二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 激突! 鈴花VSローズ その一 ( No.451 )
- 日時: 2015/01/14 21:49
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 3JMHQnkb)
「やっ!」
こちらに向かってくる落書きのような鳥を、鈴花は踵落としで落とす。
「…君の力はこんなもの? 私これでも、つぎドカ!メンバーでは最弱なのになー。」
「むむむ〜っ! いっけー!」
負けじと再び落書きの鳥を召喚し、更に落書きの馬を召喚して飛び乗り、鈴花に向かってきた。
「…猪突猛進、か。昔の烈君みたいだね。」
鈴花は慌てずに種の入った袋からパラリと種を地面に蒔く。すぐに芽を出し、咲かせたのは、艶やかな赤が美しい…薔薇。
「う、うわわっ! と、止まれーっ!」
目の前に広がった茨の壁に気がついたローズは馬や鳥に止まるよう命じるが、時既に遅し。落書きの馬も鳥も、茨の餌食になってしまい、消え失せる。
ローズ自身は馬に守られて大した怪我はないようで、すぐに鈴花と距離をとった。
「急に茨は卑怯だぞ!」
「卑怯も何もないよ。だってこれが私の能力だもん。」
扇子で口許を隠し、くすくす笑う鈴花。
(このローズって子、多分、私達と会った頃の烈君みたいに挑発に乗りやすいタイプみたいだね。うまくいけば、自滅に誘えるかな…?)
どうやらこれも作戦の内のようで、相手の様子を見極めながら、笑い続けた。
「もう怒った! 本気で行く!」
ローズは懐から小さなキューブを取り出し、掲げた。
(あのキューブは何? 本気で行くって事は…身構えた方が良さそうだね。)
鈴花は全身に緊張を走らせ、身構える。
同時にローズはキューブを放り投げる。
- 激突! 鈴花VSローズ その二 ( No.452 )
- 日時: 2015/01/14 22:10
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 3JMHQnkb)
すると、キューブが展開していき、辺りの景色が四角く縁取られていく。まるで、一昔前のゲームの中にいる錯覚に、鈴花は陥る。
(景色が、変わった…? これが、あの子の舞台なんだね。)
辺りを警戒しながら、様子を伺う。
「さっきまでの僕だと思うなよ! いっけーっ!」
ローズは再び落書きのような鳥を召喚し、鈴花に向けて飛ばしてくる。
「やる事変わらないなら、私には勝てないよ!」
鈴花は落ち着いて蔦を生やし、ガードを固める。
予想通り、鳥は蔦に阻まれ、動けない。だが…。
「…えっ!?」
鳥の後ろから、小さな天道虫が現れた。天道虫は蔦の隙間を通り、鈴花を目掛けて飛んでいく。
「くっ…!」
鈴花は蔦を生やそうとするも、天道虫は既に目前へと迫っていた。
(駄目だ! これじゃ蔦を生やす事ができない! せめて…!)
手に持った扇子を開き、天道虫を叩き落とす。だが、それでも追い付かず、何匹か鈴花に引っ付いた。
鈴花は慌てて取ろうと手に触れた直後、爆発を起こした。
(くうっ! ば、爆発したっ…! は、早く取らなきゃ…!)
だが、天道虫は次々と連鎖的に爆発する。
「あうっ! いっ、たぁ…っ!」
「どうだーっ! ボクの凄さ、思い知ったかーっ!」
鈴花が痛みに呻いている姿を見て、ローズは嬉しそうに高みから笑う。
「ぐっ…生意気…!」
「まだまだ行くぞーっ!」
ローズは鈴花のいる地面を指差す。すると、そこから魚が顔を出した。
一匹や二匹ではない。さながら、水族館の中にいる魚群の如く、大量に。
(さ、魚!? えっ!? 何で魚!?)
魚はまるで泳ぐように、地面をもぐら叩きのもぐらのように出入りする。
所々、電気を帯びているような気もする…。
(撹乱させるのが目的!? でも、このパチパチは…?)
「いっけー! 雷魚!」
(ら、雷…!? ま、まずい!)
気がついた時には、既に雷魚は鈴花の目前まで迫っていた。
「あっ…!」
魚が鈴花に触れる。すると、魚は急に放電を始めた。
「あぐっ…きゃあぁぁっ!」
鈴花はたまらず悲鳴をあげ、膝をついた。
- 激突! 鈴花VSローズ その三 ( No.453 )
- 日時: 2015/01/14 22:17
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 3JMHQnkb)
「へっへーん、どうしたの? もう終わり?」
ローズは膝をついた鈴花を見て、自身の勝ちを確信したように笑った。
「…。」
「あっれー? 言葉を話す余裕もなーい?」
「…。」
鈴花はこっそりと、ポケットに入っている種袋を握りしめる。
(…牡丹は…牡丹はあの時、こんなに、痛かったのかな…? こんなに痛い思いをして…帰ってきたのかな…?)
そして目を閉じ、痛む体を押さえながら立ち上がる。ポケットの種袋を握りしめたまま。
「…まぁ、そんなの、関係ないか。牡丹は牡丹だし。」
「何をブツブツ言ってんだよ。」
「別に。君の手の内、もう終わり? なら、こっちも行くよ!」
鈴花はポケットの中で握り締めていた種を、ローズ目掛けて投げつける。
「どこみてんだよーっと!」
が、すんなりとローズは避けていく。
鈴花の、扇子の裏に隠された笑顔に気づかずに。
「君には、私の能力を見せてきていたはずなのにな。」
(…!?)
「私は植物使い…。種があれば、どこでも花を咲かせる事ができるの、よっ!」
パチン、と扇子の閉じられた音が響くと同時に、ローズに向かって無数の蔓草が伸びる。それは見事に、ローズを絡め取った。
「うわわっ!」
ローズは突然の事に狼狽える。鈴花はすぐにローズに接近し、そして、その体を蔓草ごと蹴り飛ばした。
「うわぁぁっ! あぅ…! ひ、卑怯だぞ! 動けない相手に蹴りを入れるなんて!」
思ったより遠くに吹き飛んだローズは、鳥達を召喚し、蔓草を切って貰いながら鈴花に向かって怒鳴った。
「卑怯? そうかな? 植物を操る力も、この独学の体術も、私の能力だよ? 君が、動物達を使うのと同じ。」
「うぐぐ…!」
返す言葉が見つからず、悔しそうに呻くローズ。
「もう許さないぞ!」
ローズは目の前に落書きの白熊を、辺りには天道虫や鳥を召喚させ、地面に雷魚を待機させる。
「いっけー!」
そして、ローズの号令で白熊達は突っ込んでくる。
そんな状況の中、鈴花は…。
- 激突! 鈴花VSローズ その四 ( No.454 )
- 日時: 2015/01/14 22:32
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 3JMHQnkb)
「…くすっ。」
笑っていた。余裕の表情で、口許を扇子で隠しながら、優雅に。
(大丈夫。仕掛けはバッチリ。…相手の土俵に乗る事なんかない。…烈君達には効かなかったけど…私の得意な舞台を…作り上げる!)
扇子を開き、舞い踊るように回転する鈴花。
すると、ゆっくりと、木々が、草花が、鈴花の回りからゆっくりと芽吹き、まるで、雪解けの後の春の訪れのように、辺りが緑に彩られていく。
「え、えぇっ!? な、何だよこれ!」
ローズは驚きを隠せず、狼狽える。
(避けた時とかに、種、蒔いておいたんだよね。さぁ、反撃開始だよ!)
鈴花はローズ目掛けて、巨大な木々を伸ばす。
「うわわっ! み、みんな! ボクを守って!」
ローズは驚いて、咄嗟に召喚しておいた動物達を向かわせるも、鈴花の伸ばした木々達になぎ倒されてしまい、そのまま消滅していった。
「あっ…!」
「捕まえて!」
鈴花が木々達に命じると、木々達はまるで意思を持ったかのように、自分達で絡まり合い、強固な檻となり、呆然と立ち尽くしていたローズを閉じ込めた。
「う…!」
目に涙を浮かべるローズ。自分が作り出した舞台は既に、鈴花の力に上書きされ、面影を残さない。加えて、自身も鈴花により閉じ込められてしまった。
…敗北を確信した、涙だった。
「うわあぁぁぁぁん! ジョーカー様あぁぁぁっ!」
ローズは膝を折り、顔を覆って子供のように泣き出した。
(何とか、勝った…かな。…けど…。)
目の前には、未だに泣き続けるローズ。
勝ったのに、何だか言い様の無い罪悪感に苛まれた。
(…あーっ、もう、仕方ないなぁ…。)
鈴花はローズの側に寄り、檻の隙間から手を入れ、その小さな頭を撫でてあげた。
■
暫く撫で続けていると、ローズの泣き喚く声が聞こえなくなった。
心配になった鈴花が覗き込むと、ゆっくりと寝息を立てるローズがいた。どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ。
(…泣き疲れて寝ちゃったか。案外可愛いところあるじゃん。)
鈴花は木々を操り、ローズを取り出す。その際、ローズのローブから、ハートが刻まれた桃色の玉が滑り落ちた。
(あれ? これは…。)
ローズを一度檻の中に置き、玉を拾い上げる鈴花。
その瞬間、玉が強い光を放った。
「眩しっ…!」
鈴花は思わず目を覆う。すると、急に手が軽くなる。
玉が一人手に浮いたと理解するのに、時間はかからなかった。
「あっ!」
取り戻そうとするが、時既に遅し。玉は既に空間の奥へと飛んでいってしまった。
(…。って、こんな事してる場合じゃないよ! パステルくんを追いかけないと!)
突然の事に暫し呆然とする鈴花だが、すぐにはっと我に帰り、ローズをもう一度持ち上げ、檻の中に草を生やしてから再び戻し、持ってきていたマフラーをローズにかけてから、奥へと向かっていった。
- 激突! 鈴花VSローズ その五 ( No.455 )
- 日時: 2015/01/14 22:43
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 3JMHQnkb)
ワンダークロック前…。
(…。)
ジョーカーは静かに顔をあげた。
視線の先には、ハート型の玉。そして、それが嵌め込まれた針が、ゆっくりと時を刻む。
(ローズがやられたか…。)
その様子を見た後、ジョーカーは未だワンダークロックの下で気絶しているパステルくんを見る。
(今回は随分と頼もしい仲間が一緒のようだな。だが、我には勝てぬだろう。)
パステルくんを見つめながらニヤリと笑った後、再びハート型の玉を見た。
(…ローズ…。)
その、ローブの奥に見える顔は、少しだけ、悲しそうに見えた気がした…。
■
「とまぁ、これが、ボクと鈴花の戦いだよ! ミルキー達が悉くやられてボク、どうしようかと思った…。ジョーカー様に怒られるって思ったし、鈴花に更にボコボコにされるかと思ったよ…。」
「あはは、やだなぁ、ローズったら。そんな事しないよ。…仮に、ローズ達が私達を殺そうと考えてたら、どうなるかわかんなかったけどね。」
鈴花がそう不安そうな声で言うと、ローズがふるふると首を振った。
「ボク達は初めから、誰かを殺すつもりはないよ。」
「わかってるよ。もし初めから殺すつもりでかかってきていたら、パステルくんは今頃、最初の接触でこの世にはいないはずだもんね。」
そう、ここにパステルくんが無事にいる事こそが、ジョーカー達が無駄な殺生をする気がなかった証拠だ。
「それにしても鈴花、こん時に牡丹の事を過らせるなんて、意外だな。」
「私もびっくりだよ。ローズに負けちゃうって時に、何で牡丹の顔が出てきたんだろう…。でも…。」
「でも?」
「…不思議だよね。あの時、牡丹の姿を過らせた時…凄く、元気が出たの。何だか、負けない気がしたの。」
いつもは仲の悪い二人。だが、その脳裏に過った現身の姿に、何故か鈴花の心は励まされた…ような気がした。
「…罵ってても、何だかんだでお前等も通じ合ってんだな。」
「かもね。あんなのと通じ合うのは嫌だけど。」
鈴花がクスッ、と小さく笑うと、全員笑みを見せながら、次のページを開いた…。