二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第一章:飛翔の暴龍/流星の悪龍 ( No.3 )
日時: 2014/12/17 19:36
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「読みが甘い。そんなんじゃ、一生あたしには勝てない」
「ったく、厳しーな。もう一回だ!」

 それからはもう、日課のような感じだった。毎日、2人で学校が終わった後にポケモンで対戦するようになった。
 翼はいつの間にか、リベンジとかそういう気持ちは薄れつつあった。

「何つーかさ、悪いな。毎日対戦してくれるとか」
「……別に、暇だから」

 彼女はそう言うだけだったが。
 ちなみに今のところ、彼女には一度も勝った事がない。

「学校にもよ、3DS持ってきてるみてーだし? やっぱポケモン、好きなんだな」
「勉強以外で私の頭を生かせることといえば、これくらいだもの」

 と言う。彼女、学校にまで3DSを持ってきていたのだ。やはり人目の付かないところでゲームをしているのだろうか。
 とはいえ、翼も校則にはなあなあな方なので、別に何も咎めはしなかったが。

「お、そうだ。旧校舎に空き教室があるからよ、そこで今度からは対戦しないか。俺もそろそろ家にわざわざコレ取りに行くのが面倒になって来たし」
「分かった」

 何だかんだで、対戦の後に度々吐くダメ出し以外には彼女に対する嫌悪感は抱いていなかった。
 というか、それにももう慣れてしまった。

 ***

 静谷 未歌(シズヤ・ミカ)。彼女は人よりも頭が良い。一回りほど。何せ成績は勿論のこと、頭を使った事に関しては敵なし、だった。
 勿論、それはポケモンも同じだった。
 ----------嫌だよ、ミカちゃんとやったって、勝てないもん。
 ----------もう遊ぶのやめよ。
 だんだん、彼女の周りからは一緒にポケモンで遊ぶ友人はいなくなっていた。
 自然と彼女は周りと壁を作るようになっていた。
 中学に入っても1人、そう思っていた。別に構わなかったが。
 だが、違った。
 翼だけだけは、何度でも自分に挑みに来てくれていた。
 満更でも無かった---------


「おい、静谷」


 声がした。丁度、放課後に昨日翼が言っていた空き教室に行くため、旧校舎への渡り廊下の壁に寄りかかってうとうとしていたところだったが、それで彼女は目が覚めた。寝ぼすけの彼女はうとうとするとどこでも構わず寝てしまう癖があるが、実は寝起きは良い。声を掛けられたら、大抵はおきる。
 ぼんやりと声のするほうを見れば、そこには2人の男子生徒の姿が。
 その中に翼の姿は見られない。
 静谷はもう一度瞼を閉じたが---------

「待てよ、静谷。寝んのはまだ早いよなぁ?」

 前に出てきた少年の姿は、翼よりも背が高く、細身ではあるが筋肉のあるというだった。
 目つきは悪く、左頬には傷があり、長い前髪が掛かりがちになっていて、第一印象はお世辞にも良いとは言えない。
 後ろの少年は、ひょろっと痩せたように細く、前の少年とは対照的。
 後ろで縛った髪を撫でて、彼は続けた。
 卑しく、目を細めて口角が上がる。
 ふん、とあしらうように息をつくと、くるりと踵を返しそのまま立ち去ろうとしたが、がしっ、と彼の厚くて大きい手がねっとりと包むように自分の肩を包んだのが分かった。逃げられない、か。
 
「大事な話があるんだ。ちょっと時間を貰うぜ---------」

 ***

 時同じく、翼もその空き教室に行くために旧校舎への渡り廊下に向かっていたが、そこで少年の声が奥から響いてきた。そこは丁度曲がり角になっているが、隠れてその方をこっそり伺う。
 少年の声、そして姿に翼は大いに見覚えがあった。

「……御剣 鋏弥(ミツルギ・キョウヤ)、だっけか。何であいつがあんなところに?」

 御剣のことは結構噂で知っていた。一言で言えば、二年生にも関わらず、この学校の不良グループのリーダー、つまりを言えば番長を務めているのだが、素行悪し、暴力上等のヤンキーである。
 不良グループといっても、同い年の連中や、年下の後輩を無理矢理・あるいはこういうのに憧れて入ってくるもの達で組まれたもの。
 こいつらが現れてからだった。この学校が荒れ始めたのは。
 その彼が何故、静谷と話をしているのか、よく聞いてみる。まだ、何かされている訳ではない。下手に入り込むよりは事情を飲み込むのが先だ。

「お前さー、こんなん持ってきてるけどよぉ、困るんだよな? ”俺の学校”の校則を破ってもらっちゃぁーよぉ?」

 御剣の手には彼女の黒いカラーリングの3DSが握られていた。
 しかし、すぐにそれを彼女の手に押し戻す。

「どーしよっかなぁぁぁん? 先公にチクってやろっかなぁぁぁ、エエッ?」

顔芸に加えて、腹の立つ態度で迫る御剣。
 が、彼女の態度は一貫して変わっていない。何も言わず、何も聞こえていないかのようだった。

「キョウさぁん、こいつ全然動じてませんよ」
「うっせぇ、ヤス、黙ってろ!! ……まあ良いや、俺様も鬼じゃねえ」

 といって、彼は続ける。
 発言と言い、行動と言い、とことんまで嫌味な野郎である、と翼は好い加減出て行きたくなったが、抑える。
 問題は、此処からだ。

「こないだよぉ、俺の後ろに居るヤスがてめーに負けて泣かされたって言ってきてよぉ」
「覚えてない」
「え」

 後ろの下っ端と思われる少年はあんぐりと口を開いたまんまだった。そういやー、こないだの大会、あんなの居たっけな、と翼は思い出していた。
 どうやら、この間の大会であの少年もボコボコに負かされたついでに毒を吐かれたってのは本当っぽい。

「何か、フライゴンとかいう劣化ガブを使ってたマイナー使いのアホがいたのはうっすら覚えてるけど」
「それ、俺!! そのマイナー使いのアホって俺!! あ、自分で言っちゃった」
「んなこたぁ、どうでも良いッ!!」

 御剣の怒声が響いてこの茶番は収まる。

「おい静谷ぁ、この件をチクられたくなかったらよぉーっ、この俺様とポケモンで勝負しやがれ」
「……ポケモンで?」
「ふひひぃー、もし断るようなら、即バラすだけだぜ。いーんだなぁー? 優等生様様の株が撃落ちって奴よぉー、ケカカカ」

 ぴくり、と彼女の耳がかすかに動いたのが翼には見えた。
 が、反面翼は思っても居なかった展開に驚くばかり。
 ---------あいつ、ポケモンまでやってたのかよ!? おい、静谷、やめろ! そんな奴の挑発に--------

「……その勝負、受けて立つ」

 ---------乗るんじゃねぇーよぉぉぉ!!
 がっくり、と項垂れる翼。まずい、面倒なことになった。それ以降の会話は聞こえていなかった。何か、「勝負は明日だ、良いな? 場所は学校近くの古い公園! 分かるよなぁ? 逃げたり、もしくは俺様に負けた瞬間、学校全体にこの事をバラすぜ!」とかしか。
 あ、結構聞いてるわ、これ、と気付く。
 御剣と舎弟のヤスはどうやら、そのまま奥のほうの階段から降りていった。
 あの先の暗い体育館の裏でいつもたむろしているらしい。が、そんなことはどうでも良かった。
 静谷のことが気がかりで、翼は駆け寄る。

「おい、静谷! 話聞いてたぞ」
「立ち聞きなんて趣味が悪い」

 がくり、とこけそうになった。そんな事言っている場合か。

「そうじゃなくてよぉ!? 良いのかよ、あんな勝負受けて!」

 翼としては、彼女の身に何かが起こってはいけない、と案じているのだが、そんなことなどなど気にせず、彼女は続ける。

「何か、勘違いしてる。あたしはあんなやつの挑発に乗ったんじゃない。学校のゴミを完膚なきまでに叩き潰すチャンスだから」
「だ、だけど」

 心配する翼に彼女は振り返ってから言った。


「それに---------速山には関係ないから」