二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート4:忍の街(1) ( No.33 )
日時: 2015/02/28 01:07
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「暇そうで、尚且つ強い奴ねー」

 女は言った。此処はカフェ・闇羅魅。すごそうな漢字が並んでいるが、読み方はヤミラミである。
 ボックスの中でも、最もポケモンが多く集まり、住宅街や学校(何でそんなのがあるんだとか突っ込んではいけない)が建ち並ぶ”中央区域”。
 その裏路地の隅にある目立たない扉から地下につながる階段を降りると、辿り着くのがこのカフェである。
 しかし、此処はただのカフェではない。店主の女・ヤミミ(種族はヤミラミ)は情報屋も兼ねており、ボックス全体のポケモンのことから、他プレイヤーのポケモンのことまで、全てを把握している。
 しかし、これらの情報は信用のあるものにしか提供しない。普段は普通のカフェなのだ。好んで人など寄り付きはしないが。また、一度提供した情報は提供せず、誰に提供したのかも教えない。そうでもしなければ、情報が流出して商売上がったりになるのである。
 さて、彼女はBOHでレイドが埋まっていたエリアを教えてくれた上に、ボマー達には素性を明かさない代わりに、店を妹に任せて自分達のパーティに入ってくれたのだった。その代わり、アクアの財布はピンチになりかけたが。

「大方、あの影でしょう? あれを自分から討伐しに行ってるのは、あんたらくらいよ。他のエリアの連中は結構沸いてくる下級に抵抗しているらしいけど」
「下級……?」
「そんなのも知らないで戦ってたの、あんたら」

 彼女は息をつくと「仕方ないわね、特別に教えてあげるわ」と言って、タブレットを取り出した。

「これを見て」
「これって、メガアブソルですか?」

 彼女が見せたのは1枚の画像だった。
 男の画像だった。空間が裂けて、そこから現れている。
 ---------ん、そういえばボーマンダのときは、こんな感じだったな。エルレイドのときは、空間の裂け目に牙が付いていたような。

「これが、下級。奴らからすれば、こいつらはまだ雑魚同然ってことね。そのエリアにいる”守護級”の瘴気で自然発生するのよ」
「し、信じられません……そして、守護級って言うのは?」

 「こいつよ」、と彼女が見せたのは、たった今アクアが思い浮かべていた、昨日のエルレイドの擬人化体、というべきなのだろうか。
 空間の裂け目から現れた男。空間と男のいる瘴気の境に牙が生えている。

「そして、これがあんた達が昨日倒した奴だけど、そのエリアを収めるボス的存在、これが守護級よ」
「なるほど、連中にも階位があったわけですね」
「ネット犯罪対策機構のポケモンが、勝手にそう呼んでいるだけだけど」
 
 どっちが強いか、っていうのはもう分かるわよね、と彼女は念を押し、アクアも頷いた。
 さて、さっきの続きだけど、と彼女は話を戻す。

「はっきり言って、今は暇な奴なんていないわよ。中央区域の連中も身内が被害に遭ったり、あるいは尻込みしちゃったりで、あんたらの期待に沿えるようなのは居ないわ。別のエリアの連中は、今どうなっているかはまだ入ってきていないし」

 世の中、そう旨くはいかない。誰もがアクア達の力になれるわけではないのだ。再び、向かう別のエリアで仲間にするしかない。

「でも、もしも誰か見つかったら、その情報はあんたに取っておいてあげるから」
「感謝します。あ、それとエスプレッソを1つ」
「まいどー」

 ***

「というわけで、パーティについては何の成果も得られませんでした」

 午前9時。昨日と同じ時間に、全員静炎邸に集合していた。
 しかし、何も情報は得られなかったという報告を聞いて、チャモとレイドが口々に言う。

「えーっ、あっくんあんなに自信満々に言ってたのに」
「もし見つかんなかったら、『全裸で好きな人に告白します!!』とまで言ってたのによー」
「誰がんなこと言いましたか、表出ろや変態ユレイドル」

 チャモと変態ユレイドルを鎮めて(後者は沈めた)アクアは「その代わりですが」と言ってタブレットを取り出す。
 ボマーとフレイ、そしてムゥがそれを覗いた。

「これって?」
「ある人から取り寄せたデータです」

 アクアが提示したのは、影の携帯獣のデータだった。そして、先ほどヤミミから教えて貰った下級や守護級についてのことを説明した。

「へぇ、ネット犯罪対策機構が使っている呼称、か。でもどっから仕入れた、こんなデータ。今はネットには繋げられないのによ」
「知り合いのツテとかですよ」
「アクアさんは顔が広いのですね」

 ヤミミのことは、伏せねばならないことになっているので、アクアは誤魔化すのに毎度苦労する。

「さて、こいつらの話に戻しますが、以前、まだメガシンカが無い第五世代にも小規模ではありますが似たような事件が起こったらしいんです。その際に、当時のポケモンドリームワールドを構築していた、ドリームサーバーを乗っ取り、手下の影達でセキュリティプログラムを破壊していったようです。でも、結局乗り込んできたプレイヤー達のポケモンに一網打尽にされたそうです」

 ポケモンドリームワールド。第五世代当時にあったサービスで、ポケモンの夢の中にプレイヤーが入れる、というものだったが開設直後にサーバーが落ちてしまったのである。

「確か、それってアクセスの過多が原因じゃなかったです?」
「ええ、公式の発表は。ですが、本当は今言った影の携帯獣の仕業だったらしいです」

 それで、尖兵の下級とサーバーを守護する守護級の名称がついたのだ。

「さて、今日はどこに行くか、決めましょうか------------!」

 ***

 -----------イナク……ナレ……!!