二次創作小説(映像)※倉庫ログ

パート4:忍の街(5) ( No.37 )
日時: 2015/03/21 13:16
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「ダメだわ……流石に個人ピンポイントの生体反応は負えない」

 レーダー機を改造していたフレイだったが、結局壊してしまう始末。ああ、これではボマーを見つけるのはいよいよ難しくなってしまった。
 と、そのときだった。

「あ」

 店の中から、誰かが素早く出て行くのが分かった。
 しかも、見覚えのある人物だった。

「ちょっと待って! あんた確か、あたしとレートパで-------------」


 ***

「そうだ、ムゥ! 敵が飛行タイプならば、お前の氷柱針で何とかなるはずだ!」
「は、はいですっ!」

 彼女も巨大な原型の姿と成り、天井に幾つもの氷柱を冷気で作り出す。
 氷柱の針が一気に敵へ襲い掛かる------------
 

 グサグサグサグサグサッ!!


【5回当たった!】


「殺りましたっ!」
「ああ、俺を?」

 げふっ、と吐血したボマー。背中には氷柱針5本、しっかりと突き刺さっていた。効果は抜群だ。ボマーは倒れた。

「え、ええええ!! すいません、つい癖でドラゴンに攻撃してしまいました〜!」

 非常時用(対戦のとき使うのは禁止)の元気の塊を飲み込んで、辛うじて生き返ったボマーは息をつく。
 まずいことになった。扉は硬く閉ざされて逃げることもままならない。おまけにムゥは間違ってボマーに攻----------

「いや、それは違うと思うぜ。奴が不意打ちで天井に現れた氷柱を素早く俺の位置まで滑らせたんだと思う。野郎のスピードはかなり速い。速いし、奴は強敵だ。ひょっとしたら、あいつが影かもしれない……なんて思ってるだろ」

 と言おうとした地の分を遮る勢いでボマーは言った。

「え!? 違うんですか!?」
「まず、影の連中ならこんな回りくどい真似はしねぇよ」
「で、ですけど」
「そしてもう1つ。野郎が速いっ、て思ってるかもしれないが、そりゃ間違いだ。まず、最初の岩雪崩は俺達が此処で起きる前から準備していたこと、次に俺が捨て身タックルをした後に恐らく撃ったのは”燕返し”か。つまり、対戦における行動順の法則を踏めば、奴は俺らより速度は遅い」

 考えてみればそうだ。敵は全て、ボマーが行動した後に攻撃を仕掛けている。

「んでもってホウエン地方やカロス地方には、これら全ての技を使えるポケモンがいる------------そうだろ、カクレオン」

 
 ----------へっへっへ、ようやく分かりやしたか。及第点ですぜ、ボマーさん。ちょいとあんたらを試したのさ。バカと呼ばれる割には頭が良いじゃねーですか。
 べらんめぇ口調の声が響いてくる。
 部屋には3人、いや3匹しか居ない。だから、音が跳ね返って余計不気味に聞こえる。

「脳筋だのバカだの言われるが、生憎戦闘面の知識はそれなりに付けているつもりだ。特に、俺の出身・カロス地方の図鑑に登録されているポケモンのことは、XYの頃から全て学習済みだぜ」

 ----------それこそ、わざわざ団子売りに化けて、団子にキノガッサのキノコの胞子を混ぜて眠らせた甲斐があるというものでさァ。
 キノガッサのキノコの胞子をわざわざ眠り薬に使うとは、真に恐ろしいカクレオンである。

「えっ? あの団子売り、お前だったの?」
「ボマーさん、それは大体察せると思います」

 ----------今の流れで分からないとか、やっぱあんたバカだろ。

「だけど、最初てめぇの居場所が全く分からなかったのだけが謎だった。普通のカクレオンならば、変色で周りに擬態しても腹の赤いラインだけが浮き上がっちまう、という弱点があるにもかかわらず、だ」

 ----------でも、それもさっきのバトルの中で分かったはずでさァ。

「ああ。てめぇの特性は変色じゃねえ。隠れ特性の”変幻自在”。同じ特性を持ってる奴が昔レートパにいたからしっかり覚えてるぜ。そして、変幻自在ならば、変色なんかより、より精度の高い擬態ができる。」

 ----------ご名答!! ならば、あっしにその力、見せてみやがれ、ボマーさん。幻覚の忍者であるカクレオンの術を敗れるものならば!
 再び、岩が雪崩れてくる。
 しかし。

「言っただろ。てめぇの弱点は鈍足なことだ。技を素早く連続で繰り出すことは、出来ねぇんだよ!!」

 それが落下する前にだ。
 ボマーが足を踏み鳴らした。
 地面が揺れ、「ぐはぁぁぁ!!」と悲鳴が聞こえて、カクレオンが倒れたのが分かった。 
 その後、岩が大量に降りかかるが--------------ボマーは立っていた。
 
「お前は俺達を相手にしていた時点で威嚇を食らっていたのさ。元々攻撃面が半端なのに、威嚇込みの岩雪崩で俺が落ちる訳ねぇだろうが。これで遊びは終いだ、幻覚の忍者」


 ***


 部屋の明かりが付く。
 倒れていたカクレオンは起き上がり、元の原型の姿に戻る。
 それは、カメレオンの目のようなゴーグルを目に付けた男だった。胴は細く、長く、痩せこけていた。

「いやー、お見事でしたぜィ。あんたのような方が居れば、”あいつ”を倒すこともできまさァ」
「影の携帯獣の事か?」
「ええ。まず、昨日のことですが-----------あんたとレートパを組んでいたゲッコウガのクナイさん」
「クナイ? クナイがどうかしたのか」

 クナイはBOHの前。ボマーとレートパで組んでいたポケモンの1人だ。此処、群雲街域が出身だと言っていた。

「---------残念ながら、影の携帯獣の調査中。既に完全体になっちまっていた守護級にやられちまいやした」
「何だと!?」
「そのポケモンの放った”雷”に撃たれちまってですね。しばらく戦闘不能ですわ。立って歩けるようにはなったんですが----------」

「おい、ガメリオ」

 ふと、別の声が聞こえた。
 見れば、そこには蒼い忍装束に身を包んだ男が居た。

「--------クナイさん」
「クナイ! 大丈夫なのか!?」

 ボマーが声をかける。
 彼がさっき話の中に出てきたクナイだった。しかし、杖で身体を支えており、かなり弱っているようには見える。

「すまなかった、ボマー。仕事仲間が迷惑をかけたな」
「いや、暴れられたし、謝罪は結構だ」
「しかし、俺はこの通り背中をやられて杖なしでは動けないのだ。悪いが、守護級を討伐してくれないか」
「ああ、分かった。言われるまでもなく、だ! 俺らはそのために此処に来たんだからな」
「なんか、良い感じに纏まったんですけど、此処ってそもそもどこなんですか」
「教えてやる。まず、守護級とカラクリが巣食っているのは-----------この屋敷の最上階なのだ」

 えっ、とボマーとムゥは思わず天井を見た。何もあるわけがないが。
 
「我々が修行場にしているこの屋敷に、1つの光が降ってきた。それが守護級とカラクリだったのだ。扉で出てこられないように封じているのがせめてもの救いだが、他の領域では下級が大量発生しているところもあるという。早くせねば」
「よし、それならばとっととぶっ飛ばすまでだぜ!」
「で、でも、フレイさんが……」

 「ああ、彼女か?」とクナイは開いた扉の方に手招きした。

「レートパだった好だ。道で迷っていたので連れてきた」
「え、マジか」

 そういえば、フレイも当時レートパで一緒だったのだ。
 連れてきてもらって、ありがた-----------

「ボマァァァァ、ムゥゥゥゥ!!」

 あ、やばい奴だ。とボマーは理解した。すっごく怒っている。
 
「どこ行ってたのよぉぉぉ!!」
「悪かった、悪かったって!!」
「自業自得なのです……」
「ムゥちゃんにもしっかりお仕置きしないとね〜♪」
「ごめんなさいなのです〜!!」

 まあ、何であれだ。これで全員揃った。
 ガメレオ、と呼ばれていたカクレオンが言い出す。

「ま、何であれ丸く収まって何とやら、でさァ」
「準備運動にもなったしな。そろそろ行くか」
「ちょい、待ち。あっしも行きまさァ」

 ガメリオがボマーの方に歩み寄る。

「申し送れやしたが、あっしの名はガメリオ。あんたらの仲間に入らせて貰いまさァ」

 どうも、拒否権はこちらには無いらしい。敬語で喋っているが、我は強い方らしい。
 すっ、と握手のつもりか手を差し伸べてくる。

「ああ、こっちからもよろしく頼むぜ!!」

 ガシッ、とボマーもその手を強く、握り締めたのだった。