二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート1:セントラル・フィールドへ ( No.149 )
日時: 2016/07/26 19:20
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 気付くのは一瞬遅かった。
 既に、ムゥはルカに捕らえられていた。

「およっ、可愛い顔してる割にはC……いや、これはD? 羨ましい程立派なものを持ってるじゃねえか」
「あ、あの、あのぅ、そこを触るのは……だめなのです、恥ずかしい……ひゃうっ!?」
「およっ、腰もくびれてるし……お前結構イイ身体じゃ——」

 次の瞬間——電撃が降りかかる。
 ムゥにそれは通用しないが、バチィッ!! という音と共に床が焦げた。
 既に、そこにルカは居ない。
 放ったのは——モーターだ。浮かび上がり、天上から必殺の電撃を放ったのだ。
 避けられるのは分かっていたのだろう。
 どうやら、この酔っ払い、これがいつもの事らしい。流石のモーターもかなり怒っているようだ。後でガメリオが知ったことだが、ガブリ同様最古参組ということもあり、彼女の行いに胃を痛めていたらしい。

「ルゥゥゥカァァァーッ?」
「おー、おー、モーター、落ち着けよ。これはスキンシップだ。至って健全な」
「毎度毎度リピートして言ってるネ!! それはスキンシップじゃなくて、同性へのセクシャルハラスメントデース!!」
「いいじゃねぇかよぉー」

 その光景を呆れた表情で流し見ながら、ボマーはガメリオに語る。

「もう分かったか? あの酔っ払いはな、バイなんだ」
「バイって……バイセクシャルのバイですかい?」
「ああ。男でも女でもいける。特に酒が絡んだらアウトだ。以前、ガブリ姉とルカ姉はメガシンカ習得祝いに互いに酒を飲み交わした事があったらしいが——下戸のガブリ姉はすぐに酔い潰れ——気付いたら、顔を真っ赤にしたルカ姉に押し倒され服を脱がされかけていたらしい」
「え」
「そう。酒豪のルカ姉に対し、ガブリ姉は下戸だ。どうやらこっそり強い酒を飲まされたらしくな。危うくルカ姉に寝ている間に襲われるところだったらしい。この話を聞いたのは俺だけだが、ぶっちゃけ、この話をしていたガブリ姉の顔は怯えていた。すっげー怯えていた。どうやら、すぐに店を千鳥足で飛び出し、地面に穴掘って逃げたのは良いが、酔ってコントロールもまともに効かず、翌日どっかの工事現場で顔から穴出してるところを俺に拾われた」
「あ、拾ったの旦那だったんですかい」
「そうだ。いやー、”このことは秘密だからな!! もし誰かに言ったら逆鱗でぶっ飛ばしてやるぞ!? 良いな、ボマー!!”とか必死で叫んでた」
「今あっさりバラしてるじゃないのよ」
「いーのいーの、別に。あの人も可愛い一面があったんだなぁーって」

 ガメリオは、ガブリのことをかなり気の強い武人肌と思っていたが、攻められると弱いタイプらしい。しかも酒を飲んだらヘタレる。
 そしてルカもかなり問題のある人物らしく。彼女が左遷されたのは、ガブリが涙目で頼み込んだから、というのは言うまでもないだろう。これを知るのは本人とマスター、そしてボマーだけであるが。

「だが、もう分かったろうか? ルカ姉をパーティに入れるのは諦めろ、ガメリオ」
「は、はい……分かりやした」
「ムゥちゃん、大丈夫? 怖かったわね」
「ぐすん……怖かったです……」
「いっつもいっつも、ミーとガブリに迷惑ばっか掛けて、今日という今日はデリートネェーッ!!」
「おっと危ねぇ」

 がしゃぁぁぁん、と酒瓶の割れる音がする。
 いい加減部屋の中で乱闘をするのも勘弁してほしい——そう思った矢先であった。




『緊急事態! 緊急事態! 正体不明のデータ生命体が再び闘技場に現れました! 場内に残っている方々は至急避難してください!!』




 ぴたり、とそこで全員の動きは止まる。
 
「おい、どういうことだ……? 正体不明のデータ生命体って——」
「ボマー」
 
 にやり、と口角を上げたのはルカだ。
 悦びに満ちた表情をしていた。

「あれが影の携帯獣って奴なら——すっげー骨のある連中じゃねえか」

 ぞくり、と全員は戦慄する。

「さて、行くとするか。テメーら」
「お、おい、行くって——」
「着いて来な。俺が奴らを叩きのめす」




 ***




 VIPルームを出て、大通りを走り出す一同。
 目指すは闘技場だ。
 途中で警備のポケモンに止められそうになったが、ルカの顔を見るなりあっさり通された。
 この闘技場で彼女の影響力はそれほどまでに大きいらしい。
 
「ッ!」

 そこで一同は立ち止まる。
 闘技場への扉をふさいでいるのは、3体の影の携帯獣だった。
 しかもその一体は——

「ケケケケ——ケキャキャキャキャキャキャキャァァァーッ!! どんくさい、脳筋ドラゴンがさぁーっ、わざわざそっちから出てきてくれるなんてねぇ、都合が良いよォ……!!」
「チッ……コイツは……!」

 道を塞いでいるのは、少女だった。
 しかし。ポニーテールに結われた髪には牙が付いており、その目はまるで爬虫類のようだ。
 自分の知っている少女のそれよりも、年齢は高めだが、それでも第一印象は幼い少女であった。
 だがしかし。相手を絶対に狩るという凶悪な目付きをしている。
 何よりも、その波動は邪悪な影のものだ。

「何だテメェら……! 影の携帯獣が何故此処に——!」
「ケキャキャキャキャキャキャァァァーッ! 美味しそうな、ポケモンさん……じゅるり……ヒヒヒヒヒ、ヒヒャハハハハハーッ!!」
「駄目だ話が通用しねえコイツ」
「美味しそう、美味しそうなドラゴン……味見、味見味見味見味見ィィィィイイイイイ!!」

 カチ、カチ、とポニーテールがその本来の凶悪な大顎に化ける。
 この特徴。間違いない。
 
「こいつの種族は——クチートか」

 ——さて。ボマーとクチートの因縁は切って切れるものではない。クレセリア同様、彼女を苦手とするボマーは、どうしてもクチートと相対すると腰が引けてしまう。
 モノクロ氏の嫁はクチートのちーちゃんなので、度々じゃれつかれて殺された。そのため軽くトラウマだ。
 しかし。

「なら話は早い! ルカ姉! 先に行っててくれ!」
「オッ、マジかよ」
「どうせ迂回路とかあるんだろ? 早く頼む! ムゥと、モーターの3人なら相性もいいし行けるだろ!」
「オッ、マジで」
「忘れんなよ? モーターはお目付役だ」
「ボマーの頭の切れ味が此処数日でめきめきと冴えているわね。まあ、奴らの好きにさせてたらヤバそうだし。多分、こいつがボスってわけじゃないでしょ」
「ガメリオ、フレイ。サポート頼むぜ」
「ちょっ、ボマーさん!?」
「わりぃムゥ! 最低限、火力の高いアタッカーは2人居た方が良い!」
「無慈悲なのです!」
「わ、ワタシがいるから大丈夫ネ……」
 
 画して。
 ルカとモーターは嫌がるムゥを連れて、そのまま迂回路を通って闘技場へ向かうことになった。
 そして——ボマーと相対するのは永遠の宿敵・クチート。

「あの時の俺は、BOHの後の試合でじゃれつかれて死んだ——そっから俺は、またゼロから始めたんだ!」
「ヒヒャヒャヒャヒャヒャァァァーッ!! 美味しそう……食べる……皮をビリッ!! ビリビリッ!! って剥いで——一気に丸呑み——骨も肉も、全部噛み砕いて——想像するだけで、コーフンしちゃったぁ……」

 愉悦に満ちた表情を浮かべるクチート。
 しかし。
 ボマーとフレイ、そしてガメリオは怯むことなくそれに立ち向かう。
 自身の身体を原型へと解除した。




「教えてやる——狩られるのはテメェだ。久々の祭りの始まりだぜ!!」