二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- パート3:湖の決闘(8) ( No.28 )
- 日時: 2015/02/25 03:01
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「そーいえば……」
ムゥが口を開いたことで、全員はいったん静まった。
「次はどこに行くんですか?」
「それはだな、くじ引きで決めることにしてるのさ」
ボマーが言う。
残るボックスのエリアは4つ。雷電械域、天獄峡域、群雲街域、頂龍山域だ。
「でも、それはまた明日にするわ。もう今日は、このミーティングが終わったら解散ということで」
フレイが言う。
確かにもう遅い。夜の8時で外は暗くなっていた。
「ですが、1チーム3匹だけだと心許ないですね。僕も、この中央区域のボックスで手の開いている人に、呼びかけてみようと思うので」
「おう、つか鼻はもう大丈夫なのか」
「こんなもん、ご都合主義で治る範囲です」
そーいえば、とボマーは口を開いた。
「戦力になりそうな奴といえば、で興味深い話を教えてやるよ」
「はい?」
全員がボマーの前にやってくる。
「少し前に、俺が教育係を担当していたガキが居てだな。あれは8月くらいだったか懐かしい」
「それがどうかしたんですか」
アクアが食いつく。
「努力値を溜め終わった後、そいつは俺に聞いてきたんだ。よくある『もっと強くなるにはどうしたら良いですか』みたいな?」
「ねえ、今更だけど何この唐突なカミングアウト」
フレイが白い目で睨んでくる。
脈絡のない思い出話に辟易しているのだろう。
「天獄峡域。飛行ポケモンの自由の天国にして、同時に厳しい自然によって生み出される地獄だが、それでちーと思い出したんだ。そいつも飛行タイプだったからな。とりあえず、俺は『テキトーに全エリア周ってれば、そのうちメガシンカでも何でも習得できるんじゃねーの?』と答えた」
「え、あんた、そんな適当なこと言ったの!?」
「荒れてたんだよー、当時の俺は。XY産の俺は逆鱗をボッシュートされたも同然、マスターにもボックスの肥やしにされてたかんな」
それにしても酷い話である。どうして、そのマスターはそんな奴に教育係を任せたのか。タクのことである、という設定だが。
ついでに言うと、散々欲しがっていた逆鱗だが結局空元気に差し変わってしまった。教え技なんか最初から無かったのである。
「最悪ね、こいつ……」
「だってよー、その頃の俺といえば竜舞空飛び一筋だった上に、それすら上手くいかなくなったからな。心がすさんでたんだよ、うん。はっきり言って、どうでも良かったんだ。あんな種族値の低い奴」
「いよいよ主人公降格令が下るんじゃないですか、あんた」
「事実を言ったまでだ。種族値の低いポケモンは特性でカバーするっきゃないが、それもできないならば、レートの闇に飲まれるしかねえ」
なぜならば、ボマーのように種族値の高いポケモンでも苦労をしているのだ。それは、今でも同じだ。まして、あんなのがガチパ入りできるとは考えられなかった。
つい、この間までは。
「11月。ORAS発売と同時に、俺は目覚めた。メガシンカでな。しかし、それは俺だけじゃなく、他の多くのポケモンもそうだった」
そして、とボマーは続けた。
「-----------あいつも、例外じゃなかったんだ---------!!」
***
「ケカカカカ、コノ俺サマニ勝テルト思ッテルノカァーッ?」
純白の体毛の翼を生やし、堕ちた天使を思わせる風貌のポケモン・メガアブソル。
しかし、それは空間の裂け目から生まれた影。憎しみで、その姿は邪悪に歪んでいる。
それを物ともせずに少年は言った。少年の風貌はコートに身を包み目をゴーグルで覆っているというもの。彼の姿は風が吹くこの岩山に溶け込んでいる。
「”下級”か。”守護級”には遠く及ばない。どこから自然発生した」
「俺サマハ、全テノアブソルノ怨念ガ集マッテ生マレタノダ……! 人間ノタメヲ思ッテ災イヲ知ラセテヤッテルノニ、俺様自身ガ災イヲ-----------------」
はぁ、分かった、と辟易した様子で少年は答えた。
メガアブソルの背後に回って。
「ナッ!?」
目にも留まらぬ動作だった。
向き合っていたはずなのに、少年は既に敵の後ろに回りこんでいたのだ。
「で? 言いたいことはそれだけか?」
「貴様、舐メオッテ----------!!」
飛び掛るメガアブソルの影。
だが、彼が少年に襲い掛かることはなかった。
スパン、スパン
「----------じゃあ、早く言えよ。消える前にな」
ケラケラ、と笑う少年。
メガアブソルの言葉はそこで途切れる。
彼は、なぜか飛び散る自分の前足(だった部分)を見る。
そして、その身体は次の瞬間にバラバラに輪切りになり、消滅した。
天獄峡域の風は、今日も強い------------