二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 少しの幕間と新たな機能 ( No.435 )
- 日時: 2015/01/13 14:12
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /zhdonb0)
某日、神殿・昴の執務室…。
「悪いな、理乃。変な事で呼んでよ。」
「いえ、構いませんよ。私もみんなと出会う前の物語、気になっていましたから。」
昴は今、理乃に創世ノートを預け、彼女の持つパソコンに今までの足跡を残している。いわば、バックアップのようなものだろうか。
ちなみにこの部屋には今、理乃、昴の他に、鏡、りせ、風花、由梨と、創世手帳所持者が集まっていた。
「(それに…丁度私も気になっていたからね。第一回の料理対決とか色々…。あ、つぎドカ!のみんながネクロニカした時のかな、これ。後で風雅さんからログ貰おうかな…。)それにしても、量が多いですね…。」
「そりゃ、一年以上経ったからな。この世界が生まれてから。」
「私達の世界を生み出してからはまだそんなに時間は経っていませんが…この世界はもうそんなに経っているんですね…。」
創世ノートに書かれた足跡を見ながら、理乃は感慨深く頷いた。
そんな事を話している間にも、手を休めないで作業をしていた理乃が、ぴたりと動きを止めた。
「あら? 昴さん、一昨年の十二月辺りの、烈さん達つぎドカ!1Pメンバーの記述がないのですが…。」
「一昨年の十二月?」
「それって…ワンダークロック事件の辺りじゃない?」
理乃の言った辺りの日に何かあったのを知っているりせが、そう言った。
「ワンダークロック事件? んだそりゃ?」
「ああ、風花と由梨は知らないか。…そっか、もうジョーカー達がここに住むようになってから一年経つのか…。」
「ワンダークロック事件は、烈達がリリィ達と出会った切欠なんだ。丁度烈達のつぎドカ!バトルが終わって一年後に起こった出来事で…オレ達がこうして時間の繰り返しをしている最大の理由なんだ。あ、パステルくんが喋れるようになったのも、ここからだよね。」
「あぁ…スバルさんから聞いた事があります。…そっか、これが切欠なんだ…。」
感心したように呟く理乃。…実際は作者都合なんだけどね。
「(それ言うな。)記述が抜けているって事は…あ、そうだ。その時誰も所持者いなかったんだっけ。」
「紅がついてったけど、紅も手帳所持者じゃないから、その時の話は烈達しか知らないんだよね…。」
—私もなんか忘れてると思ったら、それか…。うーん、困ったな…。
「そういや、お前干渉したんじゃないのかよ。そん時にノートに描かれなかったのか? この時の物語。」
そう、創造者はこの事件の際一度、パステルくんに干渉している。
—いや、したけどさ…この時はパステルくんの夢を介して干渉したから、ノートは無反応。パステルくんと私の会話は記述されてるけど…それ以外は駄目ね。
「みんなに当時の話を聞くしかないのかな…。」
—…あ、あるにはある。ね、私、ちょっとみんなを…この事件に関わったみんなを集めてくれない? お茶会がてら、当時の話を振り返っても面白いしね。
「わかった。」
そして、創造者の命により、急遽お茶会が開かれる事になったとか…。
■
「悪いな、急に呼び集めて。」
神殿のリビングに、つぎドカ!1Pメンバーとジョーカー一味、そしてパステルくんと紅が勢ぞろいした。
—じゃ、理乃ちゃん、頼んだ。
「(はい。)では、皆さん、この手帳に触れていただけますか? …ワンダークロック事件の事を思い出しながら。」
「へ? 何で?」
「ちょっと必要なんです。お願いします。」
理乃は首を傾げる一同に構わず、彼らの中心に自分の創世手帳を置いた。
(おい、理乃は何か策があるのか?)
—理乃ちゃんがこんな事もあろうかと、宝珠の機能の一つ、録画機能を応用して手帳を改造したのよ。で、何故か成功して…過去の出来事を抽出して物語とする事ができるようになった。いわば、氷海ちゃんの時に付け加えたのをその時だけじゃなく、更に過去に遡れるようになったって感じね。
(おい、理乃って何もんだっけ? 俺の前に生み出されたお前の分身みたいなもんじゃなかったっけ?)
—天才設定付け加えたのが間違いだったかしら。
余談だが、理乃達司組は創造者の高校時代の吹奏楽部の仲間で、自分を含めた同じパートのメンバーをモチーフに生み出された存在であり、その中でも理乃は創造者を元に生み出された存在である。まぁ、今となっては数と名前だけ名残を残して当時考えていたキャラクター像の面影はまったくといっていい程ないが。
「ふーん、まぁ、いいけど…。」
全員、首を傾げながらそっと理乃の手帳に触れる。暫く触っていると、理乃が「もういいですよ。」と合図を出す。それを聞いた一同は手を離し、理乃は手帳を持って昴の元にやってきた。
「はい、どうぞ、昴さん。」
「本当に上手く…。」
半信半疑の昴は、創世手帳を創世ノートに乗せ、同期を開始した。
「…いってら。」
そこにはしっかりと、昴の知らなかった物語が…烈達が異次元にいっている間の出来事が書かれていた。
「ねーねー昴ー。何が上手く行ったの?」
「ん、いや…お前等が無茶した原因を調べられたから、上手く言ったって感じ。」
「げ。」
ローズの言葉に答えた昴の言葉に、全員表情が固まる。
『そうか…我も所持者ではないし、神も万能ではないからな。その当時の記述が抜けていたのか。』
「だからお前に前もって事情を聞いたんだ。さーって、プレイバックをしながら洗いざらいあの怪我の理由を語ってもらおうか。特にそこの赤髪。」
「…。」
あの中で一番の大怪我を負っていたのは、烈だ。
彼は昴から顔を背け、その原因であるリリィも、烈の膝で昴からそっぽを向いてしまった。怒られると思ったのだろう。
「…みんな、とりあえず、振り返ろう? 一年前の事だし、覚えてるでしょ?」
「そ、そうだな…。しかし、もうあの事件から一年か…。」
「当時、どうなっていたのか私も気になります。よければお話願えませんか? 当時の事。」
その時にいなかった風花が、興味津々といった表情でジョーカー達に尋ねた。
「まぁまぁ、物語を見ながら紐解こうぜ。」
昴は創世ノートを全員の前においた。そこには既に、ワンダークロック事件辺りの物語が同期されていた…。
- 言葉が消えた理由 その一 ( No.436 )
- 日時: 2015/01/13 14:21
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /zhdonb0)
「…一年、か。」
「何が?」
とある日の放課後、烈が教室で呟いた言葉に反応した氷海が聞く。
「あのバトルからだよ。…俺と氷海が最後まで残って戦った、あの。」
「ああ、あれね。…もう、一年も経つのね…。」
「時間が経つのは早ぇよな…。あ、そうだ、氷海。これから暇か?」
「えっ? ええ、特に用はないけれど…。」
何か妙案を浮かべた烈の顔。氷海は少し嫌な予感がして、聞くのを少し躊躇いたくなった。
(まさか、また…。)
「鈴花と風雅を誘ってさ、どっかでお茶でも飲みにいかねぇ? 美味いケーキを出す店、昴さんから教えて貰ったんだ。」
「そ、そっち!?」
氷海は予想と違った答えに、素で驚く。
「そっちって…何考えてたんだよ。」
「…てっきりまたバトルでもするのかと思ったわ…。」
「ひでぇな! 俺は年がら年中バトルの事ばっか考えてるわけじゃねぇよ!」
「ご、ごめんなさい…。」
多大な誤解をされ、烈はふくれ面を浮かべながら反論すると、氷海は申し訳無さそうに俯いた。
二人の間に、微妙な空気が流れる。
「ぼにゅっ!」
そんな中、パステルくんが氷海の肩から机に降り立ち、烈を見た。
「パステルくん?」
「ぼにゅっ、ぼにゅぼにゅっ!」
パステルくんは適当な紙に栗の絵を描く。
最初、何が言いたいかわからなかった烈だが、ぽんと手を打ち、納得したように頷いた。
「心配すんな。パステルくんの好きなモンブランもちゃんとあるぞ。」
「ぼにゅーっ!」
(パステルくん、可愛い…。)
烈の言葉に、喜びを露にするパステルくん。そのパステルくんを、氷海は恍惚とした表情で見つめる。
「ははは、嬉しそうだな! …あれ?」
「ぼにゅ?」
急に黙り込んで考え込む烈を、パステルくんは首を傾げながら見つめる。
「なぁ、氷海。パステルくんって前…俺達が出会ってバトルしてる頃には、普通に喋れてなかったか?」
烈の記憶が確かなら、パステルくんは黒のようにテレパシーみたいなものではなく、普通に喋る凄いネズミだったはずだ。
だが、いつからこうなったのだろうか。疑問に思った烈は一番近くで長い間パステルくんを見ている氷海に聞こうと声をかけるも…。
「…首を傾げるパステルくん…可愛い…。」
「…聞いちゃいねぇや。」
まだ、パステルくんを見つめながら恍惚としていた。
「なぁ、パステルくん。お前、俺達が出会った頃はまだ話せてたよな?」
「ぼにゅ…。」
「『ぼにゅ』しか喋らなくなったのには、理由があるのか?」
烈が問うと、パステルくんは頷いた。
だが、これ以上聞く事は、通訳となる黒か紅がいないと難しそうだった。
「…仕方ねぇな。どっかで紅と出会えないかな…。」
…おい、黒は宛にしてないのか。そんなツッコミを誰もせずに、烈は氷海を元に戻し、風雅と鈴花を誘う為に隣の教室へと向かった。
- 言葉が消えた理由 その二 ( No.437 )
- 日時: 2015/01/13 14:26
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /zhdonb0)
風雅達と合流した烈達は、喫茶店への道を歩いていた。
「でさー、そこのゴマと豆乳のモンブランが甘さ控えめで美味いんだよ。」
「昴さんからフレンチトーストもお勧めされたよ! ふわふわで甘くて美味しいんだって!」
「あの理音さんも、昴さんに連れられて行ってみたら、たまに通ってる程惚れ込んだみたいだし…。」
「それは楽しみね! ねっ、パステルくん。」
「ぼにゅっ!」
他愛もない話をしながら歩く四人。
そんな四人の前に、見慣れた紅色と黒色が映った。
「…おっ、丁度よかった! おーい、紅ーっ! ついでに黒ー!」
『…む? 烈達か。』
『何故我の方がついでなのだ!』
そう、探していた紅とついでに黒だ。紅も黒も烈達に気がつき、翼を羽ばたかせて烈の肩に乗った。
『ふむ。やはり鏡の肩も落ち着くが、烈の肩も落ち着くな。』
「ははっ、やっぱお前、黒の分身だわ。おんなじ事言ってる。」
『黒の経験だが、長年乗りなれてるからな。ところで、我に用か?』
「あ、とと…。ああ。なぁ、紅。黒の記憶にさ、パステルくんが話している時の記憶、ないあでっ!」
紅にそう質問しようとすると、黒が烈の耳を突き刺した。
『何故それを我に聞かぬ?』
「いてて…。お前はどうせ覚えてねぇだろ。どうだ? 紅。」
烈に問われ、考え込む紅。
『…ふむ。済まぬが、お前の母親が凄い形相で我をフライパンで叩く光景しか浮かんでこない。』
『そんなに強烈だったか、アレ。』
「ごめん。この馬鹿黒のせいで…。」
『あの母親が笑いながらフライパンを持ってこちらに来る光景が…うぅ…!』
目を虚ろにさせ、半分死んだような表情を浮かべて体を震わせながら言う紅。かなりトラウマらしい。
「紅は本当に、黒の分身なのかなって疑うよ、僕…。」
「しっかりしているから、確かに疑うわ…。」
「…大人の話し合いをされているのが黒だと納得しちゃうけど…紅だと違和感あるよね。物凄く。」
『お前達本当に失礼だな!』
他の三人も、紅に対して哀れな視線を送り、黒はそれに対し憤慨していた。
「まぁ、そこのところは、うん。後でにしようぜ。今は…。」
烈は氷海を見る。
「なぁ、氷海。さっき聞こうとした事だが…俺達が出会ってバトルしてる時くらいには、普通に言葉を喋れていたよな?」
「ええ。話せなくなったのは確か…バトルが終わって少ししてから、かしら。」
「やっぱりそうか…。なぁ、パステルくん、話せなくなった原因に、心当たりあるか?」
「ぼにゅ…。」
『…ふむ。あるとは思うが、覚えていないそうだ。』
紅がパステルくんの言葉を訳すと、全員、困ったような顔をした。
「覚えてないのか…。」
「うーん、誰かに何かをされたか、あるいは強いショックを受けたとか…。」
パステルくんの言葉が話せなくなった原因を考える一同だが、心当たりが見つからない。
「考えても仕方ないさ。まずは、お茶でも飲んでゆっくりしようぜ。」
「それもそうだね。」
「後で昴さんに相談してみようかしら…。」
「それも良いかもしれないね。あ、でも忙しいから大丈夫かな…。」
烈達はこれからの事を話しながら、喫茶店への道を歩いていった。
- 言葉が消えた理由 その三 ( No.438 )
- 日時: 2015/01/13 14:31
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /zhdonb0)
お茶会も終わり、パステルくんは氷海の家に間借りしている倉庫の中で掃除をしていた。長い間掃除を怠っていた為か、埃だらけだ。その為、パステルくんはしょっちゅうクシャミをしてしまう。
パステルくんが掃除をしていると、パステルくんが手に持つのに丁度良い大きさの、小さな時計が見付かった。パステルくんの肩から下げられるような紐もついている。時計を見たパステルくんは、首を傾げた。
(あれ? ボク、大切な事を忘れている気がする…。)
パステルくんは時計を肩に下げ、考え込んだ。そして、何かを思い出したのか、倉庫の中を引っかき回した。
(あった〜!)
目当ての物を見付けたパステルくんは、早速それの埃を払った。それは、パステルくんが丁度乗れるような大きさの、赤い車だった。パステルくんは急いで工具を取りに行き、赤い車の修理を始めた。
■
数日後、パステルくんが行方不明になったと、氷海から連絡を受けた昴達は、必死にパステルくんを探していた。
日がすっかり落ちた頃、氷海の携帯電話の着信音が鳴った。
「もしもし…あっ、お父様! …えっ? パステルくんが見付かった!? 今は病院に? …分かりました。」
氷海は急ぎ、氷海の父のいる病院へと向かった。
- 言葉が消えた理由 その四 ( No.439 )
- 日時: 2015/01/13 14:36
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /zhdonb0)
パステルくんは、病室の小さなベッド(パステルくんサイズ)の上で、スヤスヤと寝息を立てていた。しかし、時折うなされ、苦しげな顔をした。氷海はパステルくんの治療をした医者—氷海の父親から話を聞くと、昴達にメールを送った。内容は、パステルくんが見付かったことと、現在病院にいることだ。
暫くして、昴達は病室にやって来た。
「氷海! パステルくんは!?」
「声が大きいわよ、烈。…衰弱してるけど、暫く休めば良くなるってお父様が言ってたわ。」
氷海がそう言うと、一同はほっとした顔になった。
「一体何があったのかな…?」
『知らん。』
「『(お前/貴様)は速攻で切り捨てるなっ!』」
『ぎゃあっ!』
何故か病室に入ることが許可された黒が即行で鈴花の言葉を切り捨てたので、烈が拳骨を食らわし、同じく許可された紅がくちばしで体を突き刺した。
哀れ、黒はその一撃で伸びてしまった。
『…こほん。とにかく、それは本人に直接訊くしかあるまい。』
「そ、その事だけど…関係あるか分からないけど、お父様から気になる話を聞いたわ。」
紅の疑問に答えられるか分からないものの、氷海は話した。
「実は、黒いローブの人が、パステルくんをこの病院に運んで来たのよ。顔はよく見えなかったけど、大人の方らしいわ。パステルくんをお父様に預けると、そのまま消えたみたい。」
「黒いローブの人って…。」
「鈴花、多分同じ事を考えたと思いますが、とりあえずそれは振り払った方がいいと思いますわ。」
鈴花は心当たりがありそうな顔をしたが、牡丹に言われてすぐにその考えを振り払った。
暫くすると、パステルくんは目を覚ました。
「にゅ…。」
「パステルくん!」
泣きそうな眼で、氷海はパステルくんを抱きしめた。
「おい、パステルくんは病み上がりなんだから、あまり乱暴に扱うなよ!」
「あ…ごめんなさい…。」
氷海は謝りながら、パステルくんをベッドに戻した。
「…! ぼにゅっ!」
パステルくんは慌ててベッドから降りようともがいたが、力が入らないのか、思うように身体が動かない。
「駄目よパステルくん! まだ安静にしなくちゃ!」
「ぼ、にゅっ!」
何かを訴えるように、パステルくんは氷海を見つめた。
「紅、通訳して。」
『分かった。』
鏡の頼みで紅の通訳を介して、一同はパステルくんが何を訴えたいのかを理解した。
■
時空に存在する巨大時計、ワンダークロック。そのワンダークロックを、謎の五人組がバラバラにしてしまったのだ。
時計の針は四つあり、それを四人でそれぞれ奪った。残りの一人、リーダーと思わしき者は、ワンダークロックの本体をバラバラにし、どこかに飛ばしてしまった。
パステルくんはワンダークロックを元通りにする為に、五人組に挑んだ。しかし、パステルくんは敗れ、ワンダークロックと五人組についての記憶を奪われてしまった。記憶だけではなく、言葉も。
その為、パステルくんは今までワンダークロックの事を忘れていたのだが、ふとしたきっかけで思い出し、最近になってようやくワンダークロック奪還の為の行動を取れるようになったのだ。そして、今でも言葉を発することができないのは、以上の経緯があったからなのだ。
記憶を取り戻したパステルくんは、倉庫で見付けた、時空に入れる赤い車を直した。そして、バラバラになったワンダークロックの本体を、時を越える勢いで探し出した。
ワンダークロックの本体を揃えたパステルくんは、時空に入り、五人組と再会した。しかし、またもパステルくんは敗れてしまった。今回はボロボロになるまで戦った為、現在のように衰弱してしまったのだ…。
- 言葉が消えた理由 その五 ( No.440 )
- 日時: 2015/01/13 14:43
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /zhdonb0)
「…なるほど。そのワンダークロックを直す為に、その五人組に挑んだが、返り討ちにあったってわけか。」
「ぼにゅ…。」
昴の言葉にパステルくんは頷いた。
「…ワンダークロック、か…。」
「昴さん、どんな物か知ってるのー? 名前からして、時間が関係しそうだけどー…。」
「いや、悪いが初耳だ。…パステルくんの話だと、それは異次元にあるみたいだからな。俺の知れる範疇じゃない…。」
亜空間事件の際に、この世界を見守る彼女と連絡を取れなかった事を思い出しながら、凪の問いに答える昴。彼女にも限界はあり、恐らくワンダークロックの事も、想定外の事だろう。
「…。」
昴達が話す横で、烈は何かを考え込んでいた。
「…。」
そんな烈を、鏡は複雑そうな表情で見つめていた。
「ワンダークロックの件は、俺達で調べておく。お前達は、今日の所は帰れ。」
「そんなっ! パステルくんがここまで怪我を負って帰ってきたのに、みすみす諦めて帰れって言う」
「わかった。」
昴の言葉に氷海が反論するが、それを遮って烈が言った。
「烈君!?」
「ちょっ、烈!?」
まさか、一緒に反論するかと思っていた烈が納得したのを見て、鈴花も風雅も驚きを隠せない。
「烈っ…!」
「…氷海、俺だって、パステルくんをこんなにした奴を許せないよ。だけどさ、その五人組がどこにいるかもわからないし、手の出しようがないだろ?」
「そうだけどっ…!」
「今はさ、パステルくんが回復するのを待つ、だろ?」
烈のその説得に、氷海は黙って頷いた。
「…。」
昴は納得している烈を見て、何かを言いたそうだったが黙っていた。
■
(…。)
みんなが帰った後、パステルくんはゆっくりと起き上がった。
(怪我が治るまで、待ってなんかいられない…! 早く…早くしないと…!)
パステルくんは痛む体を押さえつつ、ベッドを出て傍らにある赤い車のような機体に乗り込む。
(時間が…滅茶苦茶になっちゃう! 昴さんは…ううん、昴さんだけじゃない。みんな、みんなそれを望むわけない!)
機体を浮かせて窓を開け、外へと飛び出すパステルくん。
「…ビンゴだな、みんな。」
その姿を病院の外から眺める、影がいたことには気がつかなかった。
「烈君も人が悪いよね、パステルくんに諦めさせたと思わせる為に、本音を隠すなんてさ。」
「本当に。あれ、同時に昴さんも騙してるの、わかってるよね?」
「お仕置きなら後でいくらでも受けるさ。」
(話を聞いた時に凪君とか気がついてそうとか思ったのは、言わないでおこーっと。)
そう、そこにいたのは烈達つぎドカ!メンバーとりせだった。
「とにかく、パステルくんを追いかけましょう。りせ、サーチをお願い。」
「了解っ! 来て、ヒミコ!」
りせはヒミコを呼び出し、パステルくんのサーチを開始する。
「…うん、そう遠くないけど、ここは…学校…!?」
「学校!? そんなところに五人組が…!?」
「あ、待って、学校じゃない。…学校、の方向に…な、何これ!? テレビに入る時みたいな…。」
「そう言えば、ワンダークロックは別の時空に存在するのよね?」
氷海の言葉に、りせはハッと息を飲む。
「そうか! パステルくんはそれを潜っていったんだ!」
「とにかく、学校にいこうぜ!」
一同は烈の号令で、学校へと向かった。
- 言葉が消えた理由 その六 ( No.441 )
- 日時: 2015/01/13 14:48
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: /zhdonb0)
学校に辿り着いた一同は、目の前にある謎の穴を前に立っていた。
「これに、パステルくんが入っていったんだね。」
鈴花の言葉の後、りせは再びヒミコを出し、サーチを開始する。
「…うん。奥に、パステルくんがいる。だけど、強い力も感じる…。」
「構うもんか! 行くぞ、みんな!」
「うん!」
風雅は鈴花を掴んで浮き、烈は黒に力を与えて精霊に戻して氷海を乗せ、穴を潜っていった。
「…まったく、やっぱり何か企んでやがったのかよアイツ等。」
『仲間がやられたのだ。素直に引き下がる奴等でもあるまい。』
烈達が消えた後、後ろから聞こえた声に、りせは小さく溜息をついた。
「こうなる事、予測してたんじゃないの? 昴さん。」
「まぁな。だからこうしてお前をサーチしてここまで来たし。」
昴は後ろに控えるヒミコを見て、ニヤリと笑った。
『…りせ、どうせお前の事だ。気がついていたのだろう? 我と神が後を付けていた事。』
「自称特別捜査隊のサーチャー舐めないでよ?」
「舐めちゃいねぇよ。さてと。」
りせとの会話を一段落させてから、紅に目配せをする昴。
『神、晩酌は旨いものを期待する。』
「わーってらい。…必ず、全員無事に連れ帰れ。」
『うむ、了解した。行ってくる。』
紅は翼を羽ばたかせ、穴を潜っていった。
「昴さんはいかないの?」
「ああ。アイツ等を信じて待つとするさ。紅にもツマミ頼まれたし。」
「私、作るの手伝」
「いらん。お前はさっさと風呂入ってベッドに潜って寝ろ。泊めてやるから。」
「ひどーいっ!」
二人はそう言い合いをしながら、学校を後にしようとしたが、昴がふと、足を止めた。
「…昴さん?」
「りせ、やっぱ、帰るのタンマ。…少し付き合え。」
「どこに?」
「…ちょっとな。」
昴はりせを伴い、学校を後にした。
■
「とまぁ、俺達はパステルくんを追って、ワンダークロックがある別次元に入ったわけ。」
ここまで振り返ると、烈が徐にそう言った。
「思えば…ボク達も今ここでこんな風に話してるなんて思わなかったよね。」
「そうだな。我はワンダークロックを壊す者。お前は修復する者。そんな仲たがいをしていた我等がこうして仲良くお茶を囲んで話をしているとはな…。」
「それ言ったら俺らだってそうだよな、リリィ。」
「うん。こんな風にお膝の上でお菓子食べてるなんて思わない。」
リリィが烈の膝に座り、サクサクとクッキーを食べる姿を見て、昴も頷いた。
「昨日の敵は今日の友、って奴かな。」
「そうかも知れぬな。さて、続きを紐解いていこう。」
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