二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- パート2:遮断された箱庭(1) ( No.12 )
- 日時: 2015/02/20 22:41
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「……お嬢様。お父様が心配になっておられました」
「大丈夫、と伝えておいて、ギルガメシュ」
「畏まりました」
ギルガメシュ、と呼ばれた男はサーベルを腰に刺した初老の執事だった。
静炎邸を運営するに当たって、サポート役は必須。フレイの父が彼女に付けたのが、ギルガルドの種族であるこの男だった。
「でも、ゆっくり休んでギルガメシュ」
「しかし、昨日の謎の敵……私の力を以ってしても倒すことは出来ず、結局貴方様の手を煩わせてしまいました。真に申し訳ありません」
「一番悔しいのはあたしよ。貴方達をこんな目に合わせてしまったもの。敵はボマーの同属、つまりボーマンダの姿をしていた訳だけど、相性の関係があったとはいえ、結局あたしは住人を守るどころか傷つけてしまった。それどころか、客人に大怪我を負わせてしまったわ」
管理人、失格ね、とフレイは自嘲するように言った。
「今回の件は、貴方様の過失ではないのです」
「……ごめんなさい。でも、自分を責めることしか、今のあたしには出来ないのよ」
皮肉ね、と彼女は続けた。
「破壊力SS……ボマーとあたしの他に、この称号を持つのは4人しかいないらしいけど、こんな物騒な称号の付く火力を持っていながらあたしは自分自身でさえ燃やすことが出来ないのが苦しいわ。そして……水なら兎も角、氷如きで消えてしまう弱い炎。皆を守ることすら出来ない小さい炎。いっそ、消えてしまいたい」
「自棄にならないでください、お嬢様」
「分かってるわ、冗談よ」
無理に軽く言って見せたが、彼女自身相当な自責の念を負っており、そう簡単には消えないだろう。
「万が一、どうしようも無くなったときは、ポケモンバンクがあるし、深く考えなくても良いのかもしれないけど」
ポケモンバンク。1000ボックス以上のスペースを持つインターネット上のサーバーだ。
此処の守りは銀行というだけあって厳重だからだ。
そのとき、呼び鈴が鳴ったらしく、使いの火の粉がやってくる。
すぐに迎えに行こう、とフレイは部屋を飛び出し、玄関の方に駆けていくのだった。
時は9時。
ボマー達が来る時間だった。
***
「さあ、調査だこのヤロー! 暴れるぞぉーっ!」
「戦闘狂がバレるので止めてください」
既に居もしない敵をぶっ壊す気満々の戦闘狂にして戦闘バカのクレイジードラゴンのボマーは、いい歳こいてこの調子だった。
あくまでも、調査なのだから、まだ戦うとは限らないのに。
「マスターの意思は『邪魔な奴が居たら問答無用で叩き潰せ』とのことだよ」
「本当、エースポケモンとプレイヤーは似ますね……」
黙れ。
小賢しい戦略より、圧倒的火力で叩き潰すのが好きなのだから、自然と考えもそうなってくる。あくまでもゲームの中では、だが。
「でもさ、マスターはまだ、現状を完全には把握してないんだし」
すると、扉が開き奥からフレイが走ってくる。
「あんたらは本当、おめでたいわね。特にバカマンダ」
「開口一口がそれかよ……!」
『アクアの冷凍裏拳(パンチ)! ボマーは倒れた』
「もう、ややこしいから黙っててください」
青筋立てながら、早速怒鳴りそうな馬鹿を冷凍裏拳(パンチ)で黙らせたアクア。威嚇が入ってない上にメガでないマンダ程度、これで余裕である。
「さて、フレイさん。実は僕、昨日あの光の落下地点を計算していたのですが、このボックス全体のうち、6つのボックスエリアに落ちたものと思われます」
「しかし、何なのかしら。この光……」
光といっても、いずれも赤や黒の稲妻が走り、お世辞にも綺麗といえるものではない雰囲気だった。
アクアの開いたタブレットには、その映像が映し出されており、昨日の記憶を鮮明に思い出させるものだった。
「なんにせよ、嫌な予感がするのだけは確かだ」
「あ、復活した」
「俺的には、やはり昨日の影と関連付けた方が良いと思うぜ。何となく、似てる気がするんだ」
「ま、正体が何であっても、敵ならぶっ飛ばすだけ、でしょ?」
「分かってるじゃねえか」
「なら、決まりですね------------」
と、アクアが振り向き、早速まずどこに行きましょうか、と言おうとしたそのときだった。
「大変大変大変大変大変大変だーっ!!」
轟! と風が舞う。
甲高い声の響いた空中を見上げると、そこには鷹の姿をした烈火ポケモン、ファイアローが羽ばたいていた。
わざわざ体力を消耗する原型の姿でいるのだから、何かがあったのだろうか。
「コママさんじゃないですか、どうしたんですか?」
「バトルスポットが、バトルスポットが……」
ファイアローのコママ。実戦では主役級である、対戦界の零戦。
「え? マジ? そこまで褒めてくれんの?」
「地の文をナチュラルに読まないで下さい」
ただし、この小説ではモブ同然である。
「い、嫌だァァァァァーッ」
***
コママに案内され、やってきたのはネットワーク接続用対戦サーバー、バトルスポットだった。
インターネットに繋げば、ロビーからネットワークへの海へと潜り、対戦が出来るというものだ。
しかし、今はそのロビーへの部屋は固く閉ざされていた。てっきり、先日の襲撃を受けてか、セキュリティプログラムが封鎖したのかと思った。
「これは……」
「バトルスポット自体はすぐに復旧したんだ」
「じゃあ、何で封鎖されてんだ!?」
コママは口を開いた。
「恐ろしい……誰かが、ネットワークサーバーを襲撃したって……!」
「ネットワークサーバー!?」
ボマーが真っ先に声を上げる。
「なんだそりゃ!!」
「知らねぇ癖に何驚いてるんですか、あんたは」
「じゃあ、何だよ。そのネットワーク何たらって」
「要するに、バトルスポットのネットワークを管理するサーバーの事ですが、それが事実ならば……」
ごくり、とアクアは唾を飲み込んで言った。
「全世界のプレイヤーがバトルスポット及びGTSなどのネット機能が利用できなくなったってことですよ!」
衝撃が走る。つまりはそういう事である。
-----------それだけじゃない。折角、ポケモンバンクを万が一の最後の逃げ場所に考えていたのに!
全世界のポケモンを預かる巨大サーバー、ポケモンバンク。最悪はこれに逃げることもできなくはなかった。それも叶わなくなってしまったが。
しかし、普通のポケモンやコンピューターウイルスでは、そんな大事なサーバーの守りを壊し、機能停止に追い込むほどに襲撃するのは不可能だ。
たいていはセキュリティにデリートされて終わりである。
「それを掻い潜る程の存在、ってことなの!?」
「誰なのさっ、そんなのいるの、あっくん!」
「……にわかに信じ難いですし、まずいですね。ネットへの接続が出来なくなった以上は、こちらは完全に閉じ込められた状態……言わば、このボックスは閉ざされた箱庭。もう、僕らはポケモンバンクなどに逃げることも出来ないってことです……!! 後、地の文をナチュラルに読むのはやめてください」
これは、敵からの宣戦布告なのだろうか。
全世界のコンピューターが、未知の脅威に晒されようとしていた--------------!!