二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート7:暴龍警報(4) ( No.106 )
日時: 2015/04/07 23:33
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「やっぱり最強よ、あの2人は……」

 慄くように呟くフレイ。2人のことは知ってはいたが、その連携はBOHの頃よりも強くなっているように感じた。
 力だけは馬鹿にあるボマー。
 頭脳はあるが火力の足りないアクア。
 この2人が協力すれば、怖いものは無い-----------


『バックアッププログラム、再起動。肉体を再生します』


 ----------そう、思っていた。
 オノノクスが再び、肉体を再生させるまでは。
 さらに、それだけではない。オノノクスが現れた場所は、先ほど奴を倒した場所ではなかった。
 完全に再生をする場合、復活と同時に、近い場所ならばワープすることが可能なのか。
 一番衝撃を受けたのは、ウイルスを作ったアクアだった。

「ば、馬鹿な!! ウイルスプログラムを送り込んで、バックアップを破壊したはずなのに!!」

 いや、待てよ、とアクアは自らそれを否定した。
 ----------焦る余り、盲点があった!! バックアップする前のデータも、同じく自分のバックアップを作る能力があったとすれば!? コピーがコピーを作れないだなんて、いつ誰が言ったんだって話だ!! むしろ、それが当然のことじゃないか!!
 自ら増殖し、永遠に死ぬことがない。
 故に奴は癌細胞と揶揄したのは、僕じゃないか----------

「ギッシャアアアアア!!」


【オノノクスの逆鱗!!】


「ひっ----------」

 情けない悲鳴が漏れたが、今のアクアには圧倒的な実力差への恐怖が募り募っていた。
 突貫するオノノクス。腰を抜かしたアクアは、そこからまともに動くこともできない。 
 ----------奴らが誰にも倒せなかった理由がようやく分かった。バックアップを破壊しても破壊される前にバックアップデータが再びコピーを作る。そうやって、奴らは電脳空間の中にどんどんコピーをストックしていたのか----------!!
 いとも容易く行われるえげつない行為。それは、倒しても倒しても復活するという、この化物の行動だった。


「危ねぇっ!!」


 気付けば、そこにはボマーがたっていた。

「おらああああ!!」

 渾身の捨て身タックルをぶつけた。衝撃波が、もろにオノノクスへ到達し、その肉体を一瞬で肉片と化させた。
 
「がはっ」
 
 だが、次の瞬間。
 胴から血を吹き出し----------彼はその場に崩れ落ちる。
 オノノクスの刃が彼の胴を裂いていたのだ。

「先輩ッ!!」

 叫んだアクアは、急いでボマーに駆け寄る。フレイも駆けつけて、傷薬(ナノマシンを噴射し、傷を癒す応急措置機器)を取り出した。


『バックアッププログラム、再起動。肉体を再生します』


 しかし、そこには既にオノノクスが迫っていた。
 冷や汗が2人の首を伝う。万事休すか、と。
 
「ボマーをよくも、やったネェェェェ!!」

 それを遮るように、モーターが再びフロスロトムとなって、吹雪を超至近距離で放とうとした。
 しかし。二度も同じ手は食らわない。

「ギッシャアアアア!!」

 発射口である冷蔵庫の扉をふさぎ、斧のような牙をギロチンに見立て、そのままモーターの胴を一刀両断にした。


【オノノクスのハサミギロチン!!】


「うっ……」

 幸い、モーターの身体自体は実体のないプラズマだった。普通のポケモンのように”肉体”が一刀両断されることはない。
 しかし、家電キューブに憑依していたため、斬られたダメージは諸に本体へ来る。
 擬人化体に戻るも、腹から大量のナノマシンが吹き出し、そのまま倒れる。

「モーター先輩っ!」

 チャモが咄嗟にオノノクスへ、飛び蹴りを噛まし、巨体のオノノクスを吹っ飛ばす。
 しかし、オノノクスは怒りのままに吠えて再び襲い掛かっていた。怯む様子は全くと言って良いほど無い。
 逆に、チャモの方が怯んでしまったそのときだった。

「ち、ちくしょぉぉぉ!! 俺達の仲間をムシケラみてーにしやがってぇぇぇぇ!!」

 レイドの触手がオノノクスの脚に絡み、捉えた。
 
「あっくん、先輩をお願い!」
「ま、待ってくださいチャモさん!」

 止めるアクアの声も聞かず、気合を込めた咆哮と共に、チャモが頭蓋目掛けてオノノクスへ飛び膝蹴りを放った。
 固定された身体に、それをぶつけることは容易い。
 確かに、その一撃で頭蓋を一瞬で粉砕することはできた。
 しかし。



『バックアッププログラム、再起動。肉体を再生します』

 
 頭蓋は再び再生し、チャモの足首を掴み、地面へたたきつけた。
 声にならない悲鳴を上げたチャモはそのまま、動かなくなった。

「動くんじゃ、ねえええええええええええええええええ!!」

 レイドが叫んで、オノノクスの身体を縛っていた触手を強く、強く締め上げた。
 仲間をこれ以上は傷つけさせない。その意思は本物だった。
 だが、そんなもので暴龍はとまらなかった。
 

 ブチブチブチィッ!!


 生々しい音が響いた。
 レイドの触手が全て、引き千切られたのだ。元々物理アタッカーを拘束するものではないのだ。
 え、と千切れた触手を見てレイドの目が赤く充血していく。


「ギ、ギャアアアアアアアア!!」


 直後、痛みが全身を走り、絶叫したレイドはそのまま立ったまま沈黙した。

「レ、レイドさんまで……!」

 戦慄。
 そして、オノノクスの次の標的は、アクアに定まった。
 理由は簡単だった。アクアが自分の大事なバックアップデータに踏み込んだ夷敵に他ならなかったからだ。
 それはアクアも分かっていた。
 だから---------

「ガメリオさん。フレイさん。ムゥさん。僕がこいつを足止めします!! 倒れた皆さんを連れて、逃げて!!」
「そんな、ダメよ!! 貴方も一緒に---------」
「待ちな、アクア。これを持ってけ」

 ガメリオの手から投げられたものが、アクアの手に渡る。
 それは、髑髏のマークが付いた針のような道具だった。

「スタンニードル。相手の神経機関を麻痺させて、一時的に動きを止める。これを至近距離から撃ち込めばオノノクスの動きを止められる。さっきも使ったんだが上手く刺さらずに折れちまった。これ予備な」
「なるほど、分かりました!」
「だが、上手く刺さらずに折れたら最後だ。ド真ん中狙え」
「はいっ!」
「ちょ、ちょっと、アクア君!!」

 フレイの止める声は既にアクアの耳には届いていなかった。
 再び、残りのメガシンカパワーを振り絞り、アクアは突貫する。
 冷気を纏わせた拳を放った。

「さ、行くぜィ。アクアの男気、無駄にはしねェ!」
「ですっ!」
「しっかたないわね……後輩ばっかに無茶はさせられない!」

 気絶したレイドを素早い動きで担ぎ、ムゥが原型になって、ボマーとチャモを背中に乗せ、フレイがモーターに肩を貸した。

「ムゥちゃん、あっくんは……」
「今、相手の動きを止める針を打ち込んで隙を作ろうとしてるんです!」
「うらああああああああ!!」

 叫び、氷の拳を何度も放つアクア。
 しかし、何度も再生を繰り返すオノノクスは、それさえも全く気にしていないように見える。
 そして、自らの牙をギロチンの刃の如く、再び長くした。
 アクアは気付いた。自分がミスを犯したことに。
 確かに近づき、ど真ん中を狙えば針は打ち込める。しかし、この位置は、ハサミギロチンの射程圏内-----------

「はああああ!!」

 横から、蹴りが入った。
 そして、オノノクスを吹っ飛ばす。
 彼がふと見れば、そこにはチャモの姿があった。

「貸してあっくん! それはあたしが打ち込むから、逃げて!」
「ですけど---------」
「あたしは足手纏いだけど、あっくんは皆に必要とされてるから!」

 チャモはそのままアクアからスタンニードルを奪い取る。
 そして、振り向きざまに----------

「いっけええええええ!!」

 自分の背後へワープし、再生していたオノノクスの腹へ針を撃ち込んだ。
 流石の速さといったところだろう。アクアの速度では到底成し得なかった。
 だが。








 チョキン











 確かに、オノノクスの動きは止まった。
 だが、それは---------------


「え、チャモ……さん」













 ハサミギロチンでチャモの首を跳ね飛ばした後だった---------------