二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第一章:飛翔の暴龍/流星の悪龍 ( No.2 )
- 日時: 2014/12/17 00:32
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
努力値・種族値・個体値。この3つの数値を理解でき、ポケモン廃人ロードを歩んでいる人間がこの世に何人居るだろうか。
自分は少なくとも理解はできていると思う。んでもってポケモン廃人だと思う。by 速山 翼。
なのに、昨日の戦いっぷりは何だ、一回戦敗退とかどこの弱キャラですか、この野郎、とずーんと圧し掛かる暗い気持ちに翼は耐えていたのだった。
今日も学校では机に突っ伏したまま。月曜ブルー症候群に掛かってしまったらしい。
昨日、優勝したにも関わらず無表情のままだった彼女を思い出す。
--------とんでもなく強いのか、あるいは俺が弱いのか。
いや、両方だろう、と。
そう考えると余計気が重くなる。
新しいクラスにもそろそろ慣れなければ。
がくり、と無気力に倒れたまま彼はうとうとと春の陽気なぽかぽかとした暖かさに身を委ねて、夢の世界へ----------
「ねえ、あそこで寝てるのって、去年の定期テストで全部1位だった静谷さんじゃない?」
「ほんとだー!」
--------あい? 今何て?
覚・醒。そのまま両面イラストのカードみたいにひっくり返りそうになったが、確かにそう聞こえた。
「すごいよね、あんなに頭良いのって」
「でも愛想は悪いって、男子が言ってたけど」
「良いのよ、それくらいの方が! ミステリアスって感じで素敵じゃない?」
春眠・暁を覚えず。
速山・眠気を覚えず。
すぐ後ろに居たんじゃないすか、コンチクショウ。
阿修羅神、豪鬼、羅刹、般若、不動明王、今自分はどれよりも怖い顔をしていると思う翼。
自分の席の列の一番後ろとは不覚だった。1年のときは名前と噂を知っている程度だったが、同じクラスになっていやがりました。
--------イエスタデイのマンダ侮辱の恨み晴らさで置くものか。早速リベンジマッチ挑んでやろうじゃねえか。
「……ちょっとそこどいてくれないか、君ら」
へっ? と振り返った途端にヒィッ、と顔が恐怖に歪んで逃げていく女子2名。我ながら紳士的な発言+阿修羅豪傑が泣いて逃げる強面フェイスだったかと軽く0.2秒の間反省。
そして、静谷が突っ伏して寝息を立てている机をへしゃげるかと思うくらいに強く叩いて「起きやがれ、静谷ッ」と翼はバークアウト。
むくり、と動じない顔で起き上がった彼女は一言、「誰?」と言ってすぐさま机に再び突っ伏してしまった。恐ろしい肝の持ち主ではあるが、翼が納得行く訳も無く。
「誰? じゃねえ。天才なんだろ、学年1位なんだろ。英単語とか公式とかよゆーで覚えられるんだろーが。なのに人様の顔忘れてんじゃねぇよ!!」
ブチ切れて突っ込んでから、ぜぇぜぇ、と息を切らして翼は気付いた。
--------やはりとは思ったが、こいつ、俺の事なんか目にない、か。
アウトオブ眼中って奴である。あまりにも弱すぎた(彼女からすれば)翼のことなど、おそらく寝ている間、否・あの試合が終わった途端に忘れてしまったのであろう。
ムカつくといえば、ムカつく。折角因縁の相手が目の前に居るのに相手すらして貰えないとは。
青筋ピクピク、こめかみが引きつり、隅でさっきの女子が「速山君超怒ってるけど、静谷さんに何かされたのかな」と言っている。
「……思い出した。速山 翼、だっけ」
がばっ、と起き上がって突然言葉を発する彼女。
おおう、覚えてはいたらしい。いや、たった今まで忘れていたんだろうけど。
「昨日マンダで戦ってたマイナー使い」
確かにボーマンダはXY環境では余り使われていない。
空の暴君という2つ名はいつの間にか600属最弱クラスと言われるようになってしまっていた。
その理由がガブリアスにぎりぎり抜かれる素早さだろう。
彼女は要するに、翼をサブカルチックな物好きと言いたいのだろう。
「ちょ、おま、待て。俺はマイナーだから、あまり使われてねぇからマンダを使ってるわけじゃない、あいつは攻撃面ならガブを上回ってるし、物理か特殊も読みにくい。しかも、竜舞を舞った後の----------」
しかし、反論する翼。彼はボーマンダだからこその強さを見出しているのだ。
が、言葉はそこで途切れた。彼女が槍を入れるように言ったからだ。
「それで、何の用?」
思わず翼は、う、と口をつぐんだ。別にこんなことを論じに来たわけではない。
言う言葉は最初から決まっていた。断られるのは承知だ。
「もう1回、俺と対戦しろ」
「わかった」
しばらく、間が空いた。余りにもあっさりとした受け答え。最初、断られるかもと思ったほどなのに。
ぽかーんとしていたが、押し出すように言った。
「……はい?」
「だからやるって言ってるの。対戦。耳付いてる?」
ま、勝てるわけ無いけど、と彼女は付け加えたが。
しかし、願ったり叶ったりである。こんなにも都合よく話が運ぶとは思っても見なかったのだ。
「よーし、良いぜ。やってやろうじゃねえか。やんのは今日の放課後だ、3DS持って学校の近くの公園に5時までに来い」
***
惨敗。
負けた。
ええ、まさかここまでボッコボコのフルボッコにされるとは翼は思ってもみなかった。
もうマジパネェっす、サザンもクチートもマジパネェっす、と口から漏れている。
ベンチでちょこん、と座っている静谷はふぅ、と溜息をついた。
「……これで、立ち上がれなくなったでしょ」
諦めろ、と言っているようだった。その瞳も、いやその言い振りからも。
「それにサザンドラの方がすぐれてる。特攻だけなら600属最強、スカーフというアイテムでの素早さ補強、そしてどっかのアレとは違ってステルスロックに弱いわけでもなく、サイクル戦への強さ」
「---------分からねぇぜ」
翼はそう、返した。
「俺はこいつの”爆発力”を知っている。その強さを生かせない構築で戦わせているかもしれねぇし、いくらでもこいつは活躍させられる!! 俺はボーマンダでお前に勝ちたいんだ!!」
何度負けても屈しなかった。
ボーマンダは駄竜なんかじゃない。600属最弱なんかじゃない。
ガブリアスのついでに対策されたって良いじゃないか。
こいつにはこいつにしかない、強さがある、と。
「……お手上げ。此処までボロボロにされて立ち上がってくるのも初めて見た」
静谷はそう言うと、立ち上がってDSを閉じた。
「今日は帰る」
だけど、と続いた。
「……でも、明日も対戦する。そっちがまだ戦う気があるなら、だけど」
「え」
一瞬、何を言われたか分からなかった。もう、飽きられたかと思ったのに。
普通なら此処でもう止めにしてしまってもいいはずだ。
それ以上は彼女は何も言わなかった。
そのまま、先に公園から立ち去って行った----------
「……何か、勝手に明日もやるってことになってるな、オイ」
とは言ったものの、彼の中ではむしろ万々歳であった。別に明日じゃなくても良かったが。まあ、良い。
彼女と対戦を繰り返していけば、さらに実力を磨けるかもしれないのだ。
***
「見たっスか!? あいつっスよ、あいつぅ〜!! こないだ、大会で俺をぶちのめしたのは!」
「ガッタガタ抜かしてんじゃねえ。ただのガリベン女じゃねえか」
「いーや、それがあいつ、ゲームも滅茶苦茶つえーんすよ、それで終わった後に『つまんない』って言って来やがったんすよ!?」
「ほーお、成る程。流石優等生ちゃんは一味も二味もちげぇ。勉強にもゲームにも両方努力値を全振りしてるわけか」
「そうなんすよ!!」
「ま、俺だってあいつがちーと気に食わねぇ。まー良いや、どーすっかはもう少し考えるか--------」