二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 激突! つぎドカ!VSジョーカー その一 ( No.478 )
- 日時: 2015/01/16 22:01
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j4pb2Tbk)
全員合流したつぎドカ!メンバーは、玉が向かった奥へと急ぐ。
「この奥に、パステルくんとジョーカーがいるんだね…。」
「ああ。みんな、気を引き締めてかかれよ?」
『士気を高めるのはいいが、大怪我を負っているお前が言う台詞か? 烈。』
士気を高める言葉を烈が言うも、紅の言葉にぐっ、と言うしかできない。
『…鈴花、風雅。お前達は思った程傷は深くない。…この戦い、お前達の力が頼りだ。』
「そうだね…。烈君も腕折れてるし、氷海ちゃんも動くのがやっとみたいだし…。風雅君は怪我はあまりしてないけど、ヨーヨー壊しちゃったもんね…。」
「…鈴花、今、それ言うのやめて…。」
「あ、ご、ごめん…。」
落ち込み始めた風雅を見て、鈴花は申し訳なくなり、謝罪をする。
「元気出せよ、風雅。凪だってきっと事情を話せば、気にしないって。あ、そうだ。これ、返しとくな。燃やしちまうといけねぇし。」
「うん…。」
風雅にマフラーを返しながら、元気付ける烈。
彼の励ましに、風雅は少しだけ元気になったようだ。
「鈴花、風雅。私も氷で何とかするわ。二人だけで戦わせるなんて、絶対にさせないから。」
「俺もなるべく焔で援護射撃してやりてぇけど…。」
氷海が力強く二人に言う横で、烈はちらりと、応急処置がされている左手を見る。
自分の能力である焔は、左手に宿される。この状態では焔を宿せても相手に向けて飛ばす事は難しいだろう。
『案ずるな、烈。能力さえ使えれば、そこの馬鹿黒が戦ってくれるだろう。』
『仕方あるまい…。と言うか、馬鹿は余計だこの馬鹿紅!』
『…何か言ったか?』
『イエナンデモアリマセンベニサマ。』
紅の見えない圧に、黒は烈の肩でそっぽを向きながら答えた。
「ラスボスみたいなのが待ち受けてるってのに、この鴉共は…。」
「いいじゃない。…こんな光景をまた見る為に、無事で帰りたいって思うわ。…きっと、雪花達も…。」
「…そうだな。鏡もきっと、戦いの最中にそう思ってたんだろうな…。紅もそうだろ?」
『…ああ。あの世界にいる間、一度たりとも日常を思わぬ事はなかった…。』
瞳を閉じ、あの事件を思い返す紅。
敵の命じるがままに動いていた鏡も、自分も、戦いの最中だと言うのに、必ず聖域で過ごしていた日常を思い返していた。
また、その日常に帰ってきた時…。その時の震える程の感動は、計り知れないだろう。
『…必ず、皆で帰ろう。パステルくんも連れて、な。』
「ああ!」
四人は顔を見合わせてから、走り出す。
ワンダークロックを守り、再び日常へと帰る為に。
- 激突! つぎドカ!VSジョーカー その二 ( No.479 )
- 日時: 2015/01/16 22:38
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j4pb2Tbk)
更に奥へと進むと、烈達の耳に時計の針が刻む音が聞こえる。
「…! こ、これが、ワンダークロック…!?」
「大きい…! それに、綺麗…!」
音を頼りに、上を見上げた烈達は、思わず息を飲む。
金色の台座に、ピンク、緑、オレンジ、紫の針。その針にはまっている宝石は、紛れもなく自分達が見た、あの玉だった。
「…? パステルくん…?」
氷海は辺りを探す。そう、ジョーカーの姿はおろか、ここにいるはずのパステルくんの姿もない。
そんな氷海に気がついた三人も、辺りを見回し、パステルくんの姿を探す。
「ここに来た小さき鼠ならば、我の一撃で次元の狭間へと落ちた。」
不意に、声が響き、背筋が寒くなる感覚に襲われる烈達。
戦闘態勢を整えつつも、同じ動きで背後を向くと、ワンダークロックの中心に邪悪な渦のような物が出現し、奥から悪魔のような角と翼を持った、黄色いMの文字と星が描かれたローブを纏った者…ジョーカーがいた。
「お前がジョーカーか!」
「いかにも。…リリィ達を下したのは、お前達だな。」
「そうだ、って言ったら?」
「…! フン…。」
風雅が答えると、ジョーカーは一瞬だけ、憎悪の色を濃くした表情を浮かべるも、すぐに薄ら笑いを浮かべて鼻を鳴らした。
「どんな屈強な奴が来るかと思えば、年端も行かぬ小僧共だとはな。」
『何だとっ!?』
『挑発に乗るな、馬鹿鴉。』
『あでっ!』
挑発に乗りかけた黒を、紅が翼でひっぱたく。
「ジョーカー! パステルくんを次元の狭間に落としたってどう言う事!?」
「言ったままだ。我の一撃により、次元の狭間へと落ちていった。」
氷海の問いに、少々面倒そうな様子で答えるジョーカー。だがその表情も一瞬。急に再び憎悪の色を濃くする。
「…だが、案ずるな。我も、無用な殺生は好まぬ。小鼠は我が探し出し、元の世界へと帰そう。…お前達諸共な!」
ジョーカーがそう叫ぶと同時に、烈達に見えない重圧のような何かが降りかかる。
『ぐっ…! この重圧は…!?』
「な、何か、やべぇ…!」
「怖い…!」
(こやつ…もしや、タブー並みの実力者…!?)
心折れそうになる烈達の横で、紅はこの状況を打破する方法を考えていた。
『(何とかして、ここからの脱出を図らぬと…! 今の烈達では、こやつには、勝てん…!)皆、気をしっかり持て!』
「け、けど、怖い…!」
烈の右腕をしっかりと掴んで離さない鈴花。もう、ジョーカーに対する恐怖でいっぱいなのだろう。
- 激突! つぎドカ!VSジョーカー その三 ( No.480 )
- 日時: 2015/01/16 22:43
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j4pb2Tbk)
『くっ…!』
紅は震える体を押し、ジョーカーへと振り向いた。
『(烈達がしっかりするまで、時間を稼がねば…!)ジョーカー! 貴様の目的は何だ!』
「我の目的? 聞いてどうする。」
『ワンダークロックを破壊し、この世界をどうさせたいのだ!』
興味を失ったかのように言うジョーカーだが、間髪入れずに紅が問う。少しでも時間を稼ぐ為に。
「…ワンダークロックとは、過去、現在、未来…全ての時へと安定して向かう事の出来る、タイムワープの柱とも言えるべき代物だ。」
(創造神が安心して時を越えられるのは、これのお陰か…。)
随分と前に聞いた、MZDが時を越えて未来にいるミミとニャミに接触した話。そんな芸当ができたのも、ワンダークロックがあるお陰だろう。
不意に、ジョーカーは攻撃の手を緩め、烈達を真剣な表情で見た。
「お前達に問う。未来を見たいと思った事はあるか?」
「…ない、と言ったら嘘になるよ。少し、興味はあるからね。でも、見たいとは思わないな。未来なんか見たって、今の僕達は何も変わらないさ。」
「ええ。仮に、MZDのように未来を見ても、きっと彼と同じ事を言うわ。『未来なんか見たってつまらない。』と。」
ジョーカーの問いに、風雅と氷海は自信満々に答える。例え未来に何が起こっていたとしても、今の自分達には何の関わりもない。
大切なのは、今…現在で、どう生きるかなのだから。
「では、過去を変えたいと思った事はあるか?」
『そんなものある訳ないだろう。今の我らがあるのは、全て過去にそう選択してきたからだ。』
自信満々に黒は答える。
だが…その横で、鈴花と烈が複雑そうな表情をしていた。
「…変えたい、って言うか…能力がない自分が生まれたら、って考える時、あるよ…?」
「…俺も、同じ。黒と出会わなかったら、あんな事…起こらなかったんじゃないかって。」
『…烈、やはりまだ、あの時の事を…。』
紅が烈の元に飛んできて、心配そうに顔を覗き込む。烈はそんな紅に気付き、そっと微笑んでから頭を撫でた。
「…気にしていないって言ったら嘘になる。…でも、あんな事があったからこそ、今の俺がいるんだ。鈴花だってそうだろ?」
「うん! この能力があったからこそ、氷海ちゃん達と出会えたんだもん!」
しっかりとした眼差しで、ジョーカーを見る四人。
- 激突! つぎドカ!VSジョーカー その四 ( No.481 )
- 日時: 2015/01/16 22:48
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j4pb2Tbk)
その目に、ジョーカーは何処か、嬉しそうな表情をローブの下に浮かべていた。
「…いい目だ。だが、お前達のように思わぬ輩もいる。だから我は、そんな奴らの絶望をこの目で見る為に、ワンダークロックを、破壊する!」
ジョーカーは烈達からワンダークロックに視線を移し、先程烈達を襲った、正体不明の力を放った。
「んな事させっかよ! 黒!」
『おう!』
烈は黒に焔を宿して精霊の姿にさせ、ジョーカーに向かわせる。
「黒、受け取って!」
『ありがたい!』
風雅も風を操り、黒の纏う焔の勢いを強くした。
「体当たりか。随分と原始的な…ぬっ?」
動こうとした体が、動かない。よく見ると蔓が氷を纏い、体を拘束していた。
「そっから逃がさないよ!」
「大人しくしなさい!」
鈴花と氷海の能力により、身動きが封じられたジョーカー。だが、何故か慌てている様子がない。
(おかしい…! 普通なら動けなくなって慌てる筈なのに、何を企んでいる? …!?)
ジョーカーの周りに、不吉な何かを感じとる紅。
『いかん! 黒、戻れっ!』
「遅い。」
『ぐあっ!』
その何かに気が付き、黒に戻るよう促すも、黒は何かに押し潰されるかの如く、ジョーカーにその体が触れる前に地面に叩きつけられた。同時に、元の鴉に戻る。
「黒!」
烈が遠くから呼び掛けるも、ピクリとも動かない。気絶しているのだろうか。
「くそっ、一体何が…!?」
『分からん。だが、奴の周りに何か嫌な気配がする。気分が悪くなるような、何かがな…。恐らく、先程お前達が食らった重圧も…。』
「赤い方の鴉は少しばかり頭が回るようだな。我の力を朧気ながら見破るとは…。」
『そんな感じがするだけだ。』
誉められたと言うのに、素っ気なく返す紅。敵に誉められても、嬉しくないのだろう。当たり前だが。
「その回転の良さは厄介だな…。」
「…! 紅、逃げろ!」
ジョーカーの言動で、紅に狙いが定まっていると悟った烈は、紅に向かって叫んだ。
紅自身も自分に狙いが定まっていると気が付き、烈の注意と同時に避けようとするも…。
『ぐあっ…!』
「紅!」
既にジョーカーの力が迫ってきており、紅はそれに押し潰されてしまった。
黒同様、烈の呼び掛けにも答えない。気絶しているのだろう。
「くっ、紅まで…!」
「次はお前だ。」
「!?」
紅の喪失に悪態をついていた烈の背後に、いつの間にかジョーカーが迫っていた。
(くそっ、いつの間にこんな近くに!?)
「どうやらあの赤い鴉がお前達の脳…策士だった訳だな。そして…。」
「! あぐっ…!」
「烈君!」
「烈!」
ジョーカーは烈に触れる事なく、彼を吹き飛ばす。
心配した三人が駆け寄り、容態を診る。
「烈、しっかりして!」
「…。」
「大丈夫、気を失ってるだけみたいだ…。氷海、あんまり揺らさないであげて…。」
呼び掛けには答えないが、胸の上下から気を失っているだけだと言う事がわかった。それに三人は少しだけ安堵する。
- 激突! つぎドカ!VSジョーカー その五 ( No.482 )
- 日時: 2015/01/16 22:53
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j4pb2Tbk)
「戦いは、サポート役、策士、治癒術師、そして、士気を上げるリーダーを潰すのが常套手段。そのリーダー的存在が、その小僧なのだろう?」
「別に決めた訳じゃないけどね。でも確かに、烈は僕達の中でもしっかりしているから、知らず知らずの内に頼ってはいるよ。氷海以上に纏めるの、何だかんだで上手いし。」
ジョーカーの問いに、風雅が答える。
誰がリーダーかなんて決めた覚えもない。ただ、四人で一緒にいる事があのバトル以来増えたと言うだけだ。だが、それでも知らず知らずの内に三人は烈にリーダー性を見出だしており、彼に頼っていた事も事実だ。
「自然とリーダー的立ち位置になったという訳か。成程な。だが、それでも士気を上げるような奴には変わりない。」
「でも、烈や紅がやられたくらいで、動揺する程弱くはないわ!」
氷海はセシルに向けて放った時と同じように、氷の礫を連続で飛ばす。
「…攻撃に焦りが見えているな。本音は違うという訳か。」
「!?」
「少しばかり、眠っていろ!」
しかし、それもジョーカーには通じず、背後に回られる。
「きゃあぁっ!」
「氷海!」
「氷海ちゃん!」
氷海は悲鳴をあげながら、烈の倒れている側へと転がり込んだ。
「鈴花!」
「う、うん!」
風雅の声に答えた鈴花は、氷海の元に駆け寄り、容態を診る。
(…よかった…。気を失ってるだけみたい…。)
氷海の胸は普通に上下しており、ただ気を失っているだけだと分かった。
安心したのも束の間、沸々と胸にある感情が沸き起こり、鈴花はゆっくりと立ち上がる。その足元には、うねりを上げる蔦が、何十と生えてきていた。
「よくも…! よくも烈君を! よくも氷海ちゃんを!」
鈴花の怒りに呼応するかのように、足元の蔦がジョーカーに向かって伸びた。
「能力が感情に反応したか…。ある意味厄介だな。」
「鈴花、冷静になって!」
ジョーカーは平然と避けながら、鈴花の元に向かっていく。
それに気が付かない鈴花は、がむしゃらに蔦を伸ばす。風雅の呼び掛けも聞こえていないようだ。
「鈴花! 前っ!」
「もう遅い。」
「…!」
鈴花の目の前にジョーカーが迫ってきたと気が付いた時には、鈴花は既に悲鳴もあげられぬまま、氷海に重なるように倒れ込んでいた。
- 激突! つぎドカ!VSジョーカー その六 ( No.483 )
- 日時: 2015/01/16 22:59
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j4pb2Tbk)
「鈴花!」
「最後はお前か…。」
「! 悪いけど、僕は簡単にやられるつもりなんかない!」
風雅は風を自身に纏わせて浮き上がり、ジョーカー目掛けて突っ込んでいった。そしてジョーカーの目の前に来ると、その長い足で蹴り上げる。
「ほう、風の能力か。」
「まぁね。」
ジョーカーはその一撃を意図も簡単に避け、風雅の背後に回るも、風雅はそれを読んでいたかのように、鎌鼬を背後目掛けて放った。
「おっと…。お前は随分と戦闘に慣れているな。」
「そうかな?」
鎌鼬を避けられたが、動揺せずに振り向き様に蹴りを食らわす風雅に、ジョーカーは風雅が戦い慣れをしていると感じ取っていた。
「この間まで戦ってきた友達が、鍛えてくれたから、かなっ!」
間髪入れずに蹴りと鎌鼬を組み合わせて放つ風雅。彼もまた、牡丹と手合わせをし、時には千枝や陽介に教えを乞い、自身を鍛え上げていた。
もう二度と、今の生活を壊させない為に。大切な友達や家族を失わない為に。
「ジョーカー、君は聞いたよね。過去を変えたいと思った事はあるか、未来が見たいと思った事はあるかって。」
「ああ。お前は、未来に僅かながらの興味はあるが、見たいとまでは思わない、そう言ったな。」
ジョーカーは風雅と距離を取り、彼をまっすぐに見つめ、言葉を待った。
「うん。未来なんてあまり興味がない。過去を変えたくなんかない。だって僕は、今が一番好きだから。烈や凪達といられる、この“時間”が一番好きだから。」
だから、と風雅は続け、ジョーカーを真っ直ぐな瞳で見つめる。
「その“時間”を壊そうとするお前を、全力で止める!」
その言葉が終わると同時に、風雅はジョーカーとの距離を詰めた。
「…! あれは…!」
そんな彼の真上から、二本の刃が落ちてきた事にジョーカーは気付き、見上げた。
落下コースは…丁度、風雅が通る位置。
「…! うわっ!」
風雅は突然降ってきた刃にマフラーの両端を貫かれ、そのまま重力に乗っ取って落ちていった。
- 激突! つぎドカ!VSジョーカー その七 ( No.484 )
- 日時: 2015/01/16 23:07
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j4pb2Tbk)
そしてそのまま刃は地面に突き刺さり、完全に固定されてしまった。これではマフラーを取るにも取れない。
「これ…!」
風雅にはその刃に見覚えがあった。そう、先程戦って、凪が作ってくれた大切なヨーヨーを壊した相手…フランシスが使っていた武器だ。
「ジョーカー様!」
自分達が入ってきた場所から、四人分の声が聞こえた。驚く風雅がその方向を見ると、そこには倒したはずのローズが、フランシスが、リリィが、セシルが、ボロボロな姿のまま、ジョーカーに向けて飛んでいた。
「お前達…!」
「ご無事ですか!? ジョーカー様!」
「俺達が来たからには、彼等など…っと、もう既にカタはついていたか。」
セシルがジョーカーを心配し、フランシスが臨戦体制を取るも、無事に立っている相手が風雅だけなのを見て、その風雅も自分の刃で動けない状況にあるのを見て、肩を竦めた。
「くっ…!」
「…下手に、動かない方がいいぞ? お前の後ろにいる仲間達を、これ以上傷付けたくないのならな。」
フランシスは能力で攻撃しようとする風雅に、刃を彼の後ろで気を失っている仲間達の上空で待機させながらそう促す。
風雅は悔しそうな表情を浮かべながら、宿していた風を辺りに散らせた。
「…。」
「やっぱ…ジョーカー様には勝てなかったんだな…。」
自分達の大切なジョーカーが勝ったと言うのに、どこか複雑そうな表情で烈達を見るリリィとローズ。その手には、自分達に掛けられていた烈と鈴花のマフラーが握られていた。
「さぁ、ジョーカー様。残るはワンダークロックの破壊のみです。今、貴方を邪魔する者は誰もおりませんわ。」
「ああ…。」
ジョーカーは再び、ワンダークロックを憎らしげに見ながら、針に填まっていた玉を外してセシル達に預けた後、再び力を放った。
「…。」
その光景を見ながら、時を刻まなくなった時計を見ながら、風雅はぼんやりとしていた。
あの時ああしていれば、こうしていれば…今、こんな状況を作らなかったのではないか。その後悔が、頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。
(…あぁ…。今なら、分かる。あの時躊躇った二人の気持ち。)
ジョーカーの過去に戻りたいかと言う問いかけに、躊躇いを見せた烈と鈴花。
今なら、その気持ちが分かる気がした。
(過去に…数分前に、戻りたいよ…!)
■
「風雅がかっこいいって何。」
「珍しいんだけど、風雅君がかっこいいなんて。」
「こんなにもかっこいい風雅君、見た事ない。」
「みんなして酷くない!?」
昴、りせ、風花が口々にそう言う。いや、確かに真面目に戦う風雅は珍しいだろうな。
「無理もないよな。普段は不憫属性が際立って全然かっこよくないヘタレ…ではないけど、あんまり正直かっこいいとは言えないくらいだから、こんな風に真面目に戦うとびっくりするよな。」
「由梨先輩酷い!」
あ、風雅が泣き出してしまった。今はそっと烈が慰めている。
「しかし、最後まで立っていたのは風雅だけだったのかよ…。」
「その風雅も、俺の刃でマフラー貫いたら役立たずになったがな。」
「あの時はフランシスが来てくれなかったら、パステルくんが来る前にきっと風雅にやられていただろうな。」
「あはは、そう思えばフランシスには感謝しないとねー。ボクの出番を作ってくれちゃったから。」
「作るつもりはなかったがな。」
フランシスはパステルくんの言葉にそっぽを向いた。
「あ、そうだ、昴さん。聞きたい事が…。」
「それは…次のを振り返ってからな。」
昴はパステルくんとの会話を打ち切ってから、ノートのページをめくった。