる先は、喧騒が起きていた。
「体にいいかと思っていれたのですが、何だか字が読み辛くなっていますわね…。もっと入れた方が宜しかったかしら?」
「…ねぇ、牡丹。漢方も薬なんだよ? 薬は用法用量を正しく使わなきゃダメなんだよ?」
「漢方は副作用のない薬ではありませんの?」
「副作用のない薬なんてないよ。というかさ、薬の知識がないのに薬を使わないでよ。そもそも料理に薬を使わないで。燃やすよ?」
(鏡、抑えろ。ガチで怖い。)
(鏡、焔出てるぞ!?)
きょとんとしている牡丹に、鏡が容赦なく言い放つ。普段は穏和な鏡も、流石に死にかけたらキレる。
鏡、焔出てます。怖いです。昴と紅が怯えてます。
「セシル酷い! 辛(つら)いって何!?」
「は?」
「だから辛いって」
「は?」
(こ、怖い怖い怖い!)
(あんなセシル我も見た事ないんだが!?)
物凄い剣幕で怒鳴り付けるりせを、セシルは擬人化済みの端整な顔立ちに青筋を立て、「は?」の一言で一蹴する。
そんなセシルに、氷海は元より、一緒に長い事いるジョーカーも怯えてしまった。
「クマさん、味がないのはクマさんの味覚がおかしいんじゃないかな?」
「ユキチャン、それ、自分で味見してから言ってほしいクマ。クマだって怒る時は怒るクマ。」
「あ、味見は…うん、してないけど。」
「味見は大事クマ。頼むから味見してほしいクマ。」
(あーあ、クマ吉の奴、珍しく怒ってんなありゃ…。)
(雪子、クマ君に青筋立ってんの気付いてないのかな?)
ちょっと青筋立てているクマに気がついていないのか、雪子は話を続ける。
あ、後ろで陽介が溜息ついてる…。
「ねぇ、烈。零って評価、無いんじゃなかった?」
「誰かさんのせいで増やさざるを得なかったんだよ。」
「誰かって誰よ? 葉月とか破壊魔?」
「お前ぶっ飛ばされてぇか?」
「葉月先輩も由梨先輩も関係ねぇし。テメェのせいだよ馬鹿七海。」
(れ、烈君は決して先輩とか外さないのに…!)
(馬鹿までつけちゃった…! あれは相当怒ってるよ!)
タメ語だが、先輩を呼ぶ時は確かに先輩とつけていた。だがそれを外し、かつ馬鹿とつける程ぶちギレていた。能力を出さないだけまだ偉いが、怖い。
鈴花と風雅も、これには怯えてしまう。
「ローズ、ごめんね…ガリガリなの食べさせちゃって…。」
「葉月はキッチンに入らない方がいいよ。うん。でもゲテモノよりはましかなー…。」
「正しい量以上入れても効果が薄いと思いますわ。」
「死ぬよりましだよ!」
「だから何で痛いし辛いの!?」
「ご自分でお食べになったらいかがですか?」
「味見しておかしかったら、また作り直しは勿体ないよ?」
「だったら普通に作ってほしかったクマ。」
「あれ? そういや烈は何で車椅子?」
「今更? あと誰のせいでこうなったと思うわけ?」
ギャンギャン言い合いになる八人と、しょんぼりする葉月を慰めるローズ。
しばらくそんな状態が続き…。
- 結果発表と例のアレ その六 ( No.40 )
- 日時: 2014/09/05 21:56
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
—ガァンッ!
そうだったが、その音で全員黙って音の出所を見た。
「…黙ってくれる?」
「ハイ。」
音を発したのは、パステルくん。どうやらスパナを壁に思いきり叩き付けたようだ。
これには全員黙るしかない。
「さて。」
じっと、パステルくんは葉月、牡丹、りせ、雪子、七海を見た。
「牡丹、りせ、雪子。一度ならず二度までもゲテモノ食わせるってどういう神経してる訳ー? なんで改善しない訳ー? 改善が見られない訳ー?」
「うぐっ…。」
前回ゲテモノを出した三人は、何も言えない。
反論したら何か言われそうだし、パステルくんから放たれる威圧感で言えない。
「七海ー。あんな毒物出しておいて反省の色はない訳なのー?」
「ど、毒じゃないもん! ちゃんとラーメンだもん! そりゃ確かに何で作ろうか迷ったから全部入れたけど…。」
「ねぇ馬鹿。貴方もしかして私達の世界から色々と持ってきて入れたりした?」
理乃が訊ねると、七海は頷いた。
「うんっ! ドラゴンの肉とか、スライムの核とか! でもー、全部食用の物入れた筈なのにあんな風になったの。」
「…馬鹿舌だから料理を一ヶ月禁止させてたが、その間に何があった。前は濃い味付けで吐き戻すだけだったのに何であんな荒ぶるクトゥルフが出来た。」
「知らなーい。」
今度は由梨が訊ねるが、上の空。反省の色はないようだ。
「…はぁ…。お前、林間学校の翌日の記憶はどこに葬り去った。」
「へ?」
「ふふふー、由梨は察してくれたようだねー。」
愛用のスパナをブンブン振りながら、あのスイッチを前に置いた。
「!?」
ようやく自分の身にこれから何が起こるのかを悟ったようで、葉月以外のオシオキ経験者はビクリと体を震わせた。
「と、言う訳でオシオキするからそこ動かないでねー。えいっ!」
パステルくんは容赦なくスイッチを叩く。
『スギヤマサン、ボタンサン、クジカワサン、アマギサン、カナスギサンガ“クロ”ニキマリマシタ。オシオキヲカイシシマス。』
スイッチの下にあるモニターにそう出た後、床がカパッ、と開いた。
「へ? きゃあぁぁぁぁ…。」
牡丹、りせ、雪子、七海はそのまま落ちていった…。
が、ここで落ちていかなかったのが一人。
「…あれ?」
葉月である。どんなオシオキが来るかと構えていたが、隣に開いた穴を見て、首を傾げてしまった。
「あ、あの、パステルくん、私は…?」
「葉月は反省してるようだしー、今回は無しねー。」
どうやら葉月は反省しているので、今回はオシオキ無しのようだ。
だが、
「葉月、お前はパステルくんのオシオキは無いが、壊した台所の壁を修復するように。」
「はい…。」
昴から壁の修復を言い渡されたようだ…。
「さてと…。」
穴の開いた床を見てから、パステルくんはくるっと振り返り、紅を見た。
「紅ー。」
『行かん。行かんぞ。我は絶ッ、対に行かんぞ!』
紅は昴と鏡の間に隠れて動かない。間近でオシオキを見た紅にとっても、パステルくんのオシオキはトラウマなのだ。
「何でー? 紅に来て貰わないと困るよー。空なんて飛べないもーん。あ、黒行く?」
『行かん! 絶ッ、対に行かんぞ! それに、お前にはあの赤い機体があるだろう! ワンダークロック事件で乗っていた奴!』
「あ、そっかー♪」
烈の後ろに隠れて様子を伺う黒の言葉に、ぽん、と手を打ち、どこからか取り出したスイッチをピッ、と押す。
すると、あの赤い機体がどこからか飛んできて、窓ガラスを割って部屋に侵入した。
割れた窓ガラスをちらりと見る昴だが、何も言わない。言ったら殺される。そんな気さえした。
「じゃー、行ってくるー!」
パステルくんは穴から中に入り、消えていった。
と、同時に、穴が閉じられた。
「…昴さん、窓ガラスは私の方で弁償しますね。」
「いや、いいよ、別に…。」
氷海の父親がそう言うが、昴はそこで断った。
「…前回も聞いたが、下で何が起こっているか、見るか?」
昴のその問いに、全員首を横に振った。
- 結果発表と例のアレ その七 ( No.41 )
- 日時: 2014/09/05 22:07
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
「…あぁぁぁぁっ!」
穴から落ちた四人は、ドスンッ! と尻を打ちながら地面に辿り着いた。
「いたた…。パステルくん、酷い…!」
「お尻打っちゃった…痛い…。」
お尻の痛みに呻きながら、全員立ち上がる。そんな時、七海の耳に何かが届けられた。
「ねぇ、何か聞こえない?」
「えっ?」
全員、七海に言われて耳を澄ます。
確かに、ドドドド…という低い地鳴りが聞こえた。
「この展開って…前回もあったよね。」
「うん。あった。」
「ありましたわね。」
「…。」
四人は顔を見合わせ、そして…。
「逃げますわよ!」
牡丹の一言で一斉に走り出した。
「ふふふー。逃げ惑うといいよ! あ、反省しながらね!」
「パステルくん!」
赤い機体に乗ったパステルくんが、看板を手に持ちながら嬉しそうに、牡丹達を追い回す。
その看板には…。
『自業自得の闇釜〜牡丹、久慈川りせ、天城雪子、金杉七海へのオシオキ〜』
と書かれていた。
「や、やっぱりこうなるの!?」
「前は野菜だったけど、今回は…うわあぁぁっ!」
背後をちらりと見たりせは、前回同様悲鳴をあげた。
「今回は何!?」
「え、液体! 多分この匂いは…。」
「…! スープですわ!?」
背後から見えた茶色の液体…恐らく、スープだろう。それが牡丹達めがけて流れてきていた。
「あれじゃ逃げられないよー!」
「目の前にドアとかないよ!?」
「もう目前まで迫ってきてるよおぉぉっ!」
何と、話している間に液体がこちらまでやって来たようだ。
「うわあぁぁぁ…。」
牡丹達はそのまま飲まれ、流されていった…。
■
「…あぁぁぁっ!」
バッシャーンッ! と水柱が四本ほど上がる。
その後、浮き上がってきた牡丹達が見たもの。それは…。
「…ラーメン?」
そう、麺、具、スープ。それはラーメンだった。だがただのラーメンではなく、麺も具も、大きい。
「って、苦っ!」
「何これ! 苦い!」
「これはもしかして…私の作ったラーメンですの?」
浮き上がる際、スープを飲んだ四人は顔をしかめる。だが牡丹は、その苦い味付けに心当たりがあったのか、首を傾げた。
「当たりー。牡丹、どう? 自分の作ったラーメン。」
「うぅ…苦いですわ…。」
「苦いし毒物なんだよ。じゃー、次!」
急に底が抜け、ラーメンの具材が流れ出る。
「へ? うわぁぁぁっ!」
牡丹達はその流れに飲まれ、落ちていった。
そしてまた別の器で、水柱が上がる。今度は真っ赤に染まったうどんだった。そう、りせが作ったあのカレーうどんだ。
「こ、これは私が作った…。」
「め、目が痛いですわ!」
「うっ…!」
辛さのせいか、牡丹は目を押さえ、雪子は顔をしかめ、気絶してしまった。
「わーっ! 雪子センパイ!」
「他人を気絶させる辛さ…よくわかったよね? りせ。それじゃー次々!」
「わ、ちょっと待ってパステルく、うわあぁぁぁっ!」
反論させる暇を与えず、再び底が抜ける。
次なる器は、醤油ラーメン。だがしかし…。
「…味がない。」
「香りがするのに味がないってどう作ればなるの?」
そのラーメンに味はなく、まるで生でお麩をかじっているような感覚を覚えた。
このラーメンは、恐らく雪子のだろう。
「ボクもそれ聞きたかったけど、本人気絶してるから無理だね。じゃ、次々ー!」
「せめて何か言わせ、きゃあぁぁぁぁっ!」
何も言わせないまま、パステルくんは底を開け、一同を落とす。
水柱が四度上がると思いきや、次に辿り着いたのは、地面。
気絶している雪子は、幸いにも七海が抱えていたので怪我はないようだ。
「いたた…。何で地面なの!? もー…。」
「あー…多分、地面なのは…アレのせい。」
「へ?」
七海は恐る恐る、目の前にある物を指差した。
そこには、上下に荒ぶり、うねうね動く触手を持つ…七海のラーメン(?)だった。
「さぁ、これで最後だね。」
パステルくんは嬉しそうにスパナを振り上げ…降ろした。
「ゲテモノに襲われて食材に謝れ。」
そう言い残し、パステルくんが離れると同時に、七海のラーメン(?)は七海達に向かってきた。
あまりにも大きな体。荒ぶり具合、触手のうねり方。そして壁のようなものが張られており、逃げられない。
「きゃあぁぁぁぁっ!」
彼女達は、悲鳴をあげるしかできなかった…。
■
「…。」
全員、穴のあった場所を見つめながら、絶えず聞こえる悲鳴を聞いていた。
「…みんな。」
昴はおもむろに顔をあげ、そっと微笑んだ。
「パステルくんに逆らわないようにしような?」
その言葉に、全員頷きを返した…。
おーわれ。
- 結果発表と例のアレ おまけ ( No.42 )
- 日時: 2014/09/05 22:14
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
おまけ。
料理対決が終わり、一夜明けた。
「そうだ、相棒。ちょっと神殿に来てくれないか?」
「何だ? 陽介。さては合コンでもセッティングした」
「黙って来てくれないか?」
陽介が睨み付けるので、悠は渋々着いていった。
そして神殿まで辿り着くと、そこには烈がいた。
「あれ? 烈。体はもういいのか?」
「一日寝たら大分楽になったよ。さて、先輩。何で呼ばれたか、分かってるか?」
「合コン。」
「誰がそんな事で呼ぶか馬鹿悠。」
メラ、と焔が揺らめく。烈、ついに悠にも先輩を外したか。無理もないが。
陽介もスサノオを出して準備万端のようだ。
「りゅーとさんからな、お前の事を殴っとけって言われたんだ。理由はわかるか? 相棒。」
「うむ、わからん。」
完全にすっとぼける悠に、烈は雪花の評価用紙を取り出し、悠に突きつけた。
「雪花に何変態行為を働こうとしている訳? この変態。」
「変態じゃない! 純粋に雪花とコミュ、そして恋人フラグを立ててもら」
「一辺死ねこの変態! 運命浄化!」
「スサノオ! 【疾風ハイブースタ】付きの【ガルダイン】!」
りゅーとさんから送られてきた“炎のルビー”と“風のエメラルド”により、烈と陽介の攻撃力は上がっている。
そんな二人からの一撃により…。
「ぎゃあぁぁぁぁっ!」
哀れ悠はズタボロになるまで渦巻く焔の中に閉じ込められてしまった…。
「まったく、いつもいつも…ん?」
渦巻く焔が止んだ時、ヒュルル…と空を切る音が聞こえ、烈と陽介は音のした上空を見た。
そこには、なんと…。
「え、あれ何だ?」
「ちょ、こっち向かってきてないか!?」
無数の小型ミサイルらしき物体が飛来していた!
これには烈も陽介も、慌てて逃げ出した。
ミサイルらしき物は悠に向かって一直線に飛んでいき…。
「ぎゃあぁぁぁぁっ!」
トドメと言わんばかりに直撃した…。
烈達の周りに、残骸がコロコロと転がってきた。
「あー、びっくりした…。あれ、これペンシルロケットって奴か?」
「一体誰がこんなん…あぁ、理音さんか。」
「あー…だな。こんなん送りつけるの、あの人しかいないか。」
送り主に心当たりがあったのか、烈はすぐに納得し、それを聞いた陽介も頷いた。
「さて、烈。折角だしこのまま鍛練して行かないか? 病み上がりだし、手加減してやっからさ。」
「手加減なんていらねーよ。」
二人はボロボロの悠を置いて、神殿の中に入っていった。
ちなみに悠は丁度外回りから帰宅した鏡と凪により、簡単な手当てを受けて帰っていったそうな。
今度こそおーわれ。
- 結果発表と例のアレ 後書き ( No.43 )
- 日時: 2014/09/05 22:24
- 名前: 奏月 昴 (ID: WpxyeKoh)
後書き de 雑談
私
—軽い気持ちで再び書いた続編。ようやく終わったわー。
りせ
「」
※気絶
風花
「り、りせちゃんが気絶してますが…。」
私
—そのうち起きるよ。多分。でもこれのお蔭でいい感じに頭がギャグに切り替わったから、シリアスムードの船の事件は一旦ストップになりそう。
風花
「こちらとしては早く解決させたいのですが…。」
私
—頑張るよ…。でも、ギャグでやりたい事あるしなぁ…。
鏡
「やりたい事?」
私
—料理対決・男子+ジョーカー一味編。
鏡
「えーっ!? や、やるの!?」
昴
「だけど、俺は男子の料理なら食べてもいいかなと思う。」
風花
「どうしてですか?」
昴
「ハズレの率が少ないんだ。何気に男子料理出来る奴が多いんだよ。家事スキル男子トップの完二は元より、クマだってジュネスのバイトで鉄板焼美味いし、烈も家事当番に組み込まれてるしな。レシピがあれば陽介も作れるみたいだし。ジョーカー一味はジョーカー本人以外見た事ないけど、家事は一通り出来るって聞いてる。多分、ちょっと失敗するくらいで死ぬ程のゲテモノは出来ないだろ。」
私
—きっぱりと言うわね。
昴
「まぁな。…とにかく、男子はパステルくんさん様を降臨させるような料理は来ない。断言できる。」
風花
「も、もうアレはいいです…。怖かった…。」
由梨
「風花まで怯えちまったし…。」
理乃
「あの馬鹿も珍しく怯えていたわ…。恐るべし、パステルくんさん様。穏和な人は怒らせると怖いって本当なのかしらね。」
由梨&昴
(ここで(アタシ/俺)は頷くべきだろうか。)
※理乃を見ながら。
理乃
「?」
私
—あんたら…。まぁ、いいわ。この辺で終わらせない?
昴
「そうだな。じゃっ、まったなー。」
感想等あればどうぞ。