二次創作小説(映像)※倉庫ログ

激突! 烈VSリリィ その一 ( No.464 )
日時: 2015/01/15 21:52
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fRqJ.hcc)

パステルくんが先に行った事を確認した黒は、再びリリィ目掛けて突っ込む。

「お、おい黒! 馬鹿正直に突っ込むな!」

烈は黒の背中で叫ぶも、聞く耳を持っていないようだ。

「…そう、突っ込まない方が、良かった。」

リリィは空間に沢山の宝石を散りばめた。
宝石は宙を漂い、動かない。

『フン、そんなもの食らうか!』

だが黒は、まるで風のようにすいすいと避けていく。

「う、うわっ、落ちっ…!」

…後ろに烈がいる事を忘れて。

「…。」

諦める様子のない黒に、リリィは動かない宝石に紛れさせ、速度の遅い宝石を黒へと飛ばした。

「あっ、まずい!」
『どうした? 宝石を動かさんのへぶぅっ!』

目前に迫ってきていた宝石に気が付いた烈は急いで黒から飛び降り、気が付かなかった黒は顔面を強打した。
その瞬間、顔面に当たった宝石は爆発し、更に回りの宝石も連鎖するように爆発した。

『ぐっ…!』

爆風にやられ、黒の姿が元の鴉に戻る。

『爆発する宝石とは…。あの方に一つ持って行こうと思ったが、流石に渡せぬな。』
「…無駄口を叩いてる…暇、あるの…?」

そう言ってリリィは足元を指差した。

『…! しまった、烈!』

黒は烈を落とした事にようやく気が付き、慌てて烈の元まで羽ばたいた。いや、正しくは自分から降りたのだが、黒には気が付かなかったようだ。

「一難去って、また一難かよっ!」

黒から飛び降りた烈は、目前に迫る宝石を見て、悪態をついた。
だが、慌てずに焔を飛ばし、爆発させる。
爆風の力も得た烈は、無事に地面へと降り立てたようだ。

「あっ、ぶねー…。」
『烈!』

出てきていた冷や汗を拭っていた時、黒が追い付いてきた。

『どうやら無事のようんげっ!』

近付いてきた黒に、烈は躊躇なく拳骨一発お見舞いした。

『何さらす!?』
「それはこっちの台詞だこの大酒飲みの馬鹿鴉! 馬鹿正直に突っ込む馬鹿がどこにいんだよ!」
『昔はお前もそうだっただろうが!』

確かに、つぎドカ!バトルをしている頃は、馬鹿正直に、がむしゃらに突っ込んでいき、それで四人の中で一番の強さである称号を手に入れた。
しかし、それだけではいけない事を、鏡と紅から学んだ。学ばざるを得なかった。

「お前はあの二人と手合わせして気が付かなかったのか? 鏡はおろか、紅にさえ俺達の力が通用しなかったじゃねぇか。」
『うっ…。その話はやめてくれ…。』
「いーや、やめねぇよ。本当になんでお前から紅が生まれたか、不思議でしょうがねぇよ。それは俺と鏡にも言えるけど。」

以前、紅に頼まれて模擬戦をした際、本体である烈と黒は、分身である鏡と紅に一撃も与えられなかった。そして、自分達はボロボロになるまでコテンパンにされた。
プライドが傷ついたのは言うまでもないが、烈はその時、自分の戦法に限界を感じていた。

「黒、もっかい言う。馬鹿正直に突っ込むだけじゃ駄目だ。ちゃんと戦術を練って戦わないと…。」
『戦術は、突撃あるのみだっ!』

黒は烈から離れ、再びリリィ目掛けて突っ込んでいった。何を聞いていたあの鴉。

「ちょっ、おい、馬鹿黒! しかも鴉のまま突っ込むな!」

烈は慌てて焔を飛ばし、黒を精霊の姿にしようとしたが、リリィが宝石を操り、焔を阻んだ。
黒はズンズンと、リリィとの距離を詰める。

激突! 烈VSリリィ その二 ( No.465 )
日時: 2015/01/15 22:00
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fRqJ.hcc)

そんな黒の背後から、紅い何かが猛スピードで接近してきた。

「…また、侵入者…。」

リリィは少し面倒そうな表情をして、侵入者の動向を見ていた。

『少しは…。』

侵入者は黒を行き過ぎ、リリィの手前で方向転換し、

『学習能力という物を覚えろおぉぉぉっ!』
『おぶぅっ!』

黒にその翼を、丁度首辺りに叩きつけた。所謂、ラリアットである。
哀れ、黒はその一撃で伸びてしまった。すぐ起きるとは思うが。

『まったく、コレから我が生まれたかと思うと虫酸が走るぞ。』
「紅!?」

侵入者…紅は黒を足で掴み、烈のいる場所まで降りてきた。

「お前、何でここに!?」
『神にお前達の動向が悟れぬとでも思ったか?』

ただ、その一言だけで、烈を黙らせるには十分だった。

『まったく。神の気苦労は絶えぬな。』
「ご、ごめん…。けど…。」
『分かっている。パステルくんを放っておく訳にも行かなかった気持ちもな。』

何年、共にいるんだ? と言いたげな表情で紅が見てくるので、烈は少しだけ笑顔を見せた。

『しかし…ちゃんと、あの時の戦いから何かを学んだようだな、烈。』
「ああ。流石に、もう負けたくねぇから。けど、俺、やっぱりまだ馬鹿だから…。」
『…自分を阿呆と認める者は、これからも伸びるだろう。案ずるな、烈。我が知恵を貸そう。』
「あんまりアホって言わないでほしいんだけど…まぁ、いいや。おい、黒、起きろ。」
『んがっ!』

烈は黒を引っ叩き、無理矢理起こした。

「さぁ…仕切り直しだ!」

焔をその手に宿し、黒を精霊の姿にさせた烈は、紅を肩に乗せ、リリィを見た。

「…。」

リリィは無言で、少し嫌そうな顔をしながら烈達を見た。

激突! 烈VSリリィ その三 ( No.466 )
日時: 2015/01/15 22:39
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fRqJ.hcc)

烈は黒を上空に飛ばし、自分は身構える。

『正面突破が効果がない事は、もう理解したな。』
「ああ。…正直、自分でも安直だと思うけど、正面が駄目なら…!」

紅は烈の肩の上で翼を広げ、烈から離れる。
烈はそれが悟られないように、辺りの宝石に焔を当て爆発させ、視界を悪くさせた。

「…何を…するつもり…?」
「黒、突っ込め!」
『おう!』

リリィは怪訝そうな表情を浮かべるが、すぐに自分に向かってきた黒と烈を避ける。
そして、後ろを振り向いた。

「…視界を塞いだって、無駄。」
『なっ!?』

宝石を操作し、背後から迫ってきていた紅目掛けて飛ばす。

『くっ…!』

紅は動揺しながらも、何とか避けて烈達の元に辿り着いた。

「紅、大丈夫か!?」
『心配ない。何とか避けられた。だが、これを見切っていたとは…。』
「赤い鳥さん、後ろに来たの、見えてた。赤が動いたの、見えた。」
『我のこの体が仇となるとはな。』

少し悔しそうに、紅は烈の肩でぼやく。

『ほれ見ろ。やはり正面からで』
『少し黙っていろ。焼き鳥にするぞ。』
『スミマセンデシタベニサマ!』

キレた紅の言葉に、黒は土下座をする勢いで謝罪をした。

「…。」

そんなやり取りの間に、リリィは宝石を烈達に向けて飛ばしてきた。

「!? やべっ!」

いち早く烈がそれに気が付き、焔を飛ばして爆発させ、何とか直撃は回避した。

「くそっ、正面も駄目、挟み撃ちも駄目…。どうすりゃいいんだよ…!」
『やはり正面とっ』
「少し黙っててくれるか? 母さんにこの間親父と酒飲んでた事、チクるぞ。」
『スミマセンデシタレツサマ!』

烈が何かを母親に告げ口しようとした事に、黒がまた土下座をする勢いで謝罪をした。

『…! 烈、また宝石だ!』
「だあぁっ、畜生っ!」

焔を当て、何とか爆発させる事には成功する。
その後も、リリィは宝石を飛ばし、烈が焔で何とか退ける事態が続いていた。

「くそっ、このままじゃ防戦一方だ!」
「…無駄。分からない?」
「分かりたくもねぇよ! 俺は諦めが悪いんだっ!」

烈は何を思ったか、黒を旋回させ、リリィ目掛けて突っ込ませた。

「…愚者。」
「何訳分かんねぇ事言ってんだ、よっ!」

そう言って烈は焔をいくつも飛ばす。

『何をする気だ!? 烈!』

これには紅も予想外の行動だったようで、驚きを隠せずに烈に聞く。

「…ごめん、紅。俺、やっぱ…。」
『…突っ込んで、力で押さえつけるのが性にあっている、か。偶には、悪くないかも知れんな。本当は無理などさせたくはないが、仕方がないな。』

紅は烈の肩から離れ、リリィの背後に回った。

『烈、我が背後から引き受ける! お前達は真正面から突っ込め!』
「分かった! 黒!」
『任せろ!』
「…!?」

背後から、正面から自分に向かってくる烈達を見て、リリィは驚きの表情を浮かべる。

「…やっぱり、愚者…。でも、これは…可能性…?」

リリィは周りに宝石を纏い、烈達を迎撃する準備をした。

「おらあぁぁっ!!」

黒、紅の体当たりと、烈の拳が、リリィを直撃する。
その瞬間、烈の腕に、紅と黒の体に、鋭い衝撃が走った。リリィの纏った鎧の力だろうか。

「ぐあっ…!」

烈は腕が折れそうになるのを堪え、リリィに左腕を叩きつけ続ける。
その手には、絶えず焔を宿す。少しでもダメージを与える為に。

『ぐっ…!』
『ぬぅっ…!』

黒も、精霊の姿になっていない紅も、衝撃を感じながらもリリィから離れる事はない。

激突! 烈VSリリィ その四 ( No.467 )
日時: 2015/01/15 22:45
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fRqJ.hcc)

「やめて! ネズミさんと同じになる!」

諦めないどころか、尚も立ち向かってくる烈達に、リリィは思わず叫んだ。

「こんなの…痛くも、痒くもねぇ…! お前らが傷つけた、パステルくんよりはな!」
「ネズミさん、諦めなかった。追い返したかった。…傷ついた。」
「パステルくんだって、諦めたくなかったんだよ! お前らが傷つけようが何しようがな!」
『命を懸けても…大切な存在を、心配させようとも…やるべき事が、あ奴にはあった! だから、傷ついた体で…再びここに戻って、来たのだ!』

烈と紅が叫ぶと、リリィは首を横に振った。

「命あっての物種!」
『ならば、お前が、諦めたらどう、だっ!?』
「そ、それは…出来ない…!」

黒の言葉に、僅かに、息を上げながら答えるリリィ。

「…護りたい者…護るっ…!」
「それは…俺だって、同じだっ…! パステルくんだって…そうだ…!」

ワンダークロックがどんな物か、烈にはわからない。だが、クロック、という言葉から、時間に関係しそうな事は予測がつく。

「時間が無茶苦茶になるなんて…誰だって、望むもんかっ…! もう…あの人達が苦労すんのは…ごめんだっ…!」

時間が狂えば、きっと、この世界の神様である昴や、鏡達が苦労をする事になるのが目に見えている。

「折角…折角、落ち着いてきたのに…! もう、あんな二人…見るの、絶対に、嫌だ…!」

苦しそうな烈の声。リリィはそんな彼の姿を見て、ほんの少しだけ驚く。
だが、すぐに烈の腕に視線を移し、苦々しげに呟く。

「っ…! もう、やめて…! 貴方の腕、折れるっ…!」
「そんなの構うもんか! あんな鏡や昴さんを見るくらいなら、俺の腕一本や二本くらい、折れたって構いやしねぇよ!」
「!?」

烈の、ここまで必死な何かに、リリィは混乱する。

(何で…? 何で、ここまで必死になれるの? …!?)

リリィの纏った宝石に、ヒビが入る。

『烈、ヒビが!』
「よっしゃ! あと一押しだ!」

烈は最後の一踏ん張りとでも言うかのように、焔を宿した拳に力を込める。
同時に、リリィの纏った宝石は亀裂を大きくさせる。

(この人達の、必死な理由…何だろう。私と、同じ…?)

何故、こんな思いを抱いたかはわからない。けれど、リリィの気持ちに、僅かな変化が訪れた。その間にも、亀裂が大きくなる。

(…何だか、よくわからない。…けど…。)

リリィは僅かに笑みを見せる。同時に、宝石が砕け散った。

(…もっと、見てみたい。)

激突! 烈VSリリィ その五 ( No.468 )
日時: 2015/01/15 22:50
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fRqJ.hcc)

「や、やった…あっ!」
『いかん!』

宝石が砕け散ると同時に、リリィは地に落ちそうになるも、紅が何とか受け止め、ゆっくりと地面に降り立った。

「…黒、俺達も降りよう。」
『うむ。…大丈夫か? 烈。』
「まずいな、これは。本気で折れたかも知れねぇ。動かないんだけど。」

烈は黒の上で腕を押さえて膝を折る。その左腕は力が入らないようだ。黒はそんな烈を気遣い、ゆっくりと地面に降り立った。そして、烈を地面に座らせ、鴉の姿に戻る。

『…さて、烈。』

降り立った先には、リリィを寝かせ、こちらを睨み付ける紅がいた。言わずもがな、怒っている。

「分かってる。…昴さんのお仕置きなら、素直に受けるよ…。無茶したの、わかってるし。」
『ならいい。だが…我も同罪だから、一緒に仕置きを受ける。一人にはさせんよ。』
『じゃあ、我は抜けても』
『誰が逃れて良いと言った? この大酒飲みのごり押し無謀作戦大好き馬鹿鴉が。貴様も共に仕置きを受けろ。ついでに母上殿に話し合いしてもらえ。貴様は神の仕置きだけでは足りん。』
『本体に対してそこまでボロクソ言うか!?』
「たくっ、この二羽は…。」

ギャンギャン言い合うこの二羽に烈は悪態をつくも、そんな姿に安堵している自分がいるのに気がついた。戦いを終えて、こんな日常の風景に気が緩んだのだろうか。

「…変。けど…面白い。」

ふと、横から呟きが聞こえた。烈がそちらを見るとそこには、少し苦しげに胸を上下させるリリィがいた。

「…ははっ、だな。」

リリィの言葉に、烈も再び騒ぎ立てる二羽を見る。確かに、端から見れば面白い。

「…何か、お前って悪い奴には見えないな。どうしてこんな事したんだ?」
「…。」

烈は問うも、リリィは黙ったまま。代わりに、ローブの中からダイヤが刻まれたオレンジ色の玉を取り出した。

「それは?」
「…ネズミさんが、取り戻したがってた物。」
「…! ワンダークロックの針って奴か!?」

リリィから玉を受け取ろうと体勢を変えようとしたが、その間にリリィの腕の力が抜け、玉はその手から零れ落ち、未だに騒いでいる二羽の元まで転がり落ちた。

『…ぬっ?』
『何だ? この玉は…。』

二羽も騒ぐのを止め、地面に降りて玉を見た。
その瞬間、玉は光り出し、宙に浮いた。

『うわっ!?』
『眩しぐはぁっ!』

玉は黒にアッパーするかの如く猛スピードで浮き上がったかと思うと、そのまま奥へと飛んでいった。

『うおぉ…ぐおぉ…!』
『…今のは、一体…。』
「ワンダークロックの針だとさ。」
『あれがそうだったのか。だが、針には見えなかったが…。』
「俺もそれ聞こうとしたけど、こいつ、眠っちまって…。」

痛みに悶絶して地面をコロコロ転がる黒を無視して、会話が進められていく。

『貴様らは我を心配するという気持ちはないのか!?』

無視されていた事にようやく気がついた黒は、烈と紅に向けて怒鳴るが…。

「紅、悪いんだけどさ、このマフラー、こいつにかけてやってくれねぇ? 腕、完全に折れてら…。」
『仕方ないな。後で神と我の分のツマミを25%引きで売れ。』
「いや、面倒だから半額で売ってやる。」
『聞けそこの一人と一羽!』

完全に無視されています。

『…。』
「烈くーんっ!」
「烈ーっ!」

黒が自分の待遇は一生改善しないと諦めた頃、足音が二つ聞こえた。烈と紅が振り向くとそこには、後ろで戦っていた筈の鈴花と風雅がいた。二人とも、ボロボロだ。

「おー、お前ら。無事だったか。」
「うん! ピンピンして…って、ちょっと! 何で烈君そんなボロボロなの!?」

鈴花が烈の左腕に飛び付く。

「あだだだだだだっ! り、鈴花! やめろっ! そ、そっち、折れてるんだって!」
「あ、ご、ごめん…。」

流石にまずいと思ったのか、鈴花は謝罪をすると同時に、自らの能力で添え木を出し、風雅のマフラーを借りて三角巾の代わりにした応急処置を施していく。

「氷海ちゃんに習っておいてよかったー。」
「サンキューな、鈴花。」
「いいよ、これくらい。…あ。」

ふと、鈴花が烈の右肩を見ると、紅がいつの間にか彼の肩に止まっていた。風雅もようやく紅に気が付き、目を見開いて凝視する。

「あ、あの、紅。何でここに…?」
「…俺ら、つけられてたっぽい。」

烈のこの一言で、二人の顔色が変わる。紅がここにいると言う事は、即ち昴にこの自分達の無茶した姿が全て知られてしまうと言う事だ。

『…この件はきっちり神に報告させてもらう。我も烈に怪我を負わせる行為を容認したから共に仕置きを受けるが、お前達も覚悟しておけ。特に烈。』
「はーい…。」

烈も、鈴花も、風雅も、力なく返事をした。
自分達が撒いた種なので、何も反論ができなかったそうな。

激突! 烈VSリリィ その六 ( No.469 )
日時: 2015/01/15 23:05
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fRqJ.hcc)

カチ、カチと、時を刻む針。そこには、ダイヤが刻まれた、オレンジ色の玉が填まっていた。

(リリィをも下すとはな…。)

ジョーカーは玉を視界に入れ、溜息をついた。

(我も、本気でかからねばならぬか。フフ、腕がなる…。)

ローズ、フランシス、リリィ。いずれも、実力が十分な存在。そんな存在を下したパステルくんの仲間に、ジョーカーは沸き立つ感情を抑え、拳を握りしめた。

(…リリィ、よく頑張ってくれたな。…怪我など、負ってなければよいが…。)

だが次の瞬間には、優しい眼差しをオレンジ色の玉に注いでいた。
その眼差しは、まるで…。











烈とリリィの戦いを見終えた後、昴は烈を見た。が、烈もリリィもそっぽを向いてしまった。

「…烈、リリィ。」
「…。」
「怒らないからこっち向け。こんな無茶するから腕折れんだよ。」
「それよりも…リリィのガードを拳で砕くとはな…。」

呆れる昴の横で、ジョーカーが関心の表情を浮かべていた。

「私も、驚いた。あのガードで、防げる自信、あった。あれ、受けたダメージを、衝撃として、相手に返す。」
「あの衝撃波みたいなのはそれが原因だったのか…。」
「お兄ちゃん、あれで諦めるかと思った。けど、諦めなかった。だから、腕、折れた。」
「…諦め切れなかったんだよ。このまま俺がここで引き下がったら、昴さんも鏡も、またしなくていい苦労をするかと思ったんだ。それを考えたら…諦めるわけにはいかなかったんだよ。たとえ腕が折れてもな。」
「…みんな、自分の分身の事を思い浮かべたのね。無意識なのか意識してなのかは分からないけど。」

氷海がポツリとそう言うと、烈はリリィとの会話を中断し、彼女を見た。

「氷海もやっぱ思い浮かべたのか? 雪花の事。」
「ええ。負けるかも、って思った時に思い浮かんだのは、雪花の姿だったわ。」
「まぁ、その辺の話は次のページを見てからにしようぜ。」

昴は再び創世ノートのページをめくった。