二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート1:セントラル・フィールドへ(3) ( No.142 )
日時: 2015/05/16 09:55
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 セントラル・フィールド:地下闘技場。それは一言で言えば騒乱に包まれた場所であった。都市から少し外れた場所にある此処には荒くれ者が集うことで悪評が高い。 
 また、限られたものしか入ることができず、今回ボマー一行は裏社会にもある程度精通しているボマーのおかげで、何とか入場できたのだった。
 此処で開催されるトーナメントには、裏ルートから仕入れられた商品が出され、優勝すれば時に多くの富を手にすることもできる。
 会場の周りには、バーだとかロビーだとかはあるが、いずれも強面フェイスの強者が集っており。
 この場所に唯一馴染めているというか、中にいても違和感無いのは、ボマーのみであった。

「くそったれ、ルカ姉の奴どこ探しても全然みつかんねぇじゃねえか」
「あの人しょっちゅうフラフラしているからね。しかも、よ。この闘技場、地下にあるだけあってかなり広いわよ。此処に入り浸っているのは確からしいけど」
「きゃー、怖いヨ! ボマー、守ってー!」
「うっとおしいから抱き着くんじゃねぇ!!」

 しかし、である。
 問題はこの雑踏と広大な闘技場からルカをどうやって探せば良いのか。

「ボマーさん、ボマーさんっ」

 ムゥが駆け寄ってくる。少し周りが怖いのもあるのだろうか。

「あ? 大丈夫だ。心配すんな、俺達が居る」

 ---------そのボマーさんも懸念の一部じゃないというわけではないのですが……。
 とはいえ、彼はケジメはちゃんと付ける。今は安心して良いだろう。いつもセクハラの対象にされるとはいっても。
 
「そうじゃなくてっ! ルカさんってどんな人なんですか?」
「ああ」

 思い出したように彼は言った。そういえば、まだ彼女について話していないことも多々あったことを思い出す。
 ガメリオは「やーな予感しかしやせんがねィ」と既に呆れた顔をしていたが。

「一言で言うなら、バトルマニアだ。いや、一種のマゾかアレは。より強い敵と戦うためなら、手段を選ばん。しかもガブリ姉以外に負けた話が無いっつーのが一番ヤバいポイントだ」
「相当、強いんですね……」
「”血涙のルカ”の異名は伊達じゃねえってな」

 血涙のルカ。その異名は、彼女が一度暴れれば血の雨が降ること。そして、返り血で濡れた彼女の顔が血の涙を流しているように見えることから付けられたのだった。
 
「ルカはとっても怖い人デース。何というか、いつも何かを欲しているような、そんな瞳をしていマース。一言で言うなら、貪欲デース」
「そうね。そして、その欲しているものは強者の返り血」
「悪いが、俺は死んでも仲間にしたくないね、あの人だけはよ」

 珍しく、ボマーが仲間にすることを拒んでいる。
 ふーん、と今まで素っ気無さ全開だったガメリオが、突然悪戯を思いついたような笑みを浮かべた。



「じゃあ、尚更仲間にする必要がありますねィ」


 ボマーの顔が青ざめる。

「おい、ふざけんじゃねぇ! 俺はごめん---------」

 と言い掛けたそのときだった。誰かの肩が、自分の肩にぶつかった。


 ***


「おい、そこのゴツい人」

 数分前。
 癖毛と斑点コートの男は、巨体のレスラーのような風貌(そして鼻にはドリルが付いている)の男に問いかけた。
 「んあ?」と男はギロリ、とこちらを睨むも突っかかってくるわけでもないようだったので、質問を彼は続けた。

「ちょいと人を探しているんだが」
「人だァ? 誰だ? 俺らでも分かる奴なんだろぉーなぁぁぁん?」
「そこそこ有名なはずだ、居場所を教えてほしい」

 一呼吸置くと、コートの男は言った。



「”血涙のルカ”、のな」



 一瞬、ハンバーガーを手に持っていた相手のドリル男の動きが止まった。
 そして、さあああーっ、と顔色が青ざめていく。
 直後。



「WRYYYYYYYYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」



 奇声を上げて、そのままドタドタ、と走り去ってしまった。
 その光景を見ながら、「あちゃー」とコートの男は大して残念でも無さそうな声を上げていたが、後ろにいた仲間の男女が駆け寄ってくるのを見るや、そっちに目を留めた。
 数は2人。1人はスレンダーでワンピースのような服装を着用した女。もう1人は陽気そうな大柄の背丈に合わない青いジャケットを羽織った大柄の男だった。「どうだった、ライ?」と女の方が問うてくるも、うんざりした様子でライと呼ばれた男は答えた。

「どうだった? じゃねえよ、今のを見たろ。叫んで女子トイレに逃げちまったよ、あいつ」

 さっきのドリル男が走っていった方向を指差す。ドリル男に同情したのか、大柄の男は心配そうに、「気の毒ですねぇ……脅して聞き出したんじゃないですかぁ?」と言うも、

「黙れキモい。誰がそんなことするか。俺の方が下手したら脅されそうな体格差だったぞ。それが”血涙のルカ”の話をすこーし持ち出しただけで、これだ」
「女子トイレに慌てて入るって、尋常じゃない勢いの動揺っぷりね……」
「つーか? そういうお前達はどうだったんだ?」
「何の成果も得られませんでしたよぉ……」
「ちったぁ、役に立ちやがれ!! 俺だって、必死こいて色々聞き込みに回ってんだからよ!!」
「仕方ないでしょ。”血涙のルカ”は唯でさえ広いこの地下闘技場……いや、それを中心とした地下街をうろうろしているって話だから」

 はぁ、と辟易した彼は話を変える。

「そんでもって、ガキ共も心配だな。連れてきたのは良いが……」
「レンとユキが居るから大丈夫でしょ、その辺は」
「ちっ、あの筋肉女に任せるのだけは、やっぱり気に入らねぇ……」
「あら。レンがいないと門前払いされそうになってたのにね」
「それはそうだが、それとこれとでは話が別だ!」
「何だかんだで、互いにもっと素直になれば良いんですがねぇ」

 大柄の男が、間延びしたような口調で言うが、それに対して「黙れ、きめぇんだよ、とっとと続けるぞ」と苦言をこぼし、コートの男は次の聞き込みに向かう。



「行くぞ、ラグナロク! ココロ! こうなったら何が何でも、あの筋肉女より先に”血涙のルカ”の居場所を見つけるんだ!」


 彼はココロとラグナロクを連れ、他に情報を知っているものは居ないか、探し始める。
 しかし、一向に有力な情報は見つからない。どうする、このままでは時間の無駄である----------


「っと、すまん」


 ふと、自分の肩が誰かの肩にぶつかったことに、彼は気付き咄嗟に謝った。
 「ああ」と相手の男は曖昧に返す。
 次の瞬間、互いの表情は凍りついた。別に互いの態度が気に食わなかったとかそうではないのである。
 コートの男は、目の前のサングラスを掛けたジャージの男に果てしない敵意に似たような感覚を覚えた、それだけだ。

「おい、お前。久々じゃねーか」

 フランクな挨拶は唯の社交辞令である。
 有り余る闘争心を剥き出しにし、彼は相手の男を睨んだ。
 そして、今に至る。


 ***


 ぶつかってきた男に敵意を覚えたのは、ボマーも同様であった。
 目の前の斑点コートの男。あからさまに見覚えがある。というか、これまで幾度も技を交えた相手だった。
 もう、仲間の止める声など聞こえない。

「ちょっと、ボマー! どうしたのよ! ……げっ、あの人は」
「旦那! 旦那! いきなり喧嘩ふっかけるなんて、らしくねぇですぜィ!? ……あー、確かにこれはやばい人と出くわしちまいやしたねィ」
「ボマーさん! 落ち着いてください! ……誰ですか、あの人」
「オーマイガー、大変ネ……」

 自分とは別の管轄のプレイヤーの管理下にある携帯獣。
 名はもちろん、知っている。
 それを呼んだ。


「----------しばらくだなぁ、”雷切”ィ。丁度てめーを俺様の捨て身タックルで、ぶっ飛ばしたかったところだぜ」


 雷切(ライキリ)。それが、コートの男の名前だった。
 見た目はボマーよりも年上だからか、大人びている。目のふちには自らの原型を暗示しているのか、赤い隈取が施されていた。

「それはこっちの台詞だ、ボマー。俺のめざめるパワー(氷)でまた氷像になるのがご希望ならば、今此処でやってやっても良いんだが」
「氷像? はん、相変わらずはったりだけは一丁前じゃねーか。誇り高いホウエンドラゴンの名前が泣くぜ。ま、もっともてめーはメガシンカ”しねえのか”、はたまた”できねえのか”は知らねぇが、一回も俺らにそれを見せたことはねーよな? つまり、ドラゴンの成り損ないって訳だなぁ?」
「馬鹿らしい。そうやって環境の頂点で胡坐をかいた結果が、レーティングのランキングに出てるのがよ、まだ分からんもんかねぇ? お前の傲慢さには辟易していたところだ、うんざりだ、氷像にすんのも惜しい」
「本当てめぇ、何で俺をいちいちイラ付かせる言葉しか、吐かねーんだろうなぁっ!!」
「それはこっちの台詞だぜっ!!」


 次の瞬間、ボマーはいきなり目の前の男に突撃をかませた。
 一方の雷切も、拳の内側に凍てつくエネルギーを溜め、至近距離で解き放った-----------