二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート1:謎の敵(2) ( No.3 )
日時: 2015/02/18 18:56
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「よくも、チャモさんを、僕の仲間をーッ!!」

 激流に身を委ね、巨大化した腕を振り上げるアクア。しかし。
 黒い塊から、腕が伸びる。人間のような白い腕だ。黒い塊の奥に人の姿が見える。
 どうしてか、その姿にはとても見覚えがある。
 ------------ボマー、さん!? いや、違う-------同属か!?
 それが、アクアの胸に突き刺さる。同時に、彼を纏っていた激流が消えた。
 
「アクアァーッ!!」
「う、が、バカ……な、何者なんだお前は-----------!!」

 どくん、と腕が脈打った。そして、するり、と腕が抜ける。元の人間体に戻ったアクアはそのまま地面に倒れた。
 しかし、胸にそれらしき穴は開いていない。

 -----------メガシンカエネルギーハ幾ツカ集メタガ……マダ不十分カ

「次ハ、オ前ダ」

 今度はボマーの方を向く。そして、さっきの白い腕を伸ばして襲い掛かってくるが-----------!!
 
「させませんっ!! 大文字っ!!」

 轟!! と唸りを上げる炎が黒い塊を包み込んだ。流石に直撃を貰ったのか、怯んだようだ。
 チャモが携帯獣としての姿、バシャーモとなって迎え撃ったのだ。
 しかし、余り利いていないように見える。

「なら、目覚めるパワー(氷)で-----------!!」

 追尾するエネルギーの玉が黒い塊に再びぶつかる。
 冷気を込めたこの技ならば、利くか? と直感で感じたのだ。
 目の前の相手、何故かボマーと同じような気配がする。
 直撃した。
 その黒い塊は、極端にそれを恐れているようだった。

「クッ、マアイイ……オ前ラハ最強ノメガシンカを以ッテ相手ヲスルカ……!!」

 案外、あっさりと影は別の方向へと飛んでいく。
 ふぅ、と溜息をつく一行。
 しかし、その中で唯一その方向を目で追い、顔を青くした者が居た。
 ボマーだ。


「お、おいっ、あの方向って『静炎亭』じゃねえか--------------!!」

 真っ青な顔を更に真っ青にしたアクアは、起き上がった。ふらふらとしてはいるが。

「えっ、ちょっと待ってください!! 今日、”ガブリさん”もあそこに--------」

 ---------バトル・オブ・ホウエン、勝ち抜いたようだな。
 ---------あたぼーよ! 3500位中、100位以内に入ったぜ!
 ---------百の位から下を全部覚えていないところ、お前らしいが……まあ、良い。精進しろよ。
 ---------それだけかよ。けっちぃな。
 ---------何だ? 何か欲しかったのか?
 ---------別に、そういうわけじゃねーけどよ。
 ---------なら、くれてやる。
 ---------何をだよ。
 ---------エース。エースの座だ。
 ---------ちょ、マジで言ってるのかよ!! 
 ---------マジだとも。私が相応しいと認めた男だ。エース、にな。

「姉御……!」
「ガブリさんも心配だけど、フレイちゃんも、大丈夫かな……?」
「そういえば、この間退院したとは聞きましたが、忙しくて大会終わってから直接は会っていませんでしたね--------!!」

 ---------ねえ、ボマー。あんたが戦ってる姿見たら、あたしも勇気が出るかな……? 
 ---------ああ? 知らねぇ。んなもん、テメー次第だろ。復帰できるかできねえか、なんてよ。それよか、今は怪我を治せ。
 ---------冷たいなー、ちょっとくらい心配してくれたって。寒いんだよ……。最近。あたしの身体の中の炎が消えちゃいそうなくらい、寒いんだよ……。あんな負け方したからかな。
 ---------弱気になってねぇか、お前。幾ら入院してるからって。
 ---------いっつも、あたしのことをうるさいって言うじゃん。
 ---------お前は煩いくらいが丁度良いんだよ、特攻お化け。
 ---------うるさい、脳筋の癖に……。絶対、無様な試合はしないでよ!
 ---------分かってら。俺は最強のエース、ボマー様だぜ。

「フレイ……!! ちくっしょぉぉぉーっ!!」

 ボマーは携帯獣の姿ならば飛べることも忘れて、駆ける。それをアクア達は追っていく-----------!
 
 ***

 
 『静炎邸』は別プレイヤーのサーバーから来ていた、シャンデラが建てた、ゴーストポケモン用の古びた見た目の居住施設だった。
 しかし、これがゴースト達には大うけで、多くのものが此処に移り住んだくらいだ。
 そのシャンデラは嬉々とした様子でこのサーバーからは去っていった。一人娘にこの館のやりくりを任せて。
 どうやら、一人娘に館のきりもりの修行をさせるのもあるらしい。別サーバーからたまに様子を見に来る。
 さて、その一人娘の名はフレイというが-----------レートでもいつも此処一番というときに活躍していた。
 しかし、それが祟ってか。クリスマスの日、大怪我を負い、しばらく入院することになった。
 無理をし過ぎたのだ。ある対戦で、一撃必殺技の絶対零度を炎タイプでありながら食らったのだ。しかし、負けず嫌いな彼女はその後の対戦で、自分から炎統一でパーティを勝手に率いていくも、最後はメガオニゴーリのフリーズスキン大爆発に巻き込まれて、倒れた。
 何でこの世界観に病院とかあるんだ、とかそういう質問は無しでお願いします。

「フレイさん----------何も無ければ良いんですけど!!」
「俺、まだ会ってあいつに何にも報告してねぇんだよ!! だけど、ゴーストだから死にはしねぇよ! 死には!!」

 ----------問題は、死ぬ以上に痛めつけられるってことだけどなっ!!

「全く心配だ……!」
「そりゃ、レートでもしょっちゅう組んでいましたからね、あんたら」
「小指と小指が赤い糸で繋がってるみたいだったねー!」
「ばーっきゃろぉーっ!! スカイスキン捨て身タックルでぶっ飛ばすぞ!!」

 赤面している辺り、こいつ色恋沙汰は理解できたんだな、とアクアは察してやった。もっとも、まだ付き合うとかそういう段階ではないらしい。
 2人は顔を合わすといっつも口喧嘩してばっかりだったし。
 が、んな茶番をしている暇は無い。
 すぐに館へ駆け込んだ。
 そして、中へ入ると薄暗い洋館のそれだが------------悲鳴が聞こえた。

「誰だ!?」
「たぶん、住んでいるゴーストポケモンが襲われたんですよ!!」
「いや、今の悲鳴は------------!!」

 ***

 2階、大広間。そこには多くのゴーストポケモンが倒れていた。いずれも、ガチの育成を受けた強者ばかりにも関わらず、だ。
 そして、その死屍累々の山の中には(ゴーストポケモンには死ぬとか無いけど)ガブリの姿があった。

「姉御ォーッ!!」

 駆け寄るボマー。メガシンカした姿の彼女だったが、すぐにそれは解けて人間体に。
 そして、声を掛けても返事をしない。あの彼女が。

「出てきやがれ!! 誰がこんな真似をォーッ!!」

 
 ぽつん。


 音がした。
 見れば、中央に少女の姿があった。
 制服姿の彼女は、ボロボロだった。
 そして、泣いていた。

「ごめんね、ボマー。歯が……立たなかった」

 空ろな目で、壊れたように、何度もごめん、ごめん、ごめん、と繰り返す。

「寒いよぉ……あの時みたいだ、あはは……痛いよぉ、冷たいよぉ……」

 
 どさり


 倒れた彼女は、そのまま動かなくなった。

「フレイ、おい、何でっ……!!」
「最強のメガシンカのエネルギー……メガシンカポケモンの中でも、メガラグラージとメガガブリアスは特に最高だった。そして、その他のポケモン達のエネルギーも」

 声が聞こえる。
 その声は、寒気がするほどボマー自身に似ていた。

「われわれは、貴様らに復讐するために此処にいる!!」

 3つの靄が目の前に現れる。
 2つはポケモンの姿をしている。
 そして、中央には------------ボマーと瓜二つの男が立っていた。

「多くのタツベイの恨み……此処で晴らさせて貰う!!」

 ---------多くのタツベイ、だと!?
 アクアはその言葉に引っかかりを覚える。タツベイ、即ちボマーの種族・ボーマンダの進化前のポケモンではあるが。
 しかし、そんなことはボマーには関係なかった。

「てめぇ……俺の仲間を……もう、プッツンしそうだぜ!!」

 怒っていたのだ。ボマーは最初から。アクアを止めたときも。

「ならば、ポケモンバトルで勝負だ。我々はこの”完全体”をもって、お前達と対等の戦いに勝つことで、存在を認められるのだ!!」
「……おい、アクア。チャモ。戦えるか」

 言ったボマーに気おされ、2人は頷くしかない。
 そして、ボマーは叫んだ。

「胸糞悪ィ……こいつはぶっ飛ばす!!」