二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ボカロ自己解釈小説【手杵の槍更新】 ( No.60 )
日時: 2016/04/04 14:10
名前: 涼月 ◆eVf1G29mRc (ID: 8C47jR.4)

二部作ー!

【小学生と傭兵/三川青葉】
変な人たちに連れてこられて、時間がたって。
いつからここにいるのか、青葉はわからない。
「……那珂さん、大丈夫ですか?」
吐くのに疲れて、そのまま眠ってしまったアイドル。
反抗して扉の向こうに行ってしまったあの子は大丈夫ですかね。
白い、古びた部屋で苦いお菓子を食べながら。
外の世界にあこがれた。

戻ってきたあの子は、目を輝かせてこういう。
「いつか、外に出てあの道を歩いた先にはきっとみんなが待ってくれてるよ。私は信じてる」
ただ、青葉はそっとうなずいた。
だって、
「恵美さん、あれは壁に描かれた絵なんですよ」
なんて言えないから。

いいですよ、いいですよ。
被害者の気持ちなんかわからなくたって。
誰も助けに来てくれなくたって。
壊れたカメラに手を伸ばした。
さほど酷い壊れ方じゃなかったから、直してそれを使う。
青葉の世界が終わるまで、これにきちんと思い出を刻んでおこう。

夜……だと思う。
目を覚ましたアイドルは、寒そうにしてたので。
「那珂さん、使います?」
自分の毛布を貸した。
そのとき、うれしそうな笑顔を写真に撮った。
『彼ら』に殴られるのがいやだったあの子の代わりに私は前に出る。
受け流そうとして大失敗。
「青葉……?あんた、大丈夫なの?」
「ええ、はい。あれですよあれ!名誉の負傷です!」
その傷も、写真に撮った。
24時間閉塞空間。鳩時計のチクタクなる音が、やけに耳に張り付いていた。

二人は、置いてあった本を見て声を合わせてこういった。
「きっとこの絵本みたいに、神様が私らを外に出してくれるよ!」
どうも嬉しそうだったので、青葉もそっと微笑んだ。
だって、
「青葉たちは、もう人間として扱われていないんだから無理ですよ」
なんていえないから。

いいですよ、いいですよ。
もう、薄々気がついてるんですから。
誰も探していないんでしょう?
殴られた顔が血の色で染まってもいいんですよ。
嗚呼、扉越しから『彼ら』の蔑む視線。
諦めろと言いたげな視線をずっと見ていた。

彼らの、声が聞こえる。
「どういう事だ!?貴様、裏切る気か!?……そのうちわかるというのは、どういう……」
突然、部屋が暗くなる。
「ひっ」
「あ、青葉……」
怖がりな友達をよそに。
青葉はじっと目を凝らした。

響く銃声、まるで海戦で軍艦が砲を発するような音。
ゆれる衝撃に堪えられず、そのまま倒れる。
ひび割れはじめる壁の隙間から、弾薬の匂い。
泣き叫ぶ仲間に埋もれながら。
崩れる、あの絵をぼうっと見た。

「こちら霧谷……三名とも無事。保護に当たります」
いいんですか?
いいんですか?
外の空気、吸ってもいいんですか?
「ああ、——さん。さっきの電話の返事ですけど」
あの、薄暗い蛍光灯じゃない、太陽の光を浴びてもいいんですか?
「裏切るも何も、あんたらに味方したつもりないんで」
ああ、崩れた壁の向こうに。
「三川、加賀、川内。1週間ずっと探していたぞ。さあ、帰るか」
冷たく笑う神様を見た。