二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート4:忍の街(2) ( No.34 )
日時: 2015/05/06 11:37
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

 ホウオウ戦のBGMが流れてきそうな季節はずれの紅葉、建ち並ぶ古き良き日本の町並み。
 群雲街域。それが、このエリアの名前だった。基本は、対戦用ではないポケモン達の中でも、大人しい部類のもの達が住んでいるのだ。くじで決定したボマー組の行き先は、平和な雰囲気漂うここだった。

「小倉山、峰のもみぢ葉心あらば。今一度の、みゆき待たなむ、か。相変わらず良い歌ね」

 いつか、主人に教えて貰った歌を詠んだフレイの頭に、紅葉の葉がひらり、と降ってくる。今も昔も、紅葉の美しさは変わらないのだ。

「日本って感じがしますね」
「ええ。でも--------------」

 フレイの顔が険しくなる。

「うおおおおおおお、どこだぁぁぁぁぁぁ、コンピュータァァァァーッ!!」
「あんたの所為で全部台無しよ、このバカマンダァァァァーッ!!」

 思わず怒鳴った。街を駆け巡り、コンピューターがどこにあるのかをレーダーを頼りに捜すボマー。

「どうしたのよ、一体」
「いや、よ。このエリアに入った途端、アクアのレーダーにある反応が---------」

 ようやく落ち着いたボマーは、レーダーの画面をフレイに見せた。
 そこには、コンピューターのある場所を示す赤い丸のマークが、1つだけではなく、2つ、3つ、いや10。全部で10個もあったのだ。

「何でこんなにあるのよ! あんたレーダー壊したでしょ!!」
「俺の所為にするんじゃねえ! レーダーは正常だ!」
「はわわ、喧嘩はよくないですよぉ」

 おろおろしながら止めるムゥ。

「いや、レーダーは異常か。どっちだ?」
「どうなってんのよ、反応がこんなにあるなんて。貸しなさい! ちょっと待ってて、あたしだってC145あるのよ! これくらい、どうにかしてみせるわ!」

 ポケモンの頭の良さは基本・特攻の比例するのである。ただし、ボマーとアクアという悪い意味と良い意味の例外こそ存在するが。
 だが、アクアは肉弾戦が好きじゃなかったから勉強しまくってこうなったからであり、ボマーは勉強しないだけであって、実際はそこまで頭は悪くないのである。いや、やっぱバカか、あいつ。
 
「おう、頑張れよ」

 うおおおお、とフレイの気迫の篭った声が聞こえてくる。
 ボマー的には全部、あいつに丸投げすればどうにかなるだろう、という発想だ。
 
「さ、鬼が居ぬ間に」

 くるり、と踵を返してボマーはその場を去ろうとした。
 あわてた様子でムゥが止めようとする。

「ボ、ボマーさん、丸投げはやめといたほうが良いですよぉ」
「知るか、折角こういうエリアなんだからよ、たまには息抜きして行こうや」

 
 ***


 というわけで、鬼の居る場所からさっさと離れ、ボマーとムゥは街を散策していたのだった。

「あ、おだんご屋さん……」

 実に子供らしい台詞だった。ぐぅ、と彼女のお腹が鳴り、同時に頬が少し赤く染まったのが見えてボマーは、はは、と笑みを思わず零す。

「確かに珍しいな、食っていくか」

 団子屋”隠れ蓑”と少々変わった名前ではあったが、迷わずその方に向かう。

「おーい、店の旦那ー。団子2つおくれー」
「あいよ」

 元気の良い声が返ってくる。
 勘定を先払いし、店主が皿に盛り付けた串団子を2本持ってやってくる。
 また、お茶も一緒に置かれていた。
 
「しかし、見ない顔だね。あんたらどっから来た?」
「あ? 俺は中央区域から、このガキは氷海水域の方からだ。ちーと用があって此処に来たのさ」
「へえ。何だか知らねぇが、頑張んな」

 そう労いの言葉をかけて、店主は奥に引っ込んでいく。
 ふぅ、と一息つくとボマーは呟いた。

「こーしてよ。何かゆっくりと物食うのは久々な気がするぜ」
「おいしーです、ボマーさん!」
「そうか。喉に詰めるなよ」

 私も、とムゥが言った。

「氷海水域から外に出ることって少なかったから、こうして誰かとおいしいものを食べることってあんまり無かったから、少し新鮮です」
「目の前には紅葉。ま、新鮮には感じるだろうな」
「はいっ。……フレイさんも一緒だったら良かったのに」
「そうだな」

 まあ、確かに少し寂しいものはある。

「俺は、あいつと知り合って結構たつ。あいつは強い。それはもう、信じられないくらい、とても強い」
「そうですよ。フレイさんって、一見そんな風には見えないのに、とっても強いんです。心も、身体も」
「ああ、そうだ。だから、俺もマスターもやばいときはあいつに頼っていた」

 ---------いや、頼り切っていたって言うべきか。

「だけど、その考えを改めることになった試合があったんだ」
「え?」
「あれは、地獄のようなクリスマスだった」

 ***


「……相手は氷統一パか。こりゃ、俺は無理だ」
「あたしが行ったら、こんな連中楽勝よ。マニューラ以外は相手できるわ」
「んじゃ頼む」
「それに、オニゴーリ如き、身代わり貫通してあたしの大文字で焼き尽くせるし」

 いつものフレ戦。氷統一パだったのは、クリスマスだからか余興のつもりだったのだろう。流石にデリバードはパーティに入ってはいなかったが。
 こんな連中、簡単に勝てるだろう、と俺は思っていた。
 だけど。


【オニゴーリの特性:ムラっ気発動!! 回避率がぐーんと上がった! 防御が下がった!】


「結構、能力上がってるわね……あたしが出るわ」
「大文字ブチ当てられねぇんじゃねえか。これ」
「じゃあ、シャドーボールで倒すまでよ!」

 だけど、現実はそんなに甘くなかった。


【オニゴーリの絶対零度!!】


「持ってたのか、絶対零度……! Aが上がっても生かせる地震かと思ってたが……このくらい、避けられるだろ!」
「そ、そうね!」

 再び見たオニゴーリの顔は-------------本当の鬼のようだった。

「----------------凍り付け、小娘」

 ビキッ、て音がしたときはもう遅かった。
 簡単に避けられると思っていた絶対零度の冷気はフレイの身体を確実に捕らえていく。

「えっ、嘘……いやだ、冷たいよ------------!」


【一撃必殺!!】


 その姿は、クリスマスの日の明かりにしては、陰惨過ぎた。完敗だった。害悪戦法だろうが、なんだろうが、俺はフレイに頼りすぎていたって、この時点で気づいていた。
 一撃技なんか食らったら、しばらくはかなりキツいはずだ。なのに、あいつは---------
 
「はぁ!? 炎統一ゥ!?」
「……ハァハァ、そうよ! 奴らを溶かさないと、気がすまないわ!」
「お前な……露骨すぎるだろ。マスターの許可も得てないのに、こんなことやって良いと-----------」
「うるさいわねっ!! あたしはマスターから信頼されているのよ!! その信頼に応えなきゃ、意味が無いじゃない!!」

 次見た相手のパーティは流石に、一見普通のパーティだった。
 だけど、フレイが重い構築には変わらなかった。炎に強いヤドランも、特防が低いから、こいつで処理できた。
 隅に、オニゴーリがいることを除けば。

「お、おい……ヤな予感しかしねぇぞ! ヤドラン処理できるのはお前だけなんだから、気をつけろよ!」
「分かっているわよ!」

 だけど、俺の予感は見事に的中した。
 中盤、フレイが鉢合わせしたのは、あのオニゴーリだった。

「小娘……また会ったな……!」
「ふんっ、今度は溶かしてあげるわ!」
「溶かせるもんなら……」

 相手のキーストーンと奴のメガストーンが反応する。
 さっきとは明らかに違う。メガシンカ型だったんだ。

「溶かしてみろォォォーッ!!」

 次の瞬間、奴の身体からビキッ、と音を立ててヒビが入る。ガコン、と顎が外れて目つきがより凶悪になった。
 そして、冷気と共に、奴は--------------


【オニゴーリの大爆発!!】


 爆ぜた。特性・フリーズスキンで氷タイプになった上に威力が増した大爆発の火力は-------------

「えっ、そんな、嘘------------!!」

 冷気と共に、あのフレイを一瞬で吹き飛ばした。
 当然、ヤドランに勝てるのは、フレイ以外いねぇ。そのまま、完敗だった。