二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: オリ+αによるボカロ替え歌小説【手杵の槍執筆中】 ( No.59 )
日時: 2016/04/02 11:11
名前: 涼月 ◆eVf1G29mRc (ID: hsEmXbdB)

【手杵の槍/御手杵】

鉄が打たれる音で目が覚めた。
頭の痛み、どうやらぶつけたらしい。
「ルイ!きたぜ!御手杵だ!」
鮮やかに吹き抜ける、春風と歓声……
ここは、現世?
今、ここにきたということは。
俺は、今日からまた戦うことが出来るのか──。

…そう、思ったはずなんだけど。
俺は何故か今畑を耕している。
「いやー、たっぷり休んだ!」
「っ、たくぅ!鶯丸さん!仕事しろよなぁ!」
せめて戦に出して欲しい。
耕すことなんかより、突く方が得意なんだから。
手合わせの訓練だって。
「なんだ御手杵?全然当てられてねえじゃねえか」
「訓練じゃ本気出せないんだよっ!」
訓練よりも、戦場を駆け抜けていたい。
俺は、刺すことにしか能がないから。
装備は重くなければなんでもいいし、倉庫に仕舞いこまれなければそれでいいさ。
ただ、出番がないのはこの身に堪える。
まだ強くもない手杵の槍は春風に揺られて。
今も昔も変わらずに行列の先頭に立っている。
そんな俺でも、活躍する事はあるらしくて。
「……俺が一番でいいのか?」
「いいに決まってるでしょ」
…誉、の勲章。
進むか。
「雪が降る前に」

と、まあ本丸に帰還したところで俺は思った。
「絶対に主は槍の使い道を間違えてる!なあ蜻蛉切!?」
「まあいいではないか」
「俺は馬の世話苦手なんだよ!」
主、手合わせがしたいとかいったら変えてくれねえか?

三名槍とか。
肩身が狭くなるばかりで。
逸話も少ない。
そのうえぱっとしない……

「御手杵、あんた大丈夫!?その傷で……」
「ああ、大丈夫。手入れすれば直るよ」
こんなの錆のうちに入らないし。
「戦に出るなら、こういうこともあるって」
そう、手入れ部屋に入って。
またあの変な夢を見た。
『御手杵は!?御手杵はどこにある!?』
俺を探す声、何かが割れて爆発する音。
薄々こうなる気はしてた?
いや、そんなこと……
そんなこと!

「他の二本にゃ負けられないからなぁっ!」」
手杵の槍は、雪道を歩く。
突き刺す敵がいるんだろ?
勝つべき戦があるんだろ?
「針の穴を通すが如くっ!」
ああ、この状況。

「俺の間合いだな——」

手杵の槍を、本丸に近い春空の下に担いで。
今も昔も変わらずに行列の先頭に立って。
「あ、御手杵」
「ん、恵美……なんだ、これ?」
「あ、あんたが戦果あげたっていうからつく……じゃない、一番戦果上げたのに渡すって奴だから仕方なくあんたにあげてるの」
「……俺が、一番でいい、のか?」
「いいに決まってんでしょ!早く受け取れ、バカ!」
「おう……じゃ、帰るか」

「雨を呼ぶ前に」