二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第二章:携帯獣対戦のすゝめ ( No.14 )
- 日時: 2015/01/01 16:12
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「今日こそお前に勝つぞ、静谷! 良いか、新たに育てて来たメンバーでお前の面子をボッコボコに」
「そもそもそっちの構築がサザンドラに薄い、というか悪に弱い。キザンにぶち抜かれるのが見えてるし」
「だからちょっと構成を変えたんだよ」
いつも通りであった。普通にいつも通りであった。でも、普通の中学生と比べると少々ズレた放課後だとは思う。
寂れた旧校舎の部屋で今日も2人は3DSを持ってポケモンXYという名の決闘に。
ただし、今のところ器用貧乏少年・速山 翼が天才少女・静谷 未歌に勝った事は一度として無かったわけだが。
それを込みにしても、いつも通りの日課だった。
寂れたこの教室は鍵が掛かっているが、見事に鍵がぶっ壊れており実は簡単に入れる。
ヤンキー共は体育館裏を根城にしているので、それを含めて生徒も教師も誰も寄り付かない。
そう、自分達を除けば--------と思っていた時代が翼たちにもあった。
「翼、これ」
「……ああ」
3DSだった。そこにあったのは。
カラーはグロスピンクで、翼がライトブルー、静谷がクリアブラックなので、2人のものではない。
とりあえず、誰のものか分からないのに、電源を付ける訳にはいかない。
いや、それよりも----------
「俺らの他にこの部屋でゲームをやっていた奴がいたのか」
ということだった。これ、3DSの持ち主が来たら色々面倒なことになるかもしれない。
あ、これフラグ? フラグなの? この後すぐに来ちゃう感じ?
「カセットが刺さってる。ポケモンY」
「ふーん、それじゃあやっぱりポケモンプレイヤ-------------」
と、そのときだった。音が聞こえた。やっぱりフラグだった。
それも、硬い上履きの底が廊下を踏み鳴らす音。
思考するまでもない。こんなところにやってくるのは、とうとうこの場所に目をつけたヤンキー軍団か、あるいは急ぎの用の先生か?
とりあえず、誰だろうがまずい。
というか面倒くさい。
いや、しかも行動を起こす前に肝心の足音はどんどん近くなってくる。
ガラガラガラ、と鍵の壊れた戸が開いた。
「はぁ、はぁ、やっと着いた……あれ?」
足音の主、曰く今目の前にやってきたのは少女だった。
明るい色のポニーテールにハシバミ色の瞳が特徴的な少女は、ぽかんと口を開けている。
視界の中に飛び込んできた翼と静谷を見て驚いているようだった。
「あ、あははは、ちょっと出直しますね----------」
「いや、ちょっと待てやコラ」
逃げようとする少女は翼の手に握られた3DSを目にしたとたん、引き下がろうとするが、がしっ、と翼が手首を掴んだので逃げられなかった。
「ご、ごめんなさーい! その3DSは訳アリなんです、いやあたし全然関係ないんです、というかふかーい訳があるんですー!!」
パニックになってるからか、訳があるのか、関係ないのか全く分からない。
「お、おい落ち着けって、俺ァ別にこの3DSを先公に突き出そうって腹じゃないんだぜ」
「ふぇ?」
「……類は友を呼ぶ」
静谷が静かに言った。
「え? え? も、もしかして皆さん-------------」
落ち着きを取り戻した少女は、目を輝かせた----------
***
「へー、先輩方もポケモンをこの部屋でやってたんですか!」
椅子に腰掛けた少女はようやく手元に戻ってきた自分の3DSを開いてにこにこと言った。
さて、見ず知らずの自分達を先輩と呼ぶあたり、彼女は1年生と見て間違いないだろう。
「実はあたしもこの部屋で昼休みなんかでポケモンやってたんですよ!」
しかしまあ驚いたのは翼達の方だった。
まさか同類、同属がいたとは思いもしなかったのだ。
「あ、申し遅れました、あたし1年3組の東雲 夏奈(シノノメ・カナ)って言うんです、よろしくお願いしますね!」
「俺は速山 翼。クラスは2年2組だ」
「……静谷 未歌、2年2組。よろしく」
軽く自己紹介を済ませると、彼女は言った。
「ポケモンって本当いいですよね! 可愛いのから格好いいのまで! 色んな種類がいて千差万別ってやつですよー!」
「ま、分かる気がする。俺もそういうところに惹かれ--------」
「先輩達とは、すっごい仲良くなれそうな気がします! よろしくお願いしますね!」
「……無駄に元気」
毒を刺すように静谷は言ったが、聞こえていないようだった。
……ずいぶんとまあ、積極的だった。
強引かつ一方的な意気投合ではあったが。
「あ、そーだ、あたし対戦やってるんですよ!」
元気に彼女は言って来た。
む、と翼は声を漏らす。
ひょっとして、彼女もガチ勢の1人ではなかろうか。
「バトルお願いしても良いですか?」
とのことだ。翼としては、最近はいつも静谷か見ず知らずの相手とランダムマッチで闘っていたので、新鮮な気持ちになる。
そういえば、大会にもあまり出なくなった気がする。
とりあえず、静谷に「俺が行くけど良いか?」と聞くと彼女は「うん、先に行って」と返したので翼が迎え撃つことになった。
「ルールは6350、さあ行くぞ」
「へ? ろくさん、ごーぜろ?」
どうやら、その俗称を知らなかったらしい。まあ別にいいか、と思って一応「フラットルールのシングルバトルだ。63は手持ち6体を見せ合い、3匹を選出するから。50はレベル50統一って意味だけど」と説明してやると、「あ、そうですね! フラットですね!」と返した。
……怪しい。翼は何か嫌な予感がした。
静谷に目配せすると、彼女もなんとなーく察しがついたのか、こくり、と頷いた。
***
さて、パーティの見せ合いで翼の嫌な予感は的中した。6350の意味が分かっていなかった時点で既に薄々感づいてはいたのだが、
--------こやつ、初心者(ビギナー)だぁぁぁ!!
と。なぜなら、それぞれのパスは
翼
ボーマンダ
メタグロス
フシギバナ
サンダース
シャンデラ
ゲッコウガ
夏菜
マフォクシー
ピジョット
ピカチュウ
ルカリオ
バタフリー
ガチゴラス
翼の編成を見た静谷が冷ややかな声で言った。
「……悪の一貫性、そのまんま」
「構成は変えた。悪に強くしたとは言っていない。だって難しいんだよ」
翼の新規メンバーはフシギバナとシャンデラだった。が、相手のパーティを見て、別の意味で驚愕する。
--------うわあ、ピジョットとバタフリーがいなければ、辛うじてまともなパーティに見えたのに。ピカチュウは……たまにガチで使ってる人いるけど、これもう絶対”旅パ”で確定だよ。
腐ってもレーティングガチ勢の1人ではある翼は夏奈の構築を一目見て、もうげんなりしていた。
先が何となーく、読める。
が、しかし。
--------待て、俺。実はこれ、偽造旅パって奴なのでは? 油断したら痛い目を見るかもしれない。
とりあえず、選出を決めた翼はそんな可能性も頭の隅に入れつつ対戦へ。
「バトル、スタートだ!!」
***
翼の初手はサンダース、夏奈はピカチュウだった。とりあえず、光の壁で場作りだけでもしとくかー、と翼は光の壁を選択。
当然、素早さはサンダースの方が上だった。
しかし、相手は引っ込めない。電気タイプ同士だとサンダースの方が有利なはずなのに。
「いっくよー! ピカチュウ、10万ボルトーっ!」
サンダース残りHP:100%
特性・蓄電発動により、電気技を無効化した!
「あれ?」
「あれ? じゃねえよ。サンダースの特性は蓄電、電気技を食らったら逆にHPが回復するんだけど」
「あ、え!? そうなんですか!? 初めて知りました」
撃たれたところで別に避雷針ではないので何の能力が上がった訳でもないが、サンダースに入ったダメージは0%。
特性・蓄電は電気のダメージを無効化してHPを25%回復するという効果を持つ。
どうせHPマンタンだったから良かったのだが。
サンダースを引っ込める翼。すかさずボーマンダを投げる。
と、ここで夏奈も交代。そして現れたのはガチゴラスだった。
ボーマンダ残りHP100%
ガチゴラス残りHP100%
「ラッキー! ガチゴラスの方が有利です!」
いや、無理だろ、と翼は心の中で呟いた。
何故なら次の瞬間--------
「地震」
ガチゴラス残りHP:0%
こ れ は 酷 い。
襷かスカーフですらない。
まさかのノーダメ&地震ワンパンKOである。いや、弱点だから仕方ないのだが。
「そ、それじゃあ頼んだよ、ルカリオ!」
最後に出てきたのはルカリオだった。さて、当然! と言わんばかりにメガシンカする。
が、結果は同じだった。
「地震」
メガルカリオ残りHP:0%
とまあこの通りである。やはり彼女のパーティ、地面通り易すぎないか、と。
「う、だけど最後は任せたよピカチュ-------」
「地震」
ピカチュウ残りHP:0%
と。ボーマンダ3タテで終わったのだった。