二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: けいおん!〜今という刻〜 ( No.6 )
日時: 2014/11/03 12:28
名前: クリーム (ID: nWEjYf1F)

 あれからかれこれ1週間。
 俺は放課後、一枚の白紙と相対しながらうんうんと唸っていた。

『どうしたものか……っていうか、何で強制なんだ?』

 俺が悩んでいたのは、入部したい部活に関して。

 この学校ではどうやら、後に参加するにしろしないにしろ、とにかく何らかの部活への入部が大前提且つ強制的らしい。
 その名目は、将来大学に進むにしても自営業を設立するにしても、部活という実績が大いに役に立つからだそうだ。
 そして入部に至るまでの手立てとしては、まず入学してから1週間かそこらで各部を見学してまわり、その間に入部したい部活を選定、後に入部希望用紙にその旨を記入して担任とその部の部長へ提出——とのことだ。

 俺はそれを聞いた途端、今まで生きてきた中で最大の悩みにぶち当たってしまったような気がした。
 何故なら中学の頃に考えていた進路は、姉貴がこの高校に通っている、偏差値が最も適正、通学距離に何の問題もないなどの理由で特に深く悩むこともなかったし、さらに中学校の時分、俺は帰宅部所属であった。
 その上何らかのボランティアを昔から続けてやってきたわけでもないし、習い事もやってなければ塾にも通っていない。なので、こういったことを考えるのはどうも苦手なのである。
 いっそこうなったら新しい部活を設立するのもいいかもしれないが、そうすると俺が必然的に部長になるのでやめた。部長とか委員長とか、そういう重い責任はなるべく背負い込みたくないからである。

「えっ!? まだ決めてなかったの!?」
「?」

 突然、遠くでもなければ近くでもない距離から、涼やかな声をした女子生徒の呆れを多分に含んだ怒声が聞こえてきた。
 声のしたほうを振り返ってみると、件のあの子"平沢唯"と、その友達らしい人物"真鍋和"が相対している光景が見えた。
 そういえばあの真鍋っていう子、確か生徒会の役員になったんだっけか。まあいかにも真面目そうな雰囲気醸し出してるし、ここ数日の授業でも、彼女は他人から教わるよりも教えることの方が圧倒的に多い。適任と言えば適任だろうな。

「もう学校始まってから1週間も経ってるよ?」
「ほえぇ〜でもでも、私運動音痴だし、文化系のクラブもよくわかんないし……」
「はぁ……こうやってニートが出来上がっていくのね……」

 全くの正論である。
 先ほどからあの2人の会話を聞きながら、俺も部活を決めあぐねているのだが。
 真鍋はともかく、平沢に関しては何というか、想像通りのキャラ像である。天然という言葉が一番あっているだろうか。

「っ! 部活やってないだけでニート……!?」
「……振り返ってみると、唯って今まで何の部活もやってこなかったのよね」
「……!」

 その台詞、一応俺にも当てはまるんだよな。
 俺は視界を自分の机の上にある白紙へと戻した。

「とにかく、早いうちに決めること。いいわね?」
「はーい……」

 会話は終了したらしい。
 が、真鍋の足音がこちらへと向かっているのは、多分気のせいじゃないと思うんだ。
 そしたら。

「貴方も部活、決めてないみたいね?」

 あろうことか、真鍋は俺に話しかけてきた。
 まあある意味予想通りだったから、一応抗弁の余地はあるのだが。

「……確か平沢だっけ? 俺もあの子と同じで、今まで何の活動もしてこなかったんだよなー」

 頭を抱える俺に真鍋の表情は窺えないが、感じる目線が、突然冷ややかなものへと変わったのは分かった。

「何、盗み聞きしてたの?」
「いやいやいや、今この教室人少ないし? ただ単に耳に入ってきただけだし!」
「あらそう。ごめんなさいね」

 平謝りのように見えるが、まあいい。盗み聞きは不本意ながらやってしまったわけだし。

「……それなら、唯と一緒に部活動決めてみたらどう?」
「はい?」

 思いついたような表情で何を言うかと思えば。
 っていうか待て。何故俺が平沢と共に部活を決めなくちゃいけないんだ。

「クラスメイトと同じ部活なら、多少は気が和らぐと思うけど」

 ——問うて返ってきた答えは、全くの正論である。
 確かに、右も左も分からない、その上それなりに親しい知り合いが数えるほどしかいない現状に置いて、クラスメイトという存在は非常に大きい。それなら部活を決めあぐねている者同士、いっそ同じそれに参加してしまうのも1つの手といえよう。
 だが、俺のポジションはどちらかというと、頼られる側よりも頼る側。第一印象と先ほどの会話からして、如何にも頼りなさそうな平沢さんと手を組んで同じ部活に参加するというのは些か抵抗がある。
 別段、彼女の事が嫌いというわけではない。ただ色々と不安なだけだ。

「ねーねーお願い健太君!」
「うわっ!?」

 あれだこれだと考えていたら、いつの間にかボールペンと入部希望容姿を持った平沢が俺の目の前にいた。
 差し詰め、俺たちの会話を聞きつけてきたのだろう。
 そしてどこか縋るような彼女の眼差しを見たところ、どうやらよっぽど悩んでいるらしい。

 ——こういうときに俺の"お人好し"という性格が災いする。自覚はしているし面倒事は嫌いなのだが、困っている人を見ると何故か俺は放っておけないのだ。最早選択の余地はない。

「しょうがないな、じゃあ一緒に考えようか?」
「ありがと〜!」

 一先ず丸く収まった——と言っていいのかは分からないが、成り行き(?)から俺は平沢と共に部活を考えることにした。



 To be continued...



 原作のメンバーと健太君を正式に接触させました。
 相変わらずお淑やかでクールな和ちゃんと天然ほんわかガールの唯ちゃん。この時点で既にキャラ像が濃いので、影もキャラ像も薄めな健太君と接触させるに当たり、会話内容をどうしようか結構迷いました。

「ハックション!」by健太

 この辺りからストーリーに色々な改造が施されていきますが、道筋はあくまでも原作どおりですのでご安心を。
 次回もまた時系列が飛びますのでご注意下さい!(黙