二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 前書き:偶然というのは時に恐ろしい。 ( No.840 )
- 日時: 2015/04/23 17:06
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 68ht.95d)
前書き de 雑談
セルシウス
『残るは私達か…。なぁ、何だかツッコミ属性の犠牲率高くないか? 気のせいか?』
ラフィー
『気のせいじゃないと思う。カオスクラッシャー的存在の被害率は高いよ。見てみる? 評価一以下のを並べると…。』
我が家のカオスクラッシャー:昴、紅、烈、陽介、千枝、直斗、由梨、ジョーカー、フランシス
昴…固定審査員として何度もあるので割愛。異世界でもあるので一番被害に遭っている。
紅…りゅーとさんの第四回時に彼女の氷海のを食らって沈んだ経験あり。
烈…第一回で雪子の味なしスープ、第二回で七海のクトゥルフ。りゅーとさんの第四回で別世界の自分が作った炭のスコーン。最初の遺言回経験者。
直斗…第三回で風雅の調味料全部入れ、第四回で雪子の奇跡料理。没案第六回では七海のクトゥルフ。
由梨…第四回で牡丹の毒キノコ弁当。二人目の遺言回経験者。
ジョーカー…昴同様固定審査員として何度もあるので割愛。
フランシス…りゅーとさんの第三回で悠達裸族の裸イスバーガー。これで米にトラウマを…。
陽介&千枝…唯一被害なし。むしろ恋人に当たって幸せな奴等。
ラフィー
『とまぁ、こんな感じで、陽介と千枝だけ被害なし。残りは何かしらトラウマ食らったり死に掛けたりとかしてる。で、僕もセルシウスもカオスクラッシャー枠だから、ここにまた一人追加されるね。』
セルシウス
『…うわぁ…。というか、由梨と弟子の烈が遺言回経験者っておい。何という偶然なんだ。怖いんだが、この偶然。』
ラフィー
『怖いねー。さて、次から本編だよー。』
- 実食 七番&八番 ( No.841 )
- 日時: 2015/04/23 17:13
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: mSRzWlsB)
採点方法
六段階評価を下す。内訳は以下の通り。
五、メニューに拘らず、遊び(アレンジ)を加えており、なおかつ美味しい。
四、メニューに依りすぎな所はあるが、程よく遊びを加えており、美味しい。
三、メニュー通りの品。遊びなどはないが、メニュー通りなので普通に美味しい。
二、メニューに沿ったのだろうが、ミスが目立ちすぎて美味しくない。が、まだ改善の余地がある不味さ。
一、まだまだ花開くには時間がかかるも、改善しようとしているのはわかるレベル。キッチンに立つなとは言わないので、貴方達は簡単なお手伝いから始めましょう。
零、あの、五番並みに被害が甚大なんですけど。何故こうなった。貴様もキッチンに立つな。
±要素
・+…あともう一歩で上位のレベルに上がれるくらいにおしい品。五+は五段階評価じゃ足りませんレベル。
・無印…妥当なレベル。惜しい部分もなければ、マイナス要素も特になし。
・−…ミスが多いのでお情けでこの評価に。零−はいい加減自 覚 し や が れ 。
お題「ご飯物」
・ご飯を使った一品を提供。
・おにぎり、オムライス、チャーハン等々、ご飯を使えば何でもよし。最悪ご飯を炊いてレトルトカレーをぶっかけただけの物でも許す。
・評価はいつものように六段階評価とプラスマイナス。
・評価五を取った者にはスバルから望む品物を渡される。
・ただし、スバルとMZD、精霊達を医務室送りにした者は、スバルからきつーいお仕置きが…。
役割分担
審査員
固定:スバル、MZD
変動:セフィー、ユーティス、フィアレス、ラフィー、ウンディーネ、セルシウス、イフリート、ノーム
医療班:影、ルナ、アスカ(+α)
救援係:紅、シャドウ、ヴォルト
挑戦者:昴、鏡、りせ、風花、理乃、由梨、葉月、七海
スバル
「まぁ、わかってたけど…。」
MZD
「何が起こるんだよ、おい。つか、溶解の危機以上の何かがあるのかよ!?」
- 本日の救援 ( No.842 )
- 日時: 2015/04/23 17:32
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ijyp/C.M)
次の試食に行く前に、ひとつ、言わなければならない事があったスバルは、マイクを手に持った。
「えー、残り二人の精霊達にお伝えします。」
残るは二つ。だがこの二つに、とんでもない事があった。
「たった今をもって、当たり以上が消えましたー☆」
そう、残る二つは、普通評価以下の物! あろう事か、まだボスがいるのに当たり以上がここで完全にログアウトしてしまったのだ!
「…ごめん、こんな放送して…。次の試食者は、落ち着いたら来て…。」
スバルは最後にそう締め括ると、マイクのスイッチを切った。
「当たり以上がログアウトって何だし。」
「こっちが聞きたい。」
『半分で大当たりとゲテモノ処理班のノームが消え、今、最後の当たり枠が消えた…。これは久方ぶりに来るかもな、最後の毒が…。』
あろう事か、ラストポイズンフラグが立ってしまった。次で出て、純粋組の彼の料理で終われればよいが…。
『…?』
ふと、ヴォルトが長老樹の方を見た。
『ヴォルト、ドウシタ…?』
『…。』
『…? 物音…? 長老樹カラカ?』
『誰か来たのかもしれんな。創造神、行くぞ。』
「へいへい。」
紅とMZDは長老樹まで行き、扉を開けた。
「お、お前らは…。」
「久しぶりだな、MZD!」
そこには、第四回で救援に来てくれたユリカさんのリックと、少女がいた。手には段ボールを持っている。救援物資だろうか。
「おー、こっちの第四回ぶり? あ、そっちの第三回ぶりかな?」
『創造神、話し込むのは後でゆっくりとでよかろう。して、そちらの少女は…。』
「紅さんとは始めましてですね。私はフレドリカです。リッキィと呼んでください。」
少女はリックと同じ職業でロッシュの仲間、リッキィことフレドリカだ。彼女も同じくユリカさんの救援だ。
『よろしくな、フレドリカ。して、その箱は?』
「えっと、追加の救援物資です。」
フレドリカはリックが持ってきた段ボール箱を開けた。
中身は氷石と火傷に効果のあるハーブティーとアイスノンと業務用のアイスクリームが入っていた。
「おい、その物資って…。」
「はい、恐らく残ったあの料理を危惧してです…。」
三人と一羽に、静寂が訪れた。
「俺達も、一応回復量は心許ないかもしれないけど、扱えるから戦力にはなると思う…。」
「ああ…。うん、頼む…。」
そんなこんなで、リックとフレドリカには神殿で待機してもらう事になった…。
- 実食 七番 ( No.843 )
- 日時: 2015/04/23 17:41
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 68ht.95d)
そして、次の精霊がやって来たので、試食の時間となった。
七番の試食であるセルシウスは、珍しく震えていた。
シャドウと紅に次の料理を取ってきてもらっている間に、スバルはセルシウスに話しかけた。
「…セルシウスさん、大丈夫…?」
『不安しかない。』
無理もない、だって、まだ中ボスが残っているのだから。しかもその中ボスは自分が溶ける可能性のある炎属性の凶悪な代物。
同じ炎属性を扱う存在の代物がもう一つあるのだが、出来ればそっちに当たりたい。
「残る一人の当たりが出てくればいいけどな…。」
『もう当たりとかどうでもいい。今はただ死なない料理が食べたい。』
「ですよねー。」
もう、死ななければいい。その思いだけだ。
「お願い、マジでセルシウスさんに激辛は来ないで…!」
「こればかりは祈るのみだ…!」
『頼む…! 私はまだ溶けたくない…!』
運命の刻限だ、とでも言うかのように、紅とシャドウがカートを押してやってきた。
『セルシウス…覚悟ハ、イイカ…!?』
『ああ、私は逃げも隠れもしない!』
料理一つでそんな会話をするか、と言いたい所だが、そこはスルーする事にした。
シャドウは丁重にテーブルまで運び、全員を見渡したところで、蓋を開けた。
中は…!
「あっ…!」
『こ、これは…!』
少し形の崩れたハンバーグと、カレー。そして、白いご飯。紅いものは…一切無い!
そう、これは残る一つのまともに食べられる当たり枠…!
『…私は…私は助かったのだな!? 助かったあぁぁぁぁっ!!』
『…。』
『セルシウス…落チ着ケ…。取リ得ノ冷静サハドウシタ…。嬉シイノハ分カルガ…。』
『はっ! す、すまない…。』
あまりにも嬉しすぎて、キャラ崩壊を起こしかけていたようで、ヴォルトとシャドウに諌められ、冷静さを取り戻す。
「あはは…まぁ、嬉しいのは伝わったよ。」
スバルは苦笑しつつも、アワーグラスβのスイッチを押して時間を動かす。
危険そうな香りは一切しない。普通に食べられる当たりクラスの典型だ。
『スバル殿、伝言だ。“カレーはまだちょっと作るのに自信ないからレトルトで済ませてごめんね。ハンバーグも形が崩れちゃったけど、一生懸命作ったよ! あんまり美味しくないかもしれないけど…頑張って作ったから食べて!”と。』
「何で当たり枠の君がレトルトを使ってゲテモノ系がレトルトを使わないんだし。私、それでオッケーって言ったよね?」
「ああ、言った。」
とにもかくにも、一人目のレトルト使用者が現れた。が、今回はレトルトを許可しているので、勿論ルールには違反していない。最悪レトルトだけで許すと言ったが、この料理を作った人物は自分なりのアレンジを加えたようだ。ハンバーグはようやく自信を持って作ったが、今回は少し失敗してしまったようだ。だが全然許容範囲だ。
「いただきます。」
スバル達はスプーンを持ち、食べ始めた。
レトルトなので当然美味しい。作った本人が辛いものが苦手なので甘口のカレーだが、とても美味しかった。
『…紅、こいつは最初はゲテモノしか作れなかったと聞いた。』
『ああ。神に対して最初に出した料理は、見るも耐えぬものだった。』
『だが、今はきちんと作れている。…いつか葉月もこんな風に作れるようになるだろうか。』
「それは当人次第だね。私はあくまで、最初の設定として料理下手を与えただけ。そこから変わるかは、当人次第だよ。私は基本干渉しないし。」
セルシウスは一口、また一口とカレーを口に含む。
その脳裏には、この料理を作った人物と同じような属性を持つ自身のマスターを思い浮かべているのか。
「なんか、セルシウスさんってお母さんみたいだね。マスターである葉月ちゃんを、親みたいな存在として見守ってる感じ?」
『…我が子の成長を願う親の気持ち…。そう、かもな…。』
胸の辺りが、暖かくなる。親のような心境を指摘された事で、どこかむず痒い何かを感じたのだろうか。
『…見守っていきたいという気持ちは…悪くないな。』
「そうだね。それはわかる…って、セルシウスさん、溶けてない!?」
なんと、なぜかは分からないが、セルシウスの体が溶け始めていたのだ!
別に辛いものは入ってはいないはずだが、若干溶けている。
『…きっと、心が暖かくなったからだろう。だが…この溶け方なら、悪くない。』
セルシウスは自身の周りに冷気を漂わせながら、またカレーを一口ほおばった。
☆
総評:三+
セルシウス:評価…三+
フフ、とても美味しかった。暖かい気持ちにさせてくれてありがとう。精霊でも、親のような心境を持つ事が出来ると思わせてくれてありがとう。マスターの成長と共に、お前の成長を見守りたいと思う。困った事があるならば言ってくれ。
スバル:評価…三+
あらあら、セルシウスさん、幸せそう。ハンバーグはちょっと形が崩れていたけど、美味しかった。料理下手設定をしたのに、二年近くでここまで成長したのは凄いよ。これからも昴の事を宜しくね。もちろん、困った事があったら何でもお姉ちゃんに相談なさい。出来る限り、力になるよ。
MZD:評価…三+
オレ達を死なせないように配慮してくれてサンキューな。他の奴等もこれだったら料理対決で死にかけたりしないっつーのにマジで茨の道を歩くんだから困ったもんだぜ…。レトルトは甘口のカレーだったが、これなら辛さを調節できる粉とかがあればよかったかもしれないな。辛いのが割と好きな奴はちょっと物足りないかも。そういう心配りは昴や理乃から学んでみろ。お前の美味い飯も楽しみにしてっかんな!
- 振り返り ( No.844 )
- 日時: 2015/04/23 17:48
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ijyp/C.M)
残る一つとなった所で、スバル達は試しに振り返りをしてみる事にした。
「一番は葉月。お肉が上質なものだったのに焦がしたのは勿体無かったな…。しかし、それを何故にあのラゾリートに当たったのかが謎だ。」
『二番目、理乃…。完璧ナ作品…。ユーティスモ、嬉シソウダッタ…。』
『三番は風花。リベンジしたかったのは分かるが、簡単なものから始めればよいものを…。ノームが当たって正解かも知れんな。』
『…。』
『四番ハ、由梨…。時間配分ノミスハ、ヴォルトモ驚イタソウダ…。ダガ、ウンディーネガ幸セソウダッタカラヨシトスルソウダ…。』
四番まで振り返ったところで、全員肩を落とす。あのクトゥルフの惨事を思い出したのだろう。
「五番は…うん、語る価値なし。セフィーちゃんが生きてたのが奇跡だよ。その後で六番で私の娘! …けど、何であんな真似したか後で聞きださないとね。フィアレスも調子乗って更に嫌いなものを入れさせようとすんなし。」
「で、七番はその息子の鏡だな。セルシウスも嬉しそうだった…な…。」
そこまで振り返ると、全員顔面を蒼白にさせた。
そう、まだある危険人物が出ていない。その人物の料理が…あろう事かラストの八番。
■
同じ頃、中で精霊達も自分達が食べた料理を振り返っていた。
『一番はあのラゾリートから聞いた所、葉月の可能性が高い。それを何故あの馬鹿は改悪した。頭に来たから股間に【アイスニードル】プレゼントした。』
『ナイスだセルシウス。二番は理乃。馴染み深い味でホッとしたが…本当に何故前半で消えるんだ。』
『それは籤が悪いと思うぞユーティスー。三番は風花だなー。温度の上がるおにぎりって初めてだからびっくりだー。』
『ノーム、誰だって驚きますよそれは…。四番は由梨。力の入れる対象が違ったので、ヴォルトが苦笑してましたね。でも、とても美味しかったですし、楽しかったです。』
現在地下にぶち込まれているイフリートの代わりにセルシウスが振り返り、ユーティス、ノーム、ウンディーネが続けて振り返る。
『ここで大当たりが消えた矢先に七海さんのあのクトゥルフ事件でしたね。後でマスターから恐怖のオシオキがプレゼントされないか心配です。』
『いや、理乃の事だから絶対殺ると思うよ、セフィーお姉ちゃん。六番は分身の方のすーちゃん! 本体の方のスーちゃん喜んでたけどどんでん返しがウケた! アハハハハハッ!』
『フィアレス、お前な…。またスバルから拳骨食らっても知らないぞ。七番が鏡。あいつの成長はこれからも葉月共々見ていきたい。…ん? まだ出ていないのは…。』
セフィー、フィアレス、セルシウスが振り返ったところで、ノーム以外の精霊達が固まる。
そう、彼女等も思い至った。最後の料理に。
『…はぁ、こうなっちゃたか…。』
どこか覚悟していたのか、最後の試食者であるラフィーが溜息をついた。
『最後って聞いてこうなる事は若干予測してたから覚悟はしといたけど、やっぱ怖いなー。』
『私は何故こう私達の被害率が高いか聞きたい。』
ラフィーが溜息をつくと、ユーティスがガックリと肩を落とした。
『そりゃ、僕らの人数が一番多いからじゃないの?』
そう、ラフィーの言う通り、今回シルフ四姉妹は全員出席しているが、他のメンバーは最大で葉月の二体、由梨と七海の精霊は一体ずつしか出ていないので、こうなる事は予期していた。
『しかし、何故長女と末子が犠牲になる。』
『どっちかって言うなら三女が犠牲になってほしかったけどね。』
『酷くないラフィー!』
フィアレスは妹の言葉にプンプンとむくれるも、
(ラフィーの気持ち、少しわかる気がする…。どうせなら一番のにぶち当たった奴がラストになってくれればよかったのにな。)
同じくカオスクラッシャー枠に該当するセルシウスも、気持ちがわかったようだ。しかも次に例にあげたのは相反する属性の精霊。本当に何でまともではない精霊が助かってるんだし。
『はぁ…。でも、食べないと終わらないから行ってくるよ。』
『本当はふんじばってでも貴方を止めたいけれど、スバルさん達も覚悟はしていると思うし…。気を付けてね、ラフィー。』
『出来る事なら逃げたいけどね。じゃ、行ってくる。』
ラフィーは溜息をつきつつ、セフィーに答えてから出ていった。
『神様、どうか妹が助かりますように…。』
妹の姿を見送った長女と次女は、祈るように手を組んで、願った。
- 実食 八番 ( No.845 )
- 日時: 2015/04/23 17:58
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: mSRzWlsB)
『やっほー、来たよ。』
「あ、ラフィーちゃん…。うん、もうそっちも知っちゃってたみたいね。ラスト。」
覚悟を決めた表情でやって来たラフィーに、スバルはそう声をかける。
『最後って本当に損な役回りだよね。てかさ、気づいたけど、大体最後ってポイズン系統か大当たりかじゃない?』
「こっちの第一回が牡丹、二回が七海、三回が完二、四回がリリィ…。あ、確かに。」
「異世界でも確かに五の人間か一か零の人間が最後って言うのが多いよね。言われてみれば。」
『ねぇ、ラストって何でこんな博打的な順番な訳?』
こちらの世界でも異世界でも、ラストに五の人間か零から一の人間が来ている率が高い。ラフィーに言われて気づいた一同は、改めて最後という数字が恐ろしいものだと知る。
「五の人間が来れば大団円で終われるけど、ラストポイズンじゃなぁ…。」
『むしろ何故最後でここまで評価が極端なものばかりが来るのかが知りたい。籤というものは末恐ろしいぞまったく。とってくる。』
紅はシャドウを伴い、最後の料理を取りに行った。
「…。」
『…。』
辺りに、静寂が漂う。
風が木々を揺らす音が、痛いくらいに不気味に聞こえる。
『風達に注意促されたんだけど。今日は乾燥しているから木々が燃えやすいよ、だって。』
「…。」
ラフィーの聞いた風の声が嫌な予感を告げる。
そんなこんなで、紅とシャドウが戻ってきて、丁重にお盆をテーブルに置く。
「…開けるよ。」
意を決し、ひとつ深呼吸をした後でスバルは一気に開け放った。
そこには…何かが揺らめく、赤い、否、紅いオムライスだった。
「オムライスの悲劇を再現してんじゃねぇよあの野郎!!」
蓋を開けたと同時に、全員同じ事を言い放つ。そう、ペルソナ4をご存知ならよく知っているであろう、このオムライス。
この料理対決を生み出したある意味切欠のイベントであり、これの作者が始めて悠達の前で振る舞った料理だ。その時の悠の感想である「鈍痛がする。」は今でもよく覚えている。
『いや、待って。何か変じゃない?』
「変って?」
ラフィーは理乃のやっている横でそのシーンを見ていたのだが、その時のオムライスと今のオムライス、何かが違うと感じていた。
『ねぇ…このオムライスの表面で揺らめいているの、何?』
「え?」
全員、恐る恐るもう一度オムライスをまじまじと見る。確かに何かが揺らめいていた。オレンジ色の、何かが…。
「ね、ねぇ、まさかとは思うけど、この揺らめいてるの…火?」
「」
スバルが恐る恐る口に出すと、全員黙った。
『…悪いが、炎で間違いないだろう。この揺らめきは、我もよく知っている。』
『…。』
『ヴォルトまで賛同しちゃったし。じゃあこれ、炎だね。はい決定。』
灼熱の精霊の現身である紅と、炎属性のマスターを持つヴォルトが賛同し、諦めたラフィーは自棄になって無理矢理纏めた。
「いや、冷静に纏めないでラフィーちゃん! 何で燃えてんの!? あれ!? あまりの辛さで発火点まで上り詰めてファイヤー!?」
「どんな理屈だよ!?」
とにかく、これは流石に危険だが、食べないと話にならない。
「じゃあ…動かすよ。えいっ!」
スバルは覚悟を決め、アワーグラスβのスイッチを押した。
とてつもない刺激臭と一緒に、炎が揺れ踊る。まるで何かに憎しみを持っているかのように、炎は揺れ躍り続ける。
『…し、刺激臭だけでも食べる気失せるのに、何で炎上するオムライスなんか食べないといけないの…?』
「それみんな思ってる。…。」
全員、スプーンの端に一掬い。だが、その一掬いなのに、炎が踊っていた。
「…ちょっと待ってて。私、昴に言い残してる事がある。」
「オレも影に言いたい事があるんだけど。」
『じゃあ、最期の手紙でも書く? あ、遺言状って言った方がいい? 僕も姉さん達とマスターに書きたいし。』
最期かと思うと、途端に言い残した事が浮かんで、全員スプーンを置いて、ノートの力で出したアワーグラスβを使って再び炎上オムライスの時間を止める。そして、同じく創世ノートの力で出した便箋に、そっと文字を書いた。
書き終わるなり、スバルは紅達に手紙と、創世ノートを預けた。
「紅君、シャドウさん、ヴォルトさん、悪いけどこれ届けてくれる? ついでに避難もお願い。」
『…気は進まないが、仕方なかろう。スバル殿、無事で…!』
紅達は言われた通り、中に入っていった。その後、再び時間を戻し、穏やかな顔で互いを見た。
「関係ないけどさ、手紙書いてる間、FF10の『ザナルカンドにて』って曲が脳内再生余裕だったんだけど。」
『奇遇だね、僕も。』
「オレも。」
関係ない話をしつつ、スバルは燃え盛る物体を持ち上げた。
「…じゃあ、みんな。行こう。」
スバルの静かな声が、そっと響いた…。
- 遺言状 ( No.846 )
- 日時: 2015/04/23 18:06
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ijyp/C.M)
スバルの声が響いたのと同じ頃、理乃はシャドウに渡された手紙を、セフィー、ユーティス、フィアレスと共に見ていた。
“親愛なるマスターへ。
ごめん、どうやら僕はここまでみたい。本当は君の事をずっと見ていたかったけど、流石にあんな料理を目の前にして、生きていられる保証はどこにもない。勝手にいなくなるの、許してほしい。
初めて理乃と出会ったあの試練の日を思い出しながらこれ書いてるんだけどね。…今だから言うけど、あの時は完全に君の事疑ってた。君も知っての通り、前任の風の司がろくでもないのだったからね。また、奴隷のように扱われると思うとうんざりしてたけど、そんな心配は全然いらなかったね。
僕は君の精霊でよかった。そう思ったから、異例中の異例である、元風の司となった君でも、僕達を呼ぶ許可をしたんだ。他のみんなも、きっと同じだと思う。
今だから言える。理乃、君は歴代最高の風の司だよ。
じゃあ、僕はここでいなくなる事、君の後任である永遠にも伝えといて。
それから、姉さん達にも。勝手にいなくなってごめんなさい、ずっとずっと大好きだよって伝えて。…フィアレス姉さんはもっとしっかりしてくれ、ってのも伝えておいて。
最後に。理乃、本当に今までありがとう。
ラフィー”
『ラフィー! 私、もっとしっかりするから! だから行かないでよ!』
手紙を見るなり、フィアレスは泣き崩れ、何度も何度も叫ぶ。
『ラフィー…! 私達こそ、お前がいてくれて何度助かった事か…!』
『私達も、貴方の事、大好きだよ…。だから、いなくならないでほしかった…! 永遠にはどうやって説明すればいいの…!?』
「…。」
ユーティスとセフィーも手紙を見る中、理乃はそっと手紙をもう一度読み返していた。
「歴代最高の司、か。…精霊一人救えない私のどこが最高なんだか…。」
理乃は立ち上がり、杖を持った。
■
“影へ
ごめん、流石にあの料理だと、オレも生きられる気がしない。勝手にいなくなるなって言われたけど、まず無理だと思う。
そう思ったら、さ。何か無性にお前に話したい事ばかりが溢れてさ、お前との思い出ばかりが過ってきてさ、あぁ、オレはお前の事、好きなんだなって思った。
お前との出会いはあん時も言ったけど、ミミニャミにジャングルを旅させたあん時だったよな。勝手にディスク盗んで、勝手に世界と世界を繋げて、本来だったらぶっ飛ばす所だけど、寂しかったんだよな。その気持ちがわかったら、何か、ぶっ飛ばすっていう気が失せてさ、お前と一緒に生きてみたいって思うようになったんだよな。だから、お前をオレの影として引き取った。
その後も色々とあったよな。パーティーの話とか校長にされた時とか、本当に色々とあった。
ごめんな、オレのせいで色々振り回して。オレも、お前に甘えたバチかな。
…嘆いていても仕方ないよな。うん。
影、もうお前は一人じゃない。今度からはオレの影じゃなく、影という、一人の存在として生きろ。それが、オレの最期の願いだ。
じゃあな、影。また来世で会えたらな。
最高のパートナーを持てた神様より”
医務室前にて、影はヴォルトから届けられた手紙を読み終えるなり、ぐしゃりと握り潰した。
「ボクを引き取ったなら、最期まで責任持てっつーの、あの馬鹿。」
『…。』
「勿論、助けに行くよ。ヴォルト、医務室の中にいる人達に伝えて。急患三人、ぶちこむよってね!」
影はヴォルトの答えを聞かずに、走り出した。
■
自室にて、昴は紅や鏡と共に、スバルからの手紙を読んでいた。
“昴へ。
まず、六番の件はもう不問にするわ。本当に何であんな真似をしたか気になるけど、最後の料理に比べたら雲泥の差だし。
籤を引いたから想像できてると思うけど、どう考えても私はこれまでっぽい。何かそう思ったら手紙書くしかないなって。
創世ノートは紅君に預けた。これからは貴方がこれを持ちなさい。この世界は、これから先、貴方が守って、育んでいって。天国で楽しみにしてる。
それと、いきなり生み出していきなり管理者件神様任命してごめん。あれは私も悪かったって思ってる。
でも、みんなで協力してよくやってくれてるよ。よく頑張ったね、昴。偉い偉い。
色々あって辛かったと思う。その度に側にいてやれなくてごめんね。死地に送り出してごめん。
神様として、聖域のお母さんとして、これからも頑張って。遠い空の上で、応援してるよ。
スバル”
「あの馬鹿…! 勝手にいなくなるんじゃねぇって約束しただろうが!」
影と同じように、手紙を握り潰して投げ捨て、紅に向き直った。
「紅! 救援の奴等に伝えとけ! 今からあの馬鹿共をぶん殴りに行ってくるから必ず治せってな!」
『ああ、わかった!』
「すーさん、オレも助けにいく!」
「人手は多い方がいいだろうしな!」
昴はスバルから預けられた、本物の創世ノートを手にし、走り出した。
- それから ( No.847 )
- 日時: 2015/04/23 18:14
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: mSRzWlsB)
玄関口まで来ると、同じ事を思っていたのか、理乃と風姉妹、影がいた。
「お前らもやっぱり来たか。」
「あの馬鹿の顔面ぶっ飛ばさないと気が済まないからね。勝手にいなくなるなって言ったのに、すぐ約束破ろうとするんだもん。」
「私も同じようなものですね。」
今から止めるのは難しいと思う。だが、これからすぐに救出すれば、もしかしたら助けられるかもしれない、そう踏んだ昴達は、すぐに玄関に来たようだ。
『ところで、先程から焦げ臭い臭いがするのだが気のせいか?』
「そう言われれば、そんな気がする。」
ユーティスが鼻をひくつかせると、焦げ臭い臭いが辺りに立ち込めているのに気がついて発言したら、他のみんなもその臭いに気づいたようだ。
「…おい、まさか…!」
嫌な予感がして、昴は一気に扉を開け放った。
「」
そこから見える景色に、全員絶句。その風景は…。
「何で森が燃えてるんだよ!?」
あろう事か、聖域の象徴である森が燃えているのだ!
火の手の中心は、スバル達がいる場所だ。わずかに目を凝らしてみたが、ラフィーがよく見るとテーブルクロスを掴んでいた。どうやら彼女が倒れてテーブルから落ちないように必死の抵抗というか、最期に無意識にテーブルクロスを引っ掴んでしまい、上に乗ったオムライスが転げ落ち、乾燥した草木に火種が移ったのだろう。
「ごめん、ボク、クロノクロスっていうゲームのある場所で流れていた曲が脳内再生余裕なんだけど。」
「奇遇だな、俺もだ。」
「すみません、私もです。」
「オレも。」
恐らくそれは炎の孤児院という曲か? まぁ、いい。
「って、呑気にしてる場合じゃない!」
「由梨! 早く来て! 山岸さんは炎耐性がある方と水属性の技を扱える方をありったけ呼んでください! 聖域が火事です!」
「鏡、お前は炎に耐性がある。あいつ等を由梨達が来たら協力して中に運び込め! 理乃、お前は治療に当たれ!」
全員、素早く現状を打破しようと、動いた…。
- 実食 七番&八番 後書き ( No.848 )
- 日時: 2015/04/23 18:20
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: ijyp/C.M)
後書き de 雑談
昴
「おい、聖域炎上事件って何だよ! コピーだったから人とかいないしいいけど、これあの世界じゃ笑えねぇよ!?」
影
「言わないで昴!」
由梨
「五番と言いこいつと言い、ドンドン進化するな。ああ、悪い方に。」
理乃
「…神殿と長老樹に燃え移る前に鎮火できるかしら…。」
葉月
「させるしかないよ、うん。というか、本当に最後の毒物って何でこうなるの。」
鏡
「それは言わない約束だと思う。」
昴
「とにかく、何とかして鎮火させないとな。と、言うわけで、この辺りで失礼します。」
■
今日はここまで。感想あればどうぞ( ゜д゜)ノ
そろそろ別スレッド作らないとな。二冊目のノート。
船の事件(烈君がらみの事件)もこっちに持ってこようかなあ…。