二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート7:暴龍警報(18) ( No.126 )
日時: 2015/05/06 00:41
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 敵のボーマンダは思ったとおり、いきなり襲い掛かってきた。空中を2枚の羽根で泳ぐように飛んでおり、急降下してくる。
 しかし、それを避けたボマーはとにかく頂上を目指す。空中戦は他にも人を乗せている分、こちらが不利だ。フレイ達を振り落とさないように、下方から放たれる火炎弾を避けていく。
 もう少しで頂上------------そう思ったときだった。


「おいおい、急ぎすぎだぜッ!!」


 突如、拳が正面に現れた冷気と共に、それを顔面にモロに受けてしまう。
 見れば目の前に現れたのは、男だった。
 それも、身軽な容姿をしており、両手にはトンファー、両足には浮遊するための推進装置のようなものが付けられており、パッと見は戦士のそれだった。
 ただし、目はドス黒く霞んでおり、明らかに影の携帯獣のそれであったが。
 ヒヒャハハハ、と狂気の滲んだ笑みを浮かべながら男は叫んだ。

「俺様が最後のガーディアンだ---------!! てめぇら、今まで散々好きにやってくれたじゃねえか、ぶっ殺してやる!!」


「---------死ぬのは----------」


 へ? と、全員は口をぽかんと開けた。
 少なくとも、ボマー、フレイ、ムゥ、ガメリオは言ってはいない。
 では、誰か---------


「あんたネ!!」


 ドッ、と激流が次の瞬間、影の男の背後から噴出した。
 
「チッ、伏兵か!」

 舌打ちした影の男は推進装置をめ一杯働かせてそこを避ける。
 そこには見慣れた少女の姿があった。


「モーター!」


 叫んだボマーは彼女の顔を確かに見た。良かった、改修は既に終わり、此処まで浮遊してやってきていたのだろう。

「ベリーデンジャーだったヨ? あたしも戦うネ!」

 これで5人。戦うには1人足りないが、問題は無い。
 しかし、それを見た守護級はケヒャハハ、と笑うと、ぎゅん! と推進装置を働かせて頂上へ向かいだす。

「ケヒャハハハハ!! いーねぇ、良いよう、そういうのは----------! 良いぜ、最高の戦場で持て成してやる---------おい、ボーマンダ!」

 セブンスドラゴンのボーマンダが咆哮すると、男の方へ加速していった。

「グルオオオ……!」
「来い! てめぇらは此処でつぶすつもりだったが、気が変わった!」
「なっ、待ちやがれ!」

 ボマーは男とボーマンダを追って、そのまま飛翔していく。
 神殿が見えた。
 あれが、頂龍山域の頂上だ--------------!
 風を切る感覚が肌から伝わってくる。
 間違いない。これが最後の決戦だ。
 影の携帯獣と決着を着けるときがやってきたのだ。

「今度こそ、奴を倒してボックスを解放するわよ!」
「しゃーねぇ、のっ掛かった船、轟沈覚悟で進むしかないですねィ?」
「私の故郷を荒らした影の携帯獣……絶対に許しません」
「オーケィ! あたし、ボマーのためなら例え火の中水の中草の中、どこでも行くヨ!」
「よしっ、掴まれおめーら! とっとと行くぜ!」


 ***


 辿り着いた。頂龍山域・聖域。この奥にある神殿から、強大な気配を感じる。
 思わず、彼らは踏み込んだ。神殿の中はひんやりとしており、肌寒さを感じる。ここが本当にドラゴンの聖域なのだろうか、とボマーは思ったが壁画にはドラゴンが数多く描かれていた。
 その中には、勿論ボーマンダの姿もあった。

「このエリアは、ボックスが出来る前からあった。聖地として普段は立ち入りを禁止されてるからね。二度と入れないと思ったほうが良いわよ」
「しっかしだなぁ。でっけぇ神殿だ」
「この奥に、最後の敵が……」

 立ち入った先には、巨大な部屋があった。
 そこには、天を衝くように登る龍。レックウザの壁画が大きく描かれていた。
 そして、そこには先ほどの男の姿があった。

「待ってたぜ。ちーっと遅すぎたくらいだ」
「おめーが最後の守護級ってところだな」
「ふん、それはお前らが勝手に呼んでいるだけさ。まあ良い。俺は俺が最も戦いやすい姿になるとしよう-----------」

 次の瞬間、男の姿が獣人となる。
 毛皮に包まれたスレンダーな兎の獣人。ミミロップだった。

「ふーん、成る程。最後の敵にしちゃ、なかなか可愛らしいんじゃねえか?」
「ほざきなッ! 俺は今までの奴程甘くはねぇ! ボーマンダ!」
「グルォォォォ……!」

 咆哮する敵のボーマンダ。そして、ボマーと目が合った途端、飛び掛りそうになりそうな勢いで吼える。

「弱いボーマンダ程よく吠えるんだよなー。アニポケ見たことないの、お前」
「あんたにゃ言われたくは無いわよ、誰も」
「うるせぇ」

 と、次の瞬間だった。
 4体の影が現れる。
 ギルガルド、ヘラクロス、ソーナンス。
 そして、シャンデラだった。

「なーるほど。こっちにも同属……ね」

 にやり、と好戦的な笑みを浮かべて彼女は言った。
 これで役者は揃った。後は戦うのみだ。

「教えてやる。俺は恨みだとかそんなものは特に持っちゃいねぇ」

 ミミロップは、クカカ、と笑う。

「俺は単に欲しいだけなんだよ----------破壊衝動を満たす何かが! てめぇらが来て感謝してるぜ。上からは敵がやってきたとき以外は動くなといわれてたかんな。そのためにセブンスドラゴン? を嗾けたのさ」

 やはり、か。この影がセブンスドラゴンを操っていたのだ。

「てめぇの好き勝手の所為でこちとら仲間の記憶が飛んでんだ。ふざけんなよ」
「およ? オノノクスは首を撥ねたはずなんだけどなァ? ……あーなるほど、よくよく考えりゃお前ら携帯獣は数ある電脳生命体の中でも特にしぶとく作られてたんだっけか? 所詮は主に従うしかない戦闘マシーン、無駄に頑丈なおもちゃって訳だ。つか、あのバシャーモ」

 ケカカ、とミミロップは笑うと続けた。
 邪悪に満ちた笑みだった。



「あいつ、まだ生きてたのか、笑えるぜ! 全部忘れるくらいなら、完全消滅させてやった方がマシなのによぉ?」



 ブチリ、とボマーの中の何かが切れる。

「いーや、違うね」

 踏み出した彼は、サングラスを外し、目の前の敵を見据えた。



「消えるのはてめぇだ」


 
 ぞくり、と一瞬ミミロップは戸惑ったが、ボーマンダの方に目をやるとすぐさま忘れていた呼吸を取り戻す。
 余りにも静か過ぎる。この男、多くの修羅場を更に乗り越えて、成長してやがる。怒っていないわけがない。しかし、それが表面に現れていないのがとても恐ろしい!!
 -----------大丈夫だ。俺様にはまだ、奥の手がある---------------!
 しかし、目の前の相手を見ていると、そう落ち着いてもいられない。

「行くぜ、フレイ、ムゥ、ガメリオ、モーター! 祭りの始まりだ!」