二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 第二章:携帯獣対戦のすゝめ ( No.21 )
- 日時: 2015/04/13 20:50
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「ちっくしょー!! してやられたぜ、これは!!」
叫んだ後、ふぅ、と息をつく御剣。何であれ、これによって夏奈の初陣は白星で飾られたのだった。
悔しい気持ちはある。勝ちに拘る御剣だから尚更だった。
「ま、ほぼ互角だったし仕方無いな」
「……初心者と互角って言われても嬉しくないと思う」
「全部聞こえてるぞ、てめーら」
しかし、あの場面でのウルガモスの蝶舞読みストーンエッジは本当に意外であった。
守る安定の場面でストーンエッジをブチ当てた読み、いや彼女の場合は直感というべきか。
「夏奈。これが真のポケモンバトルだ」
「はいっ!」
ようやく今日、知ることが出来た気がする。
ポケモンバトルは相手の行動の読み合いによる戦略ゲーム。1手1手が勝利、敗北のどちらにも繋がるシビアな世界。そこに運の要素が絡むので、勝つのはもっと難しくなる。
だが、それゆえに----------勝ったときはとても嬉しい。
だが、それでも忘れてはいけないことがある。
あ、そうだ! と彼女は3DSをおき、御剣の前にでて、彼の手を両手で握り締め言った。
「対戦、ありがとうございました、御剣先輩!」
チッ、と舌打ちをした彼だったが、彼女に向き直って言った。
「勝ち逃げは許さねぇぞ。次はぜってー勝つ」
ポケモンプレイヤーは皆、ライバル同士。御剣が、夏奈を単なる”初心者”ではなく、”ライバル”として認めた瞬間だった。
彼女も屈託の無い笑顔で返したのだった。
「望むところです!」
この2人、意外に気が合うのかもしれない。
「こないだよりも丸くなったんじゃねえか、お前」
「ほっとけ。俺はもう行くぞ」
踵を返し、とっとと部屋から出て行こうとする御剣。確かに無理やり連れ出してしまった上に、不機嫌にさせてしまったか、と翼は思ったが、違った。
彼が言ったのは、嫌味でも捨て台詞でもなく-----------
「次に会ったときは、今度こそポケモンでブチのめすぞ、速山。俺様のメガハッサムでてめーのボーマンダを眉間をぶち抜く」
-----------宣戦布告だった。
「へっ、精々大文字と空飛び避ける準備をしておくことだ」
翼もニヒルな笑みを浮かべて、言い返す。
「このパーティはまだ調整が足りん。てめーを完膚なきまでにぶっ潰すために、更に俺も強くなる」
「おー、怖い怖い。楽しみにしてるぜ」
「何度も言うが、次は絶対勝つ」
そう言い残し、戸を開けて彼は部屋を後にしようとした。
「それと、」
まだ言い残したことがあるように、彼は背中を向けたまま続けた。
「次にぶっ潰すのは、てめーもだ東雲。今回のようには行かねぇぞ」
「はいっ!」
彼の威圧的な言葉に怯まず、彼女もまた、元気な声で返したのだった。
「あー、今まで悪いことばっかしてきたから、後輩にあんな風にお礼言われて照れてるのか」
「というか……負けた癖に……威勢が良すぎ……」
「へっ、あの程度で折れてくれるよりはマシだ。俺ももっと、強くならねえと」
静谷に好戦的な視線を送る。彼女も負けじと睨み返す。
「ま、つーわけで。此処にいる3人は仲間にして、ライバル同士ってことだな」
「……そうなる」
「とにかくっ、先輩方今後もよろしくお願いしますね!」
仲間がまた1人、増えた。
そして、初陣に勝利した。
今日は嬉しいことばかりである。
「そんじゃ、次の対戦に向けて厳選開始だ!」
「……私、ギルガルド」
「あたし、さっきの対戦でニャオニクス強いなーって思ってたんですけど、誰か孵化余り持ってます?」
「お、丁度良いな。こないだミラクルに流れてきた奴がいるから、それ使え----------」
テーブルを囲む3人の中の時間は、すぐに流れていった----------
***
「……速山翼……静谷未歌……東雲夏奈……か」
少年は、タブレットに登録した3人のデータを見ていた。
「静谷未歌。公認大会を今年度に入って3連優勝を飾っており、いずれもハイレベルの読みとサイクル戦で確実に相手を追い詰めるタイプ。
速山翼。去年度は公認大会準優勝が2回、今年に入ってからは無し。こっちはそんなに大したことはない……ように見えて、テンプレの中に地雷を仕込み、アドバンテージを取る厄介な種別のプレイヤーだね。使ってるポケモンもメジャーどころだったり高種族値だったりで悪くない。
そして東雲夏奈、データなし。未知数か」
眼鏡をくいっ、と押し上げ、口角を吊り上げる。
「……彼らならば、僕の夢を適えるために共に戦ってくれるかもしれない------------」
***
「だ、大丈夫でしたかィ、兄貴---------!?」
御剣の側近・ヤスは、帰ってきた彼を真っ先に迎えた。
「うるせー、何とも無かった」
「そうじゃなくて! 当然勝ったんでしょ、バトル---------」
そこで舎弟の言葉は途切れた。
御剣の掌が、舎弟の胸倉をしっかりと掴んでいたからだ。
「うるさい、俺は今、すっっっっごい機嫌が悪いんだ!!」
と、怒鳴り飛ばす。
しかし、その後に「いや、違うな」と続けた。
「”機嫌が悪い”は正しくねえか。負けて悔しかったのは悔しかったが、それ以上に次勝つためにどうするか、という意思の方が上だ。とにかく、俺は今、すっごい強くなりてぇ気分なんだ」
おい! と倉庫にいる舎弟達に御剣は怒鳴った。
「誰でも良い! 腕に自信のある奴から、手加減無用で俺様に掛かって来い! 勿論、ポケモンで、だ!」
彼の闘争心はそれほどまでに燃え上がってきた。
手当たり次第に、舎弟達にポケモンで勝負を挑もうとする。全員が、困惑した表情を浮かべていた。
「い、いや、でもあいつらに仕返しとか---------」
「そんなの考えてるヒマがあったら、正面から奴らをぶっ潰した方が早いって気付いた。おらぁ、まずはどいつだ!」
「俺です!」「いや、俺だ!」と集まってくる舎弟達。
曲がりなりにも、彼も強くなろうという意思があってのことかもしれない。
その様子を見ていたヤスは、遠くで御剣を見ながら、チッと舌打ちをし、呟いた。
「……あれはもうダメだ。あの速山から何を吹き込まれたのか知らないが、あんな番長は、もういらねぇ。とっととこの学校から消えちまえば良いのに----------!! ”あの方”にドヤされるのも、時間の問題か」