二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート1:セントラル・フィールドへ(5) ( No.144 )
日時: 2015/05/18 07:48
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***


「エントリー完了だな」

 受付で登録を済ませ、ボマーは呟いた。今回は5体編成ではあるが、まあ大丈夫ではあろう。
 型はいつもと同じ。特筆することもない。

「久々だぜ。今度こそぶっ潰してやらぁ」
「あ、あの、ボマーさん……」

 おそるおそるムゥが近づいて、聞いてくる。

「何でこんなに、雷切さん達と仲が悪いのですか?」
「んあ? んなもん簡単だ。あの糞野郎は、俺様の目下のたんこぶだからだ-----------」

 ボマーとポケモントレーナー:モノクロのポケモン達との因縁は切って切れるものではなかった。
 もともと、ボマーはXY時代に度々フレ戦で猛威を振るうメガフシギバナを倒すためにスパコン執事と一緒に育成されたのだ。
 戦歴はメンバーの中では一番長い。
 以来、何体ものポケモンと戦ってきたが、そのたびに倒し倒されを繰り返してきたのである。
 何せ、モノクロに積みアタッカーの恐ろしさを思い知らせたのも、このボマーだったのだ。

「ぶっちゃけると、その前にもヤバいのは幾らでも居た。だが、あの雷切はさらにヤバかった」
「あんたとは真逆に頭が非常に切れる上に、その戦略で何度も負けているからね」

 力のボマー。頭脳の雷切。まさに正反対の関係であった。

「--------それだけなら良いんだが、もう1つヤバいのが向こうのパーティにはいるんだ。マスターは今のところ、確実にそいつを駆逐できる方法を見つけられていねぇ」
「え?」

 ムゥが驚いたように口を開いた。

「確かにそうです。雷切って人は参謀だけど、向こうのエースって……?」
「私は何度も戦ったことがあるから知ってるわよ」
「ああ、とんでもなく厄介だ。下手したら俺以上の火力を持っているかもしれねえ」
「相手の種族ですがねィ、あんた知ってるんでしょ」

 ああ、とボマーは言った。

「とりあえず、全員説明しておくとするか」

 いつになく解説をやるつもりらしいが、読者の方のためにも此処は無理してやるしかないだろう。

「まず、ジュカインの雷切。火力・耐久・共に貧弱で速さがとりえだ。しかし、それでもメガ前の種族値は俺の種族値の完全劣化だ。Sは120でメガした俺と同速だしな。火力面を総合した場合、メガ後でも俺に劣る」
「酷い言い様ね」
「次に、サーナイトのココロ。スカーフを巻かれたら厄介だな。それだけじゃねえ、サーナイトは壁張り、起点作成、何でも出来る」
「うちの面子には此処まで器用なのは居ませんねィ」
「そしてヤミラミのトンベリ。俺が向かえば怖い相手ではないが、メタルバーストにだけは注意するか。それに自己再生、鬼火、挑発とうざったい技を覚える」
「襷メタバだと死ねますね、完全に」
「そんでもってラグラージのラグナロク。キモい方のラグラージだ」
「やることはアクアと変わりないみたいネ」
「そしてユキメノコの雪姫。道連れ、電磁波、拘りトリックで確実に噛み跡を残していくぞ。こいつを無傷で倒せるかが鍵だ」
「火力は貧弱とはいえ、あんたと私は弱点突かれたら終わりね。110族でかなり速いし。あんた準速だと抜けないわよ。……しかもこの人……”あいつ”の娘なんでしょ?」

 フレイの顔が一気に曇った。”あいつ”。自分が倒れることになった元凶ともいえる顔面野郎のことである。 
 「気にすんな」とボマーは彼女の肩を叩いてやったものの、やはり彼女のトラウマはそうそう簡単には払拭できないか。


「最後に--------------クチートのちーちゃんだ」


 全員は押し黙った。
 何度も拳を交えているフレイとモーターの顔も青ざめた。

「……クチートってクチートって、この面子でまともに相手できるんですかィ? あっしは防御低いから100%死ねますぜィ?」
「私でも威嚇入れられてメガされたら地震で倒せないんですよ!」

 さっきのポニーテールの少女、ちーちゃん。確かに、あの濃い面子の中ではあまり目立ってはいなかった。
 しかし、対戦では最も存在感を放つポケモンだ。

「一応、奴のHPを70%くらいまで削れば、後は俺かムゥの地震でどうにかなる」
「あたしの場合、不意打ち読み身代わりをすれば勝てるけど、今までに何度もその戦法は使ってるから、択ゲーになるわ。レートのクチートなら、カモにできるんだけど……」
「私もドロポン2発で倒せると思いマース!」

 しかし、いずれも退かれたりすると厳しいところだ。
 だから、確実な対処方が見つからないのである。
 それはメガクチートがアホみたいな火力と耐久を有しているからであるが、それはまた後ほど。

「ああ。奴はお前らに任せた」

 だが、とボマーは続ける。

「その前に何戦か戦わねぇといけないんだ。奴らに当たる前に負けることは許されねえ。気張っていくぞ、てめぇら!!」

 彼の気合の入りようは、いつも以上であった。

「そうですねィ。まずは目の前の敵に集中することですぜィ」
「あいつらと当たる前に負けたんじゃ、話にならないわ」
「怖いけど……やるしかないですね!」
「オーケィ! 張り切っていこー!」
「へっ、良い感じに纏まってきやがったぜ。向こうの前作の最終話で見せ場も無くコテンパンにやられたのはキッチリ返さねぇとな!!」

 詳しくは、バトル・オブ・ホウエン対戦記を参照。


「そんじゃ----------祭りの始まりだ!!」


 ***

「ぜぇぜぇ、はぁ、はぁ……」

 先ほどのドリル男は、女子トイレの中で息を切らしていた。
 ---------じょ、冗談じゃねえ!! ”血涙のルカ”だと!? あんな奴に二度と関わってやるもんか!!
 かつて、男は血涙のルカと戦い、一方的にぶちのめされた哀れなファイターの1人であった。仲間は全員病院送り、自分もどてっ腹に穴が開くという始末だった。

「おい、テメェ。野郎が何で此処に居るんだ? うっぷ」

 声が聞こえる。女のハスキーボイスだ。ついでに気持ち悪いようだった。飲みすぎてこうなったらしい。
 此処で男はようやく、此処が女子トイレであることに気付いた。
 しかし何故だ? 相手は便所の中にいるはず。ドア越しに自分がいることは分かっても、自分が男であることまでは分からないはずだ、と。


「おやぁ? お前”見覚え”があるなぁ? 前にあたしがぶっ殺したはずなんだけど。ああ、特性・ハードロックでギリギリ生きてたのか」


 ひっ、と悲鳴を小さく上げた男の記憶から恐怖がよみがえる。
 しまった。この女が、この女こそが-----------
 



「消し飛べ」



 --------”血涙のルカ”だ--------------!!
 ズドォォォォン、と爆音が響き、後には壁にめり込んだ男の姿があった---------