二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 幕前劇:とある寒い日 ( No.699 )
- 日時: 2015/02/22 23:23
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: CxgKVnkv)
二月二十二日、まだ寒い冬の日。
「まだ寒いねー。お芋が美味しい季節はまだまだ続くねー。」
「そうね。まだまだ寒いわ…。由梨も中々布団から出てこない季節ね…。」
理乃は飼い猫のアロマと共に、二人並んで聖域近くの公園のブランコでくつろいでいた。ちなみに、今回のアロマは擬人化済みだ。
「ん?」
そんな時、公園に誰かが入ってきた。手には大荷物を持って。
「あれって確か、トゥーンリンクとにゃぐわじゃないかな?」
「でも、この世界の二人じゃないわ。…この気配は…りゅーとさんの世界の子達ね。」
「確か、七海が大変な粗相をした所の?」
「アロマ、言わないで。」
理乃はアロマにそうぴしゃりと言ってから、りゅーとさんの世界からやってきたというトゥーンとにゃぐわに近づいた。
「こんにちは。」
「ん? おー、理乃だにゃ! お久しぶりだにゃ!」
「うにゃーん! 理乃、久しぶりー!!」
見知った姿を見つけ、トゥーンとにゃぐわが飛びついてきたので、理乃は笑顔でそれを受け止める。
「お二人共、今日はどうされたのですか?」
「今日は、こっちのにゃぐわがネコネコ超会議を開くって言ってたから、トゥーンと来たにゃ!」
「お菓子もいっぱい持ってきたよー!」
どうやら二人の荷物は、お菓子のようだ。差し入れ、というものだろうか。
「え、ネコネコ超会議!? 何それ面白そう!!」
話を聞いていたアロマが、急に興味を示した。
「アロマも行って来たらどう?」
「うん! 行きたーい!!」
大手を振ってはしゃぐアロマに、理乃は笑顔で彼を撫でる。
「にゃぐわさん、トゥーンさん、この子は私の飼い猫で、アロマというのですが…何だか、興味を示したらしくて、一緒に連れて行ってくださいませんか?」
「うーん、それはにゃぐわ達に聞いてみないと…。」
『お待たせだニャ!』
困り果てるにゃぐわの元に、こちらのにゃぐわ達ネコネコ超会議メンバーがやってきた。
ちなみに、こちらのにゃぐわはにゃぐーとしか言ってません。
「おーそっちのにゃぐわ達! 丁度よかったにゃ!」
『どうかしたのかニャ? ニャニャ? 理乃ちゃんじゃないかニャ!』
「こんにちは、にゃぐわさん。えっと、この子がネコネコ超会議って言うのに興味を示したので、一緒に連れて行ってはいただけないかと思いまして…。」
「あ、安心して。今は人間の姿だけど、ボク、本当は猫だから。」
『あー、擬人化って言うものかニャ。分かったニャ! お仲間は多いほうがいいニャ! クーもトビーもリリィもいいかニャ?』
にゃぐわは後ろに控えた紅の恋猫であるクーとリリィ、黒の恋猫であるトビーに聞いた。
「私は大丈夫。」
『お仲間が増えるのは楽しいですにゃ。』
『ニャかまか増えたニャー!! 今日の会議は楽しめそうだニャー!』
どうやら、三匹とも歓迎ムードのようだ。
「よーっし、そうと決まれば、にゃぐわ、出発しようにゃ!」
「楽しみー! うにゃにゃーん!」
『慌てるニャ! まずは現地調達という事で、魚市場に行くニャー!』
(あれ? 確かまたにゃぐわさん、お金ピンチじゃ…。)
「…。」
何だか不安が残るメンバーな気がするが、理乃はそっとしておいた。
そうこうしているうちに、彼らは遠くに行った…。
(猫っていいですねー。癒されます。)
—そんな理乃ちゃんに、この物語を送りましょうか?
突然、創世手帳が飛び出し、その文字が躍る。
(どんな物語なんですか?)
—あの四匹の物語。あ、こっちのにゃぐわ君とリリィちゃんとクーちゃんとトビーちゃんのね。去年の春頃に、上手く創世ノートに同期させる彼らの物語が出てきたの。
(何だか興味があります。同期、お願いしてもよろしいでしょうか。)
—うん、いいよー。
そして、創造者からの物語の同期が開始された…。
- 猫の猫による猫のためのお花見 ( No.700 )
- 日時: 2015/02/22 23:27
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: CxgKVnkv)
暖かくなってきた、今日この頃。
『番号だニャ!』
『一だニャー!』
『二だにゃー。』
「三…。」
何故番号を言わせたかは分からないが、にゃぐわが号令をかけ、黒の恋猫であるベージュ色の猫と紅の恋猫である黒猫、そして、リリィが反応する。
『よし、揃ったみたいだニャ。ではこれより、“ネコネコ超会議”を始めるニャ!』
『オーだニャ!』
『おー、ですにゃ。』
「おー…。」
全員…いや、全匹、拳を振り上げて答える。
リリィ以外はにゃーとかにゃぐーしか言っていないので、端から見たら猫達が微笑ましくにゃーにゃー言っているようにしか見えない。
「それで、今日の議題は…?」
『今日はお花見だニャ! 途中でお魚いっぱい買って、みんなで楽しむニャ!』
『おー! いいねにゃぐわ! みんニャで楽しもうニャ!』
『でも、買うにしたってお金はどうするにゃ? 泥棒なんかしたら、紅様はきっと悲しむにゃ。クーの事、もう見てくれないにゃ…。』
黒猫…クーの問いに、にゃぐわはチッチッチッ、と指(?)を振る。
『オイラにはオトベアくん達から貰ったお給金があるニャ! ライブとかを手伝ったから、当然の労働報酬なのだニャ!』
『おーっ! それニャらいいニャ! きっと紅もニャっとくニャ! トビー、賛成だニャ!』
『うーん…それならいいけどにゃ…。(あれ? 確か、にゃぐわさん…今月、ピンチとかこの間言っていなかった?)』
ベージュ色の猫…トビーがはしゃいでいる横で、クーが首を傾げ、考え込んだ。
そんなクーを見て、リリィはその肩をポンと叩いて耳打ちする。
「…いざとなったら、私が出す…。」
『あれ? リリィさんも働いているんですかにゃ?』
「…烈君のお酒屋さん…たまに、配達とか、手伝う…。お世話に、なってるから。」
『成程、お給金ですね。納得しましたにゃ。』
クーはこくん、と頷く。そして、にゃぐわ達の方に向き直った。
『よーっし! まずは魚市場に行くニャー!』
にゃぐわの号令で、一同は魚市場へと行く事にした。
- 猫の猫による猫のためのお花見 ( No.701 )
- 日時: 2015/02/22 23:32
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: CxgKVnkv)
魚市場に着いたにゃぐわ達は、早速何の魚を買うか、辺りを見回っていた。
「…お魚、いっぱい…。」
『あれ? リリィは初めて来たニョかニャ?』
「うん…。」
『まぁ、リリィさんはネコネコ超会議に出るのも、ここ最近からだから無理もないにゃ。あぁ、にゃぐわさん。クー、サバがいいにゃ。』
『トビーはシャケをおニェがいニャー!』
「私、マグロ…。」
クーが頼んだのをきっかけに、他二匹も頼む。
『じゃー、オイラはタイにしようかニャ。』
にゃぐわは財布を取り出し、口を広げたが…。
『…。』
固まった。一瞬にして、固まった。
そう、クーの言った通り、にゃぐわは今月、ピンチなのだ。
「にゃぐわ…?」
『…足りないニャ。』
「えっ…?」
『お金が足りないニャーっ! 今月、ピンチなの忘れたニャ! うぅ、高級缶詰買いすぎたニャ…。』
どうしようというような目線で、にゃぐわは一同を見た。本当に困り果てている。
『はぁ…。こんな事だろうと思ったにゃ…。リリィさん、お願いできるかにゃ?』
『およ? リリィ、お金持ってるニョかニャ?』
「お給金、貰ってた…。」
リリィはローブから小さなガマ口財布を取りだし、中を開けて…どうしまっていたのか分からないくらいの分厚い札束を取り出した。
『おー! リリィ、おかニェ持ちニャ! すごいニャ!』
『いや、それよりどうしてあの小さな財布からあの分厚い札束が出てくるにゃ…。』
「ジョーカー様特製、四次元ポケット…。」
『…リリィさん、四次元で説明しちゃダメな気がするにゃ。…いや、ジョーカーさん作って言うなら納得出来るけどにゃ…。』
突然の小さなガマ口からの分厚い札束登場に、クーはツッコミを切らさない。と言うか、クー。お前もツッコミ属性だったのか。思い合っている同士でツッコミ属性っておい。
『と、とにかく、リリィ、助かったニャ!』
「…後で、さきいか…。高いの…。」
『うっ、わ、分かったニャ…。』
「冗談。」
リリィは各々望んでいた魚を買い、袋を持った。
『よし、次はお花見スポットに向かうニャ! こっちだニャ!』
にゃぐわは率先するように走り出した。トビーとクー、リリィもその後を追う。
- 猫の猫による猫のためのお花見 ( No.702 )
- 日時: 2015/02/22 23:37
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: CxgKVnkv)
草木を掻き分けながら進むも、枝に体を打ち付ける猫達。
『イタッ! うぅ、引っ掻いたニャ…。』
『にゃぐわさん、まだなのかにゃ?』
『もうすぐだニャ! この草むらを抜ければ…!』
ガサガサと音を鳴らし、掻き分けながら進むと、明るい、開けた場所に辿り着いた。
『とうちゃーっく! だニャ!』
『わぁ…!』
そよ風が吹く丘。色とりどりの春を感じさせる花が咲き乱れ、丘の上には美しい一本桜があり、まだ蕾だが、風情がある。
『うニャー! きれーだニャー!』
『いい香り…。紅様と来たかったにゃ…。』
「…今度、連れてきたいな…。ジョーカー様やセシル達…。」
各々、大切な存在を思い浮かべているのか、表情が柔らかい。
とにもかくにも、猫達はにゃぐわが持ってきていたシートに座り、お魚を取り出した。
『いただきますニャ!』
「いただきます…。」
『いっただっきまーすニャ!』
『いただきますにゃ。』
そして全員、挨拶をしてから魚を食べ始める。
『シャケ美味しいニャー!』
『うん、自然の中で食べるサバはひと味違うにゃ…♪』
「…。」
トビーとクーが感想を言い合う中で、リリィのみ黙々とマグロをかじる。だが、尻尾はパタパタと動いており、幸せそうな顔をしている。
『あー、美味しかったニャ! リリィ、ありがとさんニャ!』
一足早く食べ終えたにゃぐわは、お金を出してくれたリリィに礼を述べた。
「後で、さきいかとするめ…。高いの…。」
『あれ冗談じゃなかったのかニャ!? しかも要求、増えてないかニャ!?』
「冗談。…安い、あたりめ。それでいい。」
無表情で言うリリィ。安いあたりめは本気なのか。
『リリィって、お酒ニョおつまみが好きニャニョかニャ? さっきから要求がお酒ニョおつまみばかりニャ。』
『あ、リリィさんは烈さんのお家に住んでるから、自然とそうなったのかもにゃ。』
「うん…。烈君の家のおやつ、おつまみ多い。多分、期限間近の売れ残り…。でも、美味しい。初めて食べたあたりめ…凄く、美味しかった。噛めば噛むほど、味が出た。気が付くと、自分で買うようになった。お店のだけど。」
どうやら最初におやつとして出されたおつまみを食べて感動したようだ。そして、着服せずに自分が稼いだお金で購入するようになったらしい。
烈が聞いたら、「どっかの馬鹿鴉と馬鹿親父に聞かせてやりてぇ…。」と言っていただろう。
『なんか、気が付いたら自分で作りそうだニャ。リリィなら、何か出来る気がするニャ。』
「…!」
にゃぐわの言葉に、はっ! と何かに気が付いたかのように驚きの表情を浮かべるリリィ。
『リリィさん?』
「あたりめ作るの、難しい。けど、あたりめを使った料理なら…。」
そのまま何かを考えるような表情を浮かべながら、ブツブツと何かを呟く。
にゃぐわやクーが声をかけても、無反応。どうやら完全に自分の世界へと入ってしまったようだ。
『あらら、完全にはニャしが入らニャくニャってるニャ。』
『よっぽど集中してるにゃ。』
『こりゃ、話しかけても無駄かニャ…。まぁ、いいニャ。お花見は始まったばかりニャ。』
残りの三匹は美しい花畑を見る。
『ニャー…それにしても、いいお天気でポカポカして気持ちいいニャー…。』
『本当だにゃ…あふぅ…。』
『気持ちが良すぎて眠りそうだニャ…。』
麗らかな日射しに、リリィ以外はごろん、と寝転がって、その身に風を受けながら、お日様の光を浴びていた。
- 猫の猫による猫のためのお花見 ( No.703 )
- 日時: 2015/02/22 23:43
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: CxgKVnkv)
やがて夕暮れ時になり、お花見を切り上げ、家路に着くにゃぐわ達。
『んじゃ、リリィ、またニャー♪』
『またニャー♪』
『また会おうにゃ。』
「うん、またね…。」
リリィは商店街の前で、猫達と別れた。そして、酒屋に戻る最中…。
「おっ、リリィ。」
「あ、烈君。お帰り。」
丁度帰ってきた烈とばったり会った。いつものようにゲーセンにでも行っていたのだろう。
「あぁ、そうか。今日はお前も休みだったな、リリィ。んで? 今日はどこに行ってたんだ?」
「ネコネコ超会議メンバーで、お花見…。楽しかった…。」
「まだ桜の時期には早いけど…まぁ、花が咲いている場所もあるか。」
烈は店の戸を開け、いつもの調子で「ただいまー。」と挨拶し、リリィもそれに続く。
「あ、お帰りー、烈。」
『ようやく帰ってきたか。む? リリィも一緒か。』
「…って、何してんだよ鏡! 紅も!」
そこにいたのは、鏡と紅だった。当然ながら、烈は鏡の登場に驚きを隠せなかった。
が、鏡が理由を話す前に、二階から怒声と鈍い音が聞こえ、理由を察する。
「…あぁ、うん。悪い、いい。分かった。いつものだな。」
「うん。“大人の話し合い”…。」
「また…着服したの…?」
『みたいだ。丁度その時、たまたま我と鏡が通りかかり、店番を任せてそのままだ。烈、帰ってきた所で悪いが、変わって貰えんか?』
鏡の言葉に、烈とリリィは深い、深い溜息をついた。
「いつもいつもあの馬鹿共…。少しはリリィや紅を見習えっつーの…。」
「本当に、わからない。何故、あの黒から紅さんが生まれたのか…。」
『知らん。知りたくもない。とにかく、後は任せたぞ、烈。連絡したとは言え、神は心配しているだろうからな。』
「へーい…。はぁ、何で休みなのに働かないといけねぇんだよ…。」
「その分、お手当て、貰える…。あたりめ…くんさき…。」
リリィはパタパタと尻尾を振りながら、彼女でも運べる物を陳列し始めた。
「まぁ、手当て貰えるのは確かに魅力的だよな。リリィ、それは右の棚に頼む。」
「わかった。(終わったら、あたりめ炙ってマヨネーズつけてみよう…。あ、お醤油も美味しそう…。)」
そんな事を思いながら、リリィはせかせかと体を動かし、烈を手伝ったとさ。
- 幕引き:ある小高い丘で ( No.704 )
- 日時: 2015/02/23 00:03
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: rqG2u1s0)
同期された物語を見た理乃は、ほっこりとしていた。
(やっぱり猫はいいですねー。癒されます。それにしても、アロマ達はどこまで行ったのでしょうか。)
—んー…。うん、どうやらその今同期した物語の場所まで向かうみたいよ?
(今は花は咲いていないのに…。それか、他に理由が?)
—今日は二月二十二日。にゃんにゃんにゃんで猫の日みたいだからね。だから集まってお花見とは行かないけど、どんちゃん騒ぎしたかったんじゃないかな?
創造者の文を見て、理乃は納得した。
(これ、帰って来る時には満腹になっていたりして…。)
—あはは…。
理乃の言葉に、創造者は乾いた笑いを書く事しかできなかった…。
■
その頃、にゃぐわ達は…。
『とーちゃーく!』
前回同様開けた丘までやってきた。まだ冬場なので花はなく、桜も枝のみだが、それでも吹く風は冷たく、揺らぐ草が心地よかった。
「うわぁ…! ここが、にゃぐわ達が言ってた、猫達の秘密基地なのかにゃ?」
『まぁ、オイラ達が勝手にそう言ってるだけだけどニャ。春には色とりどりの花が咲き乱れて、あの丘の上の桜は綺麗に咲いて、結構素敵な場所だニャ!』
『…。』
アロマはにゃぐわ達の会話そっちのけで、目の前にある桜の樹が生えた丘を見つめていた。
「アロマ君?」
『…ん、あぁ、ゴメン。どうしたの? リリィ。』
「ぼーっとしてた…。どうしたの?」
『…いや。理乃に聞いた昔住んでた家の景色に似ててさ。ちょっと、考えたんだ。』
そう言うなり、アロマは一人…いや、一匹、先に丘へと向かった。
「あ、アロマ、待ってー!」
他のメンバーも、桜の樹目掛けて走っていく。
やがて到着すると、すぐに持ってきたり買ってきたりしたお菓子類を取り出した。
『鯛は美味しいニャ! 今回はおやつも仲間も増えて余計に美味しいにゃ!』
『うーん、大自然でみんなで食べる鯖は格別ですにゃ。』
『鮭美味いニャー!』
「マグロ、美味しい…。」
「理乃の作ったお菓子おいしー! うにゃーん!!」
「鈴花ちゃんといい勝負だにゃ! これは持って帰ってもいいかにゃ?」
『うん、いいよ。理乃も多めに作りすぎたって言ってたし…。』
暫く、猫達の宴会は続いていった…。
■
私—猫の日にちなんで、この作品を引越しさせてきたよー。オシオキもようやく筆が進みましたのでご安心を。
昴「感想、あればどうぞ。それと、りゅーとさん、トゥーンとにゃぐわ、ありがとうございました。」