二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- パート1:セントラル・フィールドへ ( No.154 )
- 日時: 2016/12/23 03:16
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【ゆけっ、ムゥ!!】
巨大な雪原の獣が姿を現した。
此処でやるべきことは、分かっている。
トゲキッスの排除。これに尽きる。どの道、相手は動きからしてスカーフであることが予測されるため、飛んでくるのもエアスラッシュだろう。
故に——
【ムゥの氷の礫!! 効果は抜群だ!!】
『トゲキッス残り体力40%』
——強襲型であることが生きてくる。怯ませてくるなら、怯む前に攻撃するまで。先制技の氷の礫がトゲキッスを貫いた。
【トゲキッスのエアスラッシュ!】
『ムゥ残り体力87/181』
互いに確定2発の攻撃。
しかし——先手が取れるムゥが次のターン撃ち合った場合、勝利する。
確定した要素を前にして、運ゲーの申し子・トゲキッスは狼狽した。
此処で倒れれば、メガルカリオの突破はほぼ不可能になるのだ。
「これで、決めます!」
「ムゥちゃん、やっちゃうネ!!」
ルカに抱きかかえられたモーターが叫ぶ。
それに鼓舞されたかのように氷の礫が放たれるが——
【相手のトゲキッスは引っ込んだ!】
【相手の影はブラッキーを繰り出した!】
「!!」
——その攻撃は通らない。
高い耐久を持つブラッキーに吸い込まれてしまうことに。
『ブラッキー残り体力85%→食べ残しで95%』
まずい。このままではブラッキーに止められてしまうことに。
さらに、此処で引っ込めば交換による読み合いが発生しかねない。
下した判断は——
「ルカさん」
「?」
「——あなたがボマーさんに似てるってのはすこーし分かる気がします。やっぱり、私達のようなポケモンはエースがあってこそ——詰めは、任せました」
「……ヘッ」
それを聞くとルカは笑って見せる。
「——誰にンな口利いてんだ。安心して、俺が暴れんのを見てな!!」
乱暴な返答。
しかし。そこには何処か安心感を感じることが出来た。
今ここで、自分が手を出さずにトゲキッスを攻撃する方法、それは——
【ムゥのステルスロック! 尖った岩が辺りに漂った!】
「ソレガナンダ……? イマサラ、オマエニナニガデキル!!」
浮遊する岩。
しかし、それはブラッキーには通用しない。
故に——ブラッキーはムゥに対し、苛烈な攻撃を仕掛ける。
【ブラッキーのイカサマ!!】
【ムゥは倒れた!!】
ドサァ、と音がする。
その巨体はフィールドに倒れ込んだ。
イカサマ。相手の防御に相手の攻撃力を利用して叩き込む悪タイプの技。攻撃力のわりに防御がそこまで高くないムゥにはきつい一撃であった。
しかしそれは——
「よお」
血涙のルカが、再び戦場に現れることを意味していたのだった。
【行け、ルカ!!】
「元気かー? ブラッキー。テメェを今度こそ仕留める。逃げんなよ?」
狂ったような笑みをルカは浮かべた。
この場で退く事は流石にできない。さっき、交代読みラスカをガルーラにブチ当てたような相手には——無理だ。
【ルカの悪だくみ! ルカの特攻がぐーんと上がった!】
ブラッキーはぞっ、としながら退いた。
もう、これしかない。
【ブラッキーのイカサマ! 効果はいまひとつのようだ】
『ルカ残り体力109/145』
「効かねえ」
にやあ、とルカは再び笑みを浮かべた。
最早、逃げ場はない。影の携帯獣に待っているのは——
「果てな」
【ルカの波動弾!!】
——消滅、のみだ。
【相手のブラッキーは倒れた!】
シュウウ、という音を残してそこには何も無かった。
恐ろしい程の火力であった。
特性:適応力で補強された上に悪巧みを積んだ波動弾。オーバーキルにもほどがある。
【相手の影はトゲキッスを繰り出した!】
「オノレ……サイゴハワタシガ——」
遂にルカと1対1で相対できるトゲキッス。
しかし、ぬか喜びするのも早かった。
ぐさり、ぐさり、と彼に尖った岩が突き刺さる。
「ス、ステルスロック——!!」
岩が効果抜群なトゲキッスに対し、ステルスロックのダメージは体力の4分の1。
そのため、残るトゲキッスの体力は——
『トゲキッス残り体力:10%』
「幾ら威力を強化した真空波でも、テメェはフェアリーでしかも飛行タイプ。4分の1のダメージしか出ねえ」
つか、つか、とルカは歩み寄りながらしゃべる。
「だからこそ、俺は積んだ。流石に、1回積んだ適応力真空波なら——テメェの残り体力全部削るだけなら造作ないさ」
「ギ、ギギギギギギ!!」
この状況まで持って来れたのは、ムゥとモーターのおかげだ。
特に、ムゥのステルスロックは決め手となったと言ってもいいだろう。
もう、トゲキッスに攻撃を受けるだけの体力は残っていない——
「落ちろ蚊トンボ」
【ルカの真空波!! 効果はいまひとつのようだ】
ずしゃあああ、と影を撒き散らし、トゲキッスは、否、影は地面へ墜落していく。
トゲキッス残り体力——0%
【トゲキッスは倒れた!】
「てめーみたいな紛いモンより、シェムの方がなんべんもつえーよ。あいつのは理不尽なんてもんじゃねえ」
カカカ、とルカは笑って見せる。
そして、勝利を表すかのように、拳を突き上げて見せたのだった——
「な? 俺に任せてよかっただろ?」
【影の携帯獣に勝利した!】
彼女の笑みは——さっきと打って変わり、輝いていたのだった。
***
——画して、地下闘技場に現れた影の携帯獣は討伐された。現在、闘技場はメンテナンスされており、再び使えるようになるまで時間がかかるようだった。
「で、ルカ姉。結局ボックスに戻るのか」
「たりめーよ。しばらく退屈だったしな」
戦いぶりを見ていたボマーとしても、流石に断ることは出来なかった。
これだけの火力があれば、十分戦力にはなる。
ムゥとモーターの方をちらり、と見た。
「ボマーさん、私はまだルカさんのことが怖いって思いますけど」
あの戦いや、あの笑顔を思い出すように、ムゥは言う。
「少なくとも、悪い人じゃないと思います」
「おー、ムゥちゃん。姉さん嬉しいよ」
「Shit! ルカ、おさわりはNGだからネ!」
「ちぇ」
まだぎこちないが、少しは打ち解けたということで良いのだろうか。
フレイも仕方なさそうに言う。
「ま、しょうがないわよ」
「そう、だな。マスターの命令、だしなあ……」
「何だかんだ言って従うんだ」
「拾われた身だし、無下には出来ねえ」
機嫌が悪そうに言った彼は、ルカに向き合う。
「おい、酔っ払い」
「何だ? ボマー。俺の戦いに惚れたか?」
「……仕方ねえからこっちに入れてやる。腕が酒で鈍ってねえってことを確信しただけだから勘違いすんなよ」
「ふふん、そうか」
何とか、ボマーも受け入れることにしたらしい。
まだ、素直ではなかったが、少なくともあの頼り甲斐のある背中、頼っても良さそうだと判断したのだろう。
「よろしくお願いしやすぜぃ、ルカの姉御」
「おう、隠密機動。お前もよろしくな」
「ルカさん。問題はあまり起こさないでくださいね?」
「わぁーってるよ、フレイ」
「んじゃ、帰るか。マスターのとこに事後報告しねーといけねえしなあ」
「ケケ、そうか」
楽しそうに笑ったルカはモーターの方に向き直る。
ふん、と不機嫌そうな表情だった彼女だが、手を差し出す。
「……またよろしくネ、ルカ」
「怖い顔すんなよ、モーター。こっちこそな」
ぎゅっ、と2人の手が繋がれた。
遠くから見ていたムゥは不思議そうに言う。
「あの2人も、何かあったんでしょうか?」
「昔、色々な」
「……」
影の携帯獣や、ルカ。
多くの謎を残すことにはなったものの、セントラル・フィールドの騒乱はこれで一先ず解決したことになったのだった。
——そーいや……。
ボマーはふと空を見上げた。
——あの緑トカゲと決着付けられなかったな……。
***
「ライ。あれが影の携帯獣、ってやつだったとしたら……」
「それはあいつらに任せてていいだろ。俺らはまだ借金残ってるしな」
「でも雷切さん……」
「んだよ、キモイ。黙ってろよキモイ。俺は、あの龍舞空飛びトカゲをめざパで凍らせることが出来なかったから機嫌が悪いんだ」
「だがな、雷切よ。お前にも無視できない話だが」
「何だ」
「例の新設サーバーの話だ」
……。
雷切は黙りこくった。
そう、遂に始まろうとしていたのである。
「——いつか、ケリをつけるさ。”第七世代”の決戦の場でな——」