二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: オリ+αによるボカロ替え歌小説【お知らせあり】 ( No.54 )
日時: 2016/02/27 22:05
名前: 涼月 ◆eVf1G29mRc (ID: mVHy..WT)
参照: やっぱりNLは最高だぜっ!!

【初めての恋が終わる時/恵美】
初めてで、最後の“キス”は。
錆びた鉄の……血の味がした。
まるで、漫画か小説みたいな恋。
見計らったように、終演をつげる弔辞の鐘がなった──

その日はとても寒くて。
冷たい冬の風が頬をかすめた。
「──寒いわね」
吐いた息で両手をこすった。
こんなことがなければ、あんたは隣にいたのかな。
「……バカ」
悲しげな顔で庭を振り向く。
いるのは、血に濡れた動かないあんたで……
石灯篭がほんのりと照らし、雰囲気を変えた。
その近くにあった雪だるま。
「下手くそねぇ」
呟いて、あんたに寄り添った。
どうしても言えなかった、最後まで。
この気持ち、建前で隠し続けるって決めた。
だって、前から決めてたこと。これでいいの。
過去に戻れないなら、振り向かないから。
ありがと、さよなら。
血の色に濡れた片想い。
足を止めたら思い出してしまうから。
「泣いたり、しないわよ……」
そう呟いた途端にふわりと、舞い降りる粉雪。
触れたら溶けて消えてしまった。

気持ちを落ち着けるため。
そんな言い訳で現代に一度戻ってきた。
どうせ舞台はもう少しで終わるのだから。
それを言い訳にするように、駅前に突っ立ってみた。
カップルと思われる男女が、はしゃいでるのが見える。
「ほら見てたっくん、初雪だよ!」
あんたが相手だったら、私もはしゃげたのかしら。
バッグに突っ込んでた手編みのマフラーを握った。
「……下手くそ」
あの時は口癖のように呟いてしまったけど、このマフラーは手も込んでいてとても上手だ。
どうして、褒められなかったんだろ。
本音と全く逆のこと、あまのじゃくに言っちゃったから?
別に思い出になるなら構わなかった?
ほんとに、それで……
「よかったの?」
何故だか、良くない気がして。
もう一度、あんたのいる2205年に戻ってみた。
いつか、こんな時がくること。
分かってたはず。なのに。
「サヨナラ……なの?」
目元が濡れていく。
泣かないって言ったのに。
もうすぐ終演がくるのに。
その言葉は今になって、私を苦しめた。
「御手杵……えぅっ……」

素直になりたい。
どれだけ願ったのかな。
あんたに、最後になにか言って欲しくて手を握ったけど。
その手は血に濡れるだけ。
ねえ、ねえ。
教えてよ、御手杵!
「サヨナラって、どういうこと……?」
軽く、唇をつけてみた。
それは、血の味。
何も言ってくれないけど、伝われば…
同時に鳴る弔辞の鐘。
そうだ、もう終わらせなきゃ。
わかってる、もちろん。
あんたが優しいことだって知ってる。
だから。
「……この手、離すわよ?」
出会えて、よかった。
そうやって手を離そうとしたのに。

「えっ…」
まるで、意志があるかのように『君』は手を離してくれない。
そっか、そっか。
「バカ……ね……」
神様、お願い。
今だけでいいの。私を素直にして。
「御手杵、あのね──」
言いかけた感情。
同時に消え始める世界。
……泣いていいかな、今だけは。
言葉はもういらない。
「だから、あと少し……最後まで側にいてよ……」
泣きながら、手を強く握った。

──拝啓、次の世界に生きる私へ。
そこにはどんな私がいて、どんな御手杵がいますか?
変わってませんか?
今度こそ、守ってあげてください。