二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- パート7:暴龍警報(2) ( No.104 )
- 日時: 2015/04/06 13:13
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「そうか、分かった」
女・ガブリは呟くように言うと、公衆電話の受話器を置いた。
「無茶をしていなければ良いのだが」
身体を重く引きずるように、そのまま自分の病室(個室)向かう。頭には未だに包帯が巻かれており、腕も折れてギプスで固定されたままだ。
ナノマシン療法を持ってしても、治すのは時間が掛かるといわれた。
「メガシンカを吸収する敵……影の携帯獣。こいつらも気になるが」
彼女からすれば、もっと気になるのは”彼”から先ほど聞いた話にあった、龍の骨とセブンスドラゴンだった。
彼らが頂龍山域に行くに辺り、心配だったのは山域の厳しい地形だけではなかった。
龍の骨、だ。
(龍の面汚しにして私達のルーツ……セブンスドラゴン。自制心が無く、暴れることしか頭にない、愚か者達……)
戦うことしか頭にない愚か者というのは、強ち間違いではない。
このセブンスドラゴンは、セントラル・フィールドで度々起こっている野生ポケモンのデータの塵が、対戦用ポケモンのデータを吸収して凶暴化する現象と同じ過程で産まれたとされている。
それらは、自制心がなく、言葉がなく、理性がない。
ただ本能に則って、暴走し繁殖し続ける凶悪なデータ生命体となっている。
セブンスドラゴンも例外ではなかった。
自分がドラゴンタイプであることに誇りを持つガブリからすれば、龍の黒歴史、負の象徴、忌むべき存在であった。
(セントラル・フィールドの始末屋や政府の掃討班でさえ、奴らを倒すことは出来ず、骨として封印することになったという)
病室のベッドに寝転がり、腕を吊って彼女は溜息をついた。天井から浴びせられるナノマシンのシャワーによって、身体の傷をゆっくりと癒して行く。
複雑なのは、自分がそのセブンスドラゴンと同じ種族だということか。
誇り高い龍の姿を借りて暴れたのはセブンスドラゴンの方であるが、やはりこの一件で龍の名が汚れたということは、ガブリは痛感していた。
(心配なのはあいつらもだが)
セントラル・フィールドに残ったまま帰ってこない旧友を思い出す。
かつて、杯を飲み交わした仲。かつて、最強を決めるために拳を交わした仲。
両方共メガシンカを得たのが嬉しくて、自分が酒に弱いのも忘れて全部リバースしたのも良い思い出である。
(……飲みすぎていなければ良いのだが)
***
「どうでしたか」
「んあ?」
タブレット型端末をジャージのポケットに仕舞い、ボマーは後輩に曖昧な返事を返した。
大して日も強くないのに、いつものサングラスを拭いてから、目に掛けて彼は再三返答する。
「気をつけろ、ってな。もうガキじゃないのによ」
「貴方の教育係だったから心配なんですよ。今回の行き先が頂龍山域だから尚更です」
「ガブリ姉の方が俺は心配だ」
「相当、酷かったわよ。あのときの戦い」
フレイが割って入ってくる。
影のメガボーマンダが静炎邸に現れたときのことだろう。
「ガブリさん、ボロボロになるまで立ち向かって。最後に無茶してメガシンカまでして真っ向から戦ったの」
「素早さが落ちる自分のメガシンカを嫌っていたからな。強いて使うとしても、無双体制が整ってから、尚且つメガシンカ前の素早さで戦える1ターンをタイムリミットにしていやがったし」
「見ているのが嫌だった。でも気付いたの。先陣切って無茶ばっかりするあんたのスタイルは、この人から来てるんだって」
「ケッ、余計なところばっかり似ちまった」
さて、とボマーは目の前の山を見上げた。各エリアをつなぐワープ装置の中から外を見渡す。
全員がいることを確認し、呟くように言った。
「此処が、頂龍山域だ」
***
「おいコラ、此処は立ち入り禁止だ!」
この台詞は何度聞いただろうか。門番と思われるポケモンが、頂龍山域への山道を閉ざしていた。
しかし、修行場でもあるこのエリアが閉ざされているということは、山の中で何かが起こった証拠であろう。
「ちょっと待てコラ。こちとら急いでんだ、とっとと通せ------------」
「妖花園域(ヨウカエンイキ)から何体もの妖精を送り込んで対応している! 邪魔をしないでいただきたい!」
「……あ? わざわざ向こうからフェアリーポケモンを送り込んだァ?」
となると、である。余計に心配になってきた。
嫌な予感がする。山域には暗雲が立ち込めており、いっそうメンバーの不安を駆り立てた。
「なあ、これってヤバいんじゃねえか?」
「そうです……何か、空気がピリピリするのです」
「あっくん、怖いよぉ……」
「これは、まさか……そんなはずはねェと思いてェですがねィ」
「ボマー……とても嫌な予感がしマース」
アクアとフレイがボマーの横に駆け寄った。
「先輩、これは僕らが思っている以上に事は重大かもしれません」
「ボマー、もしかしてこれって……」
「ああ。ヤな感じがするぜ、これ……。おい、通せ!!」
「通さん!!」
「はいはい、分かってるよ、だが今は----------」
直後、原型になったボマーは、すぐさまメガシンカをする。
え、と戸惑いの表情を浮かべる2人の門番。
そして----------ボマーの口に紫色の破壊のオーラが溜められた。
直後、門番は自らの命の危険を察した。
【ボマーの破壊光線!!】
ずどん、と大きな音が響き、山道に巨大な穴が開いた。
門番は溜まらず避けて、腰を抜かしていた。
一瞬、反動で失神していたボマーだったが、すぐに意識を取り戻し威圧感たっぷりに--------
「通せ、さもなきゃ次はてめーらが微塵になる番だ」
と唸るように言った。
ヒィ、と悲鳴を上げて門番は逃げて行く。
「相変わらずこういう脅しは得意なんだから。……カツアゲとかしてないでしょーね」
「しねーよ、アホ」
擬人化体に戻った彼は、山道に踏み込む。
「おいおめーら! とっとと行くぞ--------------」
と、叫んだそのときだった。
「グオオオ!!」
直後、何かがボマーに飛び掛り、押し倒した。
腕を捕まれて身動きが取れない。凄まじい力だ。
それもそのはず、相手は巨大なポケモンの原型であるからだった。
アクアは目を凝らし、突然現れたポケモンの種族名を呟く。
「……オノノクス!?」