二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 雲の向こうに捧ぐ向日葵の花 その一 ( No.582 )
- 日時: 2015/01/23 21:40
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fbqYC.qT)
氷海が無事に救出されて、一週間が経った。
だが、氷海は学校に来られる程の体力はなく、烈はまだ安静の状態。二週間くらいは二人ともお休みだ。
「…。」
直斗は今日も一人、二人の席を見つめていた。
(…あぁ、駄目だな、僕…。烈君と氷海さんがいる生活に慣れすぎて、二人がいないと違和感が半場無いです…。)
早く来てくれないかなーと思いつつ、直斗は溜息をついた。
そんな時、ガラッ、と戸が開かれる。
「ちーっす。」
「おはよう、みんな。」
「…えっ!?」
聞き覚えがある声に、直斗は思わず驚き、開かれた戸を見る。
そこには、烈と氷海がいた。二人とも何も変わらぬ、元気な姿で。
二人はさも当然に、驚いている顔をしている直斗を素通りして、自分の席に座る。
「おはよーさん、直斗。朝からすげー顔だな。」
「フフッ、無理も無い事でしょうけどね。」
「え、ちょ、れ、烈君!? 氷海さんも! 二週間くらいは休みじゃなかったんですか!?」
「お父様に無理言って、一週間早めてもらったの。授業を遅らせたくないし、あんまり入院もしていられないでしょう?」
「ちょっとコラいいんですか医者の娘がそんな事言っていいんですか何ですか僕の神経がおかしいんですか?」
直斗はノンブレスで一気に氷海に言い放つ。
「烈君、君からも何か言ってやって下さいよ! と言うか何で君まで来てるんですか!」
「…俺もお前と同じ事言ったけど、これだから無理。それに、ツッコミ属性持ちメンバーの仕事増やしたくないし、意外に早く体も楽になったから、退院してきちまった。」
「とりあえず君はもう一週間程お休みしてもいいと思います。仕事なら、野上先輩がこなしていますから。」
「由梨先輩が?」
意外な人物の名前が上がり、烈は軽く驚いて直斗に聞き返した。
「ナンパをしてくる鳴上先輩を素手でシメたり、喧嘩する能力者を体ひとつで止めたりと、もう凄かったですよ。お陰で、今じゃ学内で秘密のファンクラブが出来ています。それと、“姉さん番長”とあだ名もつきました。」
「パネェな由梨先輩!」
「その…もはや、化物ね…。言ってはいけないけれど…。」
「大丈夫です。僕も何だかそう思い始めてきましたから。」
直斗が遠い目をしたので、烈と氷海はこれ以上何も聞かない事にした。
「…っと、そうだ。俺、ちょっと屋上に行ってくる。」
「何かあるんですか?」
「ちょっと、一人になりてぇの。ホームルームが始まる頃には戻っから。」
「ちゃんと帰ってきなさいねー。」
氷海はそう言って、烈の姿を見送った。
「…氷海さん、つかぬ事を伺いますが、烈君には、氷海さんの決意、話したんですか?」
「ええ。入院している時に、話したわ。それからずっと、考えてくれているみたい。」
「…烈君も烈君なりに、答えを出そうとしているのでしょうね。」
「そう、かも知れないわね。…あら?」
突如、氷海の携帯電話にメールが入る。そのメールを見るなり、氷海は小さく微笑んだ。
「直斗、私も少し、出ていくわね。」
「えっ? もうすぐホームルームが始まりますよ?」
「…どうしても、大切な用事なの。…先生には来ていると言っておいて。」
真剣な表情の氷海に、直斗は何かを悟ったのか、溜息を吐いて笑みを見せた。
「わかりました。深い理由は聞きませんよ。」
「…ありがとう、直斗。それじゃあ、行ってくるわね。」
「行ってらっしゃい。(上手くいく事、願ってますね。)」
直斗は氷海の後ろ姿を見送りながら、彼女にエールを送った。
「…告白だな。」
「恐らく、そうで…って、うわぁっ!?」
いつの間に横に立っていた人物に驚き、直斗は盛大に転んだ。
「い、いつの間にいたんですかDTO先生!」
「氷海が出てくちょっと前から。ちなみに烈が出ていったのを廊下の窓越しに見た。」
「僕の隣にいたなら声をかけて下さい!」
「気にするな。それより直斗、気にならないか? 烈達。」
「気になりますが、覗き見は遠慮しておきます。それよりホームルームを」
始めて下さい、と言おうとした時には、クラス中がもぬけの殻になっていた。
「…。」
「直斗、お前は行かなかったんだな。」
「あ、ハジメ先生。はい。覗き見はまずいと思いまして。」
「多分、賢明だと思うぞ。ちなみに直斗、今行った奴等、あ、DTO先生含めて、どうなると思う?」
「美味しくこんがり焼かれて帰ってくるか、凍らされて暫く帰ってこないかのどちらかでしょう。」
探偵王子の推察に、ハジメは納得を見せた。
「どちらにせよ、無事には帰って来ないだろうな。直斗、ホームルームはうちのクラスに混ざって連絡聞くか?」
「どうせ今このクラスはそれどころではありませんし、お邪魔してもいいですか?」
「構わないって。」
「感謝します。」
直斗はハジメと共に、彼が担当する隣の教室へと向かっていった。
- 雲の向こうに捧ぐ向日葵の花 その二 ( No.583 )
- 日時: 2015/01/23 22:08
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fbqYC.qT)
屋上では今、一人の少年が空を見上げ、流れる雲を見つめていた。
「…ホームルーム、始まっているわよ。」
少年の横に、少女が並んで座り、空を見上げる。
「…こういう時しか、二人きりになれねぇからさ。お前こそ、よくホームルームサボる気になったな。」
「貴方から“話がある。”なんてメールが来れば、サボりたくもなるわ。」
「それ、絶対二年前には言ってねぇよな。」
「ええ、言っていないわね。それどころか、貴方を連れ帰っているわ。」
暫く話した後、静寂が訪れる。
「…氷海。」
「何? 烈。」
「…結論から言うとな…。」
少女…氷海は、少年…烈の次の言葉を、黙って待つ。
「答え…まだ、出せてないんだ。」
「…。」
「お前のシャドウが見た通り、俺は、過去にあったある出来事がずっと引っ掛かってて、幸せになっていいか、俺だけが幸せになっちゃいけないんじゃないか、そう、その思いが、ずっとグルグルしてんだ。」
「…何があったかは、話してくれないの?」
「…ごめん。話したく、ないんだ。思い出すのも、辛いし…。」
烈の顔を覗き込んだ氷海は、すぐに視線を戻し、空を見た。
「いいわ、無理に話さなくても。…無理に聞いて、貴方が傷付くのは、嫌だから。」
「…サンキューな。」
また、暫しの沈黙が流れる。
雲に包まれた空が、まるで二人の心を表しているかのようだった。
「…こうは言ったけど、さ…。」
沈黙を破った烈は徐に立ち上がり、金網の方まで歩く。
「色々、考えるのはやめねぇよ。幸せになっていいかって事も、氷海の気持ちも。」
「…。」
「“好き”っていう感情はよくわかんねぇけど、すげぇ素敵な事っていうのはわかる。俺もいつか、誰かを“好き”になりたい。」
そこまで言ってから、烈は氷海を見た。
「もし、その“好き”がお前に向けられたら…お前の事を好きになった時には、俺からお前に告白する。もし、その時に…お前がまだ、俺の事を好きでいてくれるなら…その時は、お前の恋人として、一緒にいてくれないか?」
「…!」
烈のその言葉に、氷海は思わず目頭が熱くなるのを感じた。
自分を嫌う事なく、烈は真剣に考えてくれる。それがわかったのが…自分の思いが少しだけ報われるのが、嬉しかったのだ。
「…。」
氷海は立ち上がり、烈の元まで行き、そして、
「!? …。」
烈を自分の方に向かせてから抱き締め、その唇を奪った。烈は一瞬驚くも、払う事なく、それを受け入れた。
「…待っているわ。ずっと。…貴方が私を好きになって、告白してくれる日を、ずっと…。」
「…ああ。」
氷海を抱き返し、烈は笑みを見せながら、答える。
「…ねぇ、烈。」
「ん?」
「暫く、このままでいいかしら?」
「…授業、始まるぞ。」
ホームルーム終了を告げるチャイムはとうに鳴った。もうすぐ授業だというのに、氷海は烈にそう懇願した。
「…たまには、サボるのも悪くはないわ。」
氷海はただ、そう呟いて、烈を抱き締めていた。
これには、烈は「…そうかよ。」と短く呟いて、なすがままにされるだけだった。
「わっ、ちょ、押すなって! うわぁっ!」
暫くの間、二人はそうして抱き合っていたが、いきなり校舎への扉が開き、中から担任とクラスメイト達が雪崩れ込んできた。
「…。」
暫し、状況が読めず固まる烈。そして状況を理解した時、内に焔の如く熱い怒りと、恥ずかしさが宿った。
「烈、どうしたの? 凄く熱いわ。それに、何だか音がしたけれど…。」
「…ん、いや。氷海、そろそろ離して貰ってもいいか?」
「え、えぇ…。えぇっ!?」
氷海は名残惜しそうに、烈を離し、後ろを見て、ようやくクラスメイト達に気が付き、顔を赤らめて俯いてしまった。
「ちょっ、誰だよ押したの! 見つかっちまうだろ!?」
DTOが問い質すと、口々に違うと言い放つ。
「…それは誰でもいいんじゃないか?」
「いや、良くねぇよ烈…って、うわぁっ!?」
驚いたDTOが思わず後ずさり、周りの生徒達は腰を抜かしながら烈を見た。
「れ、烈、その、これには深ーい訳が」
「どんな深い訳で、俺と氷海を覗き見してた訳? 先生。」
笑顔の烈が、左手に炎を宿しながら、腰を抜かした一同を見ていた。
「…お前ら、まずはそこに正座。その後、一人一人上手に焼いてって、こんがり肉にしてやるから。」
「上手に焼けました〜♪ は止めて下さい烈様お願いします!」
全員、土下座で謝罪をする。
だが、これしきの事で許せる烈ではなかった。
「問・答・無用っ!」
烈は躊躇いもなく、炎を放った。
「ぎゃあぁぁぁぁっ!」
同時に、辺りに、大勢の悲鳴が響き渡った…。
- 雲の向こうに捧ぐ向日葵の花 その三 ( No.584 )
- 日時: 2015/01/23 22:14
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fbqYC.qT)
時は移ろい、五、六限の間の休み時間。
「…じゃあ、お願いね、完二。」
「おう、わかった。明後日には作り終えてやっから。」
氷海は隣のクラスまで足を運び、完二に何かを頼んで帰っていった。
「氷海ちゃん、何だって?」
席に戻った完二に、鈴花が早速尋ねる。
「ん? ああ。この写真の花の造花を作ってくれってさ。」
そう言いながら、完二は鈴花に氷海から貰った写真を見せる。
そこには、黄色い花びらとチョコレート色の花心が特徴的な花が写っていた。
「これ、何の花かな?」
「向日葵だよ? この品種は…イタリアンホワイトかな。」
りせが問うと、鈴花が即座に答える。
「えっ、嘘っ! これも向日葵なの!?」
「何かそうは見えないね…。向日葵って言ったらこう、もっと中心部が大きいイメージがあるけど…。」
「まぁ、これも向日葵なんだとさ。んで、絶対にこの向日葵にしろって念を押された。どの向日葵でもいいとオレは思うけどよぉ…。」
完二がぼやくと、鈴花はしばし考え、小さく微笑んだ。
「…あぁ、成程。完二、絶対にこれにしてあげてよ。」
「あぁ? 何でだ?」
「…この向日葵じゃなきゃダメなんだよ。」
鈴花はトントン、と指で写真をつつく。
「大事なのはどんな向日葵かじゃなくて、この品種の向日葵の、“花言葉”だもん。」
「花言葉ぁ?」
全員、いぶかしむように鈴花を見る。
「この品種の向日葵…イタリアンホワイトの花言葉は、“貴方を思い続けます。”だよ。」
「…あっ…!」
“貴方を思い続けます。”それは、氷海の烈に対する決意の現れ。
同じ意味の花言葉を持つこの花を側に置き、いつまでも、いつまでも、烈を思う事を忘れさせないつもりだろう。
烈が答えを出す、その日まで。
「…へっ、しゃーねぇな。鈴花、今日の放課後、材料の買い出しに行くぞ!」
「うん、いいよ! 一緒に行こっ!」
完二と鈴花はそう約束をし、放課後を待った。
少女の悪夢は、少年の手により一端の終わりを見せる。
そしてまた、平和な日常が訪れる。
「…フフ…。」
次なる一手が、打たれるまで…。
- 幕引きと対策 ( No.585 )
- 日時: 2015/01/23 22:31
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: fbqYC.qT)
翌日、桐条美鶴の執務室…。
「…再び映ったマヨナカテレビ。そして、イレギュラーのシャドウか…。」
「はい。この時は何とか花村君達の力で退けられたみたいです。」
「…だが、次もこううまく行くとは思えない。」
美鶴は風花の報告を受けた後、立ち上がり、外を向いた。
「他にもシャドウ絡みの案件が起こる可能性がある以上、人員は割けられない。…そこで、だ。」
何かを決意した美鶴は、風花を見た。
「山岸。お前はこれから、白鐘君達のかよう学園に行ってほしい。」
「はい、私も、それをお願いしようとしていました。」
そう言って風花が見せたのは、一枚の紙。
それは…BEMANI学園大学部への編入を願う教師からの推薦状だった。
「向こうの教授から、よければこちらに来ないかと推薦されていたんです。…昴さんの話を聞いて、私、行かなければならないと思っていて、桐条先輩にもお願いしようとしていましたが…。」
「フフッ、手間が省けたと言う訳か。」
「はい。」
にこやかに会話をする二人。が、急に美鶴は表情を変える。
「しかし、山岸だけでは不安だ。そこで、だ。彼女をもう一度…高校に通わせようと思う。」
「彼女? …まさか…。」
何かに思い至った風花が何かを言おうとした時、後ろのドアが開いた。
そこから出てきたのは…。
「…頼めるか? アイギス。」
「お任せ下さい、美鶴さん。」
月光館学園の制服を身に纏った、アイギスだった。
「山岸、お前の答えを待たずして、ちょっとだけ手続きをさせてもらった。二人はあの学園の学生寮に入ってもらう。部屋のスペースも、私なりに改造させてもらって…ラボの機能を一部、向こうに搬入させてもらった。」
「え、結局私は断れなかったんですか?」
「断ったら、手続きを取り消して、他の人員に頼もうと思っていた。ここで山岸にいい返事を聞かせてもらってありがたかった。」
小さく笑う美鶴に、風花も釣られて呆れたようなものだが、笑みを零す。
「もう、桐条先輩ったら。…アイギスの事は、私に任せてください。メンテナンス、しっかりさせてもらいます。」
「私も、やるであります!」
「心強いな。では、明日から頼む。…全てのシャドウ関連事案を、解決させる為にな。」
「はい!」
風花とアイギスは、力強く返事を返した…。
■
私—オシオキをお待ちの皆様、ごめんなさい、まだ出来ていません…。
昴「前回は何で前半が二日で出来たのか未だにわからん。感想、あればどうぞ。あ、次はツイネタやっていくぞー。…これ、レス満タンになるまでにオシオキいけっかな…。」