二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第一章:飛翔の暴龍/流星の悪龍 ( No.1 )
日時: 2014/12/17 00:08
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ---------どーする? とりあえず敵のパスは-------

ポケットモンスター、縮めてポケモン。

 ---------あ、やべ、これガチな奴だわ。

 ボール大にサイズを縮小できる不思議な生命体である。

 ---------とりあえず、メタグロスが怖くてドククラゲは出て来れない、はず。

 そして、ポケモンとポケモンを戦わせるポケモンバトル。

 ---------げっ、残りじゅーびょー、急げ、これで決定ボタンポチッ、とな。

 それが、とても白熱し、互いの絆を深める戦いであるのは-----------ゲームの中の設定だけではなかった。

「や、やっと決まった……」

 速山 翼(ハヤマ・ツバサ)は開幕でピンチだった。目の前の少女は重たそうな瞼に隠れた瞳を苛立ち気に向けながら、溜息を小さくついていた。
 やっとか、と言わんばかりに。
 翼が初っ端から緊張していたのは、何も此処が大会という場だから、ではない。
 何せこの大会自体はそこら辺であるような小さなもの。この程度の規模ならもう慣れた。
 ちなみにこの大会で皆が持ってきているのは発売されて結構経ち、今は4月だがポケットモンスターX・Yである。
 しかし、相手が悪い。
 別に見も知らずの相手ならば怖くは無い。
 だが、目の前に居たのは--------

「---------静谷、お前見たいな”秀才”が何でこんな場所にいるんだ」

 2面ゲーム機・3DSのボタンを指にあわせて翼は訝しげに言った。静谷、と呼ばれた少女は何も答えない。
 クラスメイト、いや同級生? 単に学年が同じだけか。
 しかし、彼女と口を利いたことは無い。彼女自身、社交的なタイプではなく、周りと関わることも少ないからだ。
 が、そんなことは関係ない。
 問題は、彼女の特性というか、特徴だった。
 日本人形のような黒髪にカチューシャが似合う小柄の美少女だから、という理由などではない。
 彼女は、中学2年生の割に人より一回り頭が良い、つまり優等生なのである。
 学校の成績は体育以外は全て5か悪くて4という程。テストで学年1位を取るなんてのは日常茶飯事だった。
 そんなに頭が良いのだから、家でも勉強してばっかなんだろうなー、と思っていました。
 違いました。
 ゲームの大会に出ていて、しかも目の前に居るし。
 対して翼はと言うと、成績はほとんど3。運動も普通だし、別に日常で困ることは1つも無い。
 1つも無いのだが、これといって特別な長所が無いのが彼の悩みだった。
 さて、話を戻す。最初は静谷を見て彼も見間違い、人違いかと思ったが、そんなことはなかった。
 そしてこの試合、俗に6350と呼ばれるルールで、レベル50以上のポケモンを自動的にレベル50にしたパーティ6匹を見せ合ってその中から3匹を選出する、フラットルールというもの。もしかしたら、殿堂入りしたまんまのパーティじゃね? とワンチャンス勝手に仕掛けたが、それは打ち砕かれる。はっきり言ってガチだった。
 まず、特性・天の恵みでエアスラ怯みゲームを仕掛ける害悪トゲキッス。
 次に、特性・収穫で何度でもオボンの実で回復し続けるゾンビ・オーロット。
 そして地味ではあるが高い耐久の持ち主であるドククラゲ。
 高い素早さから膝で突撃してくるコジョンド。
 じゃれつかれたら殺される(メガ)クチート。
 最後に高い素早さと特攻の持ち主である大正義600属の悪龍・サザンドラだった。
 うわあ、ガッチガチじゃん。どっからどう見ても初心者の構築じゃないじゃん。
 だが、もしかしたら、というワンチャンがある。彼女が構築だけの初心者ならば。読みが甘い初心者ならば、まだ勝てる可能性はある。
 秀才だからといって、ゲームも強いとは限らないのだ。
 こっちのパーティだって別に弱いポケモンで組んでいるわけではない。
 ゲッコウガ、サンダース、ガルーラ、ファイアロー、メタグロスにボーマンダ。と、こんな感じだ。
 大丈夫、多分勝てる。
 翼は一回戦で出オチなんて無いことを祈り、目の前の戦いに目を向けた。

 -----------バトル、開始だ!!

 こちらの初手は速くて可愛いサンダース。メガライボルトというライバルが出たものの、補助技の強さで活躍が期待できるイーブイの進化系。
 一方の相手は、コジョンドだった。
 まずった。トゲキッスが怖すぎて初手にこれを置いたのだが、初手はファイアローが良かったか、と後悔する。
 だが、ファイアローとボーマンダが見えていてわざわざコジョンドを出すとは思いもしなかったのだ。
 
 -----------サンダースは特防は高いが、防御は脆い。相手は猫騙しを撃ってくるだろうから、そのスリップダメージを狙ってファイアローに交換する!
 
 ここでサンダースは捨てられない。
 ファイアローの持ち物はゴツゴツメット。高い速さから鬼火を打って相手を火傷にすれば、もう4倍弱点の岩技を食らっても死ななくなる。
 これで有利な体面に持ち込めると思った。
 しかし、次の瞬間だった。
 
「……甘い」

 彼女の囁きのような声が刺さるように翼の胸へ襲い掛かる。
 そして、ぐさり、とファイアローの方に刺さったのは-----------岩の刃だった。

 ファイアロー:残りHP0% KO

 しばらく、唖然としていた。
 ”交代読み”。
 静谷は翼がファイアローに交代することを読んでコジョンドの技選択を”ストーンエッジ”にしたのだ。
 10万ボルトで突っ張って来る可能性も無くはなかったというのに。いや、交代していなくてもダメージがかなりサンダースに入っていたはずではあるが。

「くっ、まずい! 最初っから崩されるなんて!」

 ---------次の行動だが、サンダースを出すか。相手はコジョンドでとんぼ返りor跳び膝蹴りのはずだから、ボルトチェンジでこいつに交代だ! 
 サンダースを繰り出した翼の行動は既に決まっていた。
 ---------よし、バックだサンダース! そして行くぜ、相棒・ボーマンダ!
 流石に、飛行2匹の選出は読めないはず。威嚇が入っていれば、万が一のエッジも耐える、多分。という希望的観測の元、サンダースは電気を纏ってコジョンドに突撃する。

 コジョンド:HP残り70%弱

「よし、行くぜ相棒!」

 繰り出されたのはドラゴンポケモン・ボーマンダ。その火力と素早さは魅力的だが、一線を張っているのは同じドラゴンのガブリアス。
 しかし、それでも龍の舞を積んだ後の火力も驚異的だ。
 もっとも、積めれば、という話だが。
 コジョンドの選択もとんぼ返りだった。
 威嚇と効果いまひとつで雀の涙程度のダメージしか入っていないが。

「……時間の無駄。とっとと終わらせる」

 現れたのは------------悪龍・サザンドラだった。タイプも悪・ドラゴンとまさにそのまんま。そして高い特攻から放たれる流星群はあらゆる敵を焼き尽くす。
 しかし、素早さだけならばボーマンダの方が普通は上のはず。
 普通ならば。
 翼は分かっていた。この状況で何故静谷がサザンドラを出してきたのかが。

 -----------こいつ、拘りスカーフを持っていやがる!!

 すかさず、サンダースに交換する翼。しかし、流星群は容赦なく降り注いだ。

 サンダース:残りHP30%弱。

「HPに全振りしてる、か。でもお終い」

 安定行動か、サザンドラを引っ込める静谷。
 現れたのはコジョンドだった。特性・再生力の効果でさきほど受けたダメージもほぼ回復している。

「く、くそっ!!」

 10万ボルトがコジョンドに入った。しかし、ダメージはたったの50%程度。
 そして------コジョンドのとんぼ返りが炸裂した。

 サンダース:残りHP0% KO

 --------ま、まずい、これは技外しワンチャンでもなければ、勝てねえ、だけどまだ、勝機は0%じゃねえ!!

 翼は焦りを感じた。だが、ラス1対面はさっきのとんぼ返りで再び場に現れたサザンドラ、そしてこちらはボーマンダ。
 はっきり言って絶望的だった。

「つまんない」

 それだけを告げ、目の前の少女の選択は唯1つ。

 ---------流星群

 次の瞬間、隕石がボーマンダに降り注ぐ。
 結果は明らかだった。
 ボーマンダが倒れると同時に翼の敗北が確定したのだ。

「---------こんな駄龍と戦わされたサザンドラが可哀想」

 辛辣な彼女の言葉と共に。