二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- O・SHI・O・KI☆前半戦 その一 ( No.94 )
- 日時: 2014/10/18 23:02
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: TZ3f2J7J)
料理対決から一週間後、オシオキ案がある程度集まったところで、パステルくんは聖域の地下を改造し始めた。
「…やってんな、パステルくん。」
そこに、昴がやってくる。パステルくんは作業の手を止め、昴を見た。
「あ、昴さん! ごめんねー、勝手に改造して。」
「いいよ。俺もあいつ等のオシオキはしないといけないって感じていたからな。…他の世界の奴等に不快な気持ちを与えたし、それに何より…。」
昴はぱらりとパステルくんの目の前に、ある紙を差し出した。
「ん? 何こ…れえぇっ!?」
パステルくんが見た紙、そこには500万円の請求額が書かれており、昴とジョーカー宛だ。
殆どが賠償金と慰謝料だ。器物損壊やら何やらで埋め尽くされている。
「あの変態には地獄を見てもらわないとな。」
「何したのあの変態…。」
「え? …後のお楽しみ。パステルくん、今回は聖域の改造は大目に見てやる。だから、思い切り殺れ。」
「いいよー♪」
暗い空間に、黒い笑い声が響き渡った…。
…この二人は敵に回してはいけない。うん。
■
翌日…。
「さて、集められた理由はわかるか? お前ら。」
ここ、聖域には、風雅、凪、牡丹、りせ、雪子、七海、葉月が集まっていた。
風雅、凪、葉月は何故集められたかわかったのか、浮かない表情をしているが、他は平然としていた。
そしてその平然としているメンバーが口を揃え、
「全然。」
と答える。これには昴の表情にも青筋が浮かぶ。
「…はぁぁぁ…。」
頭を押さえ、溜息をつく昴。深い、深ぁい溜息を。
「七海。お前は悠の料理をどう評価した?」
「味がない。」
「りせ。お前は完二の料理に何した?」
「辛いものぶっかけた。」
「雪子、牡丹。お前ら二人は自分の料理をゲテモノだと認めるか?」
「絶対認めない。」
…ここまで言ってもわからないのか、と昴と反省している風雅と凪と葉月は思った。
「七海、りせ。お前らは料理を作った奴等に喧嘩を売ってこの勝負を見守ってくれた人達を不快にさせた。雪子、牡丹。お前ら二人はいい加減認めろ。いや、これは全員に言えるが。」
「不快にさせた気もないし、認めないもん!」
プツッ、と昴の中で何かが切れた。
「…そろそろ」
「そろそろ自分の料理の腕を認めるべきじゃないのかなー?」
なにか言い返してやろうと思った昴だが、隣にいたパステルくんがニッコニッコしながら昴の横から出てきたので、思わず口をつぐんだ。
「君達が呼ばれたのは、そんな絶対認めない君達にボクと集まった他の皆さんからプレゼントがあるからなんだ!」
「そのプレゼントは嫌な予感しかしないよパステルくん。」
流石に笑顔なパステルくんに何か気づいたのか、オシオキ経験者は顔を青くさせる。
「…僕らもやられるのかな…?」
「多分ねー…。」
「本気で怒ってるもんね、パステルくん…。」
反省している風雅と凪と葉月の三人は、不安そうな表情を浮かべる。ついに自分達もオシオキの餌食になるのかと思い、不安なのだ。
いそいそとスイッチを準備するパステルくんを見ながら、どんなオシオキが来るのか分からず恐怖ばかりが募り、ガタガタと震え出す。
「さぁ、君達。オシオキの時間だよ。」
パステルくんはスパナを振り上げ、にっこりと笑って躊躇いもなく振り下ろした。
『スギヤマサン、フウガサン、ナギサン、カナスギサン、ボタンサン、アマギサン、クジカワサンガ“クロ”ニキマリマシタ。オシオキヲカイシシマス。』
無機物のように文字が羅列された後、七人のいる場所の地面がぽっかりと穴を開けた。
「きゃあぁぁぁ…。」
「うわあぁぁぁ…。」
七人は重力に逆らえず、落ちていった。
「あ、そうそう。今回は人によってオシオキの重さが違うんだー。」
「反省してる葉月や凪、風雅には厳しいものをさせちゃ可哀想だからな。」
どうやら、人によってオシオキが異なるようだ。
- O・SHI・O・KI☆前半戦 その二 ( No.95 )
- 日時: 2014/10/18 23:07
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: TZ3f2J7J)
一定の浮遊感の後、ポスッ、と軟らかい地面に着地した感覚がした葉月は、恐怖で目を開けられなかった。
(何が来るの…!? こ、怖いよ…! ん…?)
怯える彼女の耳に、チャイムの音色が届けられた。
恐る恐る目を開けると、そこには一緒に落ちてきたのか、凪と風雅がおり、目の前には黒板と机が。辺りはどこか教室を思わせる内装。そして自分達がいたのは、マットの上。
まるで学校のような雰囲気に、葉月は一瞬面食らった。
『そこの三人、ボーッとしてないで座れ。講師の先生を待たせてるんだから。』
「す、昴さん、これはどういう…。」
『すーわーれ。その後でまた説明するから。』
訳のわからないまま、黒板の上にあったスピーカーから聞こえる昴の声に言われて座り始める葉月達。
全員が座った時、教室のドアがガラリと開かれ、そこから丸い鼻と緑色にLの字が書かれた帽子が特徴の男と、金髪に緑色の服を着た青年が入ってきた。
『はい、葉月、挨拶ー。』
「へ? あ、は、はい! き、起立!」
パステルくんの声が聞こえ、葉月は思わず学校でやるような起立、気を付け、礼をさせた。
相手も笑みを浮かべながらノッている。
そして着席をした時、帽子の男が口を開いた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。自己紹介は不要かな? 葉月は一回救援の為にこっちに来たしね。」
「葉月さんの救援って事は…やっぱりりゅーとさんの所のルイージさんにリンクさんだったんだー…。僕のお世話になったルイージさんとは違う気配がしたから、やっぱりそうだと思ったんだー。」
何かを察していた凪が、ちょっと嬉しそうに言った。
ちなみに凪は、亜空間事件の際、デデデに保護され、ルイージとネスに世話になった事があり、それからずっとルイージやデデデになつき、ネスを弟のように思っているのだ。
そのほかのメンバーも、お世話になった人物(昴はマスターハンドやクッパ、鏡はクッパを筆頭にしたクッパ軍団、紅はクッパ達に加えてロボット、牡丹はカービィやマリオ、リンクやピット、ヨッシーや姫’s、雪花はサムスやピカチュウ)とは大の仲良し。
ちなみに言うが、こちらのゼルダもサムスも料理はそこそこ出来る。と、一応言っておく。
「でも、二人が何でここに? それに、私達のオシオキって…。」
『じゃあ、ここで後ろの黒板を見てー!』
スピーカーから聞こえるパステルくんの声に言われるがまま、三人は後ろの黒板を見る。
そこには、
『家庭科・調理実習三時間コース〜杉山葉月、風雅、凪へのオシオキ〜(りゅーとさん案)』
と、チョークを使ってカラフルに書かれていた。
「家庭科…? えっ、調理実習!?」
風雅はその内容を理解したのか、驚いた表情を見せる。
『三人へのオシオキは、これから三時間、ルイージさんとリンクさんの監督のもと、座学を一時間してから、二時間で料理を二品作ってもらって、ボク達に食べさせてもらうよー。』
「え、えと…料理って、何を作るの? あと、パステルくん以外誰が食べるの…?」
『作る料理は、日本食の定番であるお味噌汁と肉じゃが! レシピを見ればそこそこ作れるようなものだよ! それでー、食べるメンバーはー…。』
部屋の隅にあるテレビがいきなり付き、映し出したもの。それは、テーブルを囲む昴、パステルくん、ジョーカー、にゃぐわ、紅、そして…由梨がいる光景だった。
『この五人に食べさせてもらうよー! あ、紅は通訳係だから対象外ね。』
「えぇぇぇぇっ!?」
ひときわ大きな声を上げたのは、葉月だった。
仲間の一人、由梨がいるその光景に、驚くと同時に、自信をなくしてしまった。長年一緒に戦ってきた仲間だからこそ分かる、由梨の和食へのこだわり。それを思い出し、葉月はしょんぼりと項垂れてしまった。
『安心しろ、葉月。あんまり厳しい採点はしない。』
「嘘だ。絶対嘘だ。」
『…お前の料理の腕くらい、長年一緒にいるから分かるって。…葉月、ルイージやリンクの講義を聴いて、少し上達してくれれば、アタシは満足だよ。他の二人もだ。…これがお前達への、十分すぎるオシオキだ。』
『本来はなくても良かったし、この勝負を見守ってくれた人達の何人かも、お前達三人へのオシオキは要らないんじゃないかって言う言葉を貰った。けど、りゅーとさんからのこの案を貰って、俺は正直やるべきだと思った。三人共自分の料理についてわかってはいる。なら、ちょっとは改善するべきだろ? 流石にいつまでも壁を破壊したり、上手いのにゲテモノ化させたり、おっちょこちょいで全てを台無しにするわけにもいかないだろ。』
昴の言葉を聞いていた三人は、その通りだと思っていた。…思っていたからこそ、この講義の後の料理が不安だったのだ。
「心配しないで。僕もリンクも、予想外のハプニングなら慣れてるから。…でも、僕自身、葉月の爆発はどう起こるか謎なんだけど…。」
「あ、あれは、その…油を使っていたら、火がフライパンに燃え移っちゃって…魔法で水を出して…ひっくり返しちゃった後に、火に油を注いだ状態となり…爆発しました。」
「…葉月にはそういった対処法も教えた方がいいね。まずこの一時間は野菜の切り方や器具の使い方を覚えてもらうね。」
「そのあとの二時間は、葉月と凪はルイージの監督で、俺と風雅で料理を作ってもら」
「不憫へたれグリーンズ…。」
「何か言ったかネス?」
いつの間にかリンクの隣にいた赤い帽子をかぶって青と黄色のボーダーシャツを着た少年—ネスが、リンクにしか聞こえない声で呟き、リンクが青筋を立てながら反論する。
ちなみにこのネスも、りゅーとさんの所のネスである。
「あれ? ネス。君の出番は明日じゃなかったの?」
「面白そうだから来た! でも、お仕事の邪魔になっちゃうといけないから、僕は昴達のところにいるね!」
「うん、それがいいよ。昴、ネスの事よろしくね。」
『おう。二人も葉月達の事頼む。』
昴のこの言葉を最後に、テレビが消えた。
「じゃあ、早速始めようか。」
「お願いします!」
葉月達はノートと筆記用具を用意した。準備は万端のようだ。
※
『家庭科・調理実習三時間コース』
・ルイージとリンクによる料理講座3時間
・最初の一時間で卓上で勉強(道具の使い方や混ぜ方や包丁の扱い方など)。残りの二時間で料理を作る(作るのはみそ汁と肉じゃが)
・葉月と凪にはルイージ、風雅にはリンクが一緒にいてレクチャー
・出来上がったのを昴とパステル君とにゃぐわとジョーカーと由梨が試食する
- O・SHI・O・KI☆前半戦 その三 ( No.96 )
- 日時: 2014/10/18 23:16
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: TZ3f2J7J)
神殿内・試食会場…。
「さて、あの三人はこのオシオキで十分か。」
昴は目の前にあるテレビに映し出された映像を見て、ポツリと呟いた。
「あの三人は自身の腕は自覚している。然程厳しくする事もないだろう。ところで、あの変態ワイルドにも仕置きをすると思ったのだが、呼んでいないのか?」
「ああ。アイツには明日死んでもらう。」
どうやらオシオキ対象者に入っていた筈の悠がいないのは、翌日にどえらい事をするからのようだ。
「しかし、葉月達を待っている間も暇だな。他の奴等のオシオキを見るって言うのもあるが、それにしたって暇だ。…そうだ、確かりゅーとさんの所のウルフって和菓子が得意なんだっけ。何かそれ思い出したら食いたくなってきた。和菓子。」
「…和菓子が得意なんじゃなくて、和菓子“技”が得意なんだと思うぞ。丁度ネスもこっちに来るし、何か作ってやったらどうだ? あ、じゃあ俺達にも何か作ってくれよ。」
「ボク達はオシオキ見てるから離れられないし、お願いしていい? 由梨。」
「構わないよ。キッチン借りるなー。」
由梨はそれだけを言い残し、キッチンに消えていった。
「さてと。他の奴等のオシオキはどうなってるかな…。」
「次は…七海とりせが辿り着きそうかも!」
パステルくんは持っていたタブレット端末を昴に見せた。そこには、ピンクと黄色の点が落下していき、ある部屋に来て止まっているのが見えた。
「パステルくん、葉月達の状況はそのまま見たいから、別のテレビにその状況を映してくれ。」
「りょーかーい!」
「にゃぐー!」
『パステルくん、にゃぐわも手伝うそうだ。』
昴の命に従い、パステルくんは手伝いのにゃぐわと共に別のテレビを操作した。
■
「…あぁぁぁっ!!」
ドスンッ、と衝撃を感じた七海とりせは、痛めた尻を押さえながら立ち上がる。
辺りは何の変哲もない殺風景な白いタイルが張られている部屋だった。
「痛…。もう、何なのよパステルくん…。女の子をおっこどすなんて…。」
「酷いよもう…。」
「酷いのはそちらの方ではないでしょうか?」
声のした方を振り向くと、そこには読者の一人、SUSUKIさんがいた。
「人の料理を冒涜する程味を変えたり、自分の味覚がおかしいのに相手の料理に味がないと言ったり…。」
「え、えと…誰?」
「誰だっていいじゃないですか。」
そう言ってSUSUKIさんは「よっと。」と短く言いながら足元にあった看板を持ち上げた。
そこには、
『読者さんから鉄槌の隕石!〜久慈川りせ、金杉七海へのオシオキ〜(SUSUKIさん案)』
と書かれていた。
「と、言う訳で、時間も惜しいですし、すぐに済ませますね。」
「え、済ませるって何を…!?」
不意に、何かを感じ取った七海が上を見ると、そこには満天の星が並んでいた。
「まさか…。」
「そう、そのまさかよ。…微力ながら、私も力をお貸しいたしますね。」
優雅な声が響き、七海がそちらを向くとそこには、理乃がいた。
「え、理乃、何でここに」
「私だって貴方をぶっ飛ばしたいのよ。丁度この方がメテオを使うそうなので、私も一緒になってやろうかと思って。」
「【メテオスォーム】ぶっ放す気!?」
「建物の強度は一部を除きパステルさんからお墨付きを貰ってるから平気よ。」
そう言って理乃はペンダントを杖に変え、SUSUKIさんも準備を始めた。
「そんな訳で…病院に行って舌、見てもらって来い!」
「無数の流星よ、かの地より来たれ!【メテオスォーム】! 貴方達の為よ! これが終わったら、病院行きなさい!」
SUSUKIさんのおしおきメテオと理乃の【メテオスォーム】の効果が重なり、隕石の量が大変な事になった。
「り、りせ! 逃げるよ!」
「に、逃げるってどこにー!」
勿論これには大パニックになる七海とりせ。二人はとにかく逃げ惑う。
一個、また一個とりせ達ぎりぎりを狙って隕石が直撃する。
「うひゃあっ! 理乃、もうやめてー!」
「やめないわよ。ね、SUSUKIさん。」
「ええ。勿論ですよ。」
泣き言を言う七海だが、それはすぐに否定される。
暫くして、二人のいる地面にひびが入った。
「え、ちょ、地面がもろくなって、ひびが…!」
「だ、ダメ! このままじゃ落ち、きゃああぁぁぁぁっ!!」
ひびの亀裂が大きくなり、そのまま崩れ落ちた地面に飲み込まれ、りせと七海は再び地に落ちていった。
「ふぅ…。SUSUKIさん、ありがとうございました。後は私があの二人を病院に強制連行しておきますのでご安心を。」
「お願いしますね。」
二人はそのまま、そんな会話を続けていた。
※
『読者さんから鉄槌の隕石!』
・SUSUKIさんご本人からおしおきメテオとお言葉(少々手を加え、理乃も参加)
- O・SHI・O・KI☆前半戦 その四 ( No.97 )
- 日時: 2014/10/18 23:19
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: TZ3f2J7J)
その頃の葉月達…。
「まず半分に切ってそのまま横に切ると、半月の形になるから、半月切り。そしてそれを更に半分にすると、イチョウの葉っぱのような形に見えるから、いちょう切りだよ。」
「ふむふむ…。」
どうやら切り方の講義を受けている最中のようだ。
「でもー、切り方って何でこんな種類があるんだろー? にんじんとかだったら適当に折ったり、力で切り刻んで入れてもいいと思うけどなー…。」
「それをしてしまうと、煮え方にムラとかできるだろ? 大きいものと小さいものを同時に煮たら、煮えるまで時間に差が出る。だから折ったり切り刻んだりは生野菜サラダを作る時ぐらいにしような?」
「はーい。」
凪はいつも通りに見えるが、こう見えても結構真剣に聞いていたりした。
■
「ちなみにこのSUSUKIさんは、あれば次回から適応される±要素を提案した方でもある。…本人からのオシオキだけど、言い回しとか大丈夫かなこれ。」
「何でそんなのを気にしてるの?」
SUSUKIさん、言い回しとか変だったらご連絡くださいね。
「しかし、葉月達みんな真剣だな。あ、ネス。由梨の作った大学芋食うか? バター絡めると美味いぞ?」
「食べるー!」
葉月達がいる部屋からやって来たネスが、昴に差し出されたスティック状の大学芋を食べ始める。
甘い蜜と黒胡麻の程よい味わいが口一杯に広がり、ネスは思わず顔を綻ばせた。
「おいしー! もう一本もらっていい!?」
「ああ。好きなだけ取れ。…パステルくん、次は誰が行きそうだ?」
「次はりせかなー? あ、ネス、もうこの辺りで食べるのやめた方がいいかも。」
「何で? 何かあるの?」
ネスが訊ねると、パステルくんは苦い顔をした。
「お食事中に見ると危険なものがこのあと出るの。うん、君の大好きなルイージが死にかけたアレ。」
「うん、わかった。やめる。」
突然ぴたりと食べるのをやめ、口に含んでいたものを一気に飲み込むネス。
「じゃあ、次はりせ単独のオシオキだよー。…昴さん、下手するとこれ、鏡が…。」
「言うな。あいつも相当プッツン来てるから至極当然だが、言ってやるな。キャラ崩壊の可能性は。」
死んだ目を浮かべつつ、次なるオシオキを見守る事にした。
■
「きゃあぁぁぁぁっ!!」
ドスンッ、と二度目の重い衝撃を感じ、りせは痛む尻を撫でながら立ち上がった。
「あ、あれ? みんないないの?」
「みんなは別のオシオキ受けてるからいないよ、りせ。」
聞き覚えのある声を頼りに振り向くと、そこには鏡がいた。
あからさまに怒りの表情で。その側には彼の体に似合わない、大きな銃が置いてあった。
「え、えと、鏡、君…? その、銃は…。」
「クッパおじちゃんに預かってもらったのを返してもらったの。オレがあの事件の時にディディーをフィギュア化させた、ダークキャノンだよ。」
「その銃って鏡君のトラウマ的なものだよね? 何で返してもらったの?」
「え? …決まってるよ。」
鏡は左手に青い焔を宿し、りせを見た。焔に反射して青く映る鏡の顔が怖い。
「りゅーさんの世界のクッパおじちゃんやロイやダークから伝言。」
焔の揺らめきが、勢いが、強くなる。
「“完二が作った料理に何してる?”だって。あっちのクッパおじちゃん達、カンカンだよ?」
「だって辛さが足りな」
「完二は辛いのが苦手なすーさんやりせの料理で舌がおかしくなったパステルくん達に気遣って、あの辛さにしたんだよ? それを…何してくれてんだよー!」
鏡は叫びながら焔を連続で飛ばす。
「きゃあぁぁっ! き、鏡君、やめて! 落ち着いてー!」
「落ち着くも何も、これがりせへのオシオキだもん!」
そう言って鏡はりせの後ろを指差した。
くるりと振り向くと、そこにあった壁には…。
『味覚馬鹿への焔の鉄槌〜久慈川りせへのオシオキ〜(りゅーとさん案)』
と書かれていた。
「み、味覚馬鹿って酷くない!?」
「酷くないよ。だって最高評価を貰った完二の料理をりせはゲテモノ化させたんだよ? みんな怒るよ。」
「だって辛くないんだもん!」
「辛くないからって改悪しないでよ!」
焔を飛ばし終えた鏡は、側にあったダークキャノンを掴んだ。そしてエネルギーを溜め、引き金を引く。
「きゃあぁっ!!」
そのエネルギーはりせの目の前に着弾し、爆発した。
りせは爆風により飛ばされ、転がる。
「痛た…。え、何これ!?」
転がった先には、料理があった。
右から、青い液体とゼリー状の何かが入った鍋、見た目は美味しそうな天ぷらそば、同じく見た目は美味しそうなちゃんぽん、見た感じ普通な塩ラーメン、そして…この世の混沌という混沌のような黄色やら緑やら青やらの色をした、ケキャキャと笑い異臭を放つ謎の物体。
しかもこの物体、時折背中から触手を生やしたり、球体になったり、二足歩行で歩いたりする等、何か色々な意味で性質が悪い。
「」
「りせならその料理、分かるよね? 右から、サム姉のメトロイド入り悪夢味噌ラーメン、パル様の天そば、筋肉達磨馬鹿ゴリラのちゃんぽん、豚魔王の塩ラーメン、そして…ゼル姉のポモドーロ(生トマトを使ったパスタ)だよ。」
「え、でもこの料理の数々って…。」
「四の五の言わずに食べる! あ、大丈夫だよ。鎌鼬の毒ならたっぷりあるから。」
怒りの色を濃くしたかと思えば、ニコッと笑って食べるよう促す鏡。
今の鏡が悪魔に見えるのは気のせいか。それに鏡、ドンキーと豚魔王の扱い。いや、ドンキーは昔カメックババに言われたのを思いだし、遊び半分で使ったのだろうが豚魔王は完全に悪意こもってんな。無理もないけど。
「食べられないなら、オレが食べさせてあげるよ。」
そう言って、鏡が近づく。
そして腰を抜かしたりせに、サムスの味噌ラーメン(の予定だったもの)をレンゲで掬い、りせに向かって差し出した。
「はい、りせ。あーん。」
「ちょ、鏡君、やめ…!」
「あーん。」
なかなか食べようとしないりせの口目掛けて、レンゲを押し込む。
異物を飲み込んだりせは、すぐにバタンと倒れ込んでしまった。
「一撃で仕留められちゃったかー…。むぅ、残りの奴どうしよう…。」
むぅ、と困ったような表情で理乃が用意したエリクシールをりせの口に流し込みながら呟いた。
「パル様の天そば…流し込んでみよっと。」
「やめて鏡君それだけは!」
いつの間にか目を覚ましたのか、りせががぱりと起き上がりながら止めた。
「じゃあ、もう二度と料理は作らない?」
「それは嫌。」
あ、今の一言で鏡に青筋が。
「りせ、ここにあるゲテモノ達みたいなのをね、りせはすーさん達に食べさせたんだよ? それはわかる?」
「私のはゲテモノじゃふむぎゅっ!」
尚も反論するりせに、鏡は躊躇いもなくここに並べられた全部を少しずつ掬ったレンゲの中身を食べさせた。
「…あ、味はなくなるけ」
言葉の途中で、りせはバタンと倒れた。どうやらパルテナの天ぷらそばのお陰で味は消えたようだが、毒までは消えてくれなかったようで、そのまま倒れ込んだ。あ、りせの頭から猫耳が生えてる。どうやら奇跡の効果が出たようだ。
「一撃で仕留められた…。ゲテモノの威力って凄い…。っと、いけない。えーい!」
鏡は気絶しているりせの足元目掛け、ダークキャノンのエネルギーを放った。
狙いは見事的中し、りせの足元に着弾して爆発を起こした。その衝撃で床は崩れ、りせの体は再び落下していった。
「これでよし! …それにしても、パル様の奇跡蕎麦って面白そうだなー。」
『おい鏡! 何考えてる!? って、食うなーっ!』
何と、何を思ったか鏡がパルテナの奇跡蕎麦を食べた! 昴が必死で制止してるにも関わらず!
すると、たらんと垂れた犬耳と尻尾が可愛らしい幼児に変わったではないか!
「わー! ちっちゃくなっちゃったー♪ すーさん! おれ、ちっちゃくなっちゃったー!」
『お願いその姿で跳び跳ねないでー!(可愛すぎて死ぬー!)』
カメラ越しに見ている昴、今頃キュン死してるな…。
※
『味覚馬鹿への焔の鉄槌』
・鏡がりゅーとサイドの辛党の伝言を伝えた後に能力+α(ダークキャノン)
・りゅーとサイドのポイズンクッキング(サムスのラーメンとパルテナのそばとドンキーのちゃんぽんとガノンの裸塩ラーメンとゼルダのポモドーロ)
- O・SHI・O・KI☆前半戦 その五 ( No.98 )
- 日時: 2014/10/18 23:24
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: TZ3f2J7J)
その頃の葉月達…。
「きゃーっ! 料理が爆発したー!」
「火の側で小麦粉振るうからだよ! というか何で小麦粉を振るってるの葉月! 小麦粉は使わないよ!?」
どうやら座学が終わり、実技に移ったようだ。って、葉月が早速粉塵爆発をやらかした。
「平和だねー。平和すぎて何だか料理も上手く行きそうな気がするー。」
「凪! 野菜をまるごといれないでー! 煮えるのに時間かかっちゃうよー!」
次に凪が野菜を切らずにそのまま投入。おい、座学で何聞いていた。何習った。
まったく…。風雅とリンクは平和に…。
「えっと、ここで昆布を取りだし…あっ!」
「あぢゃあぁぁぁっ!!」
「うわあぁぁっ! り、リンクさんごめん! あ、あつうぅぅぅっ!」
行ってるわけなかった。出汁を取り終えた昆布を出そうとしたら滑ったようだ。そしてリンクの顔面に…。
心配した風雅が駆け寄ろうとしたものの、彼の腕が鍋をひっくり返し、熱湯がかかった。
「うわぁ…思ったよりもヒサンクマ…。」
怪我人が出た時の為にいたクマが、カムイを出しながらその光景を眺めていた…。
■
戻って、試食会場…。
「クマをあそこにいさせてよかった。」
「うむ、頑張りは認めるが、台所で大惨事は見たくない。…リンク、大丈夫だろうか。」
「ゼルダの手料理よりマシだろうから大丈夫じゃん?」
そう言う問題か、とネスの言葉に疑問を持つ由梨とジョーカーだが、そこは水に流しておく事に。
「パステルくん、次のオシオキは?」
「次はー…雪子と牡丹と七海だね!」
「腐った奴等へのオシオキか…。嫌な予感しかしないんだが。」
「にゃぐー…。」
『鈴花が妙に張り切っていたそうだ。…何かやらかしそうで怖いのだが。』
不安はあるが、次なるオシオキを見守る事になった。
■
「…ぁぁぁっ!」
ドスンッ! と固い地面に落ちた雪子、牡丹、七海は痛む尻を撫でながら立ち上がった。
「いたた…。もうっ! 二回も落とすなんて酷いよ!」
「あれ、七海ちゃん二回目なんだ。」
「雪子達はまだ一回もないの?」
七海が問うと、牡丹と雪子は頷いた。
「えーっ! 何で私二回もあるの!?」
『当然の結果だ馬鹿。人を殺しかけた荒ぶるクトゥルフを出しておきながらあの裸族には最悪な評価。お前は複数回のオシオキが妥当だ。』
「酷くない破壊魔!」
『どっちがだこの暴力野蛮腐女子!』
スピーカーから聞こえた由梨の妥当な言葉に、七海が喧嘩腰になる。
『七海、黙って頂戴。』
「ハイ。」
が、次にスピーカーから聞こえた昴の声に、七海は一瞬で黙る。女子化した昴に逆らってはならない。
『まずお前らには、目の前にあるテーブルの上に乗せられた料理を食ってもらう。』
そう言われて、一同はテーブルの上を見た。
「うっ…!」
そこにあったのは、りせの時同様、りゅーとさんサイドのゲテモノ共があった。
近くにあったコースターには、小さく、
『腐った女子への同類からの洗礼〜牡丹、天城雪子、金杉七海へのオシオキ〜(りゅーとさん案)』
と書かれていた。が、見ていないようだ。
「こ、これを食べるの…?」
『お前達が俺達に食べさせたものと同じゲテモノだぞ? それが食べられないって事は、自分達の料理が食べられないって言ってるようなものだからな。』
「これはゲテモノだけど、私達のはゲテモノじゃ」
『黙って食べなさい。』
「ハイ。」
再び女子化した昴に言われ、雪子と牡丹は渋々ちゃんぽんを手に取った。そして一口スープをすする。
七海はポモドーロ(沢山の目玉がついた球体状の何か)を手に取り、口にした。
「うっ…。」
牡丹と雪子はあまりの不味さと有毒植物の効果により、どさりと倒れ込む。が…。
「あ、これ見た目アレだけど意外にいける!」
『何いぃぃぃぃっ!?』
『忘れてた。こいつ、物体Xや××料理人の料理、平然と平らげるんだった…。』
あのりゅーとさんの所で猛威を振るったゼルダのポモドーロは、七海にとってはただの美味しい料理のようだ。これには昴だけじゃなくその場にいた全員驚き、七海について思い出した由梨は頭を押さえた。
…お前、舌だけじゃなく胃もアレか?
「七海センパイ、舌だけじゃなくて胃も見てもらった方がいいよ。」
「ほえ? わわっ!」
どこからか聞こえた声に、七海は首を傾げるも、突然伸びた頑丈な蔓草に体の自由を奪われてしまった。
更に気絶している雪子と牡丹にも同じように蔓草が伸び、強制的に立たせた。
「ついでに理乃センパイからのパナシーアボトルを飲ませて、っと…。」
蔓草が巻き付けていたパナシーアボトルを、気絶している二人に飲ませると、すぐに二人は意識を取り戻した。毒状態だけだったので、大して被害はなかったのだろう。
「さて、オシオキはここからが本番だよ。」
「鈴花!? なぜここにいるんですの!?」
「それに、りゅーとさん本人とそっちのピーチも!?」
「みんな、何でここに!? って、蔓草が…。」
声のした正面には、いつの間にか鈴花と、作者のりゅーとさん、そして桃色のドレスを身に纏った、りゅーとさんサイドのピーチがいた。
「蔓草くらい、アマテラスで…!」
「雪子センパイ、ペルソナ出して燃やそうとしても無駄だよ。これは私が烈君対策にと品種改良して炎に強くした、特別製だから。」
「ふふふっ、鈴花ちゃんのたゆまぬ努力の結晶なのね。」
「同じ相手には二度と負けたくないって言うものなのかな? こっちの鈴花は烈とは恋人同士だから、鈴花の事どう思ってるんだろうなー。」
ピーチとりゅーとさんは、鈴花の努力に称賛を送りながら、どこからかシュレッダーと薄い本や写真を取り出した。
「さてと。今までの勝負、あたしも見させてもらったよ。こっち同様に地獄を見た昴さん達には同情するけど…。」
「自覚をしない女子にはお灸を据えないといけないわね。それに七海ちゃん、貴方悠ちゃんの料理を味がしないでバッサリと切り捨てるのは酷いんじゃないかしら?」
「だって味がないんだもん。」
「それは七海センパイの舌が悪いだけ。」
鈴花も、どこからか薄い本や写真を取りだし、シュレッダーに近づけた。
「…ところで三人共、その手に持った薄い本や写真って…。」
「あぁーっ! り、鈴花、その手にある薄い本は…!」
「牡丹の部屋から拝借したよ。」
「ちなみにあたし達が持ってるのは、後で貴方達にあげようと思ってた奴ね。」
「秘蔵のコレクションを廃棄するのは悲しいわ…。」
三人はその秘蔵のコレクションを、惜しみながらシュレッダーに近づけ、そして…。
「あーっ!」
何と、切り刻んだではないか!
「あ、あぁぁ…。」
牡丹達三人は、ショックのあまり気絶してしまったようだ。無理もない、秘蔵のコレクションを躊躇いなく廃棄されたのだから。
それを確認した鈴花は、巨大な大木を生やし、枝を地面に叩きつけさせた。すると、地割れが起き、気絶したままの三人を飲み込んだ。
「…はー。実はこれ、全部由梨センパイや昴さんに用意してもらった偽物だったのにね。」
鈴花はシュレッダーに刻まれた紙を手にした。表紙の紙から下は、白紙だった。写真も昴がノートの力で複製したようだ。
「それにしても、表紙だけとは言え、本物そっくりに描けるなんて凄いわね。由梨ちゃん、同人誌を描く気はない?」
『ない。もう二度とごめんだよ…。』
スピーカー越しに聞こえる由梨の声は、呆れ返っていた。
※
『腐った女子への同類からの洗礼』
・りゅーとサイドのポイズンクッキング(サムスのラーメンとパルテナのそばとドンキーのちゃんぽんとガノンの裸塩ラーメンとゼルダのポモドーロ)
・三人を動けなくし、りゅーととピーチと鈴花が牡丹達のコレクションである薄い本と写真、りゅーととピーチが持つ自慢のコレクションを目の前でシュレッダーで処分するふり
- O・SHI・O・KI☆前半戦 その六 ( No.99 )
- 日時: 2014/10/18 23:29
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: TZ3f2J7J)
その頃の葉月達…。
「ね、関係ない事聞くけど…。」
ある程度完成が見えてきた時、一息つくがてら葉月がリンクを見た。
「リンクさんはゼルダさんと一緒にいるだけで満足派?」
「なっ!? いきなり何だ藪から棒に!」
「深い意味はないんだけど…ただ、ちょっと気になったの。」
「ひ、姫とは…その…えと…。」
「あ、そんな真っ赤になるならいいや。」
自分から聞いておいて、バッサリと興味が失ったかのように会話を終える葉月。ひどす。
「あはは…。凪は直斗と恋人同士なんだよね?」
「んーんー。まだ告白とかはしてないよー。昴さんは付き合っちゃえって言ってるけどー、直斗も探偵の仕事が忙しいしー、僕は僕で昴さんのお手伝いがしたいからー。まぁ、落ち着いたら所帯を持つ気でいるけどねー。直斗にその気があるならー。」
「きっと直斗も快く引き受けそうだね。」
「そうだといいなー。」
ルイージと凪がにこやかに話す横で、風雅と葉月は微笑んでおり、リンクががっくりと項垂れていた。
■
「やっぱり他の作者さんのキャラを使うのは怖い。これでいいのか不安になる。本人とかめっちゃ怖い。」
「いきなりどうしたの? 昴さん。」
お願いそれ今言わないで私。書いてる方の私の気持ちを代弁しないで!
りゅーとさん、変だったら言って下さいね…。
「つか、別に俺の仕事を手伝わなくていいのにな。強制してる訳じゃないし。」
『皆、神の事が好きで、心配だから手伝うのだ。強制されたからではなく、子が親の仕事を手伝うようにな。』
「…。」
昴は紅の言葉に、ふい、とそっぽを向いてしまった。
その顔は、どこか嬉しそうで、目元が潤んでいる気がする。
「…さて、最後は反省してない組全員大集合のオシオキだね。」
「最後は…あぁ、理音からか。」
「あの人からのオシオキ、ボクのやるものよりえげつない気がする。」
「言うな。それは長年一緒にいる俺が一番よく知ってる。」
パステルくんの言葉に遠い目をしながら、昴はラストのオシオキを見守る事になった…。
■
ほぼ気絶したままの状態で落下してきたりせ、雪子、牡丹、七海は受け身をとれずに地面へと落ちる。あ、ちなみにりせには前もって落ちてる最中に鎌鼬の毒とありったけの回復薬を注入しておきました。そのうち目覚めるでしょう。多分。
「…ん…。」
ゆっくりと、体に走る痛みで意識を取り戻す雪子と牡丹。
「うぅ、酷いよ、鈴花ちゃん…。りゅーとさんもピーチさんもだけど…シュレッダーで大事な作品を切り刻むなんて…。」
「血も涙もありませんわ…。ん?」
牡丹は何かに気づいたのか、辺りを見回した。
「牡丹ちゃん、どうしたの?」
「何か、気配がします。何かは分かりませんが…。」
「うーん…。」
雪子と一緒に辺りを見回していると、七海とりせが起きた。
「う…痛た…。」
「うーん…。」
「あ、二人共起きた。」
「りせさん、何か当たりに気配を感じるのですが、カンゼオンで探れませんか?」
「え? わ、わかった。探ってみる。」
牡丹の疑問に答えるべく、りせはカンゼオンを出し、辺りを探った。
「…ん、確かに奥に何かいる。結構多いよ。…だんだん近づいてくる。」
「一体何なのでしょうか…。」
訳が分からず、首をひねる一同。迫り来る謎の何かの正体が分からず、恐怖ばかりが募る。
「だんだん近づいてくるのは間違いないんだけど…ごめん、正体までは掴めなかった。シャドウじゃない事は確かだけど…モンスターでもないと思う。」
「一体何なの…?」
そんな話をしていると、カチャン、カチャンと音を立てながら何かが近づいてくる。
全員、臨戦態勢を取りながら、近づいてくるのを待った。
「…来るよ!」
りせの合図と共に現れたのは、皿の上に何も乗っていないオムライスや何の変哲もないマロンポタージュや醤油ラーメン。紫色の液体が入った鍋(シチューやマロンポタージュ)や根っこが入った味噌ラーメン。赤いオムライスやマロンポタージュやカレーうどん。色が濃いエビチリや蠢く謎の物体。
ここまで書けばお分かりだろう。襲い来る謎の物体の正体。それは…。
「あ、あれって、私達の料理!?」
そう、襲ってきているのはりせ達自身が今までに作った料理だった。皿や鍋に盛られたまま、ピョンピョン跳んでこちらに近づいてくる。
その料理達の一つに、
『自業自得の応酬〜牡丹、久慈川りせ、金杉七海、天城雪子へのオシオキ〜(理音案)』
と書かれていたが、恐らく誰も見ていないだろう。
「逃げ場もないし…戦うしかないよね!」
七海が迫り来るりせのオムライスを殴りつけ、地面へと落下させた。
形は崩れたが、プルプルと震えてから、また七海達に向かって襲い掛かる。殴っても、蹴っても、形が崩されても、何度でも、何度でも…。
「ちょっ、こいつら不死身!?」
「不死身って言うか、元から生きてないって言うか…とにかく、倒せないみたい!」
「そんなのありですの!? って、きゃあっ!」
牡丹が小さく悲鳴をあげ、服をパタパタとさせる。どうやら服の中に誰かの料理が入ったようだ。
「うぅ…何だかヒリヒリしますわ…。」
「きっと、りせちゃんのものの何かが入っちゃったんだね…。」
「いつまで耐えてればいいのー!?」
りせの叫び声は、誰にも届かなかった。
※
『自業自得の応酬』
・自分の作った料理達に襲われる
・しかも料理達は形は崩れるも不死身な為、倒せない
・その状態で一夜を過ごしてもらう(←ここ重要。)
- O・SHI・O・KI☆前半戦 その七 ( No.100 )
- 日時: 2014/10/18 23:34
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: TZ3f2J7J)
「…。」
理音のえげつないオシオキに、全員黙り込んだ。
「酷いな、アンタの親友…。」
「お願いだ、由梨。何も言わないでくれ。多分一番ショックなの、あっちだから。」
「絶対あの人も顔を覆ってどうしようと思いながら書いてるだろうな…。」
由梨ちゃん、当たり。…ごめん、でもこれでもマシになった方なんだよ? 送られてきた時はもっと酷かったの。えげつなかったの。
「…あっ、葉月達の方、完成したみたいだよ。」
「もう三時間経ったのか。」
「相当深くまで掘っておいたからねー。辿り着くまでに時間がかかっちゃうし、三時間ぐらい余裕で経つのが早いかも。」
どうやらパステルくんは相当地中深くまで掘ったようだ。それを一週間足らずでやり遂げるこの鼠、侮れん。
「じゃあ、早速持ってきてもらうか。」
「もう持ってきて、扉前に待機してるみたい。入っていいよー!」
パステルくんが合図をすると、扉が開き、不安そうな表情で料理が盛られたお盆を乗せた台を持つ葉月達がいた。
「じゃあ、まずは葉月からにしようかな。」
「う、うん…。」
葉月は不安そうな面持ちで、ゆっくりと一歩を踏み出す。
「大丈夫だよ、葉月。今回は爆発させても作り直す余裕あったから、平気だよ。それに、ちゃんとレシピ通りやったじゃないか。」
「う、うん…。」
ルイージの励ましもあり、葉月は台を押す手に力を込めた。そして昴達のいる机の前に辿り着くと、丁寧に配膳をした。
「…いただきます。」
三人と二匹は、手を合わせて食べ始める。
暫く無言で食べていたが、完食すると同時に由梨が口を開いた。
「…出汁のとり方が甘い。葉物野菜煮過ぎ。肉じゃがも芋がまだ中心まで煮えてない。」
「うぅ…やっぱり厳しい評価するんじゃん…。」
ズタボロに言われた葉月は落ち込んでしまった。
「…けど。」
由梨はそんな葉月の頭を、ポンポンと撫でた。
「瓦礫入れない分、マシにはなった。今のお前へなら評価は二から三はやれるかな。…葉月は狩猟の腕はいいし、特に猪とか熊の目利きはいいんだから、それを自分で料理できるようになれば、立派に自給自足できるんじゃないか? まぁ、今のお前だったらアタシも理乃も、ちょっとは料理を教えてやるよ。」
「…! あ、ありがと、由梨! 私、もっと頑張るね!」
彼女なりの励まし方に気が付いたのか、葉月は大いに喜んだ。
「次、凪。」
「はーい。」
凪はいつものように飄々と料理を運ぶ。
見た目も香りも申し分ない肉じゃがと味噌汁が、三人と二匹の前に並ぶ。
「いただきます。」
再度手を合わせて食べ始める。
ごく普通の味噌汁と肉じゃがの味わいが、口に広がった。完食は容易に出来た。
「…なぁ、凪。お前これくらい作れるんだったら即行で料理だけは当番に組み込んでいいか? 余計な事をしなければお前三は普通に狙えたぞ?」
完食後、昴がそう言う。そう、これは遊びこそないがきちっとレシピ通りに作られている為、普通に美味しいのだ。
「それ、僕も思ったんだよ…。凪って手順はしっかり覚えているから、飲み込みは早いんだけど…何か、どこか抜けているというかその抜け方で変な失敗をもたらしちゃうだけって言うか…。でも、その変な失敗もメシマズになるかちょっとの失敗になるかって言う…。」
「凪って、何か掴めないよな、うん。ゴメン、ルイージ。何か色々苦労かけた。」
「凪、明日から我と一緒に料理の特訓をするか…? 何だか今のお前ならば、すんなりと教えられそうな気がする。」
「うん、やるー。」
ほえーんといつもの調子でジョーカーの言葉に返す凪。…まぁ、でもこれで食事の面では人手が増えたと見ていいだろう。多分。
「最後は風雅か。(あれ? 風雅軽く泣いてないか? 何か凄い嫌な予感が…。)」
「う、うん…。」
風雅は不安そうに台を押し、料理を昴達の目の前に置く。
…きっちりと材料は切られているのに、こげ茶色をした肉じゃがと、唐辛子がたっぷりと浮いている味噌汁を。
「」
これを見た昴達、勿論絶句。
「…言い訳をさせてもらっていいか?」
「何となく想像付くけど、話してくれ、リンク。」
料理を見て何があったかは予測が付くが、リンクに話をするよう促す昴。
「えっと、最初は普通に作れていたんだ。うん、切る所までは完璧だった。だけど、味付けの最中に…事件は起こったんだ。」
「…ちょっと味噌汁に取り掛かっている最中に、醤油と水が少なかったのか、空焚きしている状態になっちゃって…。焦げ臭い臭いに気づいた時にはこうなってた。」
「そこで慌てた風雅はせっかくうまく作れていた味噌汁の上にあった棚に手をぶつけ、その衝撃で唐辛子の入った瓶がうまい具合に蓋が取れて落下して…時間が来たんだ。」
「風雅、ボク、君の運の悪さはもう笑えないクラスなんだけど。」
様々な相乗効果で、ここまでの失敗を引き起こしたようだ。風雅、君はもう少し落ち着け。
「…い、いただきます。」
昴達は気乗りしない様子で、食べ始めた。…が。
「ごめん、味噌汁無理。」
即行で辛いものが苦手な昴は味噌汁を飲むのを断念した。
「悪い、風雅。全部が全部お前のせいじゃないと分かってる。お前は頑張ったのも認める。けど、ちょっとほっぺたつねっていい?」
「やめて由梨先輩。頑張りを認めてくれたのはありがたいけどやめて下さい。」
和食については妥協を許さない由梨も流石に頑張りは認めるがこれには怒りを抱いたようだ。…頑張りを認めただけでもえらいか。
「風雅は…うん、何か不要な物がある状態で料理しない方がいいかもね…。」
「にゃぐー…。」
『にゃぐわもそれには同意だそうだ。』
「うん…。取り合えず必要最低限の物がある状態で料理する…。」
それでも失敗しそうな気がするが…。風雅の改善点と改善策が分かっただけでもよしとしよう。うん。
「そんな訳で、今回のオシオキは全部終わりだな。」
「あれ? 変態裸族にはやらないのか?」
「…それは明日♪」
あ、昴がすっごくいい笑顔を浮かべている…。これ相当キレてる。
とにもかくにも、オシオキ一日目は終了した。
え? 反省してないゲテモノ組? あぁ、あれは…そのまま一晩過ごしてもらいます。
続
- O・SHI・O・KI☆前半戦 後書き ( No.101 )
- 日時: 2014/10/18 23:38
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: TZ3f2J7J)
後書き de 雑談
昴
「ちなみに、今回はここにりせと鏡と理乃はいない。うん、りせは言わずもがな、理音のオシオキで、他二人は翌日のオシオキを見せたくないから。とりあえず、長くなったし、まずはここまでだ。SUSUKIさん、りゅーとさん、変な所あったら言ってください。あ、理音へは既に一回これ見せてるから大丈夫だろう。と、思う。」
私
—ひっさしぶりに長く書いた気がするよ。お陰で裸族と分けちゃったし。あ、次のオシオキも二日間ぐらいかかるかも…。
風花
「寄せられたオシオキ案、凄かったですからね…。」
由梨
「だな…。すー姉、よく纏めたよ…。」
私
—大変だったけど、結構楽しかったな。こんな方法もあるんだって勉強になった。機会があればまた募集企画とかやってみようかな…。
由梨
「機会があれば、な。」
私
—…後書きでも長くするのもアレだし、ここまでにしよっか。
昴
「そうだな。それじゃ、また。」
■
感想OKですー。長かった…。