二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- パート7:暴龍警報(8) ( No.112 )
- 日時: 2015/04/16 23:43
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「で、どういうことですか」
流石のムゥも、苛立ちが隠せなかった。自分達を呼び出し、病院を抜け出して図書館に行くというのだから、当然と言えば当然であるのだが。
一方の、ガメリオは、若干面白そうな笑みを浮かべていたのだった。
「ガブリ姉が言うには、だ。セブンスドラゴンを倒す方法は、どうやら電脳図書館の蔵書に記録されている」
「それだけじゃないわ。電脳図書館は、このボックスサーバーのあらゆるバックヤードスペースに繋がっているの」
「なーるほど、それが目当てって訳ですかィ」
ケケッ、とガメリオが笑った。
「前から電脳図書館とやらに興味があったんでさァ。それに、バックヤードベースとやらも気になるますゼィ」
バックヤードスペース。それは、ボックスの世界を構築するための、裏舞台のようなものである。
電脳図書館が作られた理由は、それらのスペースから常に情報を採取し、”蔵書”として管理するために他ならない。
それだけではなく、インターネットのデータから取り寄せた電子図書もばっちり保管済みだ。
つまり、この電脳世界のありとあらゆる情報が集まっている場所、それが電脳図書館なのだ。
さて、いつものボマーならば此処でボケることだっただろう。しかし、妙に真剣な面付きで、3人を前にし、言った。
「チャモの記憶を頭ごと持っていきやがった、あのオノノクスだけじゃねえ、セブンスドラゴン全員を倒すため、俺は行くぜ。そこでお前らに頼みがある」
確かめるように、彼は続けた。
「---------残ったお前らで、俺に協力してくれねえか」
それは、仲間への一種の警告でもあった。
彼が何をしようとしているのか。
「着いてこなくても俺は構わん。むしろ、此処で首を横に振ってくれることを、俺は望んでいる」
もう、全員が分かっていた。
セブンスドラゴンの倒し方を調べるだけで、この男が終わらせるわけがない、と。
殴りこみに行くのだ。手負いの体で、頂龍山域へ。
こんな馬鹿に協力する馬鹿がどこにいるだろうか。ボマーは、無理を承知で言っていた。
「---------今更何言ってんの。あんた1人じゃ、犬死するだけでしょ」
しかし、それは違っていた。
「ボマーさん、私達だって悔しくないわけじゃないんですよ」
「旦那。あんたが死地に行くってんなら、俺も行く。それが筋を通すって奴ですぜィ」
残った2人も、ボマーに着いていく覚悟を見せていた。
はっ、と鼻で笑い、ボマーは背中を向けて先に下の階へ降りるエスカレーターへ向かっていく。
「お前ら……本当、馬鹿だよ。俺に負けず劣らずの……」
目に溜まった雫を見せないように。
***
中央区域、電脳図書館。
いつもの服を着ていたら、ほぼ誰にもバレなかった。後で騒ぎにはなるではあろうが。
しかし、やたらでかく、古代の建物(パルテノン神殿ぽい何か)だとかそういうのを模した外見のこの図書館の前で、感嘆の声をボマーは漏らしていた。
「すっげーな。こんなん誰が作ったんだ」
「オーダーはうちのマスターらしいわ。美術系(自称)の」
内装は、それこそ普通の図書館のそれであった。
ただし、しばらく誰も足を踏み入れていないらしい。これだけ大きな図書館でありながら。
その理由は、大体察せた。
この電脳社会でわざわざ図書館なんぞに足を運ぶ奴など、いないからである。
「おっ、忍者関連のコーナーもありましたゼィ」
ホログラムパネルが出現し、蔵書のエリアへ案内してくれる仕組みらしい。
そして、忍者関連の本を手に取ったガメリオは、うれしそうな顔でそれをすぐに読みふけり始めたのだった。
「というか、難しい本ばっかりね。人が寄り付かないのも分かるわ」
「一般的な書物も結構置いてあるんだがな。なにぶん数が多い上に専門的な書物にばっかり目が行って、一般の客には敷居が高すぎる」
何故、この図書館に人が来ないのか、大体分かった。
置いてある本が多すぎること。そして、難しい本が多いこと。
案内パネルが搭載されていても、本の在り処まで行くのに骨が折れる。
というか、受付だとか従業員は誰も居ないのだろうか。
さっきから、きょろきょろと辺りを見回してはみるが、不自然なくらい静かだし、誰も居ないのである。
と思った矢先だった。
「-----------珍しい。こんなところに人が来るとは」
男の声だった。
にこにこ、としており第一印象は笑顔の似合う好青年、だった。綿毛のマフラー、青髪、手に抱えた本。
優男という言葉が似合い、糸目が、余計にそれを引き立てる。
だが、何かを感じたのか、ボマーは他の3人が気づかなかったことを口に出した。
「……あんた、ドラゴンだな。俺と同じ力を感じる。だが、同時に--------不快にさせて悪いとは思うが、俺らが最も嫌う力も感じるぞ。何モンだ?」
「おやおや。鋭い」
男は笑顔を崩さずに返す。
「ちょっとボマー、何言って---------ああ、すいません! この馬鹿が失言を……貴方がこの図書館の従業員だったりします?」
フレイがボマーと男の間に割って入り、男に謝った。
だが、彼はあくまでも朗らかさを崩さない。
「いや、良いんだよ。むしろ、久々の来客に喜んでいるくらいだ」
「まあ、何であれ、だ。セブンスドラゴンについての蔵書が無いか、教えてくれないか」
図々しさを崩さず、ボマーは続けた。
が、しかし。男の様子に変化が現れたのは、見えた。
「……セブンスドラゴン?」
男の表情が曇った。
「どうして、それについて?」
「復活したってのが正解か」
「……私が此処に引きこもっている間に、一体何が……」
「おいコラ、今何て」
ああ、失礼申し遅れた、と男は謝罪の言葉を述べた。
そして---------
「私の名前は、トト。この図書館の主にして、マスターの最初のドラゴンなんだ」
決して彼らには無視できない身の上も述べたのだった。