二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第二章:携帯獣対戦のすゝめ ( No.16 )
日時: 2015/01/02 08:43
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 黒板に”個体値”という言葉が刻まれた。
 翼は頭を抑えながら言う。

「個体値って言うのはそのポケモンの生まれもっての才能で、0〜31までそれぞれの能力値に振られるが、これが高ければ高いほどそのステータスは高くなる。ちなみにこれは、努力値と違って変えられず、そしてポケモンの個体差で種族による違いじゃない。これのために俺らはいつも厳選をしているわけだ」
「31の能力を俗にVっていって、Vの数ごとに3V、5Vとか言うわけ」
「へえー、それじゃあ6Vが最高なんですね!」
「6Vはそうそう生まれねーよ」

 大抵のポケモンは、攻撃か特攻のどちらかが不要である。そのため、それ以外の能力が全てVの5V個体が対戦ではよく使われる」
 
「まあ、それでも赤い糸っていう個体値を引き継がせるアイテムを育てやに預けるポケモンに持たせるなりして、更に結構粘らないといけないからな。5Vでも」
「う、うわあ、大変そうですね……」
「まあ、これって結構妥協しても勝てるから。最初のうちは。それに、フレンドサファリで手に入れたポケモンは最低でも2Vだから、此処から始めると楽だぜ」

 不安そうな顔をした夏奈を励ますように、翼は言った。

「まあ、後はポケモンのことも纏めてある雑談スレ『DM第三相談室』の対戦初心者用記事で確認すれば良いだろう」
「……ステマ」
「う、うるせえ静谷!」

 すると、夏奈は溜息をついた。

「先輩達は、こんな大変なことをしてたんですね」
「ま、慣れたら楽さ」
「……私、ポケモン対戦を舐めていました」

 はは、と自虐するように笑う彼女を見て、翼は何となく不安なものを覚えた。
 彼女はそんな笑みを浮かべながら、続ける。

「まだ、入り口にも立っていなかった。それで悔しいとか、馬鹿げてたんですよね」
「何言ってるんだ」

 諭すように翼は言った。

「俺だって、その”悔しい”って気持ちをバネに此処まで辿り着いたんだ」
「誰だって、最初は初心者だから」

 その言葉を聞いた彼女は、吹っ切れたような表情になった。
 そして、元の笑顔で言った。


「そうですよね! つまり、もっともっとこれからあたしはポケモンを極めることができるんですよね!」


 それは、前向きな向上心が現れていた。
 今の手持ちでは勝てない、その程度でめげてしまうようでは、所詮その程度。
 だが、彼女は違った。
 より、強くなろうと言う強い意志が感じられる。
 それを聞いた翼は安心したように言った。

「よし、その意気だ。目標は今の環境でもそこそこの勝率を上げられるパーティを作ることだぜ!」
「はいっ! ---------パーティってどうやって組むんでしょうか?」
「……まあ、そうだよな」

 
 ***

「ええーっ、というわけで第二回……もう良いや。とりあえず、誰をエースにするか、だ」
「エース、ですか?」
「攻撃の軸となるアタッカーのこと。あたしだったらサザンドラ」
「俺の場合は、ボーマンダだな」

 エースは、当然突破力の高いポケモンが好まれる。
 例えば、半減されることが少ないドラゴンタイプや、多くのタイプに弱点を突ける格闘タイプがエースとして採用されることが多い。
 さて、良さそうなエース候補は以下の通りだった。

「まずは1匹決めるぞ。後でこのリストにあるポケモンをタイプ被りがないならもう1匹パーティに入れるかもだから、気楽に選べ。今、持っているかどうかは考えるな、使いたいやつを選ぶんだ」
「使いたいやつ、ですか」


 ガブリアス:龍・地面という一致技の範囲の広さが優秀
 リザードン:XかYか、メガシンカがどちらか読ませない上に対策がバラバラ
 カイリュー:マルチスケイルで耐えて竜の舞を積み、一致逆鱗や入手は難しいが神速で場を壊滅させる。
 バシャーモ:夢特性・加速が優秀。メガシンカで更に強力に。
 ギャラドス:耐性・耐久、共に文句なし。攻撃力も高い。
 ルカリオ:メガ特性・適応力で超火力。鬼火が入りやすいので特殊型もお勧め。
 
「とまあ、まだいっぱいあるぞ------------」
「バシャーモを使いたいです!」
「え」

 ずっこけそうになった。ルカリオを使っていたから、てっきりそれになるかと思ったのだが。

「じ、実はあたし、加速アチャモは受け取ったんですけど、フォッコとタイプが被るから旅パには入れてなくって……せっかく旅で使いたかったのに、もったいないなって」
「対戦ではバシャーモはすっげー強いんだ。エースで使ってみる価値は大有りだぜ」
「はいっ!」

 というわけで、相性補完とかそういうので、パーティを決めていった。
 そして、ようやく6匹が決まったのだった。

「構成は物理アタッカー2体、特殊アタッカー2体、物理受け1体、特殊受け1体が良いわけだから、なかなか良いんじゃないか?」
「えへへ、そうですかね?」
「じゃあ、まずはこれらのポケモンを厳選しないと、だな。まずはバシャーモから----------」
「と、ところで厳選って時間はどれくらいかかります?」

 ああ、と翼は軽く声を発すると、言った。


「1匹で4時間くらいはかかるんじゃないの? 下手したら、よゆーで1日溶かすかも」


 え、と夏奈の顔から血の気が引く。

「い、1匹だけで、ですか?」
「ああ、最初(0V)っから5V粘ろうとしたら、だな。それじゃあ、楽しい楽しい厳選の始まり始まり」
「あ、あ、あうあう」
「冗談だって! さっき言ったとおり、フレンドサファリで捕まえたポケモンを上手く利用すれば良いし、俺らが親になるポケモン貸してやるから厳選も楽になると思うぜ」
「これも、未来の廃人を育てるため。ちなみに、リオルやルリリみたいな卵未発見グループは野生産でも3V以上確定だから、覚えておくと良い」

 この純粋な後輩を、静谷はガチで廃人化させる気満々である。とはいえ、言っていることは的を射ているのだが。

「あ、ありがとうございます!」

 そうとは知らず、礼を言う彼女だった。


 ***

「や、やりました、とうとう全員のレベル上げが終わりましたよ、先輩!」
「一週間まるっと掛かったが、ようやく完成したな、お前だけのパーティが」
「妥協の二文字をプレゼントしたい」

 えへへ、と照れ笑いをする夏奈。さて、折角パーティが完成したのだ。とりあえず、誰でも対戦をしたいものである。
 さて、彼女はなかなか粘り強い人間だった。厳選も4Vでくらいでよしておけばいいのに、5Vを出す、と言ってなかなか引き下がらなかった。
 それだけではない。
 これは数日前のことだが、

「やったー! ガブの6V出ましたー!」
「マジで?」

 ビギナーズラックというやつだろう。見事にこれを引き当ててしまったのだった。
 加速バシャの厳選にやたら時間がかかった反動だろうか。(3時間)
 6Vに遭遇することなんて、人生でそう何度もないだろう。

「さて、対戦するのは良いとして、どうするよ」
「……フツーにレートで良いじゃない」
「いや、折角だからこいつにも目の前の人間と戦うスリルを味わってほしいんだよな。だからと言って、俺はともかくお前が戦うのもアレだ。そこで、1人アテがあるんだよなー」


 ***

「あーん、コラてめぇ、何で俺らの縄張りに入--------げっ確かお前は、ヒィィィ!!」

 ヤンキーは翼の姿を見ただけで驚いて逃げてしまった。
 此処はヤンキー共の根城である体育館裏の倉庫である。
 かなり広いので、彼らが根城にしていた。
 が、しかし。さっきの下っ端の逃げていった方を進む翼と未歌。
 此処にやってきたのは、ある人物に会いに来たからである。

「キョウさぁぁぁん、こないだのあいつらですよぉー!!」
「……騒がしい奴だ。お前ら今更何の用なんだよ」

 番長・御剣。どっかりと椅子に腰掛けており、ビビっている他の不良とは違って馬鹿馬鹿しいと言わんばかりにデカい態度で迎え出た。
 しかし、大勢から此処まで怖がられるのはちょっと心外である。

「いや、さ、何でこいつらそんなビビってんの」
「けっ、お前が不良を10人病院送りにしたとか言うからだろうが。……どーせはったりだろ」
「翼、ばっちりバレてるけど」
「ああ、嘘。本当は20人なんだわ」
「はったりも程々にしたらどうだ、テメェ」
「やっぱバレてたか」
「調子乗りすぎ」

 もっと伝説を拡大しようとする翼だが、御剣は既にお見通しのようだった。
 流石リーダー、そこらのヤンキーとは格が違う。
 「はったりだって?」とざわざわ言い出すヤンキー共だが、それでもリーダーがやられたという事実は覆っていない。無闇に翼には手を出せないようだった。
 好い加減、このノリも飽きてきたので翼は言った。

「ちげーよ。ちょっとポケモンの対戦を頼みてぇのよ」
「あ?」

 がたり、と御剣は立ち上がった。

「何でまたテメェと」
「ちげーよ。俺じゃないんだね、これが」
「じゃあ静谷か?」
「ちげーよ、って3回目だよこれ」

 はぁ、と息をつくと翼は言った。


「単刀直入に言うと-------------うちの後輩の初陣の相手、お前に頼みたい」