二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート7:暴龍警報(7) ( No.111 )
日時: 2015/04/14 21:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***


 ほぼ、同時刻。
 妖華園域フェアリー軍団-------------

「あ、ひぃ---------やめて---------」


 
 ぐしゃっ


 
 -----------全滅。


 ぐしゃっ、ぐしゃっ、ぐしゃっ、どーん、どーん、どーん---------

 
 物が潰れる音は、途中で地面を踏み鳴らす音に変わった。
 目の前の敵を完全に滅したドラゴン----------カイリューは、自らの主であるドラゴンが自分を呼んでいることを察し、頂上へ向かった。
 羽を羽ばたかせ、着いた先には自分と同じ能力を持つ5体の龍が、1人の男の前で頭(こうべ)を垂れていた。
 キングドラ、ガブリアス、サザンドラ、オノノクス、ヌメルゴン。
 遅れてやってきたカイリューも、目の前の男への忠誠を示すように、ひざまづき、同じように頭を下げる。

「流石の働きと言ったところだな。ククク」

 目の前の男からも龍のオーラが溢れ出ていた。男の前にいる6体の龍は、ゾッとしたかのように肩を震わせる。
 恐怖。
 本能のままに暴れてきた彼らが、初めて恐怖を覚えた相手は、目の前にいる男だった。
 彼らの間には、その瞬間、いがみ合いをする思考、共闘して目の前の相手を倒そうという思考も消えており、以降彼に従うようになったのだ。
 絶対的支配の基本は、絶対的恐怖にある。
 逆らおうという意思さえも潰す目の前の男の覇気に、選択肢など与えられるわけもない。
 さて、6体を値踏みするように見た男は、呟く。


「良いだろう。お前達も俺達と同じ、”影”にしてやる」


 男は再び、笑みを浮かべる。
 狂気的なカリスマを放つ笑みだった。
 そして、次の瞬間だった。
 カイリュー、キングドラ、ガブリアス、サザンドラ、オノノクス、ヌメルゴンの身体から、黒い稲妻が迸る。
 6体はたちまち、漆黒の龍となった。
 
「ハハハ!! これで貴様らは影の携帯獣となった! ”龍帝級(ドラゴンロード)”とでも名づけるか、ハハハハハ!!」

 さて、と男は目の前の6体に命じる。


「中央区域を破壊しろ」


 ***


「図書館だァ?」

 怪訝な顔でボマーはガブリに返した。
 もう、大人しくベッドに寝転がっていたが。

「そうだ。中央区域の電脳図書館。セブンスドラゴンに関する書物は、そこにしかないらしい。それだけでなく、そこにあるコンピューターはあらゆるサーバーに接続できる」
「ああ、そうか」


 言ったボマーは、がたり、と起き上がった。そして、ナチュラルな流れでベッドを降りた。
 え、ちょ、おま、というガブリの言葉をガン無視しながら。
 そして、病室の扉に手を掛ける。

「待て待て待て!! 行かさないぞ、お前は!!」

 今にも病室から出て行こうとするボマーの肩を掴み、ガブリは無理矢理彼を押し戻そうとする。

「行かせろ、ガブリ姉!! 後輩がやられてんだ。俺にはこれ以上黙って奴らの好きにはさせられねえ!!」
「大馬鹿者が!! お前が何故わざわざ出向く必要がある!! お前を此処から出せば、図書館は愚か、セブンスドラゴンを倒しにいく、とまで言い出すかもしれんからな!!」
「うるせぇ!! んなもん、最初っから決めていた!! チャモを殺した奴を倒す方法があるなら、それは俺がこの眼で確かめてぇ。そして、すぐさまセブンスドラゴンをブチのめしに行く!!」
「分からない!! 何故、お前が無茶をする必要があるのかも!!」
「うるせえって、言ってんだろ!!」

 ガブリの手を逆に掴み返し、詰め寄るようにボマーは言い返した。


「俺はぜってーに許さねえ。仲間を4人も、俺の目の前で傷つけたあいつが!! 特に、チャモの記憶はもう戻らねぇし、アクアの心の傷も一生癒えねえだろう!! 言ってただろ、ガブリ姉!! ドラゴンタイプは正義の種族だって!! ドラゴンは強さと誇りの象徴だって!! そのドラゴンの姿と名を騙る連中を、俺はこれ以上、野放しにはでき------------」

 
 そこで、言葉は途切れた。
 パシン、と音高い平手打ちと共に。
 しばらく、彼は呆然としていた。
 小さい頃。いつも、悪いことをした後には、彼女の平手打ちが浴びせられ、「大馬鹿者!!」と怒鳴られるのが決まりだった。
 だが、今回は違った。


「私が心配しているのも知らずに!!」


 彼女は、彼を咎める言葉ではなく、自分の心情を叫ぶ言葉を発したのだ。
 ガブリは、体勢が崩れたボマーの胸倉を掴み、病室の角に追い詰め、捲くし立てるように続けた。
 彼女の顔は、怒りだけではなく、悲しさも綯い交ぜだった。

「ガバイトの頃から、お前を見てきた!! タツベイだったお前が成長するのが楽しみだった!! 腐っていたお前が、バトル・オブ・ホウエンでエースを張るようになるまでに成長したのを見て、私は本当に嬉しかった!! なのに!! お前は今度こそ、死にに行くつもりか!? 後輩の二の舞を踏むつもりなのか!?」

 だが、ボマーはその程度では怯まなかった。
 自分のやろうとしていることが、例え咎められたとしても、正しいと信じているからだ。
 己の力を信じているからだ。
 
「安心しろ。ガブリ姉。仲間を連れて、だなんて馬鹿なことは言わねえ。俺は1人でドラゴンの頂点に立つ」


 そこまで聞いて、半ば諦めたかのように、ガブリは彼の胸倉から手を離した。そして、そのまま何も言わずに、病室から出ようとする。
 そして、去り際にボマーへ向かって言った。


「お前をぶった所為で傷が痛んでしまった。私は今から少し休む。間違っても!! その間に病室を抜け出そうだなんて考えるなよ。フレイ達を連れて図書館に行って、セブンスドラゴンを倒そうだなんて考えるなよ。絶対だ!!」


 翻訳。
 今のうちに病室を抜け出して、フレイ達を連れて図書館に行き、セブンスドラゴンを倒せ-----------ということであろう。
 あー、分かったよ、と適当に返す。
 そのまま、自分の病室へ彼女は戻って行った。
 それを見届けて、ボマーは廊下に出る。幸い、見回りの看護婦は居ない。
 ただし、フレイはそこに居たが。

「どうしたの、あんた」
「行くぞ、フレイ」
「ちょっと待ちなさい。その身体でどこに行く気」
「----------頼む。ガメリオとムゥも一緒だ」

 いつになく真剣な表情の彼に気おされ、フレイは溜息をついた。
 この男に、昔から規則だのルールだのは通用しなかったのを思い出したのだ。最近は少し丸くなっていただけで。

「で、本当どうしたのよ」

 フレイは言った。


「ガブリさん、さっきすれ違ったけど--------------泣いてたわよ」


 喉が詰まるような衝撃だった。
 罪悪感が一気に押し寄せてくる。
 しかし、それでもだ。彼の思いは変わらなかった。
 -----------すまねえ、ガブリ姉。俺は最低の教え子だ。俺は世界一の馬鹿だ。
 

「ガブリ姉? 食あたりでも起こしたんじゃねーか?」


 -----------命を賭しても、


「それよか」


 -----------貫かねえといけねえもんが、あるんだ。




「行くぞ、電脳図書館に」


 ***


「ボマー、強くなったな。私の平手打ちで泣かなくなるとは」


 古き日の思い出が蘇る。
 -----------この大馬鹿者!! 何で、こんな悪戯をした!!
 -----------うわーん、悪かったよ、ガブリ姉!! 
 -----------謝るなら、私じゃなくて、あいつに謝って来い!!
 

「行き先をチラ付かせれば、こうなるのは最初から分かっていた。合格だ」


 とはいえ、先ほどの剣幕で放った台詞は半分演技ではなかった。
 彼女の本心も、少なからず含まれていた。
 彼がいきたくないと言うなら、それでも良かった。
 だが、それは余りにもボマーらしくなさすぎる。


「----------私はもう少し-----------休むとするよ」