二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 追加戦士に憧れて 【しゅごキャラ!×スーパー戦隊】 ( No.4 )
日時: 2015/04/06 21:51
名前: 夜星 ◆Cy8HiY0qWk (ID: aRobt7JA)

 走っていた。俺は、ただ走っていた。

 ほぼ全自動。体が勝手に動いているような感じ。

 つーか俺、どこに向かってるんだ?

「おいっ! 心の声!」

『いや、心の声じゃねーし。ポッケ。ポッケ見ろよ』

「ポッケ……?」

 とりあえず、心の声(仮)に従い、制服のポケットに手を突っ込む。

 すると、何も入ってない筈なのに、何かに触れる。

 引っ張り出してみると、それはタマゴだった。

 白、銀、金、赤、緑、その他様々な色で彩色された、手の平大のタマゴ。

「……何これ」

『俺。正しくは俺のタマゴ』

「なに? お前鳥かなんか?」

『ちげーよ。しゅごキャラだ』

 しゅごキャラ……? 聞いた事もない。

 喋る鳥か? オウムの種類?

『白鳥ミコト、お前のなりたい自分だよ』

「なりたい自分って……どこの都市伝説だ?」

『ガチ。ガチだっての。心の底から願うなりたい自分。それが表面化したのが俺だ。まだ孵ってないけどな』

 なりたい自分……要するに、将来の夢のことか?

 いや、違うな。もっと奥底。真の願望——叶え難いもののことか。

「……で、そのしゅごキャラが何をしたんだよ」

 元々俺は、総会の真っ最中に自分だけ飛び出すようなことは絶対にしない。

 なのにさっきは、勝手に体が動いたのだ。これは絶対、こいつが何かしたに違いない。

『キャラチェンジだ。ミコトのなりたい自分をちょっとだけ引き出したんだよ』

「俺は変人になる願望はない」

『ヒーローは他人から見ると、憧れと共に変人だろ?』

「違う。全然違う。ヒーローはかっこいいんだ。間違っても変人じゃない。いや、まあ確かにヒーローって事がバレて非難されたって例もあるけど」

 思い出すのは、電磁戦隊メガレンジャーだ。

 戦士たちの正体が明らかになると同時に激しく非難されるという展開は、確かにヒーローと一般人の隔たりを感じさせる。

 だが、メガレンジャーは変人ではない。最後には認められるし、真実、地球を護ったヒーローだ。

『まあ冗談は置いといて。あの女の子が気になったんだろ? だから俺はちゃんと行動できるように、おまえ自身を引き出してやったんだ』

 よく分からん。マジで夢なんじゃないだろうか。

 与太話をしている間にも、どんどん学校が離れていく。先生とか追っかけてこないよな。

「で、結局お前なんなの?」

『だからしゅごキャラって言ってんだろ。まだ信じてねーのか』

「信じる要素が一つもないし」

『あー、もう。だったら見せてやる——』

「は?」

 タマゴが割れる。中から出てきたのは、小人だった。

「よぉ」

 出てきたのは、小さな俺……がデフォルメされたもの。

 違う点といえば、見覚えのある鎧を纏っている。

 手の平に乗る程度の大きさなので見難いが、その鎧に付いている幾つもの面は……

「……ゴールドモード?」

「そうそう。言ったろ、お前のなりたい自分だって」

 それはまさしく、ゴーカイジャーに登場する追加戦士、ゴーカイシルバーの強化モード。

 ゴーカイシルバー・ゴールドモード。

 俺と同じく、スーパー戦隊に憧れる彼の強化モードは、胸にこれでもかというほどに追加戦士の面がくっついた特徴的なものだ。

 通称を十五戦士の鎧。手の平大の俺はそれを纏っていた。何故か幾つか、面が増えているが。

「俺はヒイロ。お前のしゅごキャラ。よろしくな、ミコト」

「……」

 ヒーローをそのまま捩ったような名前に、単純だなあと笑みが零れる。

 一体俺はいつまで夢を見ているのだろう。

 一向にこの謎の超常現象は、収まる気配を見せない。