二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- パート7:暴龍警報(6) ( No.110 )
- 日時: 2015/04/11 21:47
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「----------入るわよ」
彼が1人になりたいと言っていたのは、廊下で目が腫れぼったくなっていたムゥに聞いた。
そして、「ち、違います、泣いてなんか……」と当の彼女は言っていた。仲間になった当時より、精神的に強くなったのは分かるが、大泣きしたのが諸分かりだった。
さて、問題は、アクアに何と言葉を掛ければ良いのか、ということだ。
「何で、あたしが……」
とは言ったものの、今のところ使い物になりそうなのが自分くらいなのが、その理由であることは重々分かっていた。
今のところ、ほぼ軽症・無傷で済んでいるのは自分とガメリオ、ムゥくらいなものであるし。
アクアもあの後、かなり暴れまくって怪我をしているのだ。
「アクア君?」
ベッドを見ると、びくり、と肩を振るわせる影。言うまでもなくアクアであった。
「……1人にしてください」
「そういう訳にも行かないわ」
パイプ椅子をベッドのすぐそこに立て、彼女はそこに座り、彼に話かけた。
電気を付けた。枕には涙の後が、くっきりまだ残っていた。
「何の為にあたし達が居ると思ってるのよ。辛い事は全部吐き出してしまえば、楽になるから」
しばらく黙っていた彼だったが、吐き出すように言った。
「最期に言っていたんです」
「え?」
「チャモさんが、”自分は足手纏い”って」
確かに、此処最近のバトルビデオを視ても、彼女の活躍は芳しいものではなかった。
いや、それどころか影の携帯獣との戦いでは、一度も敵を倒せていなかった。だが、そんなことを言えばレイドもなのだが。
「僕には、彼女が自分から死にに行ったかのようにさえ見えたんです!!」
「アクア君……」
「僕は、こんなに近くにいたのに、彼女が悩みを一度でも聞いたことがあったでしょうか、彼女をもっと理解しようとしたでしょうか。いや、できなかった!! その前に、チャモさんは------------」
消えてしまった。
「……居なくなったって実感が沸かないけど、やっと気付いたんです」
自嘲するような笑みを浮かべて、アクアは言った。
「僕は、チャモさんが好きだったんだ、って」
それが、もう戻ってこない彼女への、精一杯の告白だった。
見ていられなかった。だが、フレイは言葉をつむいだ。
「まだよ……チャモちゃんは死んでなんかいないわ。電脳医学も勉強していたあんたが一番分かってるはずよ!!」
驚いたような顔をアクアは向けた。
急き立てる様に、フレイは言う。
「チャモちゃんがあんたとの思い出を無くしたのなら!! あんたがまた新しく思い出を作れば良い!! 誰のことも覚えていないなら、また1から覚えさせれば良い!! 記憶が消えたって、記憶が消えたって、チャモちゃんはチャモちゃんじゃない!!」
ゴーストタイプである彼女だからこそ、分かっていた。
この世界の生命体の真の死の概念は、忘れられたときに、だと。
「でも、もう彼女は僕らの事を覚えていない!! 人格、行動、それはオリジナルと同じでも、バックアップは所詮、バックアップなんだ!!」
「信じてあげてよ!! 人格、行動がオリジナルと同じなら、また元のあの子に戻せるかもしれないんだよ!!」
それに、と彼女は続けた。
「データ生命体が本当に死ぬのは、大切な人に忘れ去られたときなのよ!! あんたがチャモちゃんのことを過去の人にしたら、あの子は本当の意味で死んじゃう!! あの子を助けられるのは、あの子の一番近くに居た、アクア君だけなんだから!!」
面食らったような表情を、彼は浮かべた。俯いて、何とか反論しようとしたが、何も言葉は出てこなかった。
だから、最後にヤケクソと言わんばかりに、
「……無茶言わないでください!!」
と叫ぶように言った。虚勢をはって、無理だ、と言いたくて。
とても、自分に出来るとは思えなかった。
「僕なんかが、僕なんかが---------------」
「ねえ、チャモちゃんのこと、好きなんでしょ」
「できるわけが----------」
「違うわ。あの子が帰ってきたときのために、何か真っ先にできるのは、あなただけ---------だから」
フレイは、彼を抱き寄せてから、言った。
「----------今は、思いっきり、泣いていい」
雫が零れた。塞き止められていたものが吐き出されるように、彼は泣き続けた。
「大丈夫。あたし達が、いるから。味方がいるから」
***
「どこに行くつもりだ」
病室の窓に脚を掛けて、そこから飛び出そうとする馬鹿に、女は声を掛けた。
「あー、見つかっちまったか」
「アホが。折角、言わんこっちゃない、この馬鹿マンダと言いにいってやろうと思っていたのに。今度は貴様が死にに行くのか」
「はっ、悪いが後輩が1人殺されてんだ。黙ってられるかってんだ」
馬鹿は女に向かってそう言った。
「つか? ガブリ姉こそ大丈夫なのかよ」
「私の心配は要らん。だが、問題は貴様であろう!! 何の対策も無しに、セブンスドラゴンに挑もうと思っているのか-----------ボマー」
はっ、と鼻で笑った彼は窓に掛けていた脚を下ろした。
「悪いが、病院で入院している様は主役には似合わないだろう?」
「そうだな。よって、今から教える場所も、お前には似合わないとは思う」
「んあ? 何だ」
ガブリは一呼吸置いた後、まずは----------ボマーの腹を掴んだ。
ダイレクトで、傷口がぐにゃり、と歪み、今まで余裕そうな笑みを浮かべていた表情が引き攣る。
そして、次の瞬間どうなるかはお察し。
「ギエエアアアアア!!」
「まず、貴様が行くべきではない。残るメンバーに行かせるつもりだ。だから、しばらく休んでおけこの愚か者」
ガブリは、その隙に絶叫するボマーを横目に病室の窓に、南京錠を掛けておき、脱出ができないようにした。尚、この南京錠はクレッフィの鋼から作られているため、ドラゴン避けになる。ドラゴンのボマーが突破するのは不可能である。
「わ、分かったよ、ガブリ姉!!」
ひぃひぃ、と息を切らして痛みを訴えるボマー。
流石、教え子に対しても第四世代の破壊力SSの方は容赦ない。
「さて、一応お前にも伝えておくが、その場所とはずばり---------図書館だ」