二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート2:遮断された箱庭(2) ( No.13 )
日時: 2015/02/22 10:38
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「……ま、逃げる気なんざ、元からねーよ」

 ボマーの口角が上がる。

「俺達はポケモンだ!! 生まれながらに戦うサダメを負った戦闘生命体だ! 逃げて生き延びるくらいなら、戦ってデータの塵になって死んだほうがまだマシだってもんよっ!」

 高らかに言うボマー。戦闘バカの彼は、逃げることを知らない。そして、許さない。
 こうなったら自分達がポケモンである以上、その意地を見せ付けてやれ、と言っているようだった。

「そうでしたね。僕らはいつだってそうでした」
「あたし達に出来ることをやるしかないわね」
「そうそうっ! やっと纏まってきたよ!」
「……あのー、俺モブっぽいし、そろそろ帰っていいのかね」
「あ、そうですね。ありがとうございます。お礼の森のヨウカンです」
「うん、そうだね。頂いておくよ」

 失礼した、とコママはそのまま飛び去っていこうとする。

「……俺対戦では主役級なのに……PGLでも常に首位なのに」
「俺様に対する嫌味は良いから早よ行けや」
「ひいっ、逆鱗捨てて空元気なんか搭載してるお前に俺が適う訳がないだろ!?」

 
 ***


「で、当のアクア君はさっきから、あの扉の前に座って、何やってるんだろ」
「あいつは、機械弄りも好きだからな。頭が良いってのは、どこででも役に立つもんだ」

 アクアの周りには、ホログラムのパネルなどが幾つも浮かび上がっていた。扉の前で胡坐をかき、真剣そうな眼差しで中央のパネルを見つめながら、キーボードを機械的に叩き続けるだけだ。

「……やはり、ですか」
「お、部位破壊に成功したぞ」
「先輩ー、右の方に回ってー」
「あんたら、誰がモンハンやって良いって言いましたか、コラ。3DSの中で3DSやってんじゃないよ」

 ささっ、と手に持っていたそれを隠し、チャモとボマーがアクアの方に向き直った。

「何か分かったの、アクア君」
「フレイ先輩はまともで助かります。さて。かなり分かったことがありますよ」

 ブイン、と無機質な音を立てて大型のパネルが表示された。

「6つのエリア。昨日、光が落ちた6つのエリアに、このプロテクトが繋がっているんですよ」
「え、それってつまり」
「はい、ボマー先輩。正解です」
「まだ何も言ってねぇけど」

 ボックスのエリア6つに、紅い点が映し出された。

「この離れた6つのエリアに、このプロテクトに関する何かがあるのかもしれないということです」

 表示された画面には6つのエリアの名前が映されていく。
 極寒育ちの氷タイプや水タイプが生活する”氷海水域(ヒョウカイスイイキ)”。
 機械に覆われて電気や鋼タイプの蔓延った”雷電械域(ライデンカイイキ)”。
 鬱蒼とした緑の大地にして草タイプの領域”中部緑域(チュウブリョクイキ)”。
 古き日本を感じさせる江戸時代のような街”村雲街域(ムラクモガイイキ)”。
 光に満ちた飛行ポケモンの楽園にして地獄”天獄峡域(テンゴクキョウイキ)”。
 覇気に満ちた龍ポケモンのかつての大戦場”頂龍山域(チョウリュウサンイキ)”。
 
「おっけー、そこを叩けば良いんだな」
「ですが、事は一刻を争います。出来れば、二手に分かれていきたいところですね」

 確かに、アクアの言うことも一理ある。固まって行って全滅するよりはましだろうし、二手に分かれて行った方が効率が良いのも事実だ。

「本音は炎2人が被っている現状が余り好ましくないのもあるんですよ。それに、行き先は仮にもボックス。こちらの仲間になってくれるポケモンは幾らでもいるでしょう」
「幾らでも、か」
「ま、二手で行くのは賛成ね。若干不安だけど」
「というわけで、チーム分けどうします?」

 全員押し黙った。
 
「とりあえず、あたし達炎組は分かれるとして……」
「同年代組で行った方が良いんじゃねえか?」
「ま、そうですね。僕らも同じ意見です……って」

 「〜ねえか?」と言ったのはボマーではない。

「よーう」

 ぞっ、として振り返るとフランクな挨拶が返ってきた。
 言ったのは、ファイアローのコママだったのだ。

「うわっまだ居たんですか!!」
「お、おいおい待てよ。驚きすぎ。第三者の俺から見てもそう思うんだよ。レートでもお前らの活躍は見てきたけど、ラグバシャっていう組み合わせは地味に相性補完できてるし、何よりボーマンダとシャンデラも同じ。先輩後輩で行くよりは、こうやった方が良いんじゃないかって、思ったのさ」
「で、何でまだいるんだテメェ」
「修復作業に狩り出されちまいそうになって、逃げてきたところだ」
「最悪だなコイツ」
「本格的に害鳥ね」
「ちょっ、そこまで言う必要ある!?」

 仕方が無い。自業自得である。この後コママは、追いかけてきたポケモンによって、しっかりと修復作業に狩り出されたのだった〜BAD END〜

「助けてくれぇぇぇ、働くのヤダよぉぉぉ」
「ばいばーい、ニートアローさん」
「ですが、コママさんの言ったとおりでもありますね」
「ああ。主人がパーティを組むときに一番気にしているのは、相性補完と役割だ。俺とフレイ、お前とチャモ。これで組むだけで、3匹目以降次第で幾らでも補完が利きやすいってことだ」
「あんたとまた組むのね……癪だけどレートでも何度も共に戦ったから仕方ないか」
「んだとテメェ」
「喧嘩はやめてください、冷パンと波乗りしますよ」
「喧嘩両成敗ー」

 青ざめた2人は、同時に言った。

『やめてください、死んでしまいます』

 と。


 ***

 くじ引きで決めた結果、ボマーとフレイは6つあるボックスエリアのうち、”氷海水域”に行くこととなった。
 
「ちょっと待てコラ、何で俺がそんなところに行かなきゃいかんのだ」
「あたしだって同じよ、死ねって言うの? 死ねって言うの? あたしらに?」
「敵が水・氷複合タイプだったら尚良いですねー」
「死ねってか? 本格的に死ねってか?」
「うっせぇですね、くじ引きの結果に従えよ、バカマンダ」
「ヤメテ! 冷凍パンチ向けるのやめて! インテリキャラから眼鏡ヤクザになってねぇかコイツ」

 ラグラージのA種族値は120。本来、種族から見れば攻撃的な性質だ。知的冷静なアクアは例外といえど、アタッカーをやったBOHを通して好戦的な本能が目覚めてしまったのであろう。
 元々、辛らつで言いたいことは言う性格ではあったが、此処までではなかった。

「まあ仕方ねぇ。行くぞ! フレイ」
「そうね。逆に味方が氷・水タイプならばパーティにも美味しいわ」

 と言いながら去っていく2人を見て、アクアは心の中で呟いた。
 -----------くじとは言え、この上なく心配ですね……。
 と。

「さて、僕達は-----------」
「”中部緑域”って出たよ」
「うーむ……」

 アクアは溜息をついた。


「早速、嫌な予感しかしません……」