二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート1:セントラル・フィールドへ(7) ( No.147 )
日時: 2016/07/15 02:36
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【フレイの大文字!!】



 ——さて。通常のヤミラミならば、この一撃を耐える事は出来ない。
 HBヤミラミに対して、シャンデラの大文字は余りにも強烈すぎる。その致死率、100%。まず耐えない。
 

「焼き切れなさいっ!!」

 チャカッ、と着火音が響き、炎が大の字に広がる。
 そして、一気にトンベリ目がけて燃え広がった——
「うちのパーティはシャンデラが激重だ。というか、元がちーちゃんやクレセリアの対策で投入されたのがあのシャンデラの小娘だからな。なんべんもやられてるから分かってる」
 しかし。



「……舐めんな」



 しかし。それはトンベリがHBヤミラミであればの話である——

「嘘、でしょ——!?」

 フレイは呻くように言った。
 最大出力だった。手を抜いたわけではない。
 しかし。
 いつもならば倒れているはずのヤミラミは——自らの仮想敵はしっかりと地に足を付け、立っていた。



『——トンベリ残りHP:27%』




「逆に言えば、あの嬢ちゃんさえ殺っちまえば、俺達の優勢に一歩近づくって訳よ」



 次の瞬間、鋼の塊がトンベリに収束していく。焦りを隠せないのはボマー達であった。耐えられた。我がパーティ特殊の最大火力の攻撃が耐え切られたのだ。

「や、やべえ!! 耐え切られちまった!?」
「でも、ヤミラミなら有効打は無いはずですよ!?」
「いや、あるぜぃムゥのお嬢——!! ヤミラミには、一撃必殺の最終兵器がある——!!」

 そして——光を一気に反射した。

「受けたダメージ——物理か特殊か関係なく、全て跳ね返す——メタルバースト……多分、すっごい痛い」

 食らったダメージの1.5倍を与えるカウンター技、メタルバースト。後手に回らなければ発動しない、というカウンターやミラコには無い弱点こそあるが、元々素早さが無いに等しいヤミラミには関係ない。
 ——し、しまった——特殊受け!? 物理が受けきれないから割り切って——!?
 今更狼狽しても遅かった。
 光の嵐が、一気に襲い掛かった——

「落ちろ」





 


 ズゥゥゥゥウン……





 刹那。光の嵐は遮られた。
 突如現れた”影”によって。砂煙が舞い、会場が見えなくなった。
 しかし。そこに現れたのは——携帯獣ではない異形のモノであった。

「何だ!? 乱入か!?」

 そんな声を皮切りにして、どよめきが観客席から上がる。
 しかし。
 既にそこには6つの影が立っていた。
 1つは人型、残りは不定形な携帯獣型の影だ。
 その存在の正体を知っているボマーは、不快そうに声を漏らした。

「影の——携帯獣!?」

 しかし、影の携帯獣がまさかこのセントラル・フィールドに現れるとは思いもしなかった。
 呆然、と突っ立っているフレイの手を引き、ボマーは叫ぶ。

「オイ雷切!! 聞こえてるか!! テメェはガキ連れてさっさと逃げろ!!」
「ああ!? 何言ってやがるテメェ——」
「こいつは只の乱入者じゃねえ、影の——」

 次の瞬間。
 人型は表情1つ変えぬまま辺りに黒い塊を撒き散らし始める。
 それがやばいものと本能で直感したのか、雷切も頷くとまだ放心状態のトンベリを抱えて、引き下がる。

「成程な、只のポケモンじゃねえってのは分かったぜ」
「ちょっと、ライ!? どうするのよ!?」
「さあな。だけど、今此処で暴れるのは少し危険だ。何より観客も居る——!!」

 逃げ惑う観衆。滅茶苦茶になっていくフィールド。
 得体も知れない攻撃を放つ影の存在。
 会場は混乱に包まれた——

「オイ、グレン」
「何だ」
「一時退避だ」
「斃さなくて良いのか」
「悔しいが、こっちはガキ2人抱えてるんだ。万が一巻き込まれたら危険だ。あれは普通のポケモンじゃねえ。何かあったら俺の首が飛ぶ」
「……分かった。会場の観客の誘導をしつつ、退避する」

 珍しく意見が合致したのか、雷切とグレンはその場から一旦、他の観客に任せることを選ぶ。
 戦えるとはいえ、ちーちゃんとトンベリはまだ幼い。
 危険な敵と対峙させるわけにはいかなかった。
 ——さて。一方のボマー達であるが弾幕を撒き散らす敵を前にして、近づけないでいた。
 他の携帯獣の影も技を撃ちはじめ、いよいよ物陰に隠れていなければしのげなくなるという事態に。

「おいフレイ、しっかりしろ!!」
「あ、ああ……うん、ごめん——でも、何あいつ——!? 何で影の携帯獣があんなところに」
「それよりどうするんですかぁ!? こっちももう持ちそうにないですよ!?」
 涙目で叫ぶのはムゥである。じり、じり、とこちらに接近してくる。攻撃の苛烈さはこれまでの敵の比ではない。
「何ならこっちからウォーを仕掛けにいくデースか?」
「やめときな、モーターのお嬢。野郎の目には殺戮の二文字しか感じられねえ。しかも下手に此処で暴れて地下の闘技場が崩れたらどうする。あっしらデータのチリに埋もれて生き埋めだ」
 
 確かにガメリオの言う通りであった。
 此処が地下であることを忘れてはいけない。データ世界の地下とは、文字通りデータの層に穴を掘っているのと同じなので、崩れれば当然生き埋めになる。
 そうなれば自分たちは死にはしないが動けなくなるだろう。現にあの敵は会場を破壊していっている。この場所ごと他のポケモンを潰すつもりだったのだろう。
 最も、雷切達の迅速な救助のおかげで最悪の事態だけは避けることが出来そうであるが。

「クソッ、せめて——少しの間時間が止められれば——」

 ギリッ、とボマーは歯を噛み締めた——その時であった。






「オイ、何処見て撃ってる。俺は此処だ」





 俺、という一人称。
 しかし。それはボマーのものではない。まして雷切のものでもない。
 声は低いが女のモノだった。







「波動弾」






 瞬きする間もなく、1発の弾が暴れる影達にぶち込まれた——