二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- パート1:セントラル・フィールドへ ( No.148 )
- 日時: 2016/07/20 17:41
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「——あれは」
目を凝らした。
弾が降ってきた方向には——仁王立ちする人影。
しかしそれは自分たちと同じ存在、携帯獣だ。更に数発、波動弾が敵の姿を捉えていく。
「痛いだろう? それでしばらくは動けねえだろ。それじゃ駄目押し——行くか」
ひゅん、と地面を蹴ったそれは観客席から跳ぶ。
相当鍛えられていると思しき脚力だ。そして——至近距離で波動弾を数発、お見舞いした。
——ただし、敵ではなく天井に。
次の瞬間、さっきの手痛い一撃を食らって怯んでいた敵達は——ガラガラ、と何かが崩れ落ちる音と共に降って来た天上の機材の下敷きになったのだった。
次の瞬間——再び波動弾を数発放ち、瓦礫は爆散した。
しばらくして、煙が上がったが、完全に敵の姿は影も形も無くなっていたのだった。
「よし。いっちょあがり」
たっ、とボマー達の元に降り立った女は、息を切らせた様子も見せず、そのまま彼らを一瞥する。
余りにも圧倒的だった。攻撃が苛烈過ぎて接近できなかった程の影達を擬人化体の劣化した技だけで倒してみせた。
無双、の2文字が浮かび上がる。恐ろしい程の火力だった。
房のようになった括られた髪、短パンにタイツという動きやすい恰好。
毛皮のマフラーを首に巻いた彼女は——マスターに言われていた対象の特徴に当て嵌まる。
「ひっさしぶりじゃねえか、ボマー。随分と腑抜けたなオイ、この程度の連中に遅れを取るとは——」
ニヤリ、と傲慢不遜な笑みを浮かべた女はボマーの名を呼ぶ。
それを見て戦慄したのは、ボマーだけではない。モーターも、フレイも、ガメリオも真っ青になった。
戦えば血の雨が降り、瞳から流れ落ちるは狂気の血涙。
それは彼女の二つ名となった——
「ルカ姉——久々だな」
その名を、呼んだ。
ムゥは顔を丸くする。
「この人が——ルカさん、ですか……!?」
「何だ何だァ? お前らずいぶんと俺を見てビビってんな。マスターの言った教えを忘れたのか? ”叩き潰せ、踏み躙れ、無双せよ”——」
「んなこたぁどうでも良い。酔っ払いのろくでなしのあんたにゃ言われたきゃねぇよ」
ちぇっ、と言った彼女はさっきまで敵が暴れていた方を一瞥すると「着いてきな」と駆け出す。
「おい、待て!! 今日はあんたに用が——」
「良いから着いて来い。そこで話は聞こう」
仕方があるまい。
随分と独断専行の過ぎる人物だと思うが、彼らはルカに着いて行くことにしたのだった。
***
——辿り着いた先は、闘技場のVIPルームであった。多くの戦績を重ねた猛者のみが得ることの出来る栄光の証。闘技場の中の豪華な個室だ。
警備員と思しき男に目くばせをすると、ルカは勿論、ボマー達も通された。
が、しかしそこは——
「うえっ、酒臭……」
思わずフレイがそう零す。
見れば、部屋の中には酒瓶が散乱しており、棚には多くのワインボトルや酒瓶が置かれている。
ソファに腰掛けると、ルカは更に1本、酒の瓶を開けた。
さっきの戦いぶりからは想像できない程、だらしない私生活を送っていることが分かる。
無くなることのない酒の宝庫に入り浸っているのだ。
「ま、見た事ねぇ嬢ちゃんが居るし、カクレオンの奴とは直接会ったことねぇから自己紹介すっか。知ってるとは思うが、俺はルカ」
ぐびっ、と酒瓶を飲み干すと、続けてどぎつい笑みを浮かべ、
「”血涙のルカ”、だなんて物騒な異名が付いてるが気にすんな」
「気にするわ、このおっさん女」
バッサリ、とそれを切り捨てる。
割とユーモアでは済まされないから困る。第四世代の破壊力SSはガブリだが、それと拮抗する程度の実力を持つのだから。
「此処が俺の部屋だが散らかっててわりーな」
「片付ける気もねぇのによく言ったもんだ、ちったぁ片付けろ」
「そうね。女子力の欠片も無い」
「うええ、臭いデース……」
口々にボロクソに言う面々。
しかし、これでも頼みごとをしにきたのだ。
ボマーは進み出る。
「……良いぜ、用件を言いな」
「……マスターからの命令だ」
マスターには何のかんの言って忠実なボマーは、敢えてその言い方を選んだ。
ルカもまた、マスターの教訓を守っている辺り、彼の命令には逆らえないからだ。
「影の携帯獣——さっきあんたが倒した奴らだが、そいつらが最近暴れている。俺達のボックスから脅威は去ったが、たった今セントラル・フィールドであるこっちに姿を現した辺り、まだ根元は絶ててねぇんだ」
「へーえ。さっきの奴らか。あれより強いのも居そうだな。ちったぁマシになりそうだ」
「だが」
とボマーは否定するように言った。
「俺としては、あんたには入ってほしくはねぇ。マスターには断られたと言っておく」
完全にルカがパーティに入るのを拒んでいるようだった。
「で、でもボマーさんっ、そんな言い方しなくても」
突き放すような、つっけんどんな言い方のボマーにムゥが窘めるように言った。
しかし。その顔を覗き込むと、明らかにボマーの様子がおかしいことに気付く。それだけではない。モーターやフレイも、だ。
3人とも、顔がいつにもまして真っ青になっているのだ。特にボマー。こんな彼はムゥもガメリオも始めて見た。
「どうなってるんすか、フレイのお嬢。モーターのお嬢。何かこの人に弱みでも握られているんですかい?」
「いや、そういうわけではないわ……でも、取り敢えずムゥちゃんは下げておいて」
「? あ、ハイ……分かりやした。ムゥのお嬢、こっちへ」
「え? え?」
ボックス内でも最強クラスで、しかもキャラが濃いボマー、フレイ、モーターの3人組。しかし、今はこの3人が完全に勢いが弱っている。
「……気を付けた方が良いわ。あの人は、酒癖がとっても悪いの」
「はぁ」
「……しかもそれだけじゃないから」
そんな中、ふぅー、と息を漏らすと紅くなった顔のままでルカは言った。
「俺ァ強い奴との戦いに飢えてる。それがやばけりゃやばいほど、燃えるってもんだ——なのによぉ、最近はよわっちぃ奴ばかり。あー、やってらんねぇ、飲まなきゃやってらんねぇ」
勝手にそんなことを言いだすと、ぐびぐび、と持っていた一升瓶を飲み干し始める。
ぞっ、とした顔でボマーとフレイ、そしてモーターは彼女を止めた。
「オイコラ!! 何勝手に自己完結して勝手に飲んでやがる!!」
「やめてください!! ちょっ、ああああ!! もう全部飲んでる!?」
「そんなに飲んだら身体に毒だヨ!?」
「うるせぇ!! これが飲まずにやってられるかってんだ、ヒック!! だからよぉ、なかなかおもしろそーな話じゃねえか……是非とも俺にも参加させてくれよ」
確かに酒乱ではある。しかし、さっきの戦いぶりを見たガメリオとしては、彼女をパーティに入れるのはそこまで悪い話ではないと思ったのだ。
しかし。
「もし、やらせてくれねーなら——ヒック」
ギロリ、とルカの視線がムゥを射抜く。
次の瞬間——彼女の身体は消えた。
「この子を貰う」
——そして次の瞬間、ルカの両手はムゥの両方のたわわなそれを背後から鷲掴みにしていたのである。