二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- バレンタインデー☆パニック! その一 ( No.681 )
- 日時: 2015/02/14 23:16
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: r1bonIQR)
二月十三日、バレンタインデー前日、神殿…。
今日は、明日の為のチョコ作りを、昴、氷海、鈴花、直斗、千枝が行っており、理乃が補佐としてこの場にいた。
…昴と理乃以外は意中の相手に渡すんですねわかります。
「き、切りにくい…きゃあっ!」
「うわっ! 大丈夫か、氷海…。」
氷海が切ろうとしたチョコが昴を掠め、飛んでいく。辛うじて避けたが、正直ヒヤリとした。
「へ、平気です…昴さんこそ大丈夫ですか?」
「ギリギリ避けられたから大丈夫だ。切る時は無理すんなよ?」
「うぅ…はい。」
申し訳なさそうに氷海は謝罪しながら、再びチョコを切る作業に戻った。
「…しかし、バレンタインか…。」
「何かあったのですか? 桜坂先輩。」
ふぅ、と溜息をつく理乃に、直斗が心配になって聞いた。
「理乃、もしかして一年前のバレンタインを思い出してるのか?」
戸口からそういいながら現れたのは、由梨。その後ろには葉月もいる。どうやら話を聞いていたようだ。
「ええ…。あの日は大変だったのを思い出したの…。魔法理論を一から構築して特殊な結界を張って…。ほぼ徹夜で無駄なものを作ったと思ったわ。」
「いや、あの結界をパソコン一つで一日足らずで構築する理乃が凄いから。」
由梨と葉月が同時に発言をする。昴達には何がなんだかわからないが、理乃が凄いものを一日足らずで作った事は伝わった。
「…なぁ、何があったんだよ、一年前に。」
話が見えないので、昴は説明を要求する。
「…主にアタシと葉月がひっどい目に遭ったんだよ…。」
「理乃が結界を張ってくれなきゃ、私達今頃ある意味死んでたもん…。」
何だか凄く酷い目に遭ったようだ。葉月達の目が死んでいる…。
「…事の起こりは、昴さんの依頼で私達がここに永住すると決めた少し前…私達が無事卒業出来ると決まった一年前の、バレンタインデーの日でした…。」
理乃が話始めたので、全員注目した…。
- バレンタインデー☆パニック! その二 ( No.682 )
- 日時: 2015/02/14 23:21
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: r1bonIQR)
一年前、バレンタインデー…。
「っ、いい加減、諦めやがれ!」
由梨は火の欠片で大剣を作り出し、その剣先に気をまとわせ、一気に放つ。
「うぎゃあぁぁぁっ!」
「野上先輩ー! 私の愛のチョコを受け取ってー!」
「葉月ちゃあぁぁんっ! 僕のチョコ食べてえぇぇっ!」
その気に触れた者は、盛大に吹っ飛んだ。が、奥から別の存在がまたやってくる。
「由梨、まだ来る!」
「だあぁっ! しつこいっ! 葉月、上に逃げるぞ!」
「う、うん!」
葉月は氷の矢で牽制しつつ、由梨と共に上階へと逃げる。
「あー、うざってぇっ! 朝っぱらから何でこんな運動しなくちゃならないんだよっ! つか、何でアタシの方女の比率高いんだ!?」
「もう嫌あぁぁぁっ!」
二人は涙目になりながら、ダッシュで階段をかけ上がった…。
■
全ての始まりは、バレンタインデー、前々日にまで遡る…。
「…やっぱりまだ理乃には春が来ないか…。このニブチンじゃ、まだまだ先は長いかな…。」
「何か言った? アロマ。」
「何でもないです。」
桜蘭学園、学園都市。そこにある、桜カフェ…。
その中でコーヒーを飲みながらにこやかに微笑む理乃の目の前に座っていた黒髪半ズボンの小学生くらいの少年—アロマは、彼女の表情に何かを感じたのか、黙った。
「なら、いいけどね。」
「(ほっ…。相変わらず理乃は怖いなぁ…。)それはそうとさ、理乃。今年も用意してくれるんでしょ? バレンタインデーの。」
さっさと話を変えようと、アロマは別の話題を振った。
「うん、それなんだけどね…。正直なところ、チョコが売り切れ状態が続いててね…。もしかしたら、クッキーになると思うの。お祖父様にも伝えておいてくれる?」
「チョコの売り切れ? 珍しいね。流石にこのシーズンだから売り切れる可能性はあると思うけど、続けざまに売り切れるなんて…。」
アロマのいう通り、続けざまに売り切れはおかしいと思う。だが、これには理由があったようだ。
「アロマ、知らないの? ここ最近ネットで話題なのよ。何でも、今年のカカオにに惚れ薬のような成分が見つかったって話なの。」
「…あぁ、なるほど。」
なぜか納得したアロマは、紅茶を一口飲んだ。
「でも、そんなのあるわけないわよね。ガセネタよガセネタ。カカオにそんな成分があるわけ」
「いや、理乃…実はそれ、ガチなの。」
肩を竦め、呆れる理乃に、アロマは微妙な顔をして言い放った。これには理乃も一瞬で表情を変える。
「…は?」
「だから、ガチなの。魔法協会でもそのネタ掴んでる。んで、調べた。そしたら本当に入ってたんだ。誰かが惚れ薬の入った肥料を撒いちゃったんじゃないの?」
アロマのいう魔法協会とは、現実世界で言うところの教育委員会のようなものであり、この魔法協会が全世界の教育を担う。ちなみに、アロマはそこの関係者であり、今回のカカオの件も教育的な問題で議論されていたのだろう…。
「…いや、え、嘘でしょ?」
「ガチなの。」
魔法協会の関係者であるアロマの言葉に暫し、沈黙が訪れる。
「…だから理乃、今回、クッキーにして正解。流石にお祖父ちゃんと孫で春が来ちゃまずいし、僕としても異種族愛は勘弁。」
「…そうするわ。」
理乃はそう行って引き下がった。
…ちなみに、このアロマは今は人間の姿をしているが、擬人化でこうしているだけであり、本来は…理乃の飼い猫である黒猫であり、現在は彼女の祖父の良き右腕として働いている。
- バレンタインデー☆パニック! その三 ( No.683 )
- 日時: 2015/02/14 23:26
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: r1bonIQR)
翌日、桜蘭学園、理乃の所属する情報処理クラス…。
翌日がバレンタインデーだからか、理乃以外のクラス全員既に下校しているようだ。男子がそわそわしながら女子を見ていたのは、多分理乃は気づいていない…。
「そうか…。やっぱりカカオの件、ガチだったのか…。」
「魔法協会もその話を掴んでいるみたいだし、アロマの言う事だから本当だと思うわ。」
理乃は集まった由梨、葉月、七海に、昨日アロマから聞いた事をあます事なく話した。
「今年は抹茶チョコにしようと思ったけど、それじゃやめた方がいいな…。」
「うん、その方がいいよ。私もクッキーにしようかな…。って、七海、さっきから大分静かじゃない?」
「…。」
この話題に一番食いついてきそうな七海が、黙ったまま理乃を見る。
(…手作りチョコを作って、理乃に渡して、それからそれから…ぐへへ…。)
にへら、と笑う七海に、由梨と葉月は嫌な予感を感じ取った。
あぁ、絶対に何か厭らしい妄想をしてるだろうな、とも。
「…おい馬鹿。何考えた。」
「へっ!? な、何も考えてないってば!」
「…顔、何か凄く緩んでたけど?」
「ゆっ、緩んでないって!」
問い詰める由梨と葉月だが、七海は必死で隠す。
だが、これで黙っている親友じゃない。
「七海。」
「な、何、理乃。」
「…。」
理乃はポケットから、小型の機械を取り出した。中心には針があり、機械の先には指がすっぽり覆える程の指サックと、それに繋がるコードがあった。
「ここに、私特製の嘘発見器があるわ。」
「う…。」
「貴方が変な事を考えていないならば、この指サックに指を入れ」
「すみません、手作りチョコを理乃にあげようと考えました。」
にこやかに話す理乃の台詞を切り、七海は土下座をした。
「…。」
「あ、理乃が切れた。」
「葉月、逃げるぞ。」
理乃の魔力の高まりを感じたのか、葉月と由梨はそそくさと教室を後にし、廊下に出たところで、後ろ手にドアを閉めた。
直後、七海の悲鳴が聞こえたのは言うまでもない…。
■
「で? これからどうするんだ? このあと予定もないだろうし、普通に帰んのか?」
床に転がる七海を視界に入れずに、由梨は理乃に聞く。
司になってから、彼女達はいつの間にか四人一緒にいる事が当たり前になっており、由梨はそう理乃に訊ねたのだ。
「うーん、それは昇降口に行きながら決めましょ。」
「さんせーい!」
そうと決まれば、すぐに三人は鞄を持ち、教室を出ていった。
七海? あぁ、放置していったよ。
- バレンタインデー☆パニック! その四 ( No.684 )
- 日時: 2015/02/14 23:32
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: r1bonIQR)
「あ、私、音楽室に忘れ物!」
途中、葉月がそう言ったので、二人は彼女についていく事にした。
「失礼しまーす。」
「うーん…。」
三人で中に入ると、譜面台の前で唸る男性音楽教諭を見つけた。
「先生、どうしたの?」
「あぁ、司の三人か。いやな、実は、合唱部の訪問演奏会が明後日にあるんだが、ピアノ担当がインフルにかかったらしくてさ…。」
「あー…。インフルなら仕方ないよね…。」
「誰か代役いないかな…。」
どうやら音楽教諭は代役がおらず、困っているようだ。
「あの…私、やりましょうか?」
困っている人を放っておけない葉月は、おずおずとそう立候補した。
「うーん…そうだな。杉山なら大丈夫かな。よし、頼んでいいか? あ、これ楽譜な。」
「はい! 頑張ります!」
葉月は楽譜を受け取り、忘れ物をとってきてから、音楽室を後にした。
「うわー…この曲、結構難しいんだよね…。」
「ぶっつけ本番みたいなものだけど、何となく葉月なら大丈夫だと思うわ。」
「そうそう。アタシ達の中で一番音楽的適性があるからな。」
「二人にいわれると、何か大丈夫な気がしてきた!」
仲間に言われ、自信を持ったのか、葉月は意欲を高めた。
■
昇降口に向かう途中で…。
—ボカアァァンッ!!
「きゃー!」
盛大な爆発音と共に、悲鳴が聞こえた。
「何事!?」
「理科室からだ!」
理乃達はその悲鳴を頼りに、理科室へと向かった。
彼女達が到着して見た理科室は、もうもうとした黒い煙が上がっており、ドアは吹き飛ばされている。
「…けほっ、けほっ…!」
そこからよろよろと、女子生徒が出てくる。中には彼女以外に気配は感じないので、恐らく彼女がこの爆発を起こしたのだろう。
「おい、大丈夫か?」
「あ…野上さん…。」
呆れながら近づいていった由梨に、女子生徒はばつが悪そうな顔をした。
「何やってたんだよ、この中で。」
「えっと…今日出た、薬学の宿題…。」
どうやら、課題をしていたようだが、誤って爆発させてしまったらしい。
「あぁ、あの薬か。それならアンモニアとアルミニウムを混ぜてから…。」
そして、暫く由梨の薬学講座が始まった…。
「…私達、どうしようか?」
「邪魔にならないように退散しましょう。」
理乃と葉月はそんな彼女達の邪魔にならないように、理科室の換気をしてドアを直してからそっと理科室を出て、廊下で待っていた。
そして、数分後…。
「できたー!」
どうやら、課題に出された薬ができたようだ。
「なっ、簡単だったろ?」
「うん! ありがとう、野上さん! 助かった!!」
「気にすんなって。…待たせたな、理乃、葉月。」
女子生徒に軽く挨拶を交わしてから、由梨は待っていた二人の元に来た。
「気にしてないわ。それにしても…。」
理乃はじっと、由梨を見る。
「なんだよ。」
「…貴方が薬学に興味を持つなんてね。出会った当初からじゃ、まったく考えられなかったわ。」
「だよね。仲間思いの面は垣間見えたけど、基本自分さえよければ、みたいな感じだったし。出会った頃の由梨じゃ、医者になりたいなんて夢を持ってるなんて思わないよ。」
「…。」
理乃と葉月の言葉に、由梨はふい、とそっぽを向いた。
「…この一年が、アタシを変えたんだと思う。アタシだってお前達と出会った時は、こんな夢を持ってないし。」
「…やっぱり、この一年で一番成長したのは由梨だよね。」
「うっさい。ほら、昇降口行く…あ、ちょっと待ってくれ。確か描いた絵出しっぱなしだったと思うから、一回美術室よっていいか?」
「構わないよ。」
そう言って理乃達は一路美術室へと向かった。
■
美術室では今、一人の男子生徒が絵を描いていた。
「あー、くそっ、課題がおわらねぇ…!」
「(あら、クラスメイトの…。)どうしたの?」
そんな男子生徒が心配になって声をかける理乃。どうやら彼はクラスメイトの生徒らしい。
「おっ、理乃。いや実はな、課題が終わらなくてよ。なぁ、理乃、代わりに課題をやって…。」
何かを言おうとした男子生徒だが、急に笑みを浮かべた。
「って、理乃に任せたら壊滅的な絵で俺が描いたのじゃないってバレ」
男子生徒の言葉が、急に消えた。頬から赤い血が伝う。
「…後で覚えておいてね。」
…勿論、理乃の仕業である。
「はい…。すみませんでした…。」
(理乃、怖ぇ…!)
男子生徒は土下座で謝罪をする。そんな様子を見ていた由梨や葉月が震えないわけはなかった。
「さて、そろそろ出ましょうか。」
「そ、そうだな…。」
恐怖に戦きながらも、三人で昇降口に向かっていった。
- バレンタインデー☆パニック! その五 ( No.685 )
- 日時: 2015/02/14 23:37
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: r1bonIQR)
昇降口に着いた所で、葉月がクルリと振り向いた。
「ねぇねぇ、帰りに桜カフェによってパフェ食べない!?」
どうやら昨日理乃とアロマが会った桜カフェで特性のパフェを食べたいようだ。
「そうね、昨日も寄ったけど、行こうかな。由梨はどうする?」
「特にやる事ないし、あそこの桜餅が食べたいから行くわ。」
「やったー!」
そんなこんなで、バスを待ち、桜カフェのある桜蘭学園都市に向かった。
■
そして、桜カフェにて。各々注文を済ませて一息ついていた。
「…しかし、明日は大変だな。」
「そうね…。」
「何が?」
葉月はもぐもぐとクリームパフェに舌鼓を打ちながら、理乃達に聞いた。
「考えても見ろよ。あの眉唾もんの話が本当なんだろ? なら、好きでもない女からのチョコを食べたと想定してみろよ。」
「…あ。」
どうやら葉月は理解したようだ。
確かに、好きでもない異性の相手から貰ったチョコレートを食べたら…強制的に彼女にほれてしまう事になる。
「それに、明日はバレンタインだし…好きな人に渡そうとする人が多いと思うわ。」
「うわー…。世の中の男子は大変そうだね…。」
「…しかも、強制的に惚れさせる薬付きだしな。」
「…。」
溜息をつく葉月と由梨の横で、理乃は難しい顔をしながら考え込んでいた。
「…私、ちょっと学校に戻るわね。」
「え? どうしたの、理乃。」
「…明日の為に、ちょっと備えておきたいものがあるの。明日も早起きして先に学校に行っているわね。じゃあ、また寮で。」
どうやら、理乃は何か考えがあるようで、一人紅茶を飲んでからそっと出て行った。
「またねー!」
葉月は手を振りながら、理乃を見送った。
「…何を考えてるんだろうな、理乃。」
「分からないけど…理乃がやろうとしてる事は多分、間違っていないと思う。」
「それは分かるけど…まぁ、いいや。理乃の頭はよくわからんし。」
由梨はずず…とお茶をすすりながら、桜餅をつついていた。
- バレンタインデー☆パニック! その六 ( No.686 )
- 日時: 2015/02/14 23:42
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: r1bonIQR)
そして、バレンタインデー。
「おいっす、葉月。」
「おはよう、由梨。七海は?」
桜蘭学園・司専用寮にて、由梨は葉月とばったり出会った。理乃は早く出て行くといっていたので、七海がいない事に首を傾げていたが…。
「あー、あの馬鹿は盛大に風邪引いた。何でも、あのまま放置してたからか寒くて風邪引いたみたいで…。」
「自業自得だ。…そうだ、葉月。玄関にクッキー置いてなかったか?」
「あ、うん、あったよ。多分理乃のだよね。」
「食べながら学校行こうぜ。」
「そうだね。」
二人は仲良く、寮を出て行った。
「さて、今回は誰が好きでもない奴からチョコ貰うんだろうな。」
「…ねぇ、それなんだけどさ…。」
道すがら、のんびりと話をしている二人だが、急に葉月の顔色が悪くなる。
「…由梨、それって…惚れ薬ってさ、その…異性間だけに効くわけじゃないよね?」
「うーん、成分調べてないからなんとも言えないけど…多分、そういったのはないと思う。」
「…なら、さ…。友チョコ的なものもありえるんじゃないかな?」
「あ。」
友チョコ。女が女に手渡すチョコ。その可能性も、大いにありうる。
「それに、逆チョコパターンもあるよね。」
「…。」
逆チョコ。男が女に手渡すチョコ。ホワイトデーは来月だが、その可能性もありえなくもない。
「…ねぇ、由梨。私、帰りたい。」
「アタシも帰りたくなってきた。」
そして、彼女達司組は…周囲の憧れもあり、男女問わず…モテるのだ。特に由梨はその容姿も相まって、そして葉月はそのドジっ子属性も相まって…かなりモテる方なのだ。
理乃も容姿的にモテるのだが、本人は何一つ気づいていないだろう。だがこの二人は、自分に好意を向ける目を知っているので…帰りたいと願ったのだ。
だが、足はどんどん学校に向かっている。
「あっ、いたぞ!」
「げっ!!」
校門まで辿り着いた時、大勢の男女がいた。
全員、由梨と葉月目掛けて走ってくる。
「由梨ちゃあぁぁんっ!! 俺の逆チョコ受け取ってえぇぇぇっ!!」
「センパァイ! 私のチョコを受け取ってくださぁい!」
「葉月たぁぁんっ!! 俺のチョコを受け取って俺を食べてえぇぇぇっ!!」
「ぎゃあぁぁっ!! 何か来たあぁぁっ!!」
おい、一部なんか変なのいないか!? まぁ、それはいいとして、由梨と葉月は身の危険を感じ、引き返そうとしたが…。
「あっ、由梨先輩だ!」
「葉月センパイだ!」
引き返そうとした先にも、チョコを準備する登校途中の生徒がいた。
「前からも敵。後ろからも敵…!」
「…前からの方が…人はあまりいないみたい。」
朝早くに登校してきた為、どうやら学校の方には人はあまりいないようだ。
「なら…。」
由梨は火の宝珠で大剣を作り出す。その横で葉月も弓を作り出し、鞄から矢立てを出し、背負った。
「学校の方に逃げるぞ!」
「うん!」
葉月が数多の矢を番え、一気に放つ。
「どいて! 当たると痛いよ!」
「ぎゃあっ!!」
躊躇いもなく放つ葉月。何人かの生徒がひるみ、道が開けた。
「今だ!」
由梨と葉月はその合間を縫って、素早く校舎内にもぐりこんだ。
「あ、由梨先輩!」
「…げっ!」
だが、中にも勿論人はいました☆
- バレンタインデー☆パニック! その七 ( No.687 )
- 日時: 2015/02/14 23:48
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: r1bonIQR)
そして、色々攻防を交えつつ、最初のアレである…。
「あの馬鹿都合いい時に風邪引きやがって!!」
「私も風邪引きたかったよー!!」
半泣きになる葉月と、怒りをぶちまける事しかできない由梨。しかも相手は現在療養中の七海に。
「とにかく屋上に行こう!」
「ああ!」
由梨は素早く屋上に続くドアを開け、葉月を滑り込ませた後、素早くドアを閉めて、更にバリケードを作った。外開きのドアなので、これなら暫く誰も入ってこないだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ…。ったく、何で、朝っぱらから、こんな、運動…ゲホッ!」
「だ、大丈夫、由梨…? で、でも、私も、疲れた…。」
一時の休息だ、とでも言うかのように、バリケードの前に座り込む二人。流石に朝一でこんなに走らされるとは思っていなかった。
「ねぇ、理乃、大丈夫かな…?」
「あ、そうだ…あいつ、早く行ったんだっけか…。ちょっと、電話してみっ」
由梨がポケットから携帯電話を取り出した瞬間、着信がかかってきた。
相手は…今まさにかけようとした、理乃だ。
「ん、理乃? もしもし、どうした?」
『あぁ、由梨。どうやら大分追いかけられていたみたいね。大丈夫?』
「今絶賛休憩中…。」
『…随分声に覇気がないわよ。』
流石にここまで走らされては覇気がなくなるのも当然だ。と由梨はいいたかったが、声が上手く出せないので思うだけで終わった。
『まぁ、いいわ。もうすぐプログラムができるから、もうちょっとの辛抱だから。』
「何のプログラムだよ…。」
『一時的に惚れ薬の効果を無効化する結界を張る為の、学園結界を応用したプログラムよ。どうやらこの惚れ薬は今日一日で有効期限が切れるみたい。だから、それまで薬を無効化しておけば、被害は減ると思ってね。』
「あぁ、そういや、お前…そんなの、卒業制作の課題にしてたな…。で? お前はどこにいるんだよ。」
『え? パソコン室の、私専用のパソコンの前。聖名子から絶対鍵かけとけって言われたから、生徒は入ってきていないわ。』
(ナイス、聖名子。)
聖名子というのは、理乃と瓜二つの、彼女の従姉妹であり、彼女のよき理解者で…一応、保護者枠であったりする。詳しい詳細は、別の機会に述べよう。
「で、そのプログラムはいつ完成? アタシらとしてはさっさと教室に行きたい。」
『もうすぐ展開できるわ。…はい、完成!』
電話口越しに、カタンッ、とキーボードを叩いた音が聞こえる。
直後、魔方陣が展開され、学園全体を包んだ。
『これで、チョコを食べても惚れる事はなくなるわ。今、先生に放送を頼んだから、そろそろ諦めて帰ると思う。』
「ホントサンキュー…。じゃあ、また後でな…。」
由梨は通話を切ると、項垂れた。
「…はぁ…朝から疲れた…。」
「私も…。」
二人は暫く、ぐったりとしていた。
- バレンタインデー☆パニック! その八 ( No.688 )
- 日時: 2015/02/14 23:54
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: r1bonIQR)
「で、あの後先生の放送で何とか惚れ薬入りチョコ騒動は終息したんだけど…その後でも効果があると信じて、アタシ達にひっきりなしにチョコを渡しに来る馬鹿がいたから、その日一日中技放ちまくりで疲れてグロッキー状態で帰ったのが滅茶苦茶印象に残ってるわけ。」
「この騒動は、後に桜蘭学園最大の才能の無駄使い事件として有名になったの。」
「それ、理乃の事だよな。確かに惚れ薬の成分消す為の結界を作ったのは完全に無駄な労力だよな。」
話を聞き終えた昴は、葉月と由梨に同情した。もてすぎるのも辛いな、うん。
「本当にあの日はある意味トラウマ…。」
「疲れたし、何より…うん、ごめん、疲れたしか出てこない。」
「お、お疲れ様でした…。でも…。」
直斗は、何か気がかりな事があるようで、由梨を見る。
「どうした? 直斗。」
「…あ、いえ…。その騒動、この学校でも起きると思います。主に、野上先輩が。」
「え?」
何が? と言いたげに首をかしげ、直斗を見る由梨。
「野上先輩、貴方のファンクラブが出来ているの、ご存知ですか?」
「やっぱ作られてたのかよ畜生!!」
どうやら、由梨の腕っ節とこの面倒見のよさで、完全に惚れられたようで、今ではファンクラブなんかも出来ているらしい。
「あと、氷海さんにも行っておきますが…烈君の競争倍率も高いみたいです。」
「競争倍率って何!?」
烈もそれは例外ではないようで、ファンクラブとまでは行かないが、彼を慕う女子も多い。
「はぁ…。これ、何か明日学校行きたくなくなるね…。」
「面倒に巻き込まれそうだね…。」
「あ、里中先輩も油断しないでくださいね。花村先輩の競争倍率も高いですから。」
「ライバルいっぱいいるの!?」
…明日は、波乱が起きそうな…そんな予感がした、千枝だった…。
そして翌日、それが現実となろうとは、この時の一同はまだ知らなかった…。
おーわれ。
- バレンタインデー☆パニック! 後書き ( No.689 )
- 日時: 2015/02/14 23:59
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: r1bonIQR)
後書き de 雑談
私
—バレンタインデーという事で、突貫工事だけど、昔理乃ちゃん達を使ってRPGツクールで作ろうとして挫折した作品をちょっと書き起こしてみた。
理乃
「ああ、スバルさんのもう一つの趣味ですね。」
私
—そうそう。
由梨
「この時は大変だったんだけどさ…。理乃がいなきゃ、アタシまで風邪引いてたし…。」
鏡
「屋上で放置は辛いよね…。」
私
—まぁ、何とかなったんだからいいじゃない。
由梨
「よ か ね ぇ よ 。」
昴
「ちなみに、お前バレンタインデーはどうしてたんだよ。」
私
—たまの贅沢って事で、ゴディバのチョコ買ってきて家族に振舞った。父親が今日誕生日だし、たまには贅沢をどーぞ、みたいな?
風花
「ふふっ、皆さん、喜んだでしょうね。」
私
—弟、甘党だから喜んでた。まぁ、その話は置いておきましょう。では、最後にアロマ君と聖名子ちゃんと…紅刃君の設定でも置いていきますかな。あ、そうそう。質問回で答えてほしい質問だけど、随時募集してます。
理乃
「では、またお会いいたしましょう。」
アロマ
理乃の飼い猫。オス。
黒や紅のようにテレパシーで人語を話す黒猫。擬人化も可能。その時の姿は黒髪短髪で半ズボンが似合う小学生くらいの少年。名付け親は理乃であり、彼女とは子供の頃に出会った。結構人間換算だと歳が行っているが、魔法で人間と同じような年齢のとり方にしたので、今は小学生くらいの年齢。
猫だが、年齢操作が出来たりと頭はよく、若いのに教育委員会のような機関である魔法教会に所属しており、現在は理乃の祖父の右腕として働く。
結構実戦経験も豊富で、強い戦闘能力を持つ。猫だからといって侮ると痛い目を見る。
神埼 聖名子(かんざき みなこ)
理乃の従姉妹で、二人が並んだらどちらがどちらか分からないくらい驚くほど瓜二つ。理由は、彼女の両親と理乃の両親が双子の兄弟(姉妹)が故。誕生日としては理乃よりも少し早い生まれなので、理乃には姉のように接している。
現在は桜蘭学園に残って勉強中。たまに理乃と電話で話すとか。
純粋組の理乃の保護者代わりであり、彼女がいると、葉月が即座に理乃を避難させ、彼女と由梨に制裁してもらう図が出来上がる。理乃の従姉妹なのに、保護者&カオスクラッシャー枠。
※ちなみに理乃達の元いた世界も時間の繰り返しを行っており、今の所永遠に歳は変わらない。
野上 紅刃(のがみ こうは)
由梨の兄。現在は桜蘭学園大学部二年で工学部を専攻。
末の妹である由梨がかなりのお気に入りで、いつも由梨にウザがられているお兄ちゃん。ソフトセクハラはお手の物。
彼女に惚れる男子がいるものなら、剣の腕を認められないと彼女との恋愛は認めないと豪語する、ある意味はた迷惑な兄。だから由梨に嫌われるんだって。そんな彼だが、剣の腕は由梨以上。なので壁はクソ高い。
妹同様和食の腕は一流品。彼の場合は洋食でも中華でも何でも和食テイストにし、周囲を驚かせている。
そんな彼は、ゆくゆくはBEMANI学園に編入しようと考えている。お前どこまで妹好きなんだよ。ストーカーか? ストーカーなのか?
■
私
—ちなみに、ツクールではこの時、教師達を手助けしてフラグ立てたらボスが増えるという鬼畜仕様を考えていたのは、内緒だよ☆
昴
「ひでぇ。感想どうぞ。」