二次創作小説(映像)※倉庫ログ

対決 五番の料理 ( No.784 )
日時: 2015/04/02 21:28
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 68ht.95d)

外へと出た昴達は、昴と鏡、影と由梨でペアを組んだ。玄関では風花と理乃が立ち塞がり、そんな二人を守るかのように葉月が立った。

「由梨と昴さんは広範囲を狙える魔法を! 敵の数を減らし、本体への道を切り開いて! 赤羽さんと影さんは二人の詠唱を邪魔する敵を倒して!」
「了解!」

戦いを熟知している司組のリーダーである理乃は、すかさずそう指示を出す。全員、彼女の言葉に正当性を感じ、その返事だけで攻めへと転じた。

「山岸さんはユノでサーチを。相手の行動パターンが分かれば、何らかの対処ができる筈です。葉月はこの距離から本体を狙って。貴方の腕ならこの距離でも当たる筈よ。」
「わかった! お願い、ユノ!」
「任せて!」

風花は持ってきていた召喚器の引き金を引き、再びユノの中に入った。葉月も矢をつがえ、いつでも放てるようスタンバイをする。

「影、詠唱中は任せたぞ!」
「うん、全力で守る!」
「鏡、紅、頼む! スキルコンバート、桜坂理乃!」
「すーさんは絶対守る…!」
『神、安心して唱えろ!』

所変わって、前衛組。影、鏡、紅の強い後押しもあり、昴と由梨は二人頷いて、精神を集中させた。

「焔の御志(みし)よ、災いを灰燼と化せ!【エクスプロード】!」
「悠久の時を巡る優しき風よ、我が前に集いて裂刃となせ!【サイクロン】!」

由梨の放った炎系上級魔法は巨大な爆発を起こしてクトゥルベビー達を散らせ、昴の放った風系上級魔法は竜巻の如くうねりを上げてミキサーのように細かく切り刻んだ。
が、それよりもクトゥルベビー達の分裂速度が早く、これでは詠唱を唱えている間に元通り、いや、それ以上に増えるのがオチだ。

「くそっ! 理乃、これじゃあ魔法唱えるよりも技出した方が早い!」

玄関で侵入を拒んでいる理乃は、由梨に言われずともそれを見てわかっていた。

「近接戦闘に切り替えて! なるべく広範囲で敵を一掃できる技を! …山岸さん、クトゥルフモドキ達のステータスは…。」
「うん…。サーチ、完了したよ。ベビー達は一秒に一匹増えるのが厄介だけど、一撃で倒れるくらい弱いみたい。耐性とか弱点もないし、こっちは、手数で押していけばきっと大丈夫。問題は…モドキの方だね。」

風花はスバル達を掴んでいるクトゥルフモドキを見て、表情を苦々しそうに変えた。

「結構、一筋縄じゃいかなさそう。ベビーを産むだけじゃなく、ベビーに命令できるような指示系統の器官を持ってるみたい。多分、攻撃は通りづらいと思う。耐性もないけど、弱点もないから、長期戦は覚悟した方がいいかも。」
「指示器官…厄介ですね。葉月、一度矢を放ってみて。」
「わかった。【疾風】っ!」

風の魔力を宿した矢を三本、連続で放つ。狙いは寸分違わず、クトゥルフモドキに向かっていった。
だが…。

『ぎゃぴー!』

なんと、クトゥルベビー達がその矢の前に立ち塞がり、消滅していったのだ。当然、後ろにいたクトゥルフモドキは無事だ。

「成程、本体を守るように子供達が立ち塞がり、攻撃を通そうとしないのですね。そして、子供達は分裂で増える上に、自分の力で産み落とせる…。」
「ねぇ、これってさ、私達が出会った中でも結構厄介な部類に入る敵じゃない?」
「私が覚えている中で一番厄介よ。しかもそれを料理として提供したんだから更に笑えないし、何よりこれが身内が作った料理だって言うんだから笑えないわ。失笑も起きないわよ。」
「あはは…。」

理乃の言葉に、葉月と風花は乾いた笑いを浮かべた。

対決 五番の料理 ( No.785 )
日時: 2015/04/02 21:34
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ijyp/C.M)

玄関口ではそんな話をしているのを知らない昴達は、各々武器を持ち、クトゥルベビーを薙ぎ倒していった。

「【魔神剣・双牙】!」
「【運命浄化】!!」

由梨と鏡が技を放ち、ベビー達に的中させるも、次々と増えていくのでキリがない。

「くそっ、分裂速度が早すぎる! もっと人手がいないとダメか!」
『…らしくないな、由梨。お前が人手を気にするなんて。』

冷たい空気と共に凛とした声が由梨の背後から響き、彼女は一つ溜息をついた。

「お前だってこの状況下ならそう思うんじゃないのか? セルシウス。」
『すまん、それには同意だ。しかも身内が作った…いや、錬成したものだから笑えないしな。』
「同意。」

凛とした声…セルシウスは、迫ってきていたクトゥルベビーを無詠唱の【ブリザード】で消滅させると、由梨と共に溜息をついた。

「お前も来たのか、ラフィー。」
『僕だけじゃないよ。みんな…あ、地下にぶっ込んどいたイフリート以外は来てるよ。』
「本当だ。気づかなかった。」
『戦いの最中だしね。余裕もないだろうし。』

由梨達とは別の場所で、ラフィーの姿に気がついた昴が辺りを見回すと、いつの間にかイフリート以外の精霊達がやって来ていた。

「何でこうなったのかなー…。料理バトルからの生死をかけたガチバトルって何なのこの茶番劇。」
『…何モ、返ス言葉、ナイ…。』
「うわっ、びっくりした…。シャドウ、君も来たの?」
『コノ状況…黙ッテラレナイ。シカモ、我等ノ馬鹿ガ生ミ出シタカラ…。』
「マスターの尻拭いって奴? ホントろくでもないのがパートナーだと苦労するよね、従者は。星よ、落ちて!」
『同情、スル…。【ブラッディハウリング】…!』

互いに苦労するパートナーがいる影コンビは乾いた笑いを浮かべながらベビー達を消していく。
だが、イフリートを除く精霊達が来ても、戦況は変わらない。

「まだ人手が足りないってか!?」
『分裂速度が早すぎます! これではただの消耗戦です…!』

大きな剣を振るい、クトゥルベビーを倒しながら昴のぼやきに答えたウンディーネの言う通り、クトゥルベビー達の分裂速度が自分達の攻撃よりも早すぎるのだ。精霊達がいても、まだ数が足りない。

「オレ…もう、ダメ…!」

体力の限界に来ていたのか、鏡が青い焔を消し、肩を大きく動かしながら呼吸を整える。
その隙を見逃すクトゥルベビー達ではなかった。大きく消耗している事に気がついたのか、一斉に鏡目掛けて飛んだ。

「! 鏡、危ない!!」
『いかん、鏡!』

昴がそれに気づいて駆け寄ろうとするも、鏡との距離が離れすぎていた。紅は鏡の限界が来ていた事で解除された精霊化を戻す事なく、鴉の姿のままで彼を庇うように包み込んだ。

「あ…!」

鏡はそこで、ようやく自分に敵意が向けられている事に気づき、しゃがんで頭を守るように踞った。

「鏡君!」

鏡のピンチは葉月の目にも映り、彼を襲うクトゥルベビー目掛けて矢を放つも、ベビー達は多すぎる。一発だけでは倒しきれない。
詠唱を唱えている間に襲われる。誰もが鏡はこのまま攻撃を食らう。

対決 五番の料理 ( No.786 )
日時: 2015/04/02 21:39
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ijyp/C.M)

そう、思った。

「…?」

だが、いつまで経っても何も起こらない。
恐る恐る鏡は目を開けた。

「大丈夫か?」
「あ…えと、君は…!」

鏡の前には、男が一人立っていた。鉤爪のグローブを、鏡を襲おうとしたクトゥルベビーに食らわせながら、彼に問いかけた。
その首元に、どこかで見たようなペンダントが揺れていた。

「ふうかさん!」
「たすけにきたよ!」
「えっ、この声…。」

所変わって玄関口で、そう可愛らしい声が聞こえる。この声は、風花には聞き覚えがあった。

「フレイ君、コール君!?」

そう、あの第四回六番の悲劇の後、助けに来てくれた(?)エイヴさんのオリキャラ、フレイとコールの声だ。
可愛らしいふわふわした二匹が、風花のいる玄関口までやって来た。

「一応、僕も来たよ。笑えないくらい凄い事になってるね。」
「一体料理とはなんなのでしょうね。奥深いです。」
「明君、ネリアさんも…!」

同じくエイヴさんのオリキャラである崎本明とネリアもいた。

「崎本さん、あの、赤羽さんを助けてくれた彼は、お仲間さんですか? 首元に、あなた方と同じペンダントをなさっていますが…。」
「ああ、彼とは初めてだよね。彼は小賀匠。僕らの仲間だから心配しないで。」

理乃の疑問に、明がすぐに答えてくれた。

「崎本、話をしている場合じゃないだろう!」
「わかってるよ、匠! えっと、取り合えずあのちっちゃいのを減らしてあの大きいのを倒せばいいんだよね?」

明は男…匠の言葉に答えると、今回の目的を理乃に訊ねた。

「はい。ですが、攻撃は通りづらいですし、長期戦を覚悟なさってください。」
「わかりました。それと、これが私達が通ってきた扉の近くにあったのですが…恐らく、物資かと思われます。理乃さん、貴方に預けますね。」
「渡すものは渡したし、行こうか、ネリア! フレイとコールは危ないからここにいて!」
「うん!」
「はい!」

明は理乃に段ボール箱を渡すと、その身に似合わぬ大きな槍を持ってネリアと共に敵陣に突っ込んでいった。

「…少しだけ、天田君を思い出したな。明君を見て。」
「武器的にも似ていますからね。…物資はどうやらりゅーとさんからのようです。」

手渡された段ボールは、どうやらりゅーとさんからの物資のようだ。

「中身は…ヤンリンさんが購入したシャトー・ロマーニ(※体力全回復+魔力無限のチート的飲み物)と青い薬(※体力、魔力全回復アイテム。謎のキノコから出来ている)、それから、ファルコさんお勧めのブランデー…。(き、気付け用にかな? これは葉月に渡さないようにしないと…。)それから、機械いじり組が開発した料理対決用こっちで言うアワーグラスの設計図…。(あの、これ絶対βであれが動いたから…だよね。)あとは、カフェオレとえびせんべいと緑茶とクッキーとケーキ…これは口直し用かな。ん?」

理乃が次々と取り出していき、中身を見ていると、黒くて固い何かがついたとんかちのようなものが現れた。いや、とんかち以上にサイズはあるが。

「は、ハンマー…? まさか、SAN値ピンチになってたら使え…?」
「これって、あのはんまーかな?」
「あのはんまーかな? すまぶらのあのはんまーかな?」

風花の腕に抱かれているフレイとコールが何かを知っているのか、反応し出した。

「あ、そうか。もしかしてスマブラのハンマーなのかもね。」
「あきらもつかってた! かおがこうなってた!」
「ブフッ!!」

その姿を見ていたのか、明の真似をしたフレイの顔を見て、理乃は思いきり吹き出した。
ちなみに(ノ゜▽゜)ノ←こんな感じである。

「…そ、その顔を向けないで下さい…。プフッ…。」
「りのさん、どうしたの?」
「かおがへんなことになってるよ? だいじょうぶ?」
(うわあ、出たよ理乃の笑い上戸…。今出さなくてもいいのに…。)

葉月が心の中で呟くも、理乃はしばらくそのままだったとか。

対決 五番の料理 ( No.787 )
日時: 2015/04/03 00:06
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: yIdo4PTs)

『神、救援が来て少しは戦えるだろう!』
「ああ。更に攻めに入るぞ!」

明と匠と言う救援が来て、昴達はチャンスと思い、更に勢いづいた。

「由梨、赤羽さん、昴さん、これを! 小賀さんと崎本さんとネリアさんも!」

攻撃をする前に、ようやく笑いが止まった理乃はりゅーとさんから届けられた物資の中にあったシャトー・ロマーニを前衛メンバーに投げて渡した。葉月には既に渡しており、理乃自身も中身を飲み干した後である。少しだけ思い出し笑いをして吹き出したのは、葉月と風花、フレイとコールしか知らない。

「これ、シャトー・ロマーニって奴か!?」
「りゅーとさんのヤンリンさんからです! それがあれば、多分魔力を気にせず力を使える筈です!」
『ありがたいアイテムだ! 鏡、飲んでおけ!』
「うん! いっただっきまーす! ヤンリンには後でお礼を言わないとね!」
「牛乳一気飲みした後運動はちょっとな…。気持ち悪くなりそうだけど、仕方ない。」

由梨がちょっと苦い表情を浮かべるも、全員すぐにシャトー・ロマーニを一気に飲んだ。
すぐに受けた傷が回復し、更には内から溢れる魔力を感じた。…昴以外は。

「なんか、内側から力が湧いてくる気がしてきた!」
「内側から魔力を感じる…! これなら、いけるかもな!」
(みんな何らか感じてるけど、俺には全然…あ、そうか。俺の場合体力だしな。)

そう、彼女の力は体力を削り、放出される。全ては体力次第なのだ。
鏡のも厳密に言うならば魔力といった代物ではないが、魔力に程近いものなのだろうか。

「後でこの牛乳の謎を解明したいものだがな。」
「えと、気にしちゃ駄目な気がする。」
『こういう魔法アイテムはそう言うものだと思って見た方がいい。何となく。』

微妙な表情で言う鏡に、匠は黙った。

「由梨、低級呪文で詠唱時間を削って! 赤羽さんは焔を連続で飛ばして! 昴さんはとにかく無理せずに体術で何とかして! 小賀さんは地面を殴ってでもいいので広範囲の敵を一掃出来る技を! 崎本さんはその槍を振り回していて! 精霊達はとにかく一掃!」

初めて戦いを見せるのに、武器を見ただけでまるで全てがわかったかのような理乃の指示に、明は驚いていた。

「初めて戦う姿を見せるはずなのに、何か的確な指示をしてる気がするね。」
「彼女達は異世界を旅していたと聞きました。恐らく、同一の武器を扱う仲間がいてもおかしくありません。それを見てきた経験がそうさせるのでしょう。明さん、行きますよ!」
「うん!」

二言三言話してから、再び攻撃に転じた。応援も増え、心強いのだ。

『はーい、どいてどいてー♪』

フィアレスは大きな盾を構え、クトゥルベビー目掛けて突っ込んでいく。そして樹までそのまま連れて行き、押し潰した。

『一撃も体力も弱いが、分裂するのは厄介だな。【フィアフルストーム】!』
『【サイクロン】! もう、攻撃を放ってるしか方法がない事が一番厄介だよ! まったく、何でこんなの作る人がマスターの一番の親友な訳!?』
『二人共、話している場合じゃないでしょう!【タービュランス】!』

ユーティスとラフィーが話しながら魔法を放っていると、横からセフィーが現れ、何体かのクトゥルベビーをその身に似合わぬ大剣を振るい、薙ぎ倒しながら魔法を放ち、一帯のクトゥルベビーは消えた。だが、まだまだ奥に何百、何千といる。

『本当にジリ貧の消耗戦を強いられるって何。僕、本気であの馬鹿恨むんだけど。姉さんもよくこんなのに当たって生きていられたねー。』
『正直、ドロン玉様本気でありがとうございました状態だった。あれがなかったら終わっていたからね…。』

死んだ目をしながら、本来この料理を試食するセフィーは、末の妹の言葉に答えた。
匠や明、ネリアも奮闘するが、まだまだキリがない。

「もーっ、どれだけ消耗させれば気が済むのーっ!」
「知らないよー!」

聖域裏手の長老樹に続く道辺りで、槍を振りながらぼやく明に、鏡が泣きながら答える。もう、色々と限界のようだ。
無理もない。何時間戦いっぱなしだか分からない。ここまで苦戦を強いるこの料理を作った馬鹿に、本気で殴りたくなってくるくらい。

対決 五番の料理 ( No.788 )
日時: 2015/04/05 16:26
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: Ku3ByRAK)

「まだ、泣き言を言うのは早くないか?」
「えっ…? だ、誰!?」

その声が聞こえたと同時に、一本の槍が鏡と明の前に突き刺さった。その槍に貫かれたクトゥルベビーが、消失した。
一人の男が、その槍の前に落ちてくる。茶色い髪の毛を跳ねさせた、軽装をした男が。
登場シーンはカッコよく決まった。だが、その手に持っているものが明には見えてしまい、彼は盛大に吹き出した。一緒にいたネリアはというと、そっと鏡の目と耳を塞いだ。あぁ、純粋組の保護者だからわかったのだろう。鏡も同属性だという事が。

「ちょ、何持ってるのそれ!? R18の薄い本でしょ!? しかも鏡のベッドカバーとか昴さんが怒りそうなんだけど! 修羅場が起こりそう! あはははははは!」
「頼むからこれには触れないでくれ。マジで何で俺がこんなの持たされてんだよ畜生。」

ちなみに、彼が持っていたものは、三種類。
ひとつは純粋組が戯れている写真やビデオであるが、これはまだいい。問題が次からだ。問題ひとつ目が様々なNLジャンルの薄い本(しかもうちオリジナルの完鈴、凪直といったものまであるしスバルが好きなヴァイ烈のも)。二つ目が烈と鏡の痛いベッドカバーがある。

「ねーねーネリアー、見えないー。」
「見えなくていいんです。見えなくて結構です。」
『鏡、世の中には知らない方がいい事もある。』

興味があるのか、見ようとせがむ鏡をそっと留めるネリアと紅の会話を聞いた男は、

「後で作者をぶん殴りたい。ああ、割と本気で。」

と、誰にも聞こえないような声で呟いたとか。

「ロッシュさん!」

そんな呑気に会話をしていたら、上から声が聞こえた。見上げると、そこには段ボール箱を持った軍師風の女性と、ツインテールの少女が落ちてきていた。

「今はそんな事を話している場合ではないはずですよ。それは私達が持っていくので、貴方はすぐに救援をお願いします。」
「俺だって好きでこれ持ってたんじゃないんだけど!?」
「ロッシュさん、それは皆さんわかっていると思います。」

軍師風の女性が一喝すると、男…ロッシュが反論するが、すかさずツインテールの少女がバッサリと切り捨てた。

「えっと、君達、誰かな?」

ようやく笑いが収まった明が、突然現れた彼女達に問いかける。

「自己紹介が遅れました。私はルフリ。ユリカさんの世界から救援へと参りました。」
「同じくロッシュ。先にこっちに来たサイモンとは同じギルドの仲間だ。」
「同じく、木幡奏です。えっと、物資を持って来ました。それと、私とルフリさんは治癒術が使えますので、遠慮なく怪我をしたら仰ってください。」

どうやらユリカさんの更なる追加救援のようだ。軍師風の女性…ルフリ(女ルフレ)とツインテールの少女…奏は治癒術持ちのようだ。それと、ルフリの持つ段ボールには、FEシリーズの特効薬系等のアイテムがぎっしり詰められていた。

『救援はありがたい! 流石にそろそろまた押され気味になってきたのでな。すまないが、ルフリと奏はあの白い建物に行ってくれ。』
「わかりました。では、ロッシュさん、こちらの事はお願いします。」
「おう!」

ロッシュは槍を持ち直し、飛び出していった。
そして、素早くクトゥルベビーを消失させていく。

「…。」
「明?」

それを見ていた明は、鏡の問いかけに答えず、すぐに槍を持ってロッシュの近くまで行った。
ロッシュの元まで来るとすぐに、彼に迫っていたクトゥルベビーを切った。

「へー、お前も槍が武器なんだ。」
「まぁね。よければ君の戦術、見せてくれないかな?」
「俺のでよければ好きな、だけっ!」

二人はいつしか背中合わせになり、互いに迫るクトゥルベビーを消滅させていく。初めて出会った二人なのに、武器が同じと言うだけで、何か芽生えたようだ。

「何だか、世界を越えた友情が育まれそうだね、紅。」
『切欠がこれじゃなければどれだけよかった事だろうがな。』
「同意です。…鏡さん、来ます!」

そして再び、鏡達も迎撃を開始した。

対決 五番の料理 ( No.789 )
日時: 2015/04/02 21:57
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: mSRzWlsB)

だが、まだまだ沢山のクトゥルベビー達が蠢いている。

「だあっ、クソッ! 数が減らなさすぎる!」
「せめて、隙のない広範囲の強力な攻撃ができれば…!」

匠の言う隙のない広範囲の強力な攻撃、それは詠唱を必要とする魔法では難しい。
精霊達ならば無詠唱での上級魔法が扱えるものの、そう何発も放っていたら自分の存在できる魔力がなくなってしまう。

「…。」

由梨には、一つだけ心当たりがあった。
隙のない、広範囲の強力な攻撃。何度も手合わせをした同級生と後輩が使っている力。それならば、恐らく隙も少ないし、強力な攻撃が多い。
だが…ここにいるのは、攻撃系等ができるそれを使えない存在ばかり。いや、一人いるのだが、シャトー・ロマーニの効果がない以上、彼女にそれをさせるのは酷だった。

「ペルソナがありゃ…!」

由梨が真っ先に思い浮かんだ力、ペルソナ。
あれならば召喚に時間がかからない上に、強力な攻撃を放つ事が可能だ。スキルによっては、広範囲も放てるだろう。

「出そうか? ペルソナ。」
「えっ…?」

いつも聞いている、嫌な声が聞こえた気がした由梨は、驚いてそちらを見た。
そこには、いつも見る、嫌な横顔がいつの間にかあった。

「…多分、お前のクラスメイトを思っているんだろうけど、違うからな。」
「だよな。今の一言で違うってわかった。名前は?」
「威筑。青嵐威筑。」

いつも見る嫌な横顔を持つクラスメイトの悠…いや、威筑は、目の前にカードを出した。

「来い! イザナギノオオカミ!」

威筑がカードを破壊すると、目の前に白を基調とした服を着たペルソナ、イザナギノオオカミが現れた。

「【ヒートライザ】! からの…【メギドラ】!」

イザナギノオオカミは自身を高めてから、万能属性攻撃を放つ。その狙い済ませた強力な広範囲攻撃により、大半のクトゥルベビーは消え去った。

「大丈夫か?」

敵を一掃した事により、会話をする余裕ができたのか、威筑は近くにいた由梨と匠に話しかけた。

「ああ、なんとかな。」
「それより、お前も救援か?」

匠が聞くと、威筑は頷く。

「先に、アイギスがこっちに来ただろう?」
「ああ、ネールさんからの救援か。」

アイギスの名を出されただけで、由梨は納得した。そう、彼はネールさんの追加救援だ。

「一人か?」
「いや、まだ仲間はいるよ。」

そう言うと、威筑は後ろを顎でしゃくった。
匠と由梨がそちらを見ると、そこには大きな斧を振り回すコートの男と、左目が青い髪で隠れた青年がいた。

「みんな、がんばれー!」

その声が聞こえた神殿の方を見ると、八十神高校の制服に身を包んだ二人の男女が葉月と共に応戦しているのが見えた。
それを確認した時、威筑の後ろからクトゥルベビーが迫ってきているのが見えた。

「! 青嵐、後ろだ!」

匠が注意を呼び掛けるも、威筑は佇んだまま、動かない。
直後、一陣の風が吹きあれ、威筑の後ろから来ていたクトゥルベビーが吹き飛び、消滅した。

「ったく、背後には注意しとけよな、相棒!」
「お前がいるってわかってたから注意しなかっただけだけど?」

上空から降りてきた影に、威筑はそう声をかけると、由梨にとってはもう一人の見慣れた影は頭をポリポリと掻いた。

「はぁ、そんなんで大丈夫かよ、リーダー。」
「大丈夫じゃないからお前がいるんじゃないのか? 陽介。」

影…陽介は、盛大に溜息をついた。

「ははっ、こっちの陽介が威筑を見たら同じ反応しそうだな。」
「確か、裸族だっけ、そっちの威筑。こっちのと交換してくれとか言われそう。」
「あ、絶対に言いそう。」

まるで本当にクラスメイトかと思うくらいに、陽介と由梨は話す。が、すぐにクトゥルベビーが迫ってきていたので、匠の喝で再び戦闘体制に戻った。
所変わって、玄関口。ここでは葉月と共に、ボウガンを持った男子生徒と、そんな彼に守られている女子生徒がいた。

「へぇ、即席で作ったとは思えないね、そのボウガン。」
「玲を守る為に必要で、有り合わせで作っただけだ。誉められるような事じゃない。」
「善、葉月ちゃんは誉めてくれたんだから、素直にお礼を言っておこうよ!」

こちらに迫るクトゥルベビーを貫きながら、男子生徒…善と、女子生徒…玲は葉月と共に話し込む。即席ボウガンと矢の性能もいいが、善自身の命中率も百発百中と高い。葉月も葉月で命中率が高いのだが。

「ボウガンの精度も、善君の命中率も高いし、弓の名手とか言われそうだね…。」
「そうでもないとは思うがな。」
「善、誉められてるのにそっけなく返しちゃダメだよ!」

葉月が誉めているのに、善がそっけなく返すので、玲はプンプンと怒る。だが、葉月は対して気にしてはいない。

「あはは、落ち着いて、玲ちゃん。…怒るのは後だよ。」
「う、うん…!」

また新たに矢をつがえた葉月の目の前には、今にも玄関を突破してきそうなクトゥルベビーがいた。

「玲、君は下がっているんだ。」
「大丈夫。私も、戦える。善の力があるから、戦える!」
「…ならば、そこで私達を回復や補助を頼む。それだけで、私達は心強いからな。」
「玲ちゃんの声援で、頑張れそうだしね。」
「うん!」

玲は前に出る葉月と善を見送り、祈るような体制をとった。
更に後ろ…神殿内。

「…。」

風花は、高鳴る鼓動を何とか押さえ付けていた。

(違うって…わかってるのに…! あの二人は、私が知ってる湊君や荒垣先輩じゃないって、わかってるのに…!!)

彼女の乱れた心は、サーチに影響を及ぼし、精度が鈍った。
原因は、ネールさんが送ってきた残る二人…荒垣真次郎と神獣碧の存在だ。

「…。」

近くで見ていた理乃は、風花のこの行動が何を意味するか、わかっていた。

(…こちらのお二人は、原作通りに…亡くなったんですね。)

そう、真次郎はあの乾の母親の命日の日、ストレガの一人、タカヤの銃弾から乾を庇って死んだ。そして、碧…いや、こちらで言う、有里湊も、今は命の答えに辿り着き、その命を楔として、人々の心が死に触れぬよう、守っているのだろう。

「…山岸さん。」
「…うん、ごめん、理乃ちゃん…。ちゃんと、サーチ、しないと、って…わかってるのに…でも…。」
「…。」

無理もない。別世界の存在とはいえ、亡くなった大好きな仲間と先輩が一気に目の前に現れたのだ。戸惑っても、おかしくはない。

「…サーチとは行きませんが、私も風で気配を探れます。攻撃の準備等が来れば、風達が教えてくれますので、今は気持ちの整理をつけてください。…無理に焦ると、更に落ち着かなくなりますよ。」
「…ごめんね。理乃ちゃん、暫くはお願い。」

風花は気持ちの整理をつけるため、一度ユノを戻した。

(山岸さんはしばらくこのままにしておいた方がいいかな。…それまで、私が何とかしなきゃね…!)

理乃は全神経を研ぎ澄ませ、敵の大きな攻撃を警戒した。

対決 五番の料理 ( No.790 )
日時: 2015/04/02 22:02
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 68ht.95d)

ペルソナメンバーが増えた事で、隙のない大きな攻撃ができるようになり、少しだが、希望が見えてきた。

「敵の気配が減少しています! そのまま皆さんで一気に押し返してください!」
「ようやっと希望が見えてきたな!」

由梨はその身に似合わぬ大きな剣を振るい、なるべく広範囲の技を出して一気に数を減らす。
その横には、威筑がいた。イザナギノオオカミで【メギドラ】を放ちつつ、その手に握られた両手剣を振るって近づいてきたクトゥルベビーを斬り倒す。

「へぇ、お前も両手剣の心得はあるのか。」
「我流だけどな。後でよかったら教えてくれないか? 由梨は剣術道場の娘だって聞いたが。」
「まぁ、後で、があったらな。」

そんな軽い話をしつつ、二人で敵に特攻していく。

「…。」
「…何か相棒とられた気分?」
「なっ、ち、ちげーって!」

陽介はそんな二人を微妙な顔で見ていると、横から碧がそう話しかけてくる。

「武器、似たようなものだから意気投合したんだろうね。」
「だろうな。後で鍛練とかしそうだなぁ…。」

何か微妙な表情でそんな二人を眺めつつ、敵を倒していく碧と陽介だった。
そんな二人から離れた所では、匠と真次郎が背中合わせに戦っていた。

「…。」

互いに、何も語らずに、ただ黙々と敵を薙ぎ倒す二人。

「…格闘術か何かを習ってんのか?」
「まぁな。」

粗方敵を倒した後、少しだけ会話する二人。だが、それを最後に、二人は何も話さない。どこか、似ている、そんな気さえした。

「善! 右から来るよ!」
「見えていた。」

神殿、玄関口。ここでは玲を庇いながら、善がそのボウガンのトリガーを引く。弾に貫かれたクトゥルベビーは四散した。
が、そこでクトゥルベビーの反撃が終わったわけではなかった。

「! 善、後ろ!」

善の死角から、クトゥルベビーが迫ってきたのだ。善は不意打ちを受け、咄嗟の対応が出来なかった。だが…。

「【凍牙】!」

寸分違わぬ狙いで飛んできた氷の矢にクトゥルベビーは貫かれ、消えた。

「油断大敵だよ、善君。」
「すまない。助かった。」

葉月と善は、背中合わせに立つ。互いに同じような武器で、彼等も何かが芽生えたようだ。

「ね、善君。後で時間があったら的当てゲームとかやらない? 善君とならいい勝負できそうな気がするんだ。」
「…考えておこう。」
「私もやりたーい!」

善に話を振ったはずなのに、玲も乗り気だ。面白そうだと思ったのだろうか。

「あはは、この戦いが終わったらみんなでやろうね。」

葉月はそう言いながら、氷の矢を生み出し、弓に乗せた。
所変わって、真ん中辺りで戦うロッシュと明は、背中合わせで息ぴったりに戦っている。

「なかなかやるな、お前。」
「お互い様!」

二人共、大きな槍を振り回し、一匹、また一匹と消していく。初めて出会った二人なのに、武器が同じと言うだけで、何だか長年一緒に戦ってきた戦士のように、息がぴったりだ。

「明とロッシュ、仲いいね。息ぴったり!」
『同一の敵に、同一の武器を持って立ち向かっているのだ。何か親しいものを感じていてもおかしくはないだろう。』
「この危機的状況も、お二人を何かが強く結びつけるような状況であってもおかしくはないかと思います。」

出会いがまた違ったら、どうなっていたかはわからない。けど、この出会いには感謝しないといけない気がした。…こんな危機的状況でなければ、どれ程よかった事かとも、思ったが。

対決 五番の料理 ( No.791 )
日時: 2015/04/02 22:07
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ijyp/C.M)

「よし、もう一押し!」
「もうすぐ本体につけそう…!」

昴と影は、もうすぐ本体であるクトゥルフモドキの元につきそうだった。
二人の体力は既に限界が近く、倒れそうな気配もしたが、倒れるわけにはいかない。その思いが二人を動かしていた。
その視線の先には、互いが大切に思う存在、スバルとMZDの姿が映っていた。

「影、もう一踏ん張り、いけるか!?」
「大丈夫!」

昴も影も、残った気力を振り絞り、走り出した。
その前を、クトゥルベビーが立ち塞がる。

「邪魔だ!」

二人は同時に叫び、互いの力をクトゥルベビーに当てた。その力が当たったベビー達は、四散した。
だが、敵意を感じたクトゥルフモドキは、クトゥルベビーを二人の前に多く寄せる。

「あともう少しなのに…!」
「くそっ…! もう、体力が…。」

あともう一歩、その位置まで来ているのに、何もできない…。諦めかけた、そんな時…。

『ぎゃぴ?』
「えっ…?」

いきなり、クトゥルフモドキの体が真っ二つに切れたのだ。
これには昴達も、何がどうなったかわからず、混乱するしか出来ない。
その間にも、クトゥルフモドキは三つ、四つと切れていく。

「無様に消えな。」
「消えろ。」

その声が聞こえた時、クトゥルフモドキは、四散した。指揮系統を失ったベビー達も、あっさりと消え去った。

「目が…覚めてたのかよ。」
「…。」

クトゥルフモドキに声をかけたのは、MZDとスバル。その手には二人共いつの間にか、大きな鎌が握られていた。どうやらこの鎌でクトゥルフモドキを切り刻んだようだ。

「…。」

二人はゆっくりと、地上に降り立った。

「MZDー!」

影は感極まって、MZDに向かっていく。昴も安心して、スバルに近付いた。

「起きてたなら言えよ、まったく…。」
「…。」

呆れながら声をかけるも、スバルは黙ったまま。ゆっくりと目を開け、昴を見る。
その目は、どこか…虚ろだった。

「? どうし」
「離れちゃ…ダメ…!」

何かあったのかと思い、昴が声をかけると、いきなりスバルが飛び付いてきた。

「私から離れちゃダメ! 絶対にお母さんの側にいなさい!」
「は? な、何だよいきなり!? 痛いって!」

突然訳のわからない事を言いながら、昴をしっかりと掴んで離さないスバル。丁度露出した肩を掴まれ、爪が食い込み、血が出てきた。

「もう、一人にはさせない…! 貴方は私が守るから、絶対にお母さんの側にいて!」
(な、何だよ、こいつ…! 様子が、変すぎるだろ…!?)

普段は見ない錯乱状態のスバルに、流石に昴は怖くなる。

「まさか…!」

遠くでそのやり取りを見ていた理乃は、何かに思い至って影を見た。

「影さん、駄目! MZDさんから離れて!!」
「えっ?」

理乃の言葉に耳を傾けようと、後ろを振り向いた影。

対決 五番の料理 ( No.792 )
日時: 2015/04/02 22:13
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: mSRzWlsB)

その時、だった。急に、誰かに突き飛ばされた感覚がしたのは。
同時に、ガキン、と、何かがぶつかり合う音が、した。

『ふぃー。ギリギリ、ってとこかな!』
「え、フィアレス!?」

いつの間にか影とMZDの間に割って入ったのは、フィアレス。彼女の持つ盾と、MZDの持つ鎌がぶつかり、音を立てていたのだ。
もしフィアレスが間に入ってくれなかったら、影は今頃、グサリとやられていただろう。

「MZD、何で…!?」

何故、彼がこんな事をしたのかが分からなかった。確かにいつも鉄拳制裁とかをしているが、ここまで恨まれる覚えはない。
影が問いかけると、MZDは鎌を背負い直した。

「何で? …それは…。」

サングラス越しで、顔が見えなかったが…その目は、スバルと同じ…虚ろな、目だった。

「お前がオレに飛び付く振りをして、殺そうと目論んでいるからだろ?」
「えっ…!?」

殺す? 影が、MZDを?
訳がわからなかった。だが、分かるのは…一つ。

『影ちん、今の彼、正気じゃないよ。ついでに言うと、スバちゃんもね。』

フィアレスの言う通り、今の二人は、狂ったようにおかしくなっている。彼女は理乃の持つ風の宝珠を通じ、理乃がその事を感じ取ったのを悟り、近くにいた自分が影をかばったのだ。

「えっと、つまり、どう言う事?」

嫌な予感を感じ取った碧は後退し、理乃に訊ねた。

「長期戦を見込んだのが間違いだった…! 長い時間クトゥルフモドキに絡まれて、知らず知らずの内に恐怖を溜めて、心が壊れて狂ったんです!」
「つまりは、恐怖でパニックになって壊れたと言った所か。」
「はい、小賀さんの言う通り、かと思います。」

匠の纏めに、理乃は頷く。

「あの狂い方は、私の知っているTRPGの狂い方に似ています。まさかリアルで見る事になるとは思いませんでしたが…。MZDさんが影さんに対して疑心暗鬼に陥り、スバルさんは昴さんに常時密着をしようとしています。」
「え、りー姉、それって…!」
「ええ、分かりやすく言うなら、信頼と保護の発狂が起こっているのです!(でも、友情じゃなくてよかった…!)」

ネクロニカを知る鏡が何かを言う前に、理乃はその答えを出すと同時に、ホッと安堵の溜息をついた。友情を抱いていたら、更なる悲劇が襲っていたかもしれない…!
ここで、少しネクロニカについて説明を。ネクロニカには、プレイヤーキャラクター毎に互いに未練というものがあり、ひとつの未練に狂気点というポイントが四点分まで入るのだが、その狂気点が四点分溜められてしまうと、そのキャラクターは狂気に侵されてしまい、発狂状態となり、様々なペナルティを受ける。ペナルティは未練毎に違うが、共通して厄介な物しかない。

「このままで終わればいいけどな。」

ロッシュは槍を構え、次の展開を待った。確かにこのままならば、スバルはただ昴にくっついているだけなので、MZDを何とか正気に戻せれば解決する。
だが、運命の神様はそれを許してくれなかったようだ。

「MZD…何、してるの…?」

スバルが、動いた。昴から離れ、その虚ろな目を、MZDに向けた。

「別に。ただ、オレは自分の身に振りかかりかけた脅威を切ろうとしただけだ。庇われちまったけどな。」
「…私の大切な子達を…殺そうとしたの!?」

嫌な雰囲気が、彼等を包む。嫌な汗が、背筋を伝う。
そんな彼等の気持ちを余所に、MZDはフン、と鼻を鳴らした。

「お前こそ、そいつ等を使ってオレを殺そうとしたんじゃないか? 子供だ何だ言いながらも、やっぱり内心じゃこいつらを道具のように思ってるんじゃねぇのか?」
「! そんな事ないわよ! 貴方こそ、みんなを殺してこの世界を乗っとるつもりなんじゃないの!?」
「おい…まずくないか…!?」

嫌な予感が的中しそうで、全員後退していく。
暫く一触即発の状態だったスバルとMZDだが、二人は同時に、鎌を構えた。嫌な予感が、当たった。そう思った、瞬間だった。

「死なせはしない! 死なせてたまるか! 私の子達は、私が守る!」
「死なない…! オレは、死ぬわけにはいかない!」

スバルとMZD、互いに、神様として、この世界に君臨する存在。その存在が互いにぶつかり合ったら…!

対決 五番の料理 ( No.793 )
日時: 2015/04/02 22:19
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: mSRzWlsB)

「やはり…互いの未練が発狂していましたか…。スバルさんとMZDさんはお互いに、信頼で結ばれていたのですね…。」
「んな事言ってる場合かよ! どうにかして止めねぇとまずいんじゃねぇのか!?」

真次郎が冷静にいる理乃に、武器の斧を構えながら怒鳴り付けた。勿論、理乃にだってここで何とかしなければ全員お陀仏なのはわかっている。というか、料理ひとつでここまで大事になるとは。全員、予想もしなかっただろう。

「なんとか正気に戻さないと…。」
「りのさん。」
「これでなんとかなるかな?」

そう言って、フレイとコールがあるものを物資の中から漁り、持ってきた。
それは、ハンマー。これで殴って正気に戻せというのだろうか。

「だけど、この状態じゃ、スバルさん達に当たるかわからないよ…?」

風花の言う通り、この状態では当たるどころか、寧ろ近づくのでさえも難しいだろう。
何とか隙を作らなければ、とは思うも、その方法は難しそうだった。

『…。由梨、葉月、少し、精霊達を…ヴォルトとウンディーネとセルシウスを我に預けてくれ。できれば、二人も来てくれるとありがたい。鏡、お前も来い。』
「紅さん、何か名案が?」
『ああ。名案という程のものではないが、少し思い付いた案がある。威筑、氷結と電撃系のペルソナを持つ者の力を貸してほしい。』
「分かった。碧、一緒に来てくれ。お前のサブペルソナであるルシフェルには確か【ブフダイン】があったはずだ。俺は俺でメインのイザナギノオオカミに【ジオダイン】があるし…。」
「うん、いいよ。何となく、やりたい事がわかったかも。善、君も【氷槍】と【閃雷】でバックアップはできるよね。」
「可能だ。」

碧はどうやら、紅の案が何となくわかったようだ。

『明、確かお前はフレイ達の補助的な役割を持つはずだな。』
「う、うん。あ、わかったかも。コール、おいで!」
「うん!」
『やれるかわからんが、やるしかない。残りのメンバーは、一瞬でいい。スバル殿と創造神の気をそらせ。』

紅は指示を出すと、昴と影の元に来た。

『神、影。我らが隙を作る。お前達は最後にそれを思いっきり振り下ろせ。』

そう言いながら、紅はハンマーを羽で指した。

「…わかった。」
「隙を作るのは任せたよ。」

昴と影は、来るべき時に向け、待機した。

『…まずは、創造神達の気をそらせ!』
「おう! おりゃあっ!」
「来い、アリス! 殺さない程度の【死んでくれる?】だ!」
「スサノオ! 特大の【ガルダイン】!」
「フレイさん、一緒に!」
「うん!」

紅の合図に、ロッシュは槍を投げ、真次郎はアリスでトランプ兵の雨を降らせ、陽介はスサノオを召喚して風を起こし、ネリアはフレイと一緒に風と炎を飛ばした。

「俺もっ…!」
『オイラもやるぞー! 特大の【グランドダッシャー】!』
『【ブラックホール】…!』
『いっせーの、でっ…【エアスラスト】!』
「切り裂け!【ウィンドカッター】!」

匠も風圧を起こし、ノームとシャドウは地属性・闇属性の上級魔法を放ち、シルフ四姉妹も風属性中級魔法を四人同時に放ち、理乃も風属性低級魔法を二人目掛けて放った。
そのお陰か、互いに離れ、気をそらさせる事に成功した。

『ウンディーネ!』
『読めてきましたよ…! 貴方がしたい事を!【タイダルウェイブ】!』

ウンディーネは紅の指示で察知したのか、すぐに水属性上級魔法を二人目掛けて放つ。

「きゃあっ! びしょびしょ…! きゃあぁぁっ!!」
「うわあぁぁっ!!」

二人共濡れ鼠状態だ。そこにすかさず、雷が落ちた。善のスキルと威筑のスキル、そして、ヴォルトと由梨の魔法だった。

「安心しな、弱い電流を流しただけだ。葉月、セルシウス、鏡!」
「碧、善、頼んだ!」
「崎本、コール、決めろ!」

由梨の、威筑の、匠の呼び掛けに答える葉月とセルシウスと鏡、碧と善、フレイとコールの準備は既に、万端だった。

「セルシウス、行くよ!」
『ああ、合わせろ、葉月!【ブリザード】!』
「オレもっ!」
「来い、ルシフェル!【ブフダイン】!」
「凍りつけ!」
「コール、行くよ!」
「うん、あきら! かちこちにこおってー!」

六人と一匹が放った氷属性スキルにより、スバルとMZDの体は凍りついた。これで暫く動けないだろう。

『準備は整った! 神、影、やれ!』

紅が声をかけるも、答える声はない。
代わりに、ある音楽が流れてきた。そう、スマブラでハンマーを取った時に流れる、あの音楽が。
全員、何事かと思い、昴達のいる後ろを振り向くと、明と理乃は吹き出し、他のメンバーは目を点にさせた。
何故なら、昴達の顔が、今現在進行形で『(ノシ゜▽゜)ノシ』といった状態なのだ。楽しそうです、はい。

「右手でポカポカ 左手でポカポカ」
「右手でポカポカ 左手でポカポカ」

って、おいぃぃぃっ! それ、ハンマーを電波ソングにしちゃったアレじゃないかあぁぁっ!! と、ツッコミたかった由梨と紅だが、何も言わずに見送った。ちなみに、最初に影が歌い、昴が続く。

「右手でポカポカ 左手でポカポカ」

そして二人同時に歌いながら昴はスバルに、影はMZDに接近し、近くに来たところで…目が、キラーンと輝いた。

「みんなをポカポカ ですとろい☆」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」

ですとろい、の歌詞が出た瞬間、スバルとMZDのド頭に、ハンマーが食い込んだ。ええ、振り下ろしました、あの二人が。
この衝撃で、振り下ろされた二人が気絶したのはいうまでもない。

「よし、中に運んで治療するぞ!」
「由梨、手伝って!」
「あんた等鬼か。」

由梨は思わずそう言ってしまうも、誰も聞いてくれなかったのでそのまま中に運んで、治療をする事になった…。

対決 五番の料理 後書き ( No.794 )
日時: 2015/04/02 22:25
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 68ht.95d)

後書き de 雑談


昴&影
「あーすっきり。」

紅&由梨
「あんた等鬼か。」


「もっと色々な展開をやりたかったけど、あんまりにも長くなりそうだから色々削らせてもらったぞ。ああ、俺と真次郎のWアリスでのW【死んでくれる?】とか、葉月にもらった酒飲ませて酒乱状態でのクトゥルベビー撃破とか。」

由梨
「ハンマーのは最初から考えてたのかよ。」


「じゃないのか? 数少ないギャグシーンとして。しかし、まさか料理“で”対決する場所なのに料理“と”対決しちまうとは…。」


『彼女が他人の真似を嫌うから、こうなったのではないのか?』


「自分の出る時にこれ取り入れるってどんだけの猛者なの昴の本体。」


「聞 く な 。あ、キャラを貸してくださった皆さん、変なところあれば仰ってください。修正します。」


「お願いしまーす! さて、ここで終わらせる?」


「だな。じゃ、またなー!」







—感想、おKですが…お借りしたキャラ達はもう暫くお借りしますね。やりたい展開があるので。特に匠さんと荒垣さんとロッシュ君で。


「何させる気だ。」


—軽く土下座? する羽目になるような展開。あ、まったく非道な事はさせないですのでご安心を。では、感想あればどうぞ!