二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 穿たれた水器 その一 ( No.533 )
- 日時: 2015/01/19 23:46
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0iVKUEqP)
打ち明けてはならない気持ち。
打ち明けてはいけない思い。
烈の事が好き。
烈の事を愛している。
けど、烈は進展を望まない。
愛する人は、望んでいない。
だから、私はこの思いを抱いて生きていく。
それに、時が過ぎれば、忘れられるはず。
…そう、願っていたはず…なのに…。
■
いつもと変わらない学校。
いつもと変わらない日常生活を送る烈達。
「…はぁ…。」
氷海はその中で、大きな溜息をついた。
「氷海さん、大丈夫ですか?」
その溜息を聞き付けたのか、直斗が心配して声をかけた。
「平気よ。大丈夫。…ちょっと、疲れただけ。」
「ここ数日、溜息ついてばかりですよ?」
「…気のせいよ。」
氷海はそう、はぐらかすように言う。
だが、直斗には気のせいとは思えなかった。
(…どう見たって気のせいではありませんね…。話したく…ないのでしょう、ね。溜息をついている相手が…烈君ですから。)
烈との恋路に悩んでいるのだろうか、そう思った直斗は、これ以上追求する事はしなかった。
氷海もそれを望んでいるとは思えないし、他人の恋路を後押しするのは、本人がそれを望んでからの方がいい。そう、直斗は考えた。
「…はよ。」
そんな中、烈が中に入ってきた。
その表情は、どこか、暗い。
「あ、烈君。おはようございます。」
「…うん、おはようさん、直斗。」
「何か、元気がありませんね。大丈夫ですか?」
「…別に平気だけど…。」
表情を暗くさせたまま、烈は自席に座り、一瞬だけ、氷海を見てから何かを考え込むように前を向き、押し黙った。
「…?」
かと思えば、スマートフォンを取り出し、時計を見上げた。
「直斗、悪い。俺、ちょっと陽介先輩と話してくる…。」
「あ、はい。いってらっしゃい。」
それだけを言い残し、烈は教室を出ていった。
「…烈、元気なかったわね…。」
「氷海さんにも挨拶していきませんでしたね。(…何か、あったのかな? あんな烈君、始めて見ます…。)」
烈の態度に首を傾げる二人。
「ねぇねぇ、今日の学校新聞、見た?」
「見た見た!」
(あぁ、そうだわ。今日は新聞部の学校新聞発刊の日だったわね。)
そんな折り、教室の女子達の会話が聞こえ、氷海はそちらに意識を向けた。
だが、それは間違いだったかも知れない。
「“生徒会長と隠れ風紀委員の熱愛”! アタシビックリしちゃった!」
(隠れ風紀委員? …あの、まさかそれ、烈君ですか? 確かに隠れ風紀委員と呼ばれているのを知…って、えぇっ!?)
(も、もしかしてっ…烈があんな風になったのは…!)
直斗が驚きに目を見張る中で、氷海は椅子を蹴飛ばして廊下へと駆けていった。
「あっ、ちょっ、氷海さん!」
直斗も慌てて後を追う。
嫌な予感を、胸に抱きながら。
- 穿たれた水器 その二 ( No.534 )
- 日時: 2015/01/20 20:37
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fhgz9KYE)
「…嘘だ。」
人がごった返す、学校掲示板の前に張られた、学校新聞。
葉月はその学校新聞を前に、ぽつりと呟いた。
「氷海と烈…こんな事してたのか…。ちょっとビックリだな。なぁ、葉月。」
「…。」
一緒に登校していた由梨が声をかけるも、葉月は黙ったまま俯いている。
「…ねぇ、葉月。貴方は…この光景を、見たの?」
「…。」
後を追ってきていた理乃が声をかけると、葉月は黙ったまま頷いた。
「でも、私、誰にも言ってない! クーちゃんだって、きっと…!」
「わかっているわ。風達も、葉月は見たけど、誰にも話していないって語りかけている。」
理乃は学校新聞に視線を戻す。
「どうやら、別の誰かが見ていたようね。葉月達とは別の場所で…きゃっ!」
不意に、理乃の体が誰かに弾き飛ばされる。
「理乃! だ、大丈夫!?」
「え、ええ、平気。」
が、たまたま近くにいた七海が受け止め、怪我はなかった。
七海は突き飛ばした人物を見ようと、首を動かしたが、その人物を確認した時、ぎょっと目を見開いた。
「…!」
そこには、今にも泣きそうな、氷海がいたのだ。
息を切らせて、目の前にある新聞を凝視している。
「ちょっと氷海! 人を突き飛ばさな」
「黙って。」
「空気読め。」
「げふぁ!」
怒鳴り付けようとした七海だが、それは由梨と理乃の一撃で阻止され、哀れ七海はたんこぶを作って気絶してしまった。
「氷海ちゃん…。」
「う、嘘…! 誰にも、見られてないと思ったのに…!」
「…。クーちゃん以外には、見られてないって思ってたんだね。」
「ええ、そう思…。」
氷海がそこまで言うと、はっと、息を飲む。
「な、何故、葉月先輩がそれを…!? まさか…!」
「…ごめん。クーちゃんと一緒に、見ちゃったの…。」
「そ、そんな…!」
葉月に見られていた事を知り、一歩、二歩と後ずさる。
「杉山先輩が…新聞部にリークしたんですか?」
氷海の後を追いかけてきていた直斗が追い付き、葉月に問いただす。
それは、理乃が答えた。
「いいえ、葉月は誰にも言っていません。外部の人間はおろか、一緒にいる私達にも…。」
「アタシ達が聞いていないのは、アタシが保証する。それに、理乃の情報網は嘘をつかない。」
「凪君が言っていた、風の声ですね。」
「はい、そうです。…凪さんには確か話したはずですが、私の持つペンダント…風の宝珠を通じて、風達から情報を得る事ができます。…風達は嘘を言いません。」
「…わかりました。桜坂先輩を信じます。では、いったい誰が情報を…?」
直斗はその場で推理を始める。
その間、氷海は、目の前の新聞を凝視したまま、動かない。
(…知られてしまった…。)
あれ程、打ち明けないと決めた思い。
知られてはならない思い。
それが、こんな形で、全ての生徒に、烈に、知られてしまった。
(知られたくなかった。知られるのが、怖かった。だから、この気持ちを今まで圧し殺してきたのに…!)
突然の暴露。しかも、思ってもみない形で。
「…氷海、大丈夫か…?」
「…一番、恐れていた事、でした。」
由梨が話しかけると、氷海はぽつりと呟いた。
「烈に、この気持ちを知られる事が、怖かった。烈は、今まで通りの関係を…仲間として、対等でいる事を望んでいました。だから、私はこの思いを打ち明けなかった…。でも、ずっと…彼には打ち明けたい。そう、願う私もいたのです。」
「…。」
「…不思議ですよね。烈に知られたと言うのに…全然、すっきり、しないのです。」
「自分からの言葉じゃないから、だよ…。それは、氷海ちゃんが伝えた言葉じゃないから…。」
葉月が言うと、氷海は顔を俯け、「かも、知れませんね。」と続けた。
「…直斗、申し訳ないけれど、私の鞄、後で家に届けてもらえないかしら?」
「えっ、氷海さ…!」
直斗が理由を聞こうとした瞬間、氷海は校門の外へと向けて走り出した。
その目に、大粒の涙を浮かべて。
「氷海さん!」
直斗も後を追って走り出そうとしたが、その腕を、誰かが止めた。
「…直斗君、悪いけど、今は追いかけないであげて。」
「里中先輩…!?」
その腕を掴んで止めたのは、雪子と共に登校してきた、千枝だった。
「な、何故ですか!?」
「氷海ちゃんには、悩む時間が必要だと思うからだよ。…状況が、あたしと花村の時とは、全然違う。だから、ここで誰かが行っても、邪魔になるだけじゃないかな?」
「…そう、ですね。」
千枝の説得に納得した直斗は、一つ頷く。それを見た千枝は直斗を離し、雪子を見た。
「…いつもみたいに腐らないんだね、雪子。」
「私だって、空気は読むよ? …流石にこれは許せない。誰も、幸せになんかならないもの。」
「そうだね。氷海ちゃん、悩んじゃったから。きっと烈君も…悩んでると思う。」
そう言って、千枝は雪子に、鞄を渡し、雪子は黙って受けとる。
「ちょ、ちょっと千枝、何」
「七海、悪いけど、私の鞄持って先に教室行って。」
「うわっ! は、葉月まで何するつもり!?」
突然の行動に驚く七海の横で、葉月も七海に鞄を無理矢理預ける。
「…同じ属性同士、おんなじ事考えてたりする? 葉月ちゃん。」
「多分ね。」
恐らく、この二人の考えている事は同じ。それを感じ取った千枝は、葉月に聞き、彼女も頷きを返す。
「千枝、どーん!以外でね。」
「葉月もいきなり【タイダルウェイブ】かますなよ?」
「仮に死なせちゃっても私がいるから安心して。」
「洒落になりませんよ桜坂先輩!」
二人が何をするかわかったのか、程々にするよう言う雪子と由梨、そして検討違いの話をする理乃。
「ん、わかった。どーん!はしない。」
「私も魔法は使わないよ。」
そう二人は言うものの、ぽつりと「…多分ね。」と加えられたのは、気にしない。
「じゃっ、行こっか、葉月ちゃん。」
「うん。じゃあ、ホームルームまでには戻るね。」
千枝と葉月は、校舎の中に消えていった。
「…こりゃ死ぬな、新聞部。」
「…。」
由梨がぽつりと呟く横で、理乃は考え込んでいた。
(…おかしい。情報を流した存在が、風達でもわからないなんて…。)
何度風に問いかけても、情報を流した存在がわからないと返ってくる。今までになかった現象に、理乃はただ、首を傾げる。
(…それに、僅かに感じるこの嫌な気配…。何事もないといいけど…。)
嫌な予感が当たらないよう、願いながら。
- 穿たれた水器 その三 ( No.535 )
- 日時: 2015/01/19 23:58
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0iVKUEqP)
廊下を小走り気味に歩く千枝と葉月。その目には、殺気のような物が見える。
そして目的の場所についた時、二人は顔を見合わせ、ドアに手をかけた。
怒りで力任せに開いたので、ドアはバァン! と盛大な音を立てる。
「うわっ、ビックリした…。」
中にいた新聞部数人が思わず驚き、入口を見る。
「里中に杉山じゃんか。何しにここに」
「部長、どこ?」
問いかけてきた新聞部員の台詞を遮るように無視し、葉月は逆に問う。
「部長なら奥の部屋にある、部長用デスクだけど…。」
「ありがと。」
部長の居場所を聞き出した二人は、さっさと奥の部屋へと向かう。
そこでもドアを乱暴に開け、中にいた一人の男が驚きに目を見張りながら、現れた葉月達を見た。
「ちょ、千枝ちゃんに葉月ちゃん? どーしたのそんな殺気立って…。」
「あの新聞、何で出したの?」
「あの新聞…? あぁ、あの学校新聞? よくできてるっしょー? つぎドカ!上位二名の熱愛! しかも片方はこの学校の生徒会長! こんな面白いネタ掴んじゃったら、出さないわけにも」
「そのせいで、氷海ちゃんを泣かせても?」
反省する素振りを見せない部長に、千枝が冷たく問いかける。
部長は頭を掻きながら、唸る。
「千枝ちゃん、これは後押しだよ。後押し。」
「後押し?」
「いつまで経っても素直にならない会長さんへの、後押しさ。オレなりの優しさ、って奴?」
「それ、嘘だね。」
先程から黙ったままだった葉月が口を開き、言い放つと、部長は少し顔を歪ませた。
「嘘って、どう言う事だよ。」
「…血液の流れが早くなってる。何を焦っているの?」
「な、何を変な事を」
「私は水属性を操るから、血液の流れも感じ取れるんだ。ほら、人間って、半分以上が水だから。」
ぐっ、と言葉をつかえる部長を尻目に、葉月は尚も続ける。
「貴方は氷海ちゃんの後押しする気なんか更々ない。ただ、面白いネタを提供された。それが普段から気にくわない氷海ちゃんや烈君のネタ。…仕返しのつもりで書いたんじゃないの?」
「!?」
「…一瞬、血液が大量に心臓から排出されたね。あ、血液の流れが更に早くなった。図星だね。」
早鐘のように脈打つ心臓を感じ取った葉月は、今言った事が本音だ。そう感じ取った。
「だ、だから何だよ! 何だってんだよ!」
「今すぐあの新聞、片付けて。二人に謝って。」
「はんっ、嫌だね! あの二人の失態を晒せる最大のチャンスだし」
部長がすべてを言い終える前に、葉月が動く。
パシンッ! と乾いた音が響いた。部長の頬に、赤い痕が出来る。
葉月が、平手打ちしたのだ。
「…最低。魔法放つ価値もない。」
氷のように冷たい言葉が、部屋に響く。
部長も、千枝も、葉月から放たれる冷たい何かに、言葉を失っていた。
辺りが静寂に包まれる中、葉月はちらりと時計を見て溜息をつき、千枝を見た。
「千枝ちゃん、行こう?」
「は、葉月ちゃん、でも…。」
「そろそろホームルーム始まるよ? …どうせここにいたって、何も動かないよ。…今は、時間を開けよう? ねっ?」
首を傾けながらそう言う葉月に、千枝は一つ頷いた。
今はとにかく、時間が必要だ。あの二人が悩み抜いて納得できる答えを出す時間が。
「…そうだね。教室、行こっか。」
千枝は葉月と共に、教室へと向かっていった。
「…あぁ、痛いですね。実に効きました。あの人の子の一撃。」
二人が去っていった後に、そう、声が響いた。
- 穿たれた水器 その四 ( No.536 )
- 日時: 2015/01/20 00:03
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0iVKUEqP)
ホームルームを告げるチャイムはとうに鳴った。
にもかかわらず、屋上には、二人の人物が寝転んでいた。
「…。」
二人の人物は、互いに黙ったまま、流れる雲を見つめている。
「…少しは落ち着いたか、烈。」
「…まぁ、うん。…サンキュ、陽介先輩。」
空を見上げながら、二人の人物…烈と陽介は、互いに言葉を交わす。
陽介は登校してすぐ、あの新聞を目にし、恐らくそこで考え込んでしまうであろう烈を屋上に呼び出したのが、チャイムが鳴る大分前。
そして今までずっと、黙って二人で寝転んでいたのだ。
烈の気持ちを落ち着かせる為に。
「…氷海があんな事してたなんて、思わなかった。」
「必死でお前に気持ちを悟られないようにしていたって、直斗が言ってたぜ。まぁ、お前は鈍感だから、何一つ気づいていなかったろうけどさ。」
「うるせーよ。」
少々、ふくれ面になって陽介に反論する烈。
だが、すぐに表情を戻し、溜息をついた。
「…なぁ、先輩。」
「ん?」
「“好き”って、どんな感じなんだ? 人が人を“好き”になった時って、どんな感じなんだ?」
「難しい質問してくんなおい。」
烈の質問に、うーんと頭を捻る陽介。
困ったような表情をして、しばらく考える。
「俺、わかんねぇんだ。他人を好きになった時の気持ち。」
陽介が考えている間に、烈は話を続ける。
「きっと、幸せな気持ちなんだろうと思う。ワンダークロック事件の時、無事に帰ってこれた時以上に、幸せだって思える事なんだと思う。」
「けど、」と、辛そうな表情で続ける烈。
「…氷海の気持ちを知った今でも、わかんねぇんだよ…。逆に、何で俺なの? って気持ちばかりが浮かんできて…氷海の抱いた気持ちが、わかんねぇんだ。俺を選んでくれて嬉しいって気持ちも、全然湧かなくて…。」
「事態が唐突すぎたんだよ。…混乱したり、悩むのは当たり前だ。」
陽介はそう言った後、ゆっくりと起き上がり、空を見上げた。
「…烈、今は、ゆっくり考えていいと思う。これからの事とか、氷海ちゃんの気持ちとかをさ…。そして、自分が納得できる答えを見つけられたら…。」
「見つけられたら?」
「…氷海ちゃんにぶつけてやれ。…残念な結果になっても、氷海ちゃんは嫌わないでやれよ?」
「…ん、わかった。」
烈は起き上がり、陽介と同じように空を見上げる。
「…見つけられるかな? 俺に。」
「見つかるさ。俺でも見つけられて、里中とああして付き合ってるんだからさ。」
「…先輩、そろそろ千枝先輩の事、名前で呼んだらどうだ?」
「無理。何か恥ずかしいんだよ。」
そんな感じで男同士語り合っていた。
今にも泣きそうな、空の下で。
- 穿たれた水器 その五 ( No.537 )
- 日時: 2015/01/20 00:09
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0iVKUEqP)
学校も終わり、時刻は既に夜中。
烈はベッドの上で、一人考え込んでいた。
(…氷海の気持ち、か。まったく考えた事なかったな…。)
高校で出会って、バトルして、気付いたら、仲良くなって。近い存在になって。
だからこそ、考えられなかった、氷海の思い。
烈はベッドの上で、深い溜息をついた。
(急がなくていいとは思うけど…早く答え、出してやりたいな…。)
不意に、烈は起き上がり、ベッドから降りる。
(…俺が悩んでるのに、こいつらはぐっすり夢の中、か。)
小さな布団でリリィが、新聞紙を詰めた段ボールの中では黒が、ぐっすりと眠っていた。
(…。)
烈はリリィ達を起こさぬよう、ゆっくりとドアを開け、部屋を出た。
そして台所まで行き、作ってあった麦茶を飲む。
(外は雨か。)
あの泣きそうな空から、大粒の雨が降ってきたのは、つい先程の事。
最初のうちは小雨だったが、次第に窓ガラスを打ち付けるような嵐となっていた。天気予報では、この春の嵐は、明日には止むようだ。
(…もうすぐ、日付変わるな…。)
ふと、リビングまで移動し、スマートフォンを見る。時刻はもうすぐ午前0時。日付が変わってしまう。
(早く寝ないとな…。)
烈はポケットにスマートフォンをしまい、部屋を後にしようとした。
「…ん?」
が、その足がふと止まる。
視界の端で、何かが光ったように見えたのだ。
烈がそちらに視線を向けると、何と、ついていない筈のテレビがついていた。
「えっ…!?」
烈は驚き、すぐにテレビにかじりつく。
一瞬の砂嵐の後、何か、影のようなものが映し出される。
体つきは、女性だろうか。長い髪が特徴的な影は、にっこりと微笑んで、こちらに向かって手を伸ばす。
そこまで流れた後、テレビは暗い画面を映した。
「…。」
あまりにも不鮮明な映像。だが烈は、映った影に、心当たりがあった。ありすぎた。
「…ひ、うみ…?」
事態はゆっくりと、動き出そうとしていた。
…最悪な、方向へと…。
■
「マヨナカテレビ…。昔りせちゃんに聞いたそのままだね。」
「私もびっくりしちゃったよ。だってまさか、映るなんて思わなかったもん…。」
「多分お前が一番びっくりしたろうな、りせ。」
昴が訊ねると、りせは一つ頷いた。
「終わったって思ってた。あの事件も、マヨナカテレビも、元凶を倒した事で、全部終わったって思ってた。けど、終わっていなかったんだね…何も。」
「…また映った以上、これで終わるとは思えないね。」
「…何か対策を立てるべきだとアタシは思うけど?」
由梨の言葉に、風花は頷いた。
「その為にも…続きを知らないといけない、そんな気がするんだ。昴さん、続きをお願いします。」
「ああ。」
昴は次なるページをめくった。
■
私—いったんここで区切ります。感想あればどうぞ。