二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 大団円と ( No.814 )
- 日時: 2015/04/14 20:13
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 8NwmyZQz)
すぐに救護室に運ばれたスバル達は、ベッドに押し込まれた。
そして医療班に後を任せ、昴達はクトゥルフの残骸を掃除する為に、用具を持って出ていった。
「小日向さん、二人を能力で縛り付けてください。」
「えっ!? な、何で!?」
ベッドに寝かせるなり、理乃が自分につけた注文を聞いた鈴花は、驚いて理乃に聞き返した。
「恐らく、狂気は残ったまま…。このまま起きたら、恐らくまた暴れます。」
「成程な、治療中に暴れられたら困るので、縛り付けておくのか。」
「確か、重度のうつ病とかの治療も、自殺しないよう縛り付けておくって言うのがあったような…。」
理乃の言葉に納得したサイモンは頷き、美夜が自分の記憶を蘇らせながらそう呟いた。
「うーん、気は進まないけど…。えーい!」
話を聞いて微妙な顔を浮かべるも、鈴花はそう言って能力を使い、蔓草を生やし、二人をベッドに拘束した。
「治癒術は頭を中心にかけるだけでいいだろう。目立った外傷は特に無さそうだ。」
『問題は心…精神面の方ですね。こちらは魔法ではどうしようも…。』
アスカの言葉に全員、困った顔をした。
「みんな! 物資が届いてたよ! これ、使えるんじゃないかな!?」
そんな時、外の掃除をしていた誠が入ってきて、手に持っていた段ボール箱を開けた。
中には、ポプリが入っていた。
「栗田さんのローズからの物資みたいだ。」
「どの世界のローズもきっとお花好きだろうし、ローズが選ぶポプリなら結構効くと思うよ!」
目録を見た創の言葉に、貰った事があるのか、影が自信満々に言う。
「他にも、栗田さんのリリィから疲れが吹っ飛ぶパワーストーンと、アリスが作ったカップケーキが入っていたが、それは今下でクトゥルフの残骸を掃除してる奴等に渡しておいた。カップケーキは冷蔵庫にしまっておいたぞ。」
「ありがとうございます、これが終わったら後でみんなで頂きましょう。」
「それから、ネールさんからも届いてたよ。えと、ジライヤ型のマカロンと、ネールさんお手製の人参カレーだって。こっちも、冷蔵庫に入れといたよ。」
どうやらネールさんからも来ていたようだ。物資、本当に感謝します。後でみんなでいただきますね。
「まぁ、何にせよ、まずはこっちだな。」
ドクターがスバル達に向き直る。
「きっと、何とかなるよ! 私も頑張る!」
「狂気に蝕まれていても、しっかりと助かってくれると思います。…いい香りのする紅茶を入れておきましょう。ポプリと組み合わせれば、きっと安らぐかと思います。アイギスさん、お手伝いを願います。」
「了解であります!」
まどかの言葉の後、美夜はアイギスを伴い、紅茶を入れにいった。
「そうか…。香りで安らぎを得て、何とか狂気を減少するのか…。鈴花、君はポプリを作ってくれ。」
「ここから暫く行くと、ローズさんの温室があります。そこから少し花をいただいて、作ってください。」
「わかった!」
「私も手伝うよ!」
「私もー!」
ドクターの提案で、ポプリを作る事になった鈴花と彼女の手伝いにサユリとポエットが同行する事になった。
「…ルナ、葉月に何かヒーリング系統の音楽になるようなCDがあるか聞いてきてもらっていい?」
『音楽でも癒しを与えるのですね、わかりました。』
「ロッシュさんが持ってきた物資も恐らく使えるでしょうが…そちらは起きてからの方が良さそうですね。」
「…ここで出しちゃダメだと思います。」
「純粋組がいますからね…。」
「?」
ルナにお使いを頼んでいる間に、ルフリが何かに思い至るが、すぐにそれを打ち消し、奏と芳佳がちらりと理乃を見た。彼女は何事かわからずこてんと首を傾げてしまった。
- 大団円と ( No.815 )
- 日時: 2015/04/14 20:21
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 8NwmyZQz)
外にいる一同は、栗田さんのリリィから貰ったパワーストーンで回復した後、クトゥルフの残骸を掃除していたが、意外に早く終わってしまった。
だが、外は既に夜であった。今から帰るには遅い時間だ。それに、ここには高校生が多くいる。今の時間帯で返すのは可哀想だ。
「つか、アタシ等も寮閉まってるじゃんか。」
「あ、どうしよう。帰れないじゃん…。」
寮組も自分の帰宅時間を心配したが…。
「あ、心配すんな。何か、アイツが自分の不在を知られたらまずいからって、自分の世界の時間を止めてくるようMZDに頼んだらしいんだ。俺達の不在もばれないように、この世界の時間も、このコピー聖域以外は止まってるって。救援の人達はこの世界に来ても動けるように都合つけたみたいだけどな。」
「だから、風も吹いていなかったのですね。」
どうやら、この場所以外の時間は止まっているらしい。それを聞いた由梨達はホッと安堵の息をつき、ネリアは納得したように頷いた。
『とにかく、今日はここに泊まるといい。大したもてなしも出来ぬが、部屋数はあるからな。』
「飯も心配すんな。俺が簡単なの作っから。幸い、食糧の備蓄は結構あるしな。まぁ、大半が貰い物だけど。」
食事は備蓄されたもので何とかなるようだ。昴はそう言うも…。
「俺も手伝おう。人数が多いから大変だろう。」
「僕も手伝うよ。あ、荒垣先輩程はないけど、結構自信あるよ。」
「私もお手伝いします。まだ、修行中の身ですが…。」
普通以上レベルの料理スキルを持つ威筑、碧、ネリアが申し出た。
「ありがたい。確かに人数が多いし大変なんだ。由梨、部屋の掃除とベッドメイク頼む。」
「わかった。」
「俺も手伝おう。部屋の片付けぐらいはできる。」
「僕も手伝うよ。みんなへとへとだし、早く眠りたいだろうから人手は必要でしょ?」
「俺も行くよ。(ここ、長鳴鶏の宿みたく布団、フカフカかなぁ…。)」
由梨だけに頼んだベッドメイクだが、匠、明、ロッシュが申し出る。どうやら四人でやるようだ。
「風呂の用意もするか…。おい、花村、善、手伝え。」
「ああ、わかった。」
「わかった。」
「私もいきますね。」
更に気を利かせたのか、真次郎が陽介と善を伴い、風花がそんな三人を手伝うべく立ち上がって風呂の用意をしに行った。
「ねぇねぇ、スーちゃん、私にも、何か手伝える事、ない?」
玲が聞くと、昴は考えた。
「そうだな…。お前は鏡達と大人しくテレビ見てろ。」
「食事ができたら、配膳をお願いします。それまではテレビでも見ながら休んでいてください。」
「うん、やすむ!」
鏡、玲、フレイ、コールの純粋っ子達は、昴とネリアの言いつけ通り、テレビを見に行った。
- 大団円と ( No.816 )
- 日時: 2015/04/14 20:28
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: oq60GVTK)
しばらくして、料理がやや出来上がってきた時、仕上げを威筑と碧に任せ、昴とネリアは鏡達に手伝いを頼むべく、リビングに向かった。
「一体アイツ等何を見てるんだろうな。」
「恐らく、子供向けのアニメとかでしょうか?」
何を見てるか気になり、リビングに辿り着くとこっそりと覗き込む昴とネリア。
「どろどろだったね。」
「よるでも、おひるのどらまみたいにどろどろなのがあるんだね。」
「これからどうなるのかな?」
「うぅー。家政婦さん、どうなるんだろう!」
(何見てんだアイツ等。)
丁度CM明けのようで、番組名が表示されるようだ。
『火曜サ○ペンス劇場』
その番組名が表示された瞬間、昴とネリアは冷静に近くにあったリモコンのスイッチを操作し、電源を消した。
「あー! すーさん、ネリア、これからいいとこなのー!」
「んな教育に悪い番組見るんじゃねぇよ!! 第一火サスは何年も前に終わってんだろ!!」
「だってフレイとコールが見たいって!」
「フレイさん、コールさん、あなた方は何を見ているのですか…。」
「よるのどらま!」
「よるのどらま!」
無邪気に答えるフレイとコールに、ネリアは絶句するしかできなかった…。
■
やがて、夜のドラマを忘れるように言った昴は、配膳をしつつ、治療中の固定審査員を除いた一同をリビングに集めた。
今日のメニューはカレーのようだ。
「ほれ、あんまり大したものでもないだろうけど。」
「いただきます!」
全員、余程お腹が空いていたのか、がっつきはしないが、黙々と食べ始めた。
「んー、んめー!」
どうやら評価三から四の人間が作ったカレーは上々のようだ。
「そうだ、理乃。アイツ等は?」
そんな席の最中、昴は理乃に、スバル達の状況を聞いた。影も気になっていたのか、昴の横で伺うように見ている。
「治療は、最後のお二人の一撃以外は外傷はないので、命に別状はありません。当たり所も悪い訳ではないので、特に問題もないでしょう。ですが…。」
「まぁ、あんだけ狂ってたからね…。まだ、ちょっと心の面では油断できないかもね…。」
影も不安そうに言う。普段から想像がつかないくらいの狂い方に、彼女らと一番近しい二人は驚きを隠せなかったほどだ。
「…俺、今日はアイツの側にいるわ。」
「ボクも。縛り付けておいたなら、暴れる心配もないだろうし。」
「その方がよいと思います。目が覚めたら、お話の相手になってもらうのもいいかもしれません。」
「だな。」
目が覚めたら、どんな話をしようかと考える二人。
そんなこんなで、夜は更けていった…。
- 大団円と ( No.817 )
- 日時: 2015/04/14 20:50
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ijyp/C.M)
翌朝…。
「いやー、昨日は心配かけたわね、昴。」
「心配どころじゃねぇっつーの。何神クラスの二人が狂ってんだよ。世界の危機を感じたぞ本気で。」
「苦労かけました。」
目を覚ましたスバルは、昨日の影響はまだ残って離れようとはしなかったものの、それ以外は特に問題もないので、昴同伴で気分転換に神殿の高台にいた。ちなみに、影もMZDと共にどこかに出かけたようだ。
「…本当に悪かったわね。心配かけて。まさかあんなのが出てくるとは思わなかった…。」
「俺だってあれは予想外だよ。その後のお前の発狂も含めてな。」
「まさかのリアルネクロニカをするとは思わなんだ。」
全員、予想外の出来事に、混乱が暫く広がったものの、なんとか退ける事ができ、世界の平穏も守られた。
「…。」
昴は、スバルにそっと寄り添い、その背中にぽすん、と顔を埋めた。
「ん? どったの昴。」
「何でもねぇよ。」
そうは言うものの、小刻みに震えているのがよくわかる。
泣いているのだろうか、そう思ったスバルは声をかけようとしたが…。
「…勝手に…いなくならないでよ…。」
「えっ?」
「もう…あんな馬鹿な真似はしないで…。本気で、心配したんだから…!」
普段の男勝りはどこへ行ったのか、今の彼女は、完全に女性だ。
スバルは、昴のこの行動が何を意味するか、わかっていた。
「…ごめん。ごめんね、昴。」
不安に押し潰されそうになって、強気な面が出てこれなくなった時に見せる…弱い、本当の昴。
本気で、彼女がいなくなると思い、心配したのだろう。不安で不安で仕方なかったのだろう。
「勝手にいなくなったりしない。もうあんな馬鹿な真似はしない。約束するよ。」
「…うん…約束…。」
スバルは抱き締めるように回してきた昴の手に自分の手を重ね、暫くそのまま過ごしていた…。
■
長い時間か、短い時間かはわからない。ようやく、昴が落ち着いたところで、スバルは彼女の手を離した。
「うん、もう大丈夫そうだね。」
「…なんか、ごめん。急に泣いて。」
「気にしてないよ。さてと、そろそろ神殿に戻ろうか。あんまり長い時間離れてると、みんな心配するしね。」
スバルは今、病み上がりの状態なのだ。自分がついているとはいえ、あんまり離れていると、心配されかねない。そう考えた昴は、二人で仲良く神殿へと戻る事にした。
- 大団円と ( No.818 )
- 日時: 2015/04/14 20:57
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ijyp/C.M)
「…で、これはどう言った状況?」
戻ってきたスバル達の前に繰り広げられていたもの、それは…。
「…本当にすみませんでした…。」
キッチンにて、土下座をして謝罪をする由梨、真次郎、匠、ロッシュの四人と…。
『まったく…。料理好きが集まってもこうなるのか。』
「某裸隊よりはマシですが、これもこれで…。」
「ネリア、それは言うな。」
「先輩、さすがに僕もこれ弁解できない。」
呆れ果てた表情でそんな一同を見る紅、ネリア、サイモン、碧の四人だった。
そんな彼らの後ろ、リビングスペースでは…。
「…何だよこれは…。」
まるで立食パーティーでもするかのような量のとてつもなく美味しそうなご飯が所せましと置かれており、全員集まってそれを眺めていた…。
あ、玲とフレイとコールが生唾飲んだ。
「紅。」
『あぁ、神、スバル殿。』
「あのさ、状況説明願えない? どうしてこうなった?」
「あ、アタシから話すよ…。実は…。」
由梨は申し訳なさそうな表情でこうなった原因について話始めた。
■
アタシ、昴さん達に朝飯でも作ってやろうかなって思って、起きたら顔洗ったりしてからキッチンに来たんだ。だけど、そこには先約がいてさ。
「おう、野上か。」
「…すまない、キッチン借りた。」
真次郎と匠。話を聞く限りだと、この二人も同じ事を考えてたみたいだ。
「いや、いいって。むしろ助かる。」
アタシはそんな二人を咎める事はしないで、二人と一緒に作り始めたんだ。
「あれ? 同じ事考えてた仲間がいたのか。」
「おー、ロッシュか。」
色々と作ってる最中に、ロッシュがやって来たんだ。ロッシュも同じように料理を作りに来たみたいでさ、このまま四人で作ってたんだよ。
□
「ほー、丸焼き前に下味に塩を擦り込むのか。」
「ああ。こうすると焼いた後とかうまいんだぜ。」
けどな、ロッシュとアタシはほら、危険なダンジョンで旅とかしてた料理上手組だし、そういった知識を匠達に教えてさ、いたんだけど…。
□
「こうして層にすると、味が均一になりやすくなる。」
「うわー、見た目もうまそうだな! 匠、すげぇな!」
「なるほどな。今度俺もやってみるか。」
「でも、ここに使う出汁はこうの方がよくないか?」
「ん、そっちでも美味そうだな。」
匠も真次郎も料理上手に分類されるだろ? 相手もすぐに理解した上に自分の知識を教えてくれるから、ついつい楽しくなって…。
□
「匠、すができるから少し蓋を開けとけ。」
「わかった。…こんな簡単な手間で綺麗な茶碗蒸しができるんだな…。」
「野上、後で俺にも教えてくれ。」
「あ、俺も頼む!」
で、気づいたらさ…。
□
「さて、次は何作っ…あ。」
「あ。」
冷蔵庫の中はおろか、備蓄倉庫も氷室も空っぽにしてたんだよ…。
■
「で、固まってるアタシ達を丁度起きてきた紅とサイモンとネリアと碧が見て、冷蔵庫の中身を見て全部理解してくれたみたいで、現在に至ります…。」
『料理好きが集まって楽しくなったのは勝手だが、我らの明日以降の食料はどう責任とってくれる?』
「あ、紅さん、それなら平気だけど?」
あっけらかんとした昴の物言いに、紅は首を傾げた。
『なぜだ?』
「だってここ、聖域をコピーしたって言ったでしょ? 神殿の中身を全部同じようなものをそっくりそのままもうひとつ作って、それを料理しただけだから、そっちに影響はないよ。シンクロさせてるつもり、ないし。」
どうやら、紅の危惧は何も心配要らないらしい。ただ複製した代物を料理し、食べるだけなので、影響はないようだ。
「でも、流石に量が多すぎない?」
葉月が困り果てた表情で、後ろにある料理を指差した。
確かに、全員で食べて余るかどうかがギリギリな所だった。それに、昨日届いた差し入れも食べたい。
「まぁ、そこは後でタッパーか何か出して済ませるよ。でも、どうやって食う?」
頭を抱え込む昴。流石にこんな多い量、どうやって配膳したらいいかわからない。
「それなら心配無用だぜ、昴!」
急に背後から声が聞こえ、少し驚いた昴は後ろを見ると、そこには影と一緒にMZDがいた。
「何が心配要らないんだよ、MZD。」
「配膳の必要ないって事。そーれっと!」
MZDは指をパチン、と鳴らすと、目の前にあった大量の料理が消え去った。
「え、料理は!?」
「お前ら、外出ろ! パーティーの始まりだ!」
そう言ってMZDは外へと繋がる玄関戸(昨日のうちに昴が修繕した)を開けると、そこには…!
「うわ…!」
白いテーブルクロスがかけられた長机の上に並ぶ、先程までリビングにあった料理達。
きっちりとトングや皿も完備され、箸やスプーンもある。
更にMZDが用意したのか、美味しそうなジュースが入ったジューサーもあれば、昨日までに貰った口直しの差し入れも外に出ている。
「まぁ、こんなバイキング形式の朝食も悪かねぇだろ?」
「粋な計らいしてくれちゃって。さ、みんな、食べましょうか! 評価五の人間が集まって作った品だし、楽しみー!」
スバルが歩き出すと、他の一同もそれぞれ散っていった。
「善、善、行こっ! 行こっ!」
「玲、焦っても料理は逃げない。」
「すーさん、月姉、行こっ!!」
「鏡、お前、玲と同レベルだぞ。」
「…。」
「フレイさんとコールさんはまずそのよだれを拭きましょう。匠さんのご飯があって美味しそうで我慢できないのはわかりましたから。」
他愛ない話をしながら、様々なペアで食事を楽しんだ。
- 大団円と ( No.819 )
- 日時: 2015/04/14 21:04
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 68ht.95d)
そんな中、ふと、ノックの音が聞こえて、昴はくるりと振り向いた。
「また客が来たのか?」
「すーさん、オレ出てくるね!」
「鏡君、待って! 私も行く!」
もし裸族とかだったらと考えると、鏡一人で行かせては危ないと考えた葉月は、鏡と共に長老樹の扉に向かう。
「はーい、あ、ファル兄! ヤンリン!」
扉を開け、奥にいたのは、りゅーとさんの所のファルコとヤンリンだ。その後ろには大きな機体がある。ファルコの所有するアーウィンだ。
「よっ、鏡! 久しぶりだな!」
「うん! ヤンリンも久しぶりー! そっちの第三回以来?」
「葉月、元気してたか?」
「ばっちり!」
あ、よくよく考えればこのチームはりゅーとさんの所の第三回でのチームメイトじゃないか。ここでヤマビコさんサイドのデデデとバンダナワドが来たら完全に第三回三番の組み合わせができるぞ。
「今日はどうしたの? 何か依頼で必要なものとかあってきたとか?」
「いや、今日は物資を届けにな。ほら、これ。」
ファルコは手に持っていた段ボールを葉月に渡した。
そこには、美味しそうなカツオのたたき丼と別のバスケットに入ったりんごと紅茶のケーキとミルクティー。救急パックセットと鎌鼬の毒(※しっかりと更新済み)とマーヤスター(※魔力がこもった宝石で魔力回復)とレア度が高い薬草が入っていた。
「わ、美味しそうな鰹のタタキ…。」
「それ、ウルフが作ったんだ。味は保証するぞ。」
「ありがとう! スバルさん達も喜ぶよ! ところで、そのアーウィンは…。」
「残る毒物に備えて、俺達も待機してようかと思ってな。ああ、下手すればお前の精霊が溶けるアレ。」
「ああ…。」
ファルコの一言で、葉月はしっかりと理解できたようだ。察知しやすい子も恐ろしい。
「ところでさ、何かいい匂いするんだけど、何かあったのか?」
死んだ目をした葉月をそっとしておく事にしたヤンリンは、辺りに漂ういい香りに顔を綻ばせた。
「今ね、由梨姉とか、他の世界の料理上手が集まって料理を作りすぎちゃったから、立食パーティーしてるの! ヤンリン達もどう? 結構いっぱいあるんだ。」
「マジで!? 行く行く! お邪魔しまーっす!!」
「俺も食うかな。ほら、葉月、行くぞ。あ、ついでに由梨のまともじゃない方の精霊もフィチナに連れていきたいが、いいか?」
「多分由梨、普通に許可すると思うよ。」
話はまとまったところで、ファルコとヤンリンも立食パーティーに加わった。
- 大団円と ( No.820 )
- 日時: 2015/04/14 21:09
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: mSRzWlsB)
大団円の後、流石に満腹の状態では審査にならないので、しばらく自由時間として、交流の場をもうける事にした。
「おらぁっ!!」
「うわ、たたっ!」
ロッシュは明に頼まれて、槍の稽古をしているようだ。
「槍に振り回されてちゃ、ろくな攻撃できないぞ!」
「うー、わかってるよー!」
ぶつかり合う二人とは別の場所で、
「はぁっ!」
「やあっ!」
「遅い!」
由梨を相手に威筑と碧が打ち合いをしていた。二人もかなり強い部類で、由梨も心なしか楽しそうだ。
「…鍛え甲斐があるな、お前ら。」
「それは、どうもっと!」
「嬉しいのは嬉しい、なっ!」
ガキン、ガキンと剣がぶつかる。一同はしばらく打ち合いをしているだろう。
また別の場所では…。
「当たれっ!!」
「ふんっ!」
「えーいっ!」
「俺も負けねぇぞ!」
「俺だって!!」
一部の弓使いである葉月、善、まどか、ヤンリンと、銃使いのファルコが昴の用意した的に当てる的当てゲームに興じていた。
全員、百発百中だ。しかも的のど真ん中を撃ち抜いている。
「なかなかやるな、お前ら!」
「そちらもな。」
「みんな、本当に射撃スキル高いね!」
「皆さんこそ、凄いです!」
「こりゃ、タルミナの的当てゲームもすぐに出禁になりそうだな、この面子だと。」
こら、ヤンリン、出禁するほど的当てゲームに興じるなし。と思ったがそこは誰も口に出さなかった。
所変わって、スバルはセフィーの元を訪れていた。隣には、MZDもいる。
「あ、いたいた、セフィーちゃん。」
『あぁ、スバルさん、何でしょうか。』
彼女は今、剣の手入れをしていた。道具を片付けながら、何の用か聞く。
「いや、五番の評価、まだだったよね。思い出したくないだろうけど、それにセフィーちゃん食べてないけど、評価用紙に記入しちゃおうと思って。」
『ああ、なるほど。わかりました。』
セフィーは差し出された評価用紙に記入し始めた。横でスバルとMZDも記入していく…。
☆
総評:零−
スバル:評価…零−
貴様は何を作った? 何でリアリティーの高いクトゥルフができた?
テメェの頭から料理という単語を消していいか?
MZD:評価…零−
なぁ、ちょっと新しい技の実験台にしていいか?
セフィー:評価…零−
食べてませんが、十分その殺傷能力がわかりました。マスターばかりか、私まで殺す気ですか? いっぺん、その脳天を【フィアフルストーム】で潰して構いませんか?
…当然の結果である。
- 実食 六番 ( No.821 )
- 日時: 2015/04/14 21:18
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ijyp/C.M)
そんなこんなでお昼過ぎ。全員中に入ってもらい、審査再開だ。
「昨日の悪夢はもう忘れたい。」
「みんな忘れたい。」
『当たり前だ。あんな過去最高の被害は忘れたい。…次はフィアレスか。あやつはまだ来ないの』
「おっくれたー!」
花びらの翼を持つオレンジ色が特徴のシルフ四姉妹三女、フィアレスがやって来た。どうやら少し休みすぎたようだ。
「次はフィアレスちゃんか。さて、紅君、持ってきてもらっていい?」
『わかった。』
スバルに頼まれ、紅とシャドウは料理を取りに行った。
少しすると、すぐに持ってきた。今度ははみ出た何かはない。どうやら普通に食べれるとは思う。
「じゃ、オープン、と。」
MZDは蓋を開け、中身を見る。
何の変鉄もない八宝菜の餡がかかっている何かがそこにあった。
「何だこれ、飯は?」
『八宝菜の下とか?』
アワーグラスβで動かし、「いただきます。」と挨拶をしてから食べ始める。
「お、チャーハンだ。」
レンゲで掬うと、餡の下からチャーハンが出てきた。どうやらチャーハンに八宝菜の餡をかけた餡掛けチャーハンのようだ。
チャーハン自体も少ししゃきしゃきしていて、何かを混ぜたのか、食感が面白い。
「あれ、このチャーハン…。」
スバルは何かに気づいたのか、少し笑みをこぼした。
「どうしたんだ?」
「ん、何でも。あの子ったら、私の作り方をそのままやらなくていいのにね。」
どうやら、スバルには誰が作ったかわかったようだ。
卵は、ご飯を纏うように小さく存在する。個人的にはこの作り方でしか作ってこなかったので、どういう形状になるかは大体わかる。そう、これはスバルの作り方をよく知ってる存在が作った代物。
「これでも結構パラパラになるからねー。んー、おいしっ!」
「ああ、オレも作ったのわかったわ。」
『私も! スーちゃんにとっては大当たりかな?』
「かもねー。」
そんなこんなで、全員完食。
した所で、紅がそっと手紙を取り出した。
「あり? 紅、伝言あったのか?」
『ああ。完食したら伝えるようにと。何々…“普段お世話になってる俺に、日頃の感謝を込めて。”とある。』
「あらあら、やっぱりあの子か。」
『まだ続きがある。“それから”…って、おい…。』
紅が歯切れの悪いところで区切り、スバルは小首を傾げた。
「どうしたの? 紅君。」
『…後悔しないなら続きを読むぞ。“完食したって事は、コーン食えたんだな。”』
「…は?」
コーン? 今、コーンと言いました?
コーンはスバルの嫌いなもの。いや、カボチャとかと比べるとマシだが、苦手な部類の代物。
『“実は、ご飯にコーンを細かく切って混ぜた。更に餡をかけて見えなくした。気づかなかったって事は…俺、お母さんとしては合格って所かな♪ どうせお前の事だし、俺が何か企んでた事は知ってただろうけど、ネタバラシしたらどうなるか楽しみだ♪ 普段からボケかますお前に、せめてもの俺からの仕返しだ。受けとれ♪”だそうだ。』
準備回での彼女の企みは、これだったようだ。
それに気がついたスバルは、プルプルと震えた。そして、
「あ…あ…あんっ、の、馬鹿娘ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
スバルの叫び声が、聖域付近に響いた。
…今頃、等の本人はしてやったりみたいな感じで笑ってんだろうな…。
☆
総評:四
スバル:評価…四−
ちゃんとお母さんやれててお母さんは嬉しいよ。細かく刻んだピーマンをハンバーグに混ぜるかのごとく、コーンをチャーハンの中に入れて更に八宝菜の餡掛けとか、よく考えたねー。
…けど、何してくれてんだよ、あぁ? 何でこんな微妙な嫌いなものであるコーンをチョイスした。あれか? これが評価を下げないで私に仕返しする方法か? 後で拳骨食らえ。
MZD:評価…四+
ちょっ、スバルキレてるwwwwwまさかの愛娘の料理が微妙なとこ狙ってきてキレてるwwwww
お前の料理の腕、本当に段々伸びてくんな。しかしまさか分身と言う立場を逆に利用してやるとはwwwww美味かったけど、後で覚悟しとけよwwwww
フィアレス:評価…四
まさかの嫌いなものを入れていたと最後に公表wwwwwポケモンだったら特性いたずらごころでしょwwwww
お店で出すにはちょっと見た目的にアレだし、いい意味で家庭料理止まりだけど、十分美味しかったよ! また作ってほしいけど、今度はスーちゃんにだけカボチャいれ
※ここから先は途切れている
■
今回はここまで。以下ヒント
五番:説明不要。
六番:スバルの好みを把握している人物その二。しかしこの子はそれを悪用しやがった。なぜ微妙なところのものをチョイスした。
- 大団円と実食 六番 後書き ( No.822 )
- 日時: 2015/04/14 21:23
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: mSRzWlsB)
後書き de 雑談
スバル
「やっと娘のを食えるかと思ったら何だこれは。」
MZD
「アイツ、今頃笑ってんだろうな、仕返しが成功して。」
スバル
「…でも、この次は笑い事じゃすまされないんだけど。」
MZD
「何でだ?」
スバル
「残った精霊と残った料理を思い出せ。」
MZD
「あ。」
スバル
「…嫌な予感がした所で、終わります。」
MZD
「ま、またなー…。」
■
今日はここまで。感想あればどうぞ。